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トーム攻略編
第76話 本気となったメリア
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「あなた魔族だったのですか・・・?」
周囲に赤いオーラの様なものを纏ったメリアの姿を見たゼルターは、額から一筋の汗を垂らしていた。
「メリアちゃん・・・?」
ルルは床に項垂れながら、見上げるように魔族姿のメリアを見ている。
「ルル。黙っててごめんね。私、実は魔族なのよ。」
メリアは変換魔法により自身の魔力をルルの生命力に変換してルルに分け与えながら、申し訳なそうにルルの顔を覗く。
あぁ・・・せっかく仲良くなれたのに。これでまた一人になってしまうわね。
待つように言われていたのに、大地には悪い事をしたわ。
魔族の姿を見て驚いた顔を見せるルルを見て、またあの時のように全てを失ってしまうのだとメリアが思っていると、ルルが小さい声で呟いた。
「綺麗・・・」
「・・・えっ?」
メリアはルルの言葉に思わず戸惑った様子を見せる。しかしそれはメリアのこれまでの経験を考えれば無理はない話だ。
これまでメリアにとって自身の魔族の姿というのは、人間達から忌むべき存在として扱われていた。
その姿を見た者達はメリアに対して悲鳴や化け物等の言葉を浴びせてくることはあっても、その姿を綺麗だと形容する者はいなかったのだ。
ルルからも軽蔑や侮蔑を込めた瞳を向けられるのだと思っていたメリアは戸惑いながら固まってしまっていた。
「メリアちゃん? どうしたの?」
ルルがこちらを見て固まっているメリアを心配した様子で声をかける。
「・・・怖くないの?」
「え? 何で怖がるの?」
「だって私は魔族よ? 世界中の人達から嫌われ、忌むべき存在だとされるあの魔族なのよ!?」
「えっでもメリアちゃんなんでしょ? じゃあ種族なんて関係ないよ。メリアちゃんはメリアちゃんだもん。」
「・・・・・・」
魔族の自分を肯定してくれる発言を聞いたメリアの瞳から自然と涙があふれてくる。
「私・・・魔族・・・なのよ?」
「うん。そうだね。」
「私といたら・・・ルルまで変な目で見られるかもしれないのよ?」
「大地さんや他のみんなはそんな事しないよ。」
「魔族だと知っても・・・友達でいてくれるの?」
「もちろん。メリアちゃんは私の親友だよ。」
「そう。ありがとうね。ルル。」
ルルから親友という言葉を聞いたメリアは涙を流しながら安堵の表情を浮かべる。
六百年という長い年月のなかで初めて魔族の姿を受け入れてくれる人物に出会えたメリアの胸中は嬉しい、喜び等といった言葉では表すことが出来ないほどの多幸感に包まれていた。
メリアは命を繋ぎ止めることが出来る程度の生命力をルルに分け与えると、ルルの周囲を腐蝕効果のある黒い濃霧で包んでいく。
「ルル。この中で待ってて。私はとりあえずあいつを倒してくるから。」
「わかった。メリアちゃん気を付けて!」
メリアはこれまで感じた事のない高揚感を抱きながら、戸惑った様子でこちらを見ているゼルターへと近づいていく。
「さっきまでの余裕はどうしたの?」
額から汗をかいているゼルターを見て軽い笑みを見せるメリア。
「まさかメリア・・・あなたが魔族だとは知りませんでした。」
「気付かないのも無理はないわよ。だってずっと魔族であることを隠して生きてきたんだから。」
「宮廷魔法師の中にまさか魔族が潜んでいたとは、これは我々宮廷魔法師の大きな落ち度ですね。」
ゼルターは帝国の最高戦力である宮廷魔法師に魔族が紛れていた事実に嫌悪感を露わにすると、これまで自分達を騙していたメリアに鋭い瞳を向ける。
