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第Ⅳ章 恋は堕ちて行くものだった(アリシア視点)
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私の名前はアリシア。
私には美しいお姉様がいる。名前はイリス。
お姉様は美しいだけではなく、とても優秀で私なんか足元にも及ばない。
お姉様はみんなに愛されている。私とは大違い。
私はお父様に愛されてはいるけどお母様からは嫌われている。
私の容姿がお気に召さないようだ。
「私だって、なれるものならお姉様のように美しく生まれたかったです」
「アリシアはとても美しいよ。君のお母様は他国の人間だからね。美しい評価の基準が違うんだよ」
そう言って私の頭を撫でて慰めてくれるのはエーメント殿下。
お姉様の婚約者です。
とても格好良くて、優しい。
こんな人が婚約者だなんて、お姉様はやっぱりズルい。
「白磁の肌に明るい色の髪。それがこの国の美しいと言われる評価基準だ」
「お姉様とは真逆ですね」
お姉様は褐色の肌をしている。髪も黒で、ちょっと重たい印象がある。
エーメント殿下はよほど私の髪がお気に召したのか指に絡めて遊んでいる。
そう言えば、お姉様とエーメント殿下って婚約関係にあるのにあまり一緒にいるイメージがない。
どうして?
「イリスには他国の血が色濃く出たんだ。正直、彼女を王妃の座に座らせることに迷いがある。彼女たちの国とは長らく敵対していたから、余計にね」
お姉様とお母様がこの国に良からぬことをしようとしているとエーメント殿下は言いたいのだろうか?
そんなことないっ!と、言いたいけど言えない。
家族として信じてあげたいけど、あの二人がこの国に馴染んでいないのは妹の私でもよく分かる。
どうしてこんなに豊かで素晴らしい国を愛せないのだろう。
こんなにお優しいエーメント殿下を悩ませるなんて。
私がもし婚約者だったら………………。
いけない。何を考えているの。
エーメント殿下はお姉様の婚約者。
決して好きになってはいけない相手なのよ。
「お姉様は毎日、エーメント殿下に相応しくあろうと研鑽を積んでいますわ。今はまだ視野が狭いのかもしれませんが、何れエーメント殿下と婚姻して世界の広さを知れば己が井の中の蛙であったことを理解される日が来ますね。お姉様はとても優秀ですから。私なんかと違って」
ああ、苦しい。
辛い。
痛い。
エーメント殿下を愛しているのに、その恋敵のフォローをしなければならないなんて。辛すぎるわ。
「お姉様が羨ましい」
「アリシア………………」
ぽろりと本音がこぼれ落ちた。
「あ、あの、お姉様はエーメント殿下にとても思われていて、お母様やお父様からも愛されているので羨ましいなと。私は、お母様になぜか嫌われているみたいで」
慌てて取り繕ったからかなり不自然だったかもしれない。
私の気持ちに気づかれたらどうしよう。
「お姉様は私と違って優秀ですし、何れは王妃になられる方だから当然かもしれませんが」
やだなぁ。
本当のことだかど悲しくなる。
姉妹なのにどうしてこうも違うのだろう。
「それは辛いな。イリスは何もしてくれないのか?」
「どうやら私はお姉様にも嫌われているみたいなんです。きっと私のような不出来な妹を持って恥しいと思っているんですわ。仕方がないことです」
「あははは」と笑って見せるとなぜかエーメント殿下はとても辛そうに微笑んだ。
今にも泣いてしまいそうな顔をしていたのでどうしたのだろうと思っていると私はエーメント殿下に抱き締められていた。
「そんなことはない。アリシアはとてもよくやっているよ」
嬉しかった。
今だけはエーメント殿下の目に映っているのはお姉様ではなく私。
その事実がたまらなく嬉しくて、ドキドキした。
まるで本当の恋人になったみたいだったから。
だけどその高揚はすぐに下降した。
なぜなら僅かに開いたドアからお姉様がこちらを見ていたから。
まずいと思った。すぐに離れなかればと。
だけどお姉様は何も言わずに行ってしまった。
なぜ?
