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悪夢は俺を強くする
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「……ぁ……っ……」
俺はふわふわとした足取りで、ウォーブルを目指して歩みを進めていたが、そこに確かな違和感を感じていた。満身創痍の体を引きずるようにして、ゆっくりと足を前に踏み出していく。
明らかに体には酸素が足りていないというのに、呼吸をする気力すら起こらない。
全身のあちこちには細かな傷が見られ、傷口からはドクドクと血が溢れ出てきている。
塵も積もれば山となるとはこのことだ。一つ一つは大した傷ではないが、出血量だけを見れば相当なものだろう。
その証拠に、俺の視界は徐々にぼやけてきていた。
ウォーブルに到着するまで、このペースで歩けば二時間はかかるだろう。
辺りにはモンスターも彷徨いているので、悠長にはしていられないのだが、体が言うことを聞かないのだ。
「……ぐっ! クソが!」
「グォォォォォォッ……!」
俺は闇の中で気配を探りつつも目を凝らして、迫り来るモンスターを目掛けて刀を振るった。
モンスターは血飛沫を上げて絶命したが、尚も周囲にはモンスターの気配が存在していた。
ランクにしてB相当だろうか。今の俺だとそれほどの強さのモンスターを複数相手にするのは中々難しい。
何より、この辺りの地帯でBランク相当のモンスターが出るなんて、予想外の展開だ。
どれだけ強くても、精々Cランクの下の方かと勝手に思っていたが、俺の情報の認識不足か?
「……っ……!」
俺は口の中に広がる血の味をグッと噛み締めながら、無言で刀を振るい続けた。
モンスターは一向にいなくならない。それどころかその数は倒すごとに増している。
「ガルァッ!!」
「ッ!」
数十分間は敵を殲滅したが、次第に俺は追い詰められていった。
数を増す無数のモンスターの群れから逃げようと試みるも、全く足は動かない。
まるで底なし沼にでもハマっている気分だった。
下半身の自由が奪われ、動かせるのは視線と刀を振るう腕のみ。
やがて、絶望を体現したような黒く歪な形をした壁に追い詰められた俺は、前方から迫り来る無数のモンスターの群れに抗う気力を失った。
己の実力の無さに絶望してしまったのだ。
俺は数年間、高難度のダンジョンに潜っていたのにもかかわらずこのザマだ。
死を覚悟したその時だった。
「な……!?」
俺は目の前の景色を見て、思わず驚きの声が出た。
なんと、目の前にいる無数のモンスターの群れ背後に、死んだ村のみんながいたのだ。
昔、モンスターに襲われて死んだ村のみんなは、モンスターの隙間から悲しそうな顔をして俺のことを見ていた。
どうして……どうして死んだはずのみんなが?
父さん? 母さん? どうしてここにいるんだ?
そんなところにいたら危ない……死ぬ……また……俺の目の前で……!
「……!」
俺は無数のモンスターの群れを見て、ハッと我に返った。というより、記憶が「思い出せ」と叫んでいた。
目の前にいるモンスターの群れの中には、見覚えのある一体のコカトリスと、少し前に俺が確実に滅ぼしたはずの悪魔ボルケイノス、さらには先ほど倒したばかりの人の姿を失ったシェイクジョーがいた。
俺の記憶に間違いがないなら、今、俺の目の前に立ち塞がっているのは、俺がこれまでに倒してきた多くの難敵たちだった。
彼らは視線を尖らせながら、絶命寸前の俺のことを嘲るように見下す。
「な、なにを……する!」
彼らは俺のことを鼻で笑うと、背後にいた俺の両親を含む村のみんなのことを一斉に攻撃し始めた。
剣や魔法に加えて物理攻撃まで、ありとあらゆる多彩な攻撃は、俺の記憶に鮮明に焼きついているものばかりだった。
多種多様な攻撃は村のみんなの命を簡単に奪っていく。
首を飛ばし、四肢を切り落とし、胴体をひと突きし、最後には無に還すように魔法で塵に変える。
無惨な光景だった。残酷な景色だった。
俺は何もできなかった。そして無力な自分を恨んだ。
「やめてくれ……こんなところで死にたくない……! やめろ! やめろ! 止まってくれッ!」
俺は咄嗟に涙混じりの声を出していた。
しかし、その瞬間。突如として、終わりを迎えたかのように世界は闇に包まれて意識を手放した。
あぁ……最悪の世界だ。何も守れなかった。
俺は……俺はもっと強くならなければいけないのか……?
