30 / 36
第Ⅳ章 恋は堕ちて行くものだった(アリシア視点)
29
しおりを挟む
「どうして君の心はそんなにも汚れているんだ!」
「殿下が穿った見方をしているからではありませんか?」
ある日、エーメント殿下とお姉様が喧嘩をしていた。
お姉様ったら、めったに会われないのだからたまに会う日ぐらい仲良くすればいいのに。
私だったら毎日会いたいし、会った日は楽しく過ごしたい。
やっぱり私の方がエーメント殿下を愛しているわ。
「アリシアは君の妹ではないか」
私?
私のことで喧嘩をしているの?
でも、どうして?
「だから何だと言うのですか?片方の言い分のみを聞いて、責め立てるのはおやめ下さい」
「君はアリシアが可哀想だとは思わないのか?公爵夫人から、母親から嫌われているんだそ」
あっ!
あの時のことか。
嬉しい。エーメント殿下が私の為に動いてくださった。
私とお母様やお姉様の仲を取り持とうとしてくれているんだわ。私の為に。
やっぱりエーメント殿下はお優しいわ。
こんな人が婚約者だったらいいのに。きっと幸せな結婚生活が待っているんでしょうね。
いいなぁ、お姉様は。
どうしてお姉様ばっかり。
「殿下が口を出すことではありません」
お姉様は聞く耳を持たない。
どうして私はお姉様に嫌われているのでしょう。
この後もエーメント殿下とお姉様の口論は平行線のまま続いた。
結局、お姉様は態度を改めようとせずエーメント殿下は怒りながら帰って行った。
エーメント殿下には後で謝罪とお礼の手紙を書こう。
どうして私がお姉様のフォローをしないといけないのかしら。
神様って本当に不公平だわ。
「ご満足いただけましたか?」
「えっ?」
考え事をしていたせいでイスファーンが前から来ていることに全く気づかなかった。
正直、彼が苦手なのよね。
何だか笑っているようで冷めているような目とか。
不気味だし、何を考えているか分からないし。
いいえ、人に対してそのように考えるのはいけないことね。
「イスファーン、満足って?どういう意味かしら?」
「誤魔化さなくて結構ですよ。エーメント殿下とイリス様を仲違いさせる為に嘘を吹き込んだのでしょう」
酷い。
私がお母様から愛されていないのも、お姉様に嫌われているのも本当のことなのに。
嘘だなんて。
「嘘なんて言ってないわ。人に嘘をつくのはいけないことでしょう」
「では、おバカさんなんですね」
「!?」
どうしてイスファーンはいつも私にだけは意地悪なんだろうか。お姉様には優しいのに。もしかしてお姉様が私の悪口をイスファーンに刷り込ませているのかな?
イスファーンは純粋そうだし、お姉様のことを慕っているみたいだからきっとお姉様の言うことを何でも素直に受け入れているんでしょうね。だったらレミット公爵家の一人としてそれは間違いだと教えてあげなくてはいけないわよね。
「イスファーン、あのね」
「エーメント殿下はイリス様よりもアリシア様に気がおありのご様子」
「えっ」
まさかの言葉に私は頬が一気に赤くなるのを感じた。だって、もしそうなら嬉しい。
お姉様には申し訳ないけど、でもいいわよね。
お姉様はエーメント殿下のことを愛していなさそうだし、両想いなら何も問題はないはず。
「そ、そうかしら」
とても嬉しいことを言われたのでこの時の私はイスファーンがとても冷たい目で私を見ていたことに気づかなかった。もし、気づいていたらこの先の未来、何か変わったかもしれないのに。
「だからエーメント殿下は真相を確かめる前に婚約者であるイリス様ではなくアリシア様を庇われた。エーメント殿下はこの先、どうなさるでしょうね」
「どうとは?」
イスファーンは私に近づいて来て、耳元で囁いた。
「アリシア様を虐めるイリス様には王太子妃には相応しくないと思うでしょうね。エーメント殿下はアリシア様こそご自分の妃に相応しいと思われるかもしれません」
それはとても甘い毒。
「そんな、こと」
否定しようとしてできない私にイスファーンは一歩離れて微笑む。
「あくまで可能性の話です」
そう、可能性の話
でも来るかもしれない未来の話
「殿下が穿った見方をしているからではありませんか?」
ある日、エーメント殿下とお姉様が喧嘩をしていた。
お姉様ったら、めったに会われないのだからたまに会う日ぐらい仲良くすればいいのに。
私だったら毎日会いたいし、会った日は楽しく過ごしたい。
やっぱり私の方がエーメント殿下を愛しているわ。
「アリシアは君の妹ではないか」
私?
