追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
43 / 91

ユルメルは不機嫌

しおりを挟む
「——つまり、ニーフェさんの恩人であるシェイクジョーさんは、どういうわけかフリードリーフと敵対していると?」

「ええ。彼は本当に優しい人なんです。私がここに住み着いていることをずっと内緒にしてくださいましたし……彼がそんな目にあうなんておかしいです」

 ニーフェさん曰く、フリードリーフと同じ騎士団長であるシェイクジョーという男は、義理堅く優しい男らしい。 
 
「ふむ……では、どうしてシェイクジョーさんは湖にあなたが住んでいることを内緒にしてくれたんですか? 何か約束をしたとか?」

 俺はニーフェさんが用意してくれた冷たい水で、渇いた口内を潤してから言った。
 普通に考えて、幻の種族と言われている水精族を発見した一国の騎士団長が、国王、ひいては国のトップに報告をしないわけがないのだ。

「ええ。実は彼らが住む国ウォーブルは、ここ数年間干魃かんばつの事態に直面しているらしいのですが、それが深く関係しています」

「ウォーブルが干魃? 聞いたことがありませんが……それは確かですか?」

 俺はウォーブルに対して良くも悪くも特に目立った印象はないが、かなり平和的な国だと認識している。
 もしかすると、俺がいない間に大きな変化があったのかもしれないな。

「はい。シェイクジョーさんが仰られていたので間違いありません」

 ニーフェさんは目に力を込めると自信ありげに頷いた。
 どうやらニーフェさんがシェイクジョーさんに寄せる信頼は相当なものらしい。

「……それと旱魃について何の関係が?」

「私がこの湖に住んでいることを秘密にする代わりに、水の玉という魔道具を定期的に差し上げることにしたんです」

 ニーフェさんは言葉を言い終えると同時に、人差し指の先にグンっと魔力を込めると、そこから直径五センチほどの透明な球体が現れた。

 魔法が得意ではなく、あまり魔力に敏感ではない俺でも、その球体に込められている魔力がどれほどのものなのか理解することができた。

「これが水の玉ですか?」

 俺はそれをニーフェさんから受け取り、ジッと凝視しながら言った。

 魔道具自体、非常に高価なものなのであまり触れたことはないが、水精族はこうも簡単に生み出してしまうのか。

「ええ。使用すると一定の範囲内に数時間の雨を降らせることができます。三回使うと壊れてしまいますが、一時的に干魃を救うには十分だと思います。シェイクジョーさんも助かっていると仰っていましたしね」

 ニーフェさんは人の良い幸せそうな笑みを浮かべた。

 もしかしたら他人ひとのために役に立つということが嬉しいのかもしれないな。
 何の信頼もない俺を頼ってまで恩人を助けたいのだろう。

「……わかりました。それなら早速動いた方が良さそうですね。湖と森の周りには既にフリードリーフの部下たちが張り込んでいますし、シェイクジョーさんはもう狙われているでしょうしね」

 騎士団長であるフリードリーフが動き出していたので、既にシェイクジョーさんはかなり追い込まれていると推測できる。
 手を貸すと決めて詳しい事情を聞いたからには、早いうちにウォーブルへ向かうべきだな。

「手を貸してくださるのですね!」

「ええ。早速俺の領地へ向かいましょう。ここはいつやつらに見つかってもおかしくないですからね」

 ニーフェさんはここにきて初めて感情をあらわにしていたが、いちいちそれに触れる時間も勿体無いので、俺は颯爽とソファから立ち上がった。
 
 ここが湖の底とはいえ、あれだけ警戒されていたら見つかる可能性だって無くはないので、早々にここから抜け出した方がいいだろうしな。








「——ってことで、ユルメル。俺は少し用事があるからニーフェさんと仲良くな?」

 名も無き領地には難なく戻ってこれた。
 湖の底から地上まではニーフェさんが水魔法でサポートしてくれたので苦しさもなく上がることができたし、湖の周りを見張っていた騎士たちもぐっすりと眠っていたので、俺はニーフェさんを担いで名も無き領地まで無休で走ってきたのだった。
 森の周りを見張っていた騎士の目を掻い潜るのは大変だったが、俺の本気のスピードは簡単に目で追えるものではないので何とかなった。

「う、うん? 意味わからないんだけど……水と食料と住民は?」

 ユルメルは長い耳をピンと張って頬を膨らましていた。

 これは普段無邪気で天真爛漫なユルメルが見せたことのない顔だな。

「水はニーフェさんがなんとかしてくれる。食料と住民はもう少しだけ待ってほしい。ていうか、なんか怒ってないか?」

 俺が話している最中も「ムムムム」と小さく唸りながら俺の顔を見上げていたので、よく分からないが機嫌が悪いことは確かだった。

「なんでもないよっ! それより、この人は変なことしないよね?」

 どう見ても怒っているようにしか見えない。
 その証拠に、ユルメルは鍛治に必要な金槌をドンっとテーブルに叩きつけていた。

「あ、ああ……大丈夫だ。悪い人ではないから安心してくれ。だから俺が帰ってくるまではここに住まわせても良いか?」

 俺はそんなユルメルの行動に戸惑いながらも返事をした。

「はぁぁぁ……どうせダメって言っても、聞かないんでしょ? 仕方ないからいいよ」

 ユルメルはこれまでに見たことのないような大きなため息をつくと、やれやれと言った感じで承諾してくれた。

 あまり信頼に足らない人物と一緒にはいたくないのかもしれないな。
 俺のわがままのせいで無理をさせたみたいだし、今度何かお礼でもしてやりたいな。

「悪いな。ニーフェさん、二、三日で済ませてきますから、その間はここでユルメルと一緒にいてください」

 俺はここまで静観していたニーフェさんに目をやると、ニーフェさんは兄弟喧嘩でも見ているような柔らかな表情を浮かべていた。

「あっ! わかりました……あの、今更ですが、あなたのお名前をお伺いしてもいいですか?」

 ニーフェさんはハッと我に帰ったような返事をすると、俺に名前を聞いてきた。

 そういえば名乗ってなかったな。
 ドタバタしすぎてすっかり忘れていた。

「俺はゲイルです……っと、時間もあまりなさそうなのでもう行きますね。では」

 俺はニーフェさんに名前だけ伝えてから、すぐに扉を開けて外へ出た。

「ふぅぅぅ……行くか!」

 そして大きく深呼吸をしてからカチカチに干上がった地面を思い切り蹴って走り出した。
 帰ってくる頃にはこのカチカチの地面も、適度に柔らかくなっていてほしいものだ。

 俺が目指す先はウォーブル。
 目標はシェイクジョーさんの安否の確認と窮地に瀕していた場合の手助けだ。
 あわよくば媚を売れれば尚良し……ってところか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...