「まぁ私を宮廷魔法師にしたのは他でもないあんたのとこの国王さんなんだけどね。」
「陛下を愚弄する気か!? 劣悪種である魔族が偉大なる我が王を愚弄するなど。立場をわきまえよ!」
メリアの言葉に顔を大きく歪ませるゼルター。
ゼルターは敬愛するゼフィル陛下を愚弄されたと怒りの表情を浮かべると、周囲に多数のゴーレムを多数出現させる。
「あなたが魔族であるとわかった以上ここで必ず殺さなくてはならない。」
ゼルターはゴーレムに迷彩魔法をかけると透明となったゴーレムをメリアに差し向ける。
「はぁ。人間に化けていた時とは違うのよ? そんな攻撃が私に効くとでも思っているのかしら。」
メリアは向かってくる迷彩ゴーレムに目を向けると、前方に手をかざした。
「ルルを早くリリスの元に連れて行かなくてはいけないの。さっさと終わらせるわよ。」
メリアは小さく呟くと、かざした手から赤黒い光線を放った。
赤黒い光線を放ちながら、かざした手を右から左へと薙ぎ払うように動かしていく。
メリアの光線によってあっという間に分断されていくゴーレム達。
メリアが光線を放ち終えると、メリアの前方には二つに分断されたゴーレムの残骸が多量に転がった光景が広がっていた。
「こっこれが魔族の力という訳ですか。」
メリアの力の一端を見て、ゼルターは思わず後ずさりをしていた。
ゼルターが出現させたゴーレムを一瞬で破壊してのけたメリアの実力を見たゼルターは自分の魔法はメリアに通用しないと考え、即座に標的をルルへと変えた。
再度迷彩ゴーレムを出現させたゼルターはゴーレムをルルに放つと同時に土弾をルルの頭上に展開させ雨のようにそれを降らせた。
メリアにとってあの猫人族は大切な存在だということはこれまでのメリアの行動をみてれば誰でもわかることです・・・
猫人族を攻撃し続ければ必ずそれを守ろうと隙をみせるはず・・・
ゼルターは正攻法ではメリアに勝つことが出来ないと悟り、ルルを囮にしてメリアを仕留める作戦立てた。
迷彩ゴーレムと土弾の雨がルルへと迫っていく。
しかしメリアはその場から動くことなくゼルターの行動を静観していた。
迷彩ゴーレムはそのままルルの元へと辿り着くとその拳をルルに突き出していく。
その迷彩ゴーレムの攻撃に合わせたように上空から降って来た土弾もルルに着弾していく。
ゼルターはメリアが動かないのを見て、少し焦った様子を見せる。
私の思い違い? いやそんなはずはない。
あの猫人族を攻撃した時メリアは確かに焦っていた。
それに自分の身体を犠牲にしてまで守ろうとした存在がメリアにとって特別ではないわけがない。
この状況のなか助けることを諦めたのか?
もしそうであるならば、猫人族の娘を殺してしまった以上、新たな作戦を立てねばならないではないか。
自分の思惑が大きく外れてしまい、メリアを殺す算段が崩れてしまったゼルターは必死に思考を巡らせていく。
そんな中、戦場に似つかわしくない感嘆の声がゼルターの耳に入った。
「うわぁ! メリアちゃんの魔法凄いよぉ!」
ゼルターは声の聞こえる方に視線を向けた。
そこにはゼルターが殺したと思っていたはずのルルの姿があった。
周囲に赤いオーラの様なものを纏ったメリアの姿を見たゼルターは、額から一筋の汗を垂らしていた。
「メリアちゃん・・・?」
ルルは床に項垂れながら、見上げるように魔族姿のメリアを見ている。
「ルル。黙っててごめんね。私、実は魔族なのよ。」
メリアは変換魔法により自身の魔力をルルの生命力に変換してルルに分け与えながら、申し訳なそうにルルの顔を覗く。
あぁ・・・せっかく仲良くなれたのに。これでまた一人になってしまうわね。
待つように言われていたのに、大地には悪い事をしたわ。
