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トーム攻略編

第39話 襲撃

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同じ頃、北側のクーポラにいたゼーレとフィアは今起きている現状を素早く理解することが出来ていなかった。

帝国兵の襲撃が始まる少し前、ゼーレ達を含む北側のクーポラで働いていた獣人は翌日収穫する予定の作物の様子の確認をしていた。

作物に問題がないことを確認した二人が中央クーポラへと帰ろうとした時、光線による攻撃を受けた。

ゼーレ達の目の前でクーポラを貫く光線。それは密林の村を焼き払った、ゼーレ達にとって忌まわしき魔法である集団魔法天罰だった。

密林の時とは大きさの規模が違う天罰はクーポラに大きな風穴を開ける。

クーポラに大きな風穴が出来ると、そこから帝国兵がなだれ込んできた。

よく見ると犬斗の魔獣が必死に帝国兵を押し戻そうとしている様子が見える。

現状を理解出来ず困惑していたゼーレとフィアだったが、帝国兵が攻めてきていることに気付くとすぐに他の獣人達に避難するように指示を出し始める。

「皆さん! すぐにシェルターへの避難を開始してください!」

「みんな! 早くシェルターに逃げて!」

ゼーレ達の指示により慌てながらもシェルターに走り込む獣人達。

シェルターとは大地が有事の際に避難場所として北側と東側のクーポラ間と西側と南側のクーポラ間の地下に作成した物である。

魔力値の限界からクーポラ全域にセキュリティをかけることが出来なかった大地は避難場所であるシェルターにのみセキュリティをかけていた。

犬斗の魔獣達が必死に帝国兵を抑え、時間稼ぎをしてくれる間にゼーレ達は避難を進める。

しかし帝国兵の数は多く、一部の兵士が魔獣の包囲網を抜けてゼーレ達の方へ向かってきていた。

「皆さん早く!」

ゼーレが焦った様子で声を張り上げ、急いで避難をするように獣人達に伝える。

東側のクーポラを確認すると鍛冶用クーポラや研究用クーポラにも同じように襲撃の跡が見られた。

特に研究用クーポラの被害は甚大な様子だ。

なんとかシェルターへと辿り着くと、東側のクーポラからも職人や研究者の獣人がシェルターに避難している様子が見えた。

「ゼーレ嬢ちゃんにフィア嬢ちゃんじゃねぇか!」

「ドグマさん!やはり東側も?」

「あぁそうだな。なんかぶっとい光にクーポラが貫かれたと思ったら、帝国兵がぞろぞろと来やがってな。

犬斗の旦那のペットがいなかったら今頃やばかったぜ。

全く大地の旦那といい、魔獣を操る犬斗の旦那といい、あの二人は本当に人間なのか今更ながら疑っちまうぜ! はっはっは!」

ゼーレ達と同じように獣人の避難の指揮をとっていたドグマは危機的な状況にかかわらず、何故か犬斗と大地を絶賛しながら高笑いしていた。

身体が強張るほどの緊張をしていたゼーレ達もドグマの豪胆な様子を見て、身体から強張りが消える。

そんな中ガランからゼーレに念話が届いた。

『ゼーレ無事か?』

『はい。今のところ犬斗さんの魔獣のおかげで北側のみなさんには被害はないです。今ドグマさん達東側のみなさんと合流してシェルターに避難しているところです。』

『そうか。少し安心した。さっき大地からの念話で聞いた話なんだが、今回の帝国の襲撃を率いているのはサイラスだそうだ。』

『えっ!? 領主さんがですか?』

『詳しい話はわからんが、帝国のスパイだったらしい。犬斗にも連絡したが反応がない。

もしかしたらサイラスと既に戦闘になっているのかもしれん。大地も今こちらに向かっているらしいが、すぐに来れそうにない。

つまりこの危機的状況は俺達だけで何とかするしかないということだ。』

『ガラン達はどうするの?』

『今は居住用クーポラにいた奴らの避難をしている。カラクリはわからんが北東側の方から帝国兵がなだれ込んできている様だ。

警備用の魔獣も多くは南側に配置してあることを見抜いている辺りサイラスがスパイだったのも頷けるな。

俺達は避難を完了させ次第、防衛用クーポラで魔獣と合流して帝国兵の撃退に入る。お前達は俺達が行くまでシェルター内に避難していてくれ。』

『わかったわ。』

ゼーレはガランからの念話を切ると、フィアとドグマに事情を説明する。

二人ともサイラスが帝国のスパイだったことに驚いた表情をしていたが、大地からの情報という事もあり、疑うことなく理解を示してくれた。

その後魔獣が必死に抗戦してくれたこともあり、帝国兵士がこちらに来るまでにシェルターへの獣人達の避難が完了させる。

そしてシェルターの扉を閉めようとした時、ドグマが異変に気付いた。

「おいリリスは何処だ!」

「親方リリスさんがいません!研究用クーポラは特に被害が酷かったので、もしかしたら・・・」

「馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ!俺が様子を見て来る!」

ドグマがリリスを探しにいく為にシェルターから出ようとした時、魔獣を退けた帝国兵がシェルターの方へ向かってきていた。

ドグマは苦々しい顔を浮かべるとゼーレとフィアに指示を出す。

「俺は今からリリスを探しに行ってくるわ。リリスを見つけ次第、帝国兵に見つかる前にあいつを担いで林の中に逃げ込むことにするから、俺が出たらシェルターを閉めろ!」

「でもそれじゃドグマさん一人であの帝国兵の中を切り抜けることになるじゃないですか!」

「おいおい。こう見えても少しは戦えるんだぜ?一兵卒ぐらいなら雑魚も同然ってことよ!」

ドグマはまた高笑いを上げるが、ドグマを親方と慕う職人の獣人達の顔には不安の様相が浮かんでいた。

そんな中ゼーレとフィアが手を上げる。

「なら私も行きます。」

「わたしもぉ!」

「嬢ちゃん達・・・気持ちは嬉しいが止めときな。嬢ちゃんを死なせたくねぇ。」

「私達、意外と強いんですよ!」

「そうだよ! フィア達強いんだよ!」

ゼーレ達を諭すドグマであったが、ゼーレ達が考えを変えることはなかった。

密林ではただ守られるだけだった二人。自分達を守る為に家族同然の人達がたくさん亡くなった。もうあんな思いはしたくない。

今度こそ自分達の守りたい者は自分達で守るとゼーレ達は覚悟を決めていた。

「あぁ! わかったよ、おっさんの負けだ。けど無理だけはするなよ。少しの間我慢すればガラン達が来てくれるはずだ。」

「そうですね。とにかく優先すべきはリリスの保護のみ。必要のない戦闘は出来るだけ避けるということで。」

「了解であります! ドグマ隊長!」

「お前ら!俺達が出たらすぐにシェルターの扉を閉めろ。大地の旦那が作ったもんだ、その中に居れば間違いなく安全だ!次期にガラン達が来てくれる! それまでどんな事があってもシェルターは開けるな!」

「わかりました親方!!」

ドグマの部下は大きな声を張り上げ返事を行う。

その様子に満足気な表情を見せたドグマはゼーレ達とシェルターから出ていく。

ゼーレ達がシェルターから出ると同時に後ろの扉が閉まっていく。

三人はリリス救出のために帝国兵がはびこる東側のクーポラへと向かった。


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