7 / 91
死亡
しおりを挟む
「……え……」
俺はその言葉を理解できずにいた。
懸命に頭をフル回転させるが言葉が見つからない。
「その名簿の後半部分は亡くなられた上級冒険者の皆様の名前が記してあるページです。隣には詳細が書いてあります。わかりましたか? ゲイルさんと言う方は既に亡くなっているんです」
この受付嬢は何を言っているんだ?
既に死んでいる? 誰が? どこで? どうして? なぜ?
俺は「ゲイル」と記されたところをじっと見つめた。
死因は戦死、死亡したのは約四年前、当時Aランクパーティーだった【月光】の元メンバー……俺だと思われる情報が書き連ねられていた。
そこには感情などは一切ない。
死んでしまったものへの弔いのように感じた。
「あ、あなたはゲイル……という方をご存知ですか!?」
俺は我慢できずに受付嬢に詰め寄った。
どうして俺が死んだ扱いになっているんだ?
四年間姿を消していただけじゃないか。現に俺は今ここに戻ってきた。勝手に殺されては困る。
「いえ。私は最近ここに異動してきたばかりですので申し訳ありませんが把握していません。それよりどうしてそこまでゲイルさんが気になるのですか?
あなたが何者かは私には分かりませんが、死者を名乗るのは良くないと思いますよ? こちらもお返し願います」
完全に思考が停止し現実を直視できない俺から、受付嬢は名簿を優しく取り戻した。
その表情からは呆れや戸惑いに加えて不快な感情も窺える。
「……すみません」
俺は訳もわからず謝罪の言葉を口にし、小さく頭を下げた。
「それでご用件はなんでしょうか?」
受付嬢はそんな俺を見て少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真顔になり抑揚のない口調で聞いてきた。
「……冒険者登録をお願いします」
俺は弱々しい口調で簡潔に言った。
「はい。では、お名前とご年齢をお願いします」
「ゲイルです。年齢は二十歳そこそこ……だと思います……」
俺は受付嬢の目を見つめて迷わず答えた。
誰がなんと言おうと俺はゲイルだ。
誰も信じないとは思うが俺は生きている。そしてこの場に立っている。
自分の名前を名乗って何が悪い。
「……わかりました。あなたがそういうならそうなのでしょう。少々お待ちください……っと……こちらがギルドカードになります。紛失した場合や破損した場合は無料で交換可能ですので、気軽に受付へお持ち込みください。続いて冒険者についての説明はどうなさいますか?」
「簡潔にお願いできますか?」
俺は受付嬢から高級感のある小さなカードを受け取り懐に入れた。
「かしこまりました。まず冒険者はランクと呼ばれるもので実力が分けられております。初級冒険者はE、中級冒険者はD、C、そして上級冒険者がB、Aというように細かく言うと五段階。大まかな区切りで三段階ございます。つまりゲイル様は現在Eランクということになります。ここまでは大丈夫でしょうか?」
基本的に冒険者はE~Aランクまであり、その遥か上にはSランクもあるが、それは数えられるほどしか存在していないため受付嬢は省いたのだろう。
「ええ。大丈夫です」
ここまでは全く問題ない。
「では、次はランクを上げる方法について説明させていただきます。ランクはそちらの掲示板でクエストを受注し、その難易度によって上げることができます。それから——」
「——自分のランクに見合わない格上のクエストを受注するのは大丈夫ですか?」
全ての説明を待っている時間がもったいないので、俺は話を遮る形で質問をぶつけた。
「え、ええ。ですが、命の保証はできませんので、そのような場合はご自身の責任でお願いする形になっております。命を大切に冒険をしてください……って……まさか……?」
俺は顔に疑問符を浮かべる受付嬢が説明を終えると同時に掲示板に向かった。
そこでBランクのクエストとAランクのクエストを一つずつ選定し、無言で受付嬢に手渡した。
「これ、お願いします」
「あ、あの! 私の話聞いてましたか!? 命は一つしかないんですよ! この二つはEランクのあなたは愚か、上級冒険者の方々でも苦戦するものですよ! 無謀にも程があります! 死んだら元も子もないんですよ!?」
「こちらの責任であれば可能なんですよね? それに俺にはそんなことは関係ないのでね。クエストの受注お願いできますか?」
ちまちまEランクやらDランクのクエストなんて受けてられるか。
こちとら元々Aランク。しかも四年の修行を得て更に実力をつけた自信があるのだ。
決して油断しているわけではなく、実力にあったクエストに臨むだけだ。
それに俺はもう世間では死んでいる存在。
今更他人にどうこう言われても聞く義理はない。
また裏切られても困るしな。
「……わ……わかりました……御武運を祈っております……」
受付嬢はしばしの沈黙の後、申し訳なさそうにクエストを受注した。
「ええ……では」
俺は複雑な表情をしている受付嬢に背を向けてギルドを後にした。
おそらく俺は頭のおかしい無謀な男に見えていることだろう。
だが、あながち間違いではない。何度も危険なことをしてきたし、何度もそれを乗り越えてきた。
「……いくか……」
俺はその言葉を理解できずにいた。
懸命に頭をフル回転させるが言葉が見つからない。
「その名簿の後半部分は亡くなられた上級冒険者の皆様の名前が記してあるページです。隣には詳細が書いてあります。わかりましたか? ゲイルさんと言う方は既に亡くなっているんです」
この受付嬢は何を言っているんだ?
