堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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堕天使様のプロポーズ

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王宮から戻ったラファエルを迎えたのは、台所に立つスカーレットの姿だった。
クラウスが不在の時は、決まって彼女が朝食を作ってくれる。
香ばしいパンの焼ける匂いと、スープの優しい香りが部屋いっぱいに広がっている。

一生懸命にフライパンを振るうその姿が、どうしようもなく愛おしい。
気づけばラファエルは彼女の背後からそっと抱きしめていた。

「きゃっ……!? ラファエル様? 今、火を使っておりますのに危ないですわ!」

慌てて声を上げるスカーレットに、ラファエルは低く囁く。

「いつもありがとう。……お前の作る料理は、本当に美味しいんだ。」

「……ふふっ、急になんですの? そんなこと言われたら……照れてしまいますわ。」

「本音を言っただけだ。」

小さく笑うラファエルの胸に、スカーレットはほんのりと頬を染めた。
そして、ふと呟く。

「それより……今日、朝、目覚めたらラファエル様がいなくて……その……私は、すごく寂しかったのです。」

その一言に、ラファエルは目を見開き、そして優しい笑みを浮かべる。

「……すまない。だが、大事な用があったんだ。」

「……それなら仕方ありませんね。けれど……朝はやっぱり、ラファエル様のぬくもりの中で起きたいのです。できれば、そばにいてほしいですわ。」

彼の胸に甘えるように言うスカーレット。
ラファエルは堪えきれずに、彼女の顎をそっと持ち上げた。

「……スカーレット。だから俺を煽るなと、いつも言っているだろう? ……朝から、お前が欲しくなってしまうじゃないか。」

「も、もうっ! どうしてそうなるのです!? ……ラファエル様のハンレチ!」

真っ赤になって抗議する彼女の姿に、ラファエルは嬉しそうに笑った。

◇◆◇

やがて食卓に並んだ朝食を、二人で並んで囲む。
パンをちぎり、スープを口に運び、他愛もない会話で笑い合う。
――だが、ラファエルの胸には、ずっと隠していたものがあった。

食事を終えたあと。
ラファエルは静かに立ち上がり、ポケットから小さな箱を取り出す。

「……スカーレット。」

名を呼ばれた彼女は、不思議そうに首を傾げる。
ラファエルは真剣な眼差しで彼女を見つめ、箱を開いた。

そこには、深紅のルビーをあしらった二つの指輪が並んでいた。

「ラファエル様……これ、は……?」

「これは、母上が俺に託してくれたものだ。
“ラファエルが心から愛する人を見つけたなら渡してほしい”と、そう言われていた。」

スカーレットの瞳が揺れる。
ラファエルは膝をつき、彼女の手を優しく取った。

「俺はもう、お前なしでは生きていけない。
お前を失う未来など考えられない。
だから――」

彼の声が震えた。けれど、決意の強さは揺るぎなかった。

「スカーレット。俺の妻になってくれ。
一生涯、俺の隣にいてほしい。」

差し出された指輪の赤は、燃えるように輝き、二人を包み込む。
スカーレットは目に涙を滲ませ、震える声で答えた。

「……はい。喜んで……。ラファエル様の妻に……なりますわ。」

彼女の指に指輪をそっとはめるラファエル。
その瞬間、二人を結ぶ絆は、もはや誰にも断ち切れないものとなった。
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