私のことで喧嘩をしているの?
でも、どうして?
「だから何だと言うのですか?片方の言い分のみを聞いて、責め立てるのはおやめ下さい」
「君はアリシアが可哀想だとは思わないのか?公爵夫人から、母親から嫌われているんだそ」
あっ!
あの時のことか。
嬉しい。エーメント殿下が私の為に動いてくださった。
私とお母様やお姉様の仲を取り持とうとしてくれているんだわ。私の為に。
やっぱりエーメント殿下はお優しいわ。
こんな人が婚約者だったらいいのに。きっと幸せな結婚生活が待っているんでしょうね。
いいなぁ、お姉様は。
どうしてお姉様ばっかり。
「殿下が口を出すことではありません」
お姉様は聞く耳を持たない。
どうして私はお姉様に嫌われているのでしょう。
この後もエーメント殿下とお姉様の口論は平行線のまま続いた。
結局、お姉様は態度を改めようとせずエーメント殿下は怒りながら帰って行った。
エーメント殿下には後で謝罪とお礼の手紙を書こう。
どうして私がお姉様のフォローをしないといけないのかしら。
神様って本当に不公平だわ。
「ご満足いただけましたか?」
「えっ?」
考え事をしていたせいでイスファーンが前から来ていることに全く気づかなかった。
正直、彼が苦手なのよね。
何だか笑っているようで冷めているような目とか。
不気味だし、何を考えているか分からないし。
いいえ、人に対してそのように考えるのはいけないことね。
「イスファーン、満足って?どういう意味かしら?」
「誤魔化さなくて結構ですよ。エーメント殿下とイリス様を仲違いさせる為に嘘を吹き込んだのでしょう」
酷い。
私がお母様から愛されていないのも、お姉様に嫌われているのも本当のことなのに。
嘘だなんて。
「嘘なんて言ってないわ。人に嘘をつくのはいけないことでしょう」
「では、おバカさんなんですね」
「!?」
どうしてイスファーンはいつも私にだけは意地悪なんだろうか。お姉様には優しいのに。もしかしてお姉様が私の悪口をイスファーンに刷り込ませているのかな?
イスファーンは純粋そうだし、お姉様のことを慕っているみたいだからきっとお姉様の言うことを何でも素直に受け入れているんでしょうね。だったらレミット公爵家の一人としてそれは間違いだと教えてあげなくてはいけないわよね。
「イスファーン、あのね」
「エーメント殿下はイリス様よりもアリシア様に気がおありのご様子」
「えっ」
まさかの言葉に私は頬が一気に赤くなるのを感じた。だって、もしそうなら嬉しい。
お姉様には申し訳ないけど、でもいいわよね。
お姉様はエーメント殿下のことを愛していなさそうだし、両想いなら何も問題はないはず。
「そ、そうかしら」
とても嬉しいことを言われたのでこの時の私はイスファーンがとても冷たい目で私を見ていたことに気づかなかった。もし、気づいていたらこの先の未来、何か変わったかもしれないのに。
「だからエーメント殿下は真相を確かめる前に婚約者であるイリス様ではなくアリシア様を庇われた。エーメント殿下はこの先、どうなさるでしょうね」
「どうとは?」
イスファーンは私に近づいて来て、耳元で囁いた。
「アリシア様を虐めるイリス様には王太子妃には相応しくないと思うでしょうね。エーメント殿下はアリシア様こそご自分の妃に相応しいと思われるかもしれません」
それはとても甘い毒。
「そんな、こと」
否定しようとしてできない私にイスファーンは一歩離れて微笑む。
「あくまで可能性の話です」
そう、可能性の話
でも来るかもしれない未来の話
21
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる