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第Ⅳ章 恋は堕ちて行くものだった(アリシア視点)
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「アリシア、愛している」
「嬉しいですわ、エーメント殿下。私も愛しています」
いけないことだと分かっていた。
でも人を愛するという思いを止めることはできなかった。それは秘めれば秘めるほど熱く燃えがあり、自分でも制御不能になってしまった。
良いわよね。
だって、お姉様はエーメント殿下のことを愛していらっしゃらないのだから。
お姉様を傷つけているわけではない。
それに私とエーメント殿下は両想いですもの。
その証拠にエーメント殿下は毎日のように私に会いに来てくださった。
お姉様は月に一度程度、お茶会をするだけだったのに。
エーメント殿下はお忙しい方だからとお姉様は仰っていたけど本当は会いたくなかっただけなんだと今なら分かる。だって本当にお忙しい方なら私にこんなに頻繁に会いに来てくださるわけがないもの。
「ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいのに」
「アリシア」
どうしてこんなにも想いあっているのに私たちは婚約者ではないのでしょう。
私がお姉様よりも早く生まれて来たらエーメント殿下の婚約者になれたのでしょうか。
神様はどうしてこんな残酷なことを人に課すのでしょう。
想いあっている二人を引き離すなど許される所業ではないのに。
◇◇◇
お姉様にエーメント殿下とのことがバレた。
叩かれた頬が痛い。けれど、何よりも心が痛かった。お姉様を裏切ってしまった罪悪感ともうエーメント殿下と会えなくなる、この想いが成就してはいけないものだという事実が私を絶望させた。
私は謝る為にお姉様の元を訪れた。
そんな私にお姉様はとても残酷なことを言う。
「私の婚約者よ」
エーメント殿下がお姉様の婚約者だということは分かっているわ。わざわざ言わなくてもいいじゃない。
ダメだ。泣きそう。泣いちゃダメ。私が悪いんだから。
でも、どうして私が悪いの?ただ愛して合っているだけなのに。
お姉様はエーメント殿下を愛していないんでしょう。だったら婚約者を変わってくれてもいいじゃない。
「わ、かっているの。分かっているわ、ちゃんと。それでも止められないの。愛しているのよぉ」
「そう。じゃあ、どうするの?」
「えっ?」
どうするって‥‥‥
戸惑う私の心にイスファーンの囁きが蘇る。
『アリシア様を虐めるイリス様には王太子妃には相応しくないと思うでしょうね。エーメント殿下はアリシア様こそご自分の妃に相応しいと思われるかもしれません』
それは可能性の話
でも来るかもしれない未来の話
私の考えを見透かしたかのようにお姉様は続ける。
「私から殿下を奪ってみる?」
そんなことできるわけない。
お姉様は私なんかに比べられないほど優秀で、たとえお姉様がエーメント殿下を愛していなくても周りが次期王妃と認めるのはお姉様。そんなの分かりきったこと。
分かっていてそんなことを言うの。
「ねぇ、いつ殿下との関係を終わらせるつもりだったの?」
答えられなかった。
だって、愛しているの。誰よりも愛しているの。王妃の座が欲しいだけのお姉様には分からない。
「本当に悪いと思うなら殿下と別れて」
「お姉様‥…」
「なぁに?もしかして、この関係をまだ続けるつもりだったの?」
「い、いいえ」
「じゃあ、できるわよね」
「っ」
「できるわよね」
「‥…はい」
もう本当に終わりなんだ。私とエーメント殿下は。
どうして。私も同じ公爵家の人間なのに。
どうして。
どうしてよぉっ。
私は自分の部屋に戻って一晩中泣いた。
涙が枯れて出なくなるまで泣き続けた。
「嬉しいですわ、エーメント殿下。私も愛しています」
いけないことだと分かっていた。
でも人を愛するという思いを止めることはできなかった。それは秘めれば秘めるほど熱く燃えがあり、自分でも制御不能になってしまった。
良いわよね。
だって、お姉様はエーメント殿下のことを愛していらっしゃらないのだから。
お姉様を傷つけているわけではない。
それに私とエーメント殿下は両想いですもの。
その証拠にエーメント殿下は毎日のように私に会いに来てくださった。
お姉様は月に一度程度、お茶会をするだけだったのに。
エーメント殿下はお忙しい方だからとお姉様は仰っていたけど本当は会いたくなかっただけなんだと今なら分かる。だって本当にお忙しい方なら私にこんなに頻繁に会いに来てくださるわけがないもの。
「ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいのに」
「アリシア」
どうしてこんなにも想いあっているのに私たちは婚約者ではないのでしょう。
私がお姉様よりも早く生まれて来たらエーメント殿下の婚約者になれたのでしょうか。
神様はどうしてこんな残酷なことを人に課すのでしょう。
想いあっている二人を引き離すなど許される所業ではないのに。
◇◇◇
お姉様にエーメント殿下とのことがバレた。
叩かれた頬が痛い。けれど、何よりも心が痛かった。お姉様を裏切ってしまった罪悪感ともうエーメント殿下と会えなくなる、この想いが成就してはいけないものだという事実が私を絶望させた。
私は謝る為にお姉様の元を訪れた。
そんな私にお姉様はとても残酷なことを言う。
「私の婚約者よ」
エーメント殿下がお姉様の婚約者だということは分かっているわ。わざわざ言わなくてもいいじゃない。
ダメだ。泣きそう。泣いちゃダメ。私が悪いんだから。
でも、どうして私が悪いの?ただ愛して合っているだけなのに。
お姉様はエーメント殿下を愛していないんでしょう。だったら婚約者を変わってくれてもいいじゃない。
「わ、かっているの。分かっているわ、ちゃんと。それでも止められないの。愛しているのよぉ」
「そう。じゃあ、どうするの?」
「えっ?」
どうするって‥‥‥
戸惑う私の心にイスファーンの囁きが蘇る。
『アリシア様を虐めるイリス様には王太子妃には相応しくないと思うでしょうね。エーメント殿下はアリシア様こそご自分の妃に相応しいと思われるかもしれません』
それは可能性の話
でも来るかもしれない未来の話
私の考えを見透かしたかのようにお姉様は続ける。
「私から殿下を奪ってみる?」
そんなことできるわけない。
お姉様は私なんかに比べられないほど優秀で、たとえお姉様がエーメント殿下を愛していなくても周りが次期王妃と認めるのはお姉様。そんなの分かりきったこと。
分かっていてそんなことを言うの。
「ねぇ、いつ殿下との関係を終わらせるつもりだったの?」
答えられなかった。
だって、愛しているの。誰よりも愛しているの。王妃の座が欲しいだけのお姉様には分からない。
「本当に悪いと思うなら殿下と別れて」
「お姉様‥…」
「なぁに?もしかして、この関係をまだ続けるつもりだったの?」
「い、いいえ」
「じゃあ、できるわよね」
「っ」
「できるわよね」
「‥…はい」
もう本当に終わりなんだ。私とエーメント殿下は。
どうして。私も同じ公爵家の人間なのに。
どうして。
どうしてよぉっ。
私は自分の部屋に戻って一晩中泣いた。
涙が枯れて出なくなるまで泣き続けた。
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