お姉様はエーメント殿下を愛していらっしゃらないのだろうか。
私には美しいお姉様がいる。名前はイリス。
お姉様は美しいだけではなく、とても優秀で私なんか足元にも及ばない。
お姉様はみんなに愛されている。私とは大違い。
私はお父様に愛されてはいるけどお母様からは嫌われている。
私の容姿がお気に召さないようだ。
「私だって、なれるものならお姉様のように美しく生まれたかったです」
「アリシアはとても美しいよ。君のお母様は他国の人間だからね。美しい評価の基準が違うんだよ」
そう言って私の頭を撫でて慰めてくれるのはエーメント殿下。
お姉様の婚約者です。
とても格好良くて、優しい。
こんな人が婚約者だなんて、お姉様はやっぱりズルい。
「白磁の肌に明るい色の髪。それがこの国の美しいと言われる評価基準だ」
「お姉様とは真逆ですね」
お姉様は褐色の肌をしている。髪も黒で、ちょっと重たい印象がある。
エーメント殿下はよほど私の髪がお気に召したのか指に絡めて遊んでいる。
そう言えば、お姉様とエーメント殿下って婚約関係にあるのにあまり一緒にいるイメージがない。
どうして?
「イリスには他国の血が色濃く出たんだ。正直、彼女を王妃の座に座らせることに迷いがある。彼女たちの国とは長らく敵対していたから、余計にね」
お姉様とお母様がこの国に良からぬことをしようとしているとエーメント殿下は言いたいのだろうか?
そんなことないっ!と、言いたいけど言えない。
家族として信じてあげたいけど、あの二人がこの国に馴染んでいないのは妹の私でもよく分かる。
どうしてこんなに豊かで素晴らしい国を愛せないのだろう。
こんなにお優しいエーメント殿下を悩ませるなんて。
私がもし婚約者だったら………………。
いけない。何を考えているの。
エーメント殿下はお姉様の婚約者。
決して好きになってはいけない相手なのよ。
「お姉様は毎日、エーメント殿下に相応しくあろうと研鑽を積んでいますわ。今はまだ視野が狭いのかもしれませんが、何れエーメント殿下と婚姻して世界の広さを知れば己が井の中の蛙であったことを理解される日が来ますね。お姉様はとても優秀ですから。私なんかと違って」
ああ、苦しい。
辛い。
痛い。
エーメント殿下を愛しているのに、その恋敵のフォローをしなければならないなんて。辛すぎるわ。
「お姉様が羨ましい」
「アリシア………………」
ぽろりと本音がこぼれ落ちた。
「あ、あの、お姉様はエーメント殿下にとても思われていて、お母様やお父様からも愛されているので羨ましいなと。私は、お母様になぜか嫌われているみたいで」
慌てて取り繕ったからかなり不自然だったかもしれない。
私の気持ちに気づかれたらどうしよう。
「お姉様は私と違って優秀ですし、何れは王妃になられる方だから当然かもしれませんが」
やだなぁ。
本当のことだかど悲しくなる。
姉妹なのにどうしてこうも違うのだろう。
「それは辛いな。イリスは何もしてくれないのか?」
「どうやら私はお姉様にも嫌われているみたいなんです。きっと私のような不出来な妹を持って恥しいと思っているんですわ。仕方がないことです」
「あははは」と笑って見せるとなぜかエーメント殿下はとても辛そうに微笑んだ。
今にも泣いてしまいそうな顔をしていたのでどうしたのだろうと思っていると私はエーメント殿下に抱き締められていた。
「そんなことはない。アリシアはとてもよくやっているよ」
嬉しかった。
今だけはエーメント殿下の目に映っているのはお姉様ではなく私。
その事実がたまらなく嬉しくて、ドキドキした。
まるで本当の恋人になったみたいだったから。
だけどその高揚はすぐに下降した。
なぜなら僅かに開いたドアからお姉様がこちらを見ていたから。
まずいと思った。すぐに離れなかればと。
だけどお姉様は何も言わずに行ってしまった。
なぜ?
お姉様はエーメント殿下を愛していらっしゃらないのだろうか。
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