追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

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初クエスト

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「——っはぁ……」

 俺は大きなため息を吐きながら刀を鞘に収めた。

 というのも熱い戦闘を期待してAランクとBランクという高ランク帯のクエストを同時に受注したのだが、なんともあっけなく終わってしまったせいだ。

「軽い攻撃一回で死ぬなんて聞いてないぞ……。かなり手加減したのになぁ」

 さらにモンスターはともに一撃で討伐されてしまう始末だ。
 期待外れにも程がある。
 最も俺が強くなりすぎたのがいけないのだが。

 何はともあれクエストはクリアしたのでギルドへ帰還することにする。
 幸いまだ夕方なので全力で向かえば暗くなる前に到着できるだろう。

「戦い足りねぇ……あれは……? 誰か襲われているのか?」

 まだまだ戦い足りないと思いながらも帰ろうとした矢先。
 だだっ広い草原の果ての方に目を凝らしてみると、そこには複数人のチンピラのような男たちと一人の少女がいた。その周りには倒れ伏す冒険者らしき者の姿も確認できる。
 少女は小綺麗なドレスを着ているし、どこかの貴族かなんかだろうか?

「よくわからんけど、取り敢えず助けるか。どっかの貴族だったら良いことありそうだしな」

 俺はおよそ二百メートルほどの距離を一瞬で詰めるために、グッと腰を低くして勢いよく地面を蹴った。
 今の俺はさながら極東にいるというニンジャのようだ。
 腰に下げた刀も様になる。そんな動きである。

「……」

 俺は走りながら考える。
 どうしてこんなにもだだっ広い草原の中からピンポイントで馬車を襲おうと思ったのだろうか。
 あまりにも不自然だ。
 ここで襲うのはあまりにもリスクが高すぎる。
 辺りにはCランク程度のモンスターが多いが、中にはBランク程度の彷徨いているし、俺のようにクエストに出向いた冒険者に見つかっても全くおかしくはない。
 それに襲っているチンピラが仮にただの盗賊なのだとしたら、ここ以上に人気のない地帯にいるはずだ。

 どうして俺以外の冒険者やモンスターに一切バレることなく、あそこまで残忍な行いができるのか。
 少なくとも

「わからんな」

 まあいい。とりあえず背後に回っておくか。

「——へへへ。お前の護衛はもう戦闘不能だぜ? 大人しくこっちに来な。俺たちが存分に可愛がってやるよ」

 そこでは俺以上に不潔な三人組のチンピラが貴族のような見た目をした少女を襲っているところだった。

 俺はチンピラたちの背後でちょうど良いタイミングを待つことにした。
 人が悪いとは思うが、助けるのにもタイミングがある。
 悪役がイキリ散らし、ヒロイン役が弱々しい姿を見せたその時だ。
 ここが一番格好良く、ヒーローのように振る舞えるのだ。

「だ、誰か! 助けて……」

 少女は声を枯らし今にも泣いてしまいそうな声で助けを求めるが、護衛と思われる冒険者は既に息絶えてしまっているようだ。

 そろそろかな。

「ぐへへへへ! だから助けは来ねぇっての! こんな何もねぇ草原に人がいるわけ——」
「——いるぞ」
「ひぃっ!? な、何者——ウッッ! グッゥゥ……ッ……」

 俺は消していた気配を一気に解放すると同時にリーダー格のチンピラの耳元で存在を教えてあげた。
 リーダー格のチンピラは心底驚いたというような声をあげたが、気がついた時にはもう遅い。
 すぐに背後から首を絞めつけて力を込める。
 そして一瞬にして意識を奪う。

「おかしら! 貴様! いつからそこにいた!」

 そんなに焦らなくてもいい。
 そもそも俺はモンスター以外を殺さないと決めているんだ。

「ずっとだよ」

 俺は残りのチンピラに余裕を持った笑みを見せる。
 自分よりも明らかに格下な相手にはこれが有効だ。
 これは経験談になるが、俺はダンジョンで何度も見下されてきた。
 コカトリスに始まり、そこから下に行けば行くほどモンスターの力は増していき、何度も何度も辛い思いをしてきた。
 そこで俺が一番ゾッとしたのは余裕のある笑みだった。
 こちらは焦り、嘆き、真剣になっているというのに、強者はそんなものを嘲るような態度で平然と過ごしている。
 だから俺も実行してみることにしたのだ。
 もちろん相手が悪意のある行為で人を傷つけていた場合に限るがな。

「っ!? な、な、なんなんだよ! お前は! どうしてここがわかった!」

 二人のチンピラは眼光を見開いて小さく後退した。
 その表情から若干ではあるが恐怖の情を感じることから、俺の作戦は見事成功したと言える。

「たまたま通りかかったら何やら揉めている様子だったんだよ。んで、弱い方の味方につこうと思ったってわけ」

 俺はリーダーを失った二人のチンピラから目線を外して少女の姿を見やった。
 少女は両手を貝殻のように重ね合わせて涙を流しながらこちらを見ていた。

 はぁ……そんな目をされたら居心地悪いなぁ……。
 口が裂けても打算ありで助けたなんて言えないな。
 助けた後どうしようかなぁ。

「——隙ありッ!」

 俺が事後処理について考えながら小さく息を吐くと、それをチャンスと見たのかチンピラの一人が剣で攻撃をしてきた。

 けど、そんなバレバレの攻撃が見えてないわけないだろ。

「隙なんかねぇよ。剣筋がバレバレだ」

 俺は剣を紙一重のところで回避する。

「おらァッ! 後ろだァッ!」

 次はもう一人のチンピラが俺の後ろから鉄の斧を振り下ろしてきた。
 普通ならこれで勝負ありになるんだが、いかんせん実力差がありすぎてそうもいかないのだ。

「当たり前の事だが、攻撃する時は余程の余裕でもない限り何も言わない方が賢明だ。後ろから攻撃することがバレてしまうからな。ほら……こんな風に避けられるだろ?」

 俺はチンピラの不意打ちに対して何の苦しい表情も浮かべずに回避し、背中を蹴り付けて意識を刈りとった。
 これじゃあ戦闘ではなく遊びをしているみたいだな。

 長引いても面倒だしここらで終わらせるとしよう。

「た、助けてくれぇっ! 俺は悪くない——」

「——もういい。お前らは少女が助けを求めた時もそれに応じなかっただろう?」

「ア……ァァ……」

 残された一人のチンピラが責任逃れをしながら命乞いを始めたが、俺は容赦なくその言葉を遮り、刀の柄の部分でチンピラの鳩尾を打った。
 チンピラは体をくの字に折り曲げ、苦悶の声を上げる間も無くその場に力無く倒れ込む。

 チンピラが倒れ込むと同時に懐からコインのようなものが落ちてきた。

「……なんだこれ」

 本当はじっくり確かめたかったが俺は少女にバレないように自分の懐に収め、すぐに少女の方へ向き直り、柔らかい表情を作り上げる。
 そして一言。

「……お嬢さん。お怪我は?」
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