◇
「——イル! 大丈……きて!」
「……夢……?」
俺は何者かの声によって、半ば強引に意識を覚醒させられた。
そして、重たい瞼を懸命にあけると、そこには涙目で俺の体を揺さぶるユルメルの姿があった。
「ゲイル! やっと起きてくれたっ! すっごくうなされてたけど大丈夫!?」
「……ああ……平気だ。ここはどこだ……ぐっ……」
俺はユルメルの手を借りて上体起こし、見慣れない部屋の中をゆっくりと見回した。
どうやら俺はベッドの上にいるらしい。体の節々に痛みや違和感があり、あまり状態は良くないことがわかる。
「ここはウォーブルの王宮だよ! あっ、今は怪我が酷いからジッとしてて!」
「だが——」
「——いいからいいから! 僕はみんなを呼んでくるから、動いちゃダメだからね!」
俺が無理やりベッドから出ようとすると、ユルメルは優しい手つきでそれを止めて、俺のことをベッドに戻すと、後ろ向きに走りながら器用に扉を開けると、俺の返事を待たずにこの場を後にした。
「……酷い夢だった」
俺は上半身の力を抜いてベッドの上に倒れ込み、ズキズキと痛む頭を押さえながら先ほどの夢について考えた。
夢の中では、俺がこれまでに殺してきたモンスターの大群が、もう死んでしまった村のみんなを苦しめていた。
村のみんなが悲鳴をあげても、助けを求めても、俺は何もしてやれなかった。
夢だからと言ってしまえばそれまでだが、俺はシェイクジョーとの戦いで実力が足りないことを実感した。
数年間のダンジョンでの修行を終えてから、攻撃が通用しなかったのは初めてだったからだ。
「くそ……」
俺は生きていることを確かめるように、両の手のひらに力を込めて再び目を閉じて、柔らかなベッドに身を預けて、俺はあっさりと意識を手放したのだった。
俺はふわふわとした足取りで、ウォーブルを目指して歩みを進めていたが、そこに確かな違和感を感じていた。満身創痍の体を引きずるようにして、ゆっくりと足を前に踏み出していく。
明らかに体には酸素が足りていないというのに、呼吸をする気力すら起こらない。
全身のあちこちには細かな傷が見られ、傷口からはドクドクと血が溢れ出てきている。
塵も積もれば山となるとはこのことだ。一つ一つは大した傷ではないが、出血量だけを見れば相当なものだろう。
その証拠に、俺の視界は徐々にぼやけてきていた。
ウォーブルに到着するまで、このペースで歩けば二時間はかかるだろう。
辺りにはモンスターも彷徨いているので、悠長にはしていられないのだが、体が言うことを聞かないのだ。
「……ぐっ! クソが!」
「グォォォォォォッ……!」
俺は闇の中で気配を探りつつも目を凝らして、迫り来るモンスターを目掛けて刀を振るった。
モンスターは血飛沫を上げて絶命したが、尚も周囲にはモンスターの気配が存在していた。
ランクにしてB相当だろうか。今の俺だとそれほどの強さのモンスターを複数相手にするのは中々難しい。
何より、この辺りの地帯でBランク相当のモンスターが出るなんて、予想外の展開だ。
どれだけ強くても、精々Cランクの下の方かと勝手に思っていたが、俺の情報の認識不足か?
