追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

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ニーフェの熱意

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「……ぁ……ここは……?」

 俺は息苦しさと頭の痛みによって目が覚めた。
 仰向けになっている俺の背中には、まるで水の上にでも乗っているかのような柔らかな感触があり、全身が不思議な感覚に包まれていた。
 考えながらも視線を動かしてみると、俺のことを湖の中に引き摺り込んだ張本人であるニーフェさんがこちらに歩いてくるのが見えた。

「——ごめんなさい。森の中に悪い気配を感じたので、こうするしか方法がありませんでした」

 ニーフェさんは俺のすぐそばで立ち止まると、ふわふわとした柔らかな地面で横になる俺に頭を下げた。

「……それで……ここは一体どこですか?」

 俺は呼吸を整えながら上体を起こし、ニーフェさんに問いかけた。
 同時に頭の中で錯乱している情報を整理していく。

 普通に考えれば、ここは湖の底だろう。だが、不思議なことに酸素もあるし、地上と同じくらい明るい。
 かなり不可思議な空間だな……。

「ここは私の家です。私はあなたに一つお願いがあってここに連れてきました。どうか、失礼を承知の上で私の話を聞いてくださいませんか?」

 ニーフェさんは立ち上がろうとする俺に手を差し伸べてきたが、俺は湖の中に引き摺り込まれる感覚が頭をよぎったので、申し訳ないが自力で立ち上がった。

「それはまたいきなりですね……。話を聞くのは構いませんが、まずは事情の説明をお願いしても?」

 俺は若干の警戒心を胸に秘めながら、ニーフェさんの目を見た。

 ニーフェさんには特に悪意や敵意を感じないのだが、流石にこんなところにいきなり連れてこられて易々と話を聞くほど、俺は人を信用してはいないのだ。

「……あなたが強いことも、あなたが私に敵対していないことも、私は知っています。だから私たちを助けてほしいのです」

「……」

 この言葉だけではまだ内容が掴めないので、俺は無言で話を聞くことにした。

「現在、私の命の恩人が危機に瀕しています。ですが、私の力では何もしてあげられません。だから……あなたに助けを求めたのです」

 ニーフェさんは扉から少し歩いた先にあるソファにしっとりと腰をかけながら言った。

「つまり、『あなたは強いから私たちを無償で助けて』ってことですか? 随分都合の良い話ですし、俺がニーフェさんとその恩人の方を助けられるほど強いとも限りませんよ?」

 今のところ俺にメリットが一つもないので、俺はいつもよりもやや強めな口調でニーフェさんに言った。

「いいえ。あなたの強さは先程の戦闘を見ていたので知っています。目で追えないほどのスピードに加えて、一瞬で騎士を捩じ伏せることのできる圧倒的な力。差し迫った今の状況を打開できるのは、あなた以外にいません」

 どうやらニーフェさんは俺が六人の騎士の意識を奪った現場を見ていたらしい。
 そっちに気を取られすぎて全く気が付かなかったな。

「それに、私の恩人を助けてくだされば、私はどんなお願いでも飲みます……おねがいします。どうか、どうか力を貸してくださいませんか」

 ニーフェさんは悩む素振りを見せた俺を説得するように、早口で捲し立てた
 その言葉からは強い意志や信念、そして焦りを感じるので、本来であれば特に断る理由はないだろう。
 どうしても悪い人には見えないしな。

 だが、今の俺は違う。
 やることが山積みなのだ。
 上からものを言うようで申し訳ないが、力を貸す以上はそれなりの条件を出させてもらう。

「……わかりました。では、俺が提示する条件を先にクリアしてもらえませんか?」
 
「はい。私にできることでしたら何なりとお申し付けください」

 ニーフェさんは座ったばかりのソファからスッと立ち上がると、覚悟を決めたような目で俺のことを見つめてきた。
 体に力が入っていることから、相当緊張していることがわかる。

「俺が持つ領地を水精族の力で潤してくれませんか? 実はかなり水に飢えて困っていまして……そちらが先に力を貸してくだされば、俺もすぐに期待に応えます。もちろん詳しい事情を聞いてからになりますがね。どうですか?」

 俺がゆっくりとニーフェさんに近寄りながら条件を述べていくと、ニーフェさんは徐々に険しい表情から困惑したような表情に変わっていった。

「え、あ……そんなことで良いのであれば喜んでお受けします!」

 ニーフェさんは清楚で物静かな雰囲気からは想像もつかないほどの惚けた顔を見せると、胸の前で小さく手を握った。
 どうやらうまくいったらしいな。

 まあ、水を自在に操ることができるという噂の水精族からすれば簡単なことだろうしな。

「ええ。では、交渉成立ですね」

 俺はおそらく最も苦労するであろ水問題が解決したことへの喜びを隠すことなく笑みをこぼした。
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