追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

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死亡

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「……え……」

 俺はその言葉を理解できずにいた。
 懸命に頭をフル回転させるが言葉が見つからない。

「その名簿の後半部分は亡くなられた上級冒険者の皆様の名前が記してあるページです。隣には詳細が書いてあります。わかりましたか? ゲイルさんと言う方は既に亡くなっているんです」

 この受付嬢は何を言っているんだ?
 
 既に死んでいる? 誰が? どこで? どうして? なぜ?

 俺は「ゲイル」と記されたところをじっと見つめた。

 死因は戦死、死亡したのは約四年前、当時Aランクパーティーだった【月光】の元メンバー……俺だと思われる情報が書き連ねられていた。
 そこには感情などは一切ない。
 死んでしまったものへの弔いのように感じた。

「あ、あなたはゲイル……という方をご存知ですか!?」

 俺は我慢できずに受付嬢に詰め寄った。
 どうして俺が死んだ扱いになっているんだ?
 四年間姿を消していただけじゃないか。現に俺は今ここに戻ってきた。勝手に殺されては困る。

「いえ。私は最近ここに異動してきたばかりですので申し訳ありませんが把握していません。それよりどうしてそこまでゲイルさんが気になるのですか?
 あなたが何者かは私には分かりませんが、死者を名乗るのは良くないと思いますよ? こちらもお返し願います」

 完全に思考が停止し現実を直視できない俺から、受付嬢は名簿を優しく取り戻した。

 その表情からは呆れや戸惑いに加えて不快な感情も窺える。

「……すみません」

 俺は訳もわからず謝罪の言葉を口にし、小さく頭を下げた。

「それでご用件はなんでしょうか?」

 受付嬢はそんな俺を見て少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真顔になり抑揚のない口調で聞いてきた。

「……冒険者登録をお願いします」

 俺は弱々しい口調で簡潔に言った。

「はい。では、お名前とご年齢をお願いします」

「ゲイルです。年齢は二十歳はたちそこそこ……だと思います……」

 俺は受付嬢の目を見つめて迷わず答えた。
 誰がなんと言おうと俺はゲイルだ。
 誰も信じないとは思うが俺は生きている。そしてこの場に立っている。
 自分の名前を名乗って何が悪い。

「……わかりました。あなたがそういうならそうなのでしょう。少々お待ちください……っと……こちらがギルドカードになります。紛失した場合や破損した場合は無料で交換可能ですので、気軽に受付へお持ち込みください。続いて冒険者についての説明はどうなさいますか?」

「簡潔にお願いできますか?」

 俺は受付嬢から高級感のある小さなカードを受け取り懐に入れた。

「かしこまりました。まず冒険者はランクと呼ばれるもので実力が分けられております。初級冒険者はE、中級冒険者はD、C、そして上級冒険者がB、Aというように細かく言うと五段階。大まかな区切りで三段階ございます。つまりゲイル様は現在Eランクということになります。ここまでは大丈夫でしょうか?」

 基本的に冒険者はE~Aランクまであり、その遥か上にはSランクもあるが、それは数えられるほどしか存在していないため受付嬢は省いたのだろう。

「ええ。大丈夫です」

 ここまでは全く問題ない。

「では、次はランクを上げる方法について説明させていただきます。ランクはそちらの掲示板でクエストを受注し、その難易度によって上げることができます。それから——」

「——自分のランクに見合わない格上のクエストを受注するのは大丈夫ですか?」

 全ての説明を待っている時間がもったいないので、俺は話を遮る形で質問をぶつけた。

「え、ええ。ですが、命の保証はできませんので、そのような場合はご自身の責任でお願いする形になっております。命を大切に冒険をしてください……って……まさか……?」

 俺は顔に疑問符を浮かべる受付嬢が説明を終えると同時に掲示板に向かった。
 そこでBランクのクエストとAランクのクエストを一つずつ選定し、無言で受付嬢に手渡した。

「これ、お願いします」

「あ、あの! 私の話聞いてましたか!? 命は一つしかないんですよ! この二つはEランクのあなたは愚か、上級冒険者の方々でも苦戦するものですよ! 無謀にも程があります! 死んだら元も子もないんですよ!?」

「こちらの責任であれば可能なんですよね? それに俺にはそんなことは関係ないのでね。クエストの受注お願いできますか?」

 ちまちまEランクやらDランクのクエストなんて受けてられるか。
 こちとら元々Aランク。しかも四年の修行を得て更に実力をつけた自信があるのだ。
 決して油断しているわけではなく、実力にあったクエストに臨むだけだ。

 それに俺はもう世間では死んでいる存在。
 今更他人にどうこう言われても聞く義理はない。
 また裏切られても困るしな。

「……わ……わかりました……御武運を祈っております……」

 受付嬢はしばしの沈黙の後、申し訳なさそうにクエストを受注した。

「ええ……では」

 俺は複雑な表情をしている受付嬢に背を向けてギルドを後にした。
 おそらく俺は頭のおかしい無謀な男に見えていることだろう。
 だが、あながち間違いではない。何度も危険なことをしてきたし、何度もそれを乗り越えてきた。

「……いくか……」
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