「……っ……!」
俺は口の中に広がる血の味をグッと噛み締めながら、無言で刀を振るい続けた。
モンスターは一向にいなくならない。それどころかその数は倒すごとに増している。
「ガルァッ!!」
「ッ!」
数十分間は敵を殲滅したが、次第に俺は追い詰められていった。
数を増す無数のモンスターの群れから逃げようと試みるも、全く足は動かない。
まるで底なし沼にでもハマっている気分だった。
下半身の自由が奪われ、動かせるのは視線と刀を振るう腕のみ。
やがて、絶望を体現したような黒く歪な形をした壁に追い詰められた俺は、前方から迫り来る無数のモンスターの群れに抗う気力を失った。
己の実力の無さに絶望してしまったのだ。
俺は数年間、高難度のダンジョンに潜っていたのにもかかわらずこのザマだ。
死を覚悟したその時だった。
「な……!?」
俺は目の前の景色を見て、思わず驚きの声が出た。
なんと、目の前にいる無数のモンスターの群れ背後に、死んだ村のみんながいたのだ。
昔、モンスターに襲われて死んだ村のみんなは、モンスターの隙間から悲しそうな顔をして俺のことを見ていた。
どうして……どうして死んだはずのみんなが?
父さん? 母さん? どうしてここにいるんだ?
そんなところにいたら危ない……死ぬ……また……俺の目の前で……!
「……!」
俺は無数のモンスターの群れを見て、ハッと我に返った。というより、記憶が「思い出せ」と叫んでいた。
目の前にいるモンスターの群れの中には、見覚えのある一体のコカトリスと、少し前に俺が確実に滅ぼしたはずの悪魔ボルケイノス、さらには先ほど倒したばかりの人の姿を失ったシェイクジョーがいた。
俺の記憶に間違いがないなら、今、俺の目の前に立ち塞がっているのは、俺がこれまでに倒してきた多くの難敵たちだった。
彼らは視線を尖らせながら、絶命寸前の俺のことを嘲るように見下す。
「な、なにを……する!」
彼らは俺のことを鼻で笑うと、背後にいた俺の両親を含む村のみんなのことを一斉に攻撃し始めた。
剣や魔法に加えて物理攻撃まで、ありとあらゆる多彩な攻撃は、俺の記憶に鮮明に焼きついているものばかりだった。
多種多様な攻撃は村のみんなの命を簡単に奪っていく。
首を飛ばし、四肢を切り落とし、胴体をひと突きし、最後には無に還すように魔法で塵に変える。
無惨な光景だった。残酷な景色だった。
俺は何もできなかった。そして無力な自分を恨んだ。
「やめてくれ……こんなところで死にたくない……! やめろ! やめろ! 止まってくれッ!」
俺は咄嗟に涙混じりの声を出していた。
しかし、その瞬間。突如として、終わりを迎えたかのように世界は闇に包まれて意識を手放した。
あぁ……最悪の世界だ。何も守れなかった。
俺は……俺はもっと強くならなければいけないのか……?
◇
「——イル! 大丈……きて!」
「……夢……?」
俺は何者かの声によって、半ば強引に意識を覚醒させられた。
そして、重たい瞼を懸命にあけると、そこには涙目で俺の体を揺さぶるユルメルの姿があった。
「ゲイル! やっと起きてくれたっ! すっごくうなされてたけど大丈夫!?」
「……ああ……平気だ。ここはどこだ……ぐっ……」
俺はユルメルの手を借りて上体起こし、見慣れない部屋の中をゆっくりと見回した。
どうやら俺はベッドの上にいるらしい。体の節々に痛みや違和感があり、あまり状態は良くないことがわかる。
「ここはウォーブルの王宮だよ! あっ、今は怪我が酷いからジッとしてて!」
「だが——」
「——いいからいいから! 僕はみんなを呼んでくるから、動いちゃダメだからね!」
俺が無理やりベッドから出ようとすると、ユルメルは優しい手つきでそれを止めて、俺のことをベッドに戻すと、後ろ向きに走りながら器用に扉を開けると、俺の返事を待たずにこの場を後にした。
「……酷い夢だった」
俺は上半身の力を抜いてベッドの上に倒れ込み、ズキズキと痛む頭を押さえながら先ほどの夢について考えた。
夢の中では、俺がこれまでに殺してきたモンスターの大群が、もう死んでしまった村のみんなを苦しめていた。
村のみんなが悲鳴をあげても、助けを求めても、俺は何もしてやれなかった。
夢だからと言ってしまえばそれまでだが、俺はシェイクジョーとの戦いで実力が足りないことを実感した。
数年間のダンジョンでの修行を終えてから、攻撃が通用しなかったのは初めてだったからだ。
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