仄暗い部屋から

神崎真紅

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第一章

act 1 賢司と瞳

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  仄暗い部屋。
  聞こえるのは、溢れる愛液を啜る音だけ。

 「瞳」

  初めて男が声を上げた。
  瞳というのは、察する所、女の名前だろうか。

 「けん、じ....」

  荒い息遣いの中、瞳は男の名前を口にした。
  賢司と呼ばれたその男は、さらに瞳の身体を貪り続けた。

 「だ、め....限界....」
 「まだ終わらせないな」

  賢司の硬くなったそのモノは、瞳の秘所の入り口を撫で上げていた。

 「ひっ...。ゃっ....だめぇ~」
 「くっくっくっ....、相変わらず感度は最高だな」
 「賢司....入れて....入れて....」

  うっすらと涙を零しながら、瞳は賢司自身をねだった。

 「限界か、仕方ないか」

  瞳のぐっしょり濡れた秘所に、賢司自身が入って来た。

 「い、くっ、ぁぁ~」

  焦らされて、既に限界だった瞳はそのまま上り詰めていった。
  しかし、賢司自身はまだ終わらない。
  腰の動きが早まる。
  瞳は、また絶頂に達した。
  声すら出せないままで。
  首を左右に激しく振りながら。
  瞳の意識はそれ以上持たなかった。

 「瞳....、俺の愛はお前だけの為にある。それを忘れるな」

  ぽつりと、賢司が呟いた。
   



  ....その部屋の灯りは、小さなランプが二つだけ。
  瞳は未だ意識の戻らないままで、時折賢司の名前を呼んでいた。

 「瞳....」

  賢司は、瞳の唇にそっと触れる。
  ぴくり。
  瞳の身体がそれに反応した。

 「賢司....あたし「何も言うな」」 

  瞳の声を聞いただけで、賢司の欲望は爆発しそうになる。

 「今は少しだけ安め」
 「抱いていて....」
 「ああ、判った」

  そっと、瞳の身体を抱き締めて、唇にキスを落とす。
  駄目だ。
  俺の理性は何処へ行くのか?
  半ば強引に、瞳の身体を賢司の舌先が這い廻る。
  瞳の花弁を押し広げる様に、その舌先が入って来る。

 「ぁぁぁ....やめ、ないで....」
 「さっきあれだけイカせてやったのに、まだ足りないのか」
 「ば、かぁ....はぁっ、あっっ」

  瞳の身体が仰け反った。
  近いな。
  このまま登らせてやろうか?
  それとも....。

 「瞳、どうして欲しいのか、言えたら聞いてやる」
 「あ....あっ、いじわ、る」
 「じゃあこのまま終わらせていいんだな?」
 「だ....めぇ~、お願い....」
 「何をだ?」
 「イカせて....あっっ....」

  賢司は、妖しく笑いながら、瞳の花弁に自身を突き進めた。

 「ぁぁっ....い、くっっぅ」

  瞳の声をキスで塞いで、賢司もまた、瞳の中に熱を放出した。
  ぐったりとしている瞳の唇にそっとキスを落として。
   
 「瞳、大丈夫か?」
 「あ、うん、ダメ....まだ動けない....」
 「だろうな、あれだけ激しかったんだから」

  くっくと、笑って賢司は言った。
  瞳の顔が、カッと熱くなる。

 「何、言ってるのよ?」

  半ば怒った口調で、瞳は言葉を返した。

 「本当の事じゃねぇのかよ?失神、しただろうが」
 「それは....賢司のせいだもん」

  へぇ。
  瞳にしちゃ珍しい切り返しだな。

 「腹、減ってないか?」
 「ん~....、少しかな?」
 「俺で一杯か?」

  けらけら笑いながら、賢司は言った。

 「そうね、賢司のせいで一杯なんだわ」

  賢司は何も言わずに、シャワールームに入って行った。
  瞳もようやく動ける様になり、賢司の後を追ってシャワールームに入って行く。

 「何だよ?珍しいじゃんか?」
 「まだふらふらしてるのよ。洗ってよ?」
 「はは、仕方ねぇな」

  笑いながら、賢司は瞳の身体を念入りに洗ってゆく。
  瞳の身体の至るところに、賢司の愛した痕が付いていた。
  最中は気付かないもんなんだな。
  変な所で感心していた。
  それだけ夢中って事か。

 「瞳....愛してるぜ」

  賢司の、突然の言葉に、瞳は呆気にとられた。
  愛してる?
  まさか賢司の口からそんな言葉を聞けるなんて。
  思ってなかった。

 「どうしたの?天地がひっくり返るよ?」

  本当は嬉しかった。
  けど、そんな事瞳が言う筈もない。

 「お前の身体は最高だからな」

  身体?
  身体だけなの。

 「賢司はあたしの身体だけを、愛してる。そう言いたいのね?」
 「何だよ、俺がいつそんな風に言ったんだよ?」
 「違うの?」
 「当たり前だろ?瞳の全てを愛してるさ」