既に死んでいる? 誰が? どこで? どうして? なぜ?
俺は「ゲイル」と記されたところをじっと見つめた。
死因は戦死、死亡したのは約四年前、当時Aランクパーティーだった【月光】の元メンバー……俺だと思われる情報が書き連ねられていた。
そこには感情などは一切ない。
死んでしまったものへの弔いのように感じた。
「あ、あなたはゲイル……という方をご存知ですか!?」
俺は我慢できずに受付嬢に詰め寄った。
どうして俺が死んだ扱いになっているんだ?
四年間姿を消していただけじゃないか。現に俺は今ここに戻ってきた。勝手に殺されては困る。
「いえ。私は最近ここに異動してきたばかりですので申し訳ありませんが把握していません。それよりどうしてそこまでゲイルさんが気になるのですか?
あなたが何者かは私には分かりませんが、死者を名乗るのは良くないと思いますよ? こちらもお返し願います」
完全に思考が停止し現実を直視できない俺から、受付嬢は名簿を優しく取り戻した。
その表情からは呆れや戸惑いに加えて不快な感情も窺える。
「……すみません」
俺は訳もわからず謝罪の言葉を口にし、小さく頭を下げた。
「それでご用件はなんでしょうか?」
受付嬢はそんな俺を見て少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに真顔になり抑揚のない口調で聞いてきた。
「……冒険者登録をお願いします」
俺は弱々しい口調で簡潔に言った。
「はい。では、お名前とご年齢をお願いします」
「ゲイルです。年齢は二十歳そこそこ……だと思います……」
俺は受付嬢の目を見つめて迷わず答えた。
誰がなんと言おうと俺はゲイルだ。
誰も信じないとは思うが俺は生きている。そしてこの場に立っている。
自分の名前を名乗って何が悪い。
「……わかりました。あなたがそういうならそうなのでしょう。少々お待ちください……っと……こちらがギルドカードになります。紛失した場合や破損した場合は無料で交換可能ですので、気軽に受付へお持ち込みください。続いて冒険者についての説明はどうなさいますか?」
「簡潔にお願いできますか?」
俺は受付嬢から高級感のある小さなカードを受け取り懐に入れた。
「かしこまりました。まず冒険者はランクと呼ばれるもので実力が分けられております。初級冒険者はE、中級冒険者はD、C、そして上級冒険者がB、Aというように細かく言うと五段階。大まかな区切りで三段階ございます。つまりゲイル様は現在Eランクということになります。ここまでは大丈夫でしょうか?」
基本的に冒険者はE~Aランクまであり、その遥か上にはSランクもあるが、それは数えられるほどしか存在していないため受付嬢は省いたのだろう。
「ええ。大丈夫です」
ここまでは全く問題ない。
「では、次はランクを上げる方法について説明させていただきます。ランクはそちらの掲示板でクエストを受注し、その難易度によって上げることができます。それから——」
「——自分のランクに見合わない格上のクエストを受注するのは大丈夫ですか?」
全ての説明を待っている時間がもったいないので、俺は話を遮る形で質問をぶつけた。
「え、ええ。ですが、命の保証はできませんので、そのような場合はご自身の責任でお願いする形になっております。命を大切に冒険をしてください……って……まさか……?」
俺は顔に疑問符を浮かべる受付嬢が説明を終えると同時に掲示板に向かった。
そこでBランクのクエストとAランクのクエストを一つずつ選定し、無言で受付嬢に手渡した。
「これ、お願いします」
「あ、あの! 私の話聞いてましたか!? 命は一つしかないんですよ! この二つはEランクのあなたは愚か、上級冒険者の方々でも苦戦するものですよ! 無謀にも程があります! 死んだら元も子もないんですよ!?」
「こちらの責任であれば可能なんですよね? それに俺にはそんなことは関係ないのでね。クエストの受注お願いできますか?」
ちまちまEランクやらDランクのクエストなんて受けてられるか。
こちとら元々Aランク。しかも四年の修行を得て更に実力をつけた自信があるのだ。
決して油断しているわけではなく、実力にあったクエストに臨むだけだ。
それに俺はもう世間では死んでいる存在。
今更他人にどうこう言われても聞く義理はない。
また裏切られても困るしな。
「……わ……わかりました……御武運を祈っております……」
受付嬢はしばしの沈黙の後、申し訳なさそうにクエストを受注した。
「ええ……では」
俺は複雑な表情をしている受付嬢に背を向けてギルドを後にした。
おそらく俺は頭のおかしい無謀な男に見えていることだろう。
だが、あながち間違いではない。何度も危険なことをしてきたし、何度もそれを乗り越えてきた。
「……いくか……」
20
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~
女譜香あいす
ファンタジー
数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。
聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。
だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。
そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。
これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる