堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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聖女の怒り

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王宮の広間に、異様な緊張が漂っていた。
マリアの目が揺れ、震えながら心で叫ぶー、

(なんで?どうしてー!?スカーレットが真の聖女!?ノクシアの使い手!?
それじゃ私は偽物ってこと!?
この物語のヒロインでしょ!?
幸せになれるのは私だけのはずでしょう!?
なのに今幸せを手に入れているのは、他でもない悪役のスカーレットなのである。
あの女、私から全てを奪うつもりなの!?私のために存在してる世界でしょう?
私のために存在しないなら私の手で壊すわー。)

その絶望と嫉妬の感情が、王宮の空気に共鳴するかのように渦を巻き、レーヴ・オブスキュールが黒い禍々しい力を放った。

魔力は漆黒の槍と化し、王の心臓を目掛けて一直線に飛ぶ。

ーズシャーッ!

しかし、その槍を無効化したのはジルベールだった。彼は手を差し出すと、黒い槍ごとレーヴ・オブスキュールの力を消し去った。

「や、やめて!それは私の全てなの!消さないで!」
マリアは絶叫する。

「なぜ朕を殺そうとしたのか、説明してもらおうか、聖女マリア――いや、スーザン・サラン・マリアージュ」
王の声は冷たく、圧倒的な威圧感で広間を支配した。

「父上、お待ちください!マリアは、父上を殺すつもりなどありません!力が暴走しただけです!」
セシル王子が慌てて庇おうとするも、王の鋭い視線に圧倒され、何も言えなくなった。

マリアは不気味な笑みを浮かべ、静かに口を開く。
「バレてしまったのなら仕方ないわ。そうよ……レーヴ・オブスキュールを使って、王宮の人間を傀儡化させたのは私よ。もちろん、ラファエル様を操ったのも私」

王の問いに、マリアは吐き捨てるように答える。
「だって、私はみんなから愛されるべき聖女なのに、誰も私を愛してくれないんだもの。でも、断罪されるべきなのは私じゃなくて……彼女よ――」
マリアの指が、確信に満ちたようにスカーレットを指し示す。
「私も断罪されるなら、貴方も死ななきゃ」

その瞬間、ジルベールが消し去ったはずの黒い槍が、再びスカーレットに向かって飛びかかる。
ラファエルは剣を握り、立ちはだかろうとする。

しかし、スカーレットが強く目を閉じ、手で庇おうとした瞬間、手の甲から強い光が放たれ、黒い槍は一瞬にして消え去った。

「私の槍が……!一体、何をした?」
マリアは驚愕しながら叫ぶ。

王の声が低く響く。
「護衛兵、こやつを捕らえよ。」

「待って! 私は聖女よ! みんなから愛されるべき存在なの! 私は、この世界のヒロインなのよ!!」
マリアは必死に叫ぶが、その姿はもはや聖女ではなく、狂気に囚われたただの女にしか見えなかった。

数名の騎士たちが駆け寄り、マリアの両腕を押さえ込む。
彼女はなおも暴れながら、涙混じりの声でスカーレットを罵る。

「どうしてよ! どうして貴方なの!? 貴方が全てを奪ったの!…ラファエル様まで……!」

しかしその言葉に答える者はいなかった。
ラファエルは険しい顔でスカーレットを庇い、スカーレットは静かに彼女を見つめ返す。

「……連れて行け。」
王の一言で、マリアは引きずられるようにして謁見の場から退けられた。

扉が閉まる直前、マリアの叫びが木霊する。
「こんなの間違ってる! 私こそが……私こそが、この物語の主人公なのよぉぉ!!」

――その声が遠ざかると同時に、謁見の間に重苦しい沈黙が落ちた。
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