  そう言って、瞳の唇に重なる賢司の唇。
  強引に舌を捩じ込ませて来た。

 「瞳、ベッドに行くか」

  まるで、合図の様なその言葉。
  バスローブだけを素早く羽織って、ふたりはまたベッドで抱き合った。
  時がゆっくりと流れる....。
  賢司は瞳の身体を、丹念に愛撫してゆく。
  首筋にまたひとつ、賢司の印しが増えた。

 「ぁ....」

  小さく声を上げた。
  首筋は瞳の性感帯だ。
  最も弱い所ばかりを責められて、既に瞳の花弁からは蜜が溢れていた。

 「濡れてるぜ」
 「ばかっ....」

  恥ずかしい訳じゃない。
  気持ちいいから、素直に言いたくないのだ。

 「此処はどんな味かな?」

  両膝をぐいっと開かれて、その中心にある蕾に舌を這わせて、賢司は言う。

 「くす....。限界か?瞳?」

  どうしてそこを舐めただけで判るの?
  聞きたくても、言葉にならない。
  口から出るのは、快楽の嗚咽だけだった。

 「ぁっ、はっ、けん....じ....」
 「入れて欲しいのか?」
 「ん....」

  賢司は瞳の両足を担ぎ上げて、大きくなったその身を柔らかな瞳の花弁に入れてゆく。

 「きつ....。力抜けよ」
 「入れて、な、い....」
 「感じ過ぎて締まってるのかよ」

  仕方ないな。
  きつく締まった瞳の蕾に、賢司は無理矢理割って入って来た。

 「あはぁぁ~....」

  イっちゃいそう。

 「け、んじ....」
 「イきたいか?」
 「い、かせ....て....」

  賢司は無言のまま力強く抱き締め、腰を動かした。

 「ふぁっ....ぁぁ~....」

  瞳は一気に登り詰め、ぐったりとその身体を賢司に預けた。

 「俺、も....」

  そう言って、瞳の中に熱い液体を放出した。
  仄暗い部屋で、ふたりは抱き合ったまま目を閉じた。


  ふと、瞳が目を覚ました。
  薄暗い中で、ケータイのディスプレイの光だけが、部屋を照らしていた。
  賢司は....。
  まだ、眠っている。
  瞳は愛しい賢司の、髪をそっと撫でてみた。
  ....流石に起きる気配は、ない。

 「疲れたわよね....」

  そう呟く瞳もまた、気だるい身体を持て余していた。
  このまま身体をベッドに委ねていたいな。

 「ん、瞳。水を持って来てくれよ」
 「びっくりした。起きたの?」
 「喉が渇いたんだよ」

  瞳は冷蔵庫から、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、賢司に投げた。

 「おっと!危ねぇな」
 「寝惚けてるんじゃ、ないんだ?」

  瞳はくすっと、笑って言った。

 「何がだよ?」
 「疲れたんじゃないの?」
 「お前の方がいい思いしてんだろうが?」

  そうね。
  SEXの快感は、男とは比べ物にならないらしいからね?

 「でもあたしを気持ちよくさせるのは、賢司だけでしょ?違うの?」
 「あぁ、俺だけだ。当たり前だろ?」

  その言葉に、何だかほっとした。
  当たり前の様で、難しい事だと思っているからかな?
  身体の相性って、本当にあるのね。
  瞳は賢司によって、本当の快感を知った。
  初めて絶頂に達した時、瞳は衝撃を受けた。
  今までのSEXは何だったの?
  そんな気持ちが交錯した。
  そして....。
  賢司から離れる事が出来なくなったんだった。

 「瞳?どうしたんだ。難しい顔してよ?」
 「あ、な、何でもないよ」
 「ふぅん、そうか?」

  不思議そうに見つめる賢司に、瞳は気付かなかった。

 「瞳、腹減らないか?」

  ベッドから、上半身を起こしながら、賢司が聞いた。

 「ん....、あんまり食欲ないけど....」

  まだ身体がだるい。
  さっきのSEXで、何度イっただろう?
  5回くらいまでは、憶えているけど、それすらも瞳には定かではなかった。
  意識が朦朧としていて、身体中が性感帯になっていた。

 「賢司?お腹空いたのなら、何か作ろうか?」
 「そうだな....。いや、瞳も疲れた顔してるし、俺何か買って来るよ」
 「じゃああたしビールお願い」

  賢司は笑って言った。

 「食欲なくても、アルコールは入るのか?」
 「気分的によ」
 「へぇ、珍しいな。じゃ行って来るわ」

  賢司は近所のコンビニを通り過ぎて、人気のない路地裏に歩いて行った。
  何となく柄の悪い男が、賢司に近付いて来て、何かを賢司に渡した。
  賢司は引き換えに、万札を渡した。
  それを受け取ると、何事も無かった様に、コンビニでビールと少しばかりの食料を買って戻って行った。
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