魔族の姿を見て驚いた顔を見せるルルを見て、またあの時のように全てを失ってしまうのだとメリアが思っていると、ルルが小さい声で呟いた。
「綺麗・・・」
「・・・えっ?」
メリアはルルの言葉に思わず戸惑った様子を見せる。しかしそれはメリアのこれまでの経験を考えれば無理はない話だ。
これまでメリアにとって自身の魔族の姿というのは、人間達から忌むべき存在として扱われていた。
その姿を見た者達はメリアに対して悲鳴や化け物等の言葉を浴びせてくることはあっても、その姿を綺麗だと形容する者はいなかったのだ。
ルルからも軽蔑や侮蔑を込めた瞳を向けられるのだと思っていたメリアは戸惑いながら固まってしまっていた。
「メリアちゃん? どうしたの?」
ルルがこちらを見て固まっているメリアを心配した様子で声をかける。
「・・・怖くないの?」
「え? 何で怖がるの?」
「だって私は魔族よ? 世界中の人達から嫌われ、忌むべき存在だとされるあの魔族なのよ!?」
「えっでもメリアちゃんなんでしょ? じゃあ種族なんて関係ないよ。メリアちゃんはメリアちゃんだもん。」
「・・・・・・」
魔族の自分を肯定してくれる発言を聞いたメリアの瞳から自然と涙があふれてくる。
「私・・・魔族・・・なのよ?」
「うん。そうだね。」
「私といたら・・・ルルまで変な目で見られるかもしれないのよ?」
「大地さんや他のみんなはそんな事しないよ。」
「魔族だと知っても・・・友達でいてくれるの?」
「もちろん。メリアちゃんは私の親友だよ。」
「そう。ありがとうね。ルル。」
ルルから親友という言葉を聞いたメリアは涙を流しながら安堵の表情を浮かべる。
六百年という長い年月のなかで初めて魔族の姿を受け入れてくれる人物に出会えたメリアの胸中は嬉しい、喜び等といった言葉では表すことが出来ないほどの多幸感に包まれていた。
メリアは命を繋ぎ止めることが出来る程度の生命力をルルに分け与えると、ルルの周囲を腐蝕効果のある黒い濃霧で包んでいく。
「ルル。この中で待ってて。私はとりあえずあいつを倒してくるから。」
「わかった。メリアちゃん気を付けて!」
メリアはこれまで感じた事のない高揚感を抱きながら、戸惑った様子でこちらを見ているゼルターへと近づいていく。
「さっきまでの余裕はどうしたの?」
額から汗をかいているゼルターを見て軽い笑みを見せるメリア。
「まさかメリア・・・あなたが魔族だとは知りませんでした。」
「気付かないのも無理はないわよ。だってずっと魔族であることを隠して生きてきたんだから。」
「宮廷魔法師の中にまさか魔族が潜んでいたとは、これは我々宮廷魔法師の大きな落ち度ですね。」
ゼルターは帝国の最高戦力である宮廷魔法師に魔族が紛れていた事実に嫌悪感を露わにすると、これまで自分達を騙していたメリアに鋭い瞳を向ける。
「まぁ私を宮廷魔法師にしたのは他でもないあんたのとこの国王さんなんだけどね。」
「陛下を愚弄する気か!? 劣悪種である魔族が偉大なる我が王を愚弄するなど。立場をわきまえよ!」
メリアの言葉に顔を大きく歪ませるゼルター。
ゼルターは敬愛するゼフィル陛下を愚弄されたと怒りの表情を浮かべると、周囲に多数のゴーレムを多数出現させる。
「あなたが魔族であるとわかった以上ここで必ず殺さなくてはならない。」
ゼルターはゴーレムに迷彩魔法をかけると透明となったゴーレムをメリアに差し向ける。
「はぁ。人間に化けていた時とは違うのよ? そんな攻撃が私に効くとでも思っているのかしら。」
メリアは向かってくる迷彩ゴーレムに目を向けると、前方に手をかざした。
「ルルを早くリリスの元に連れて行かなくてはいけないの。さっさと終わらせるわよ。」
メリアは小さく呟くと、かざした手から赤黒い光線を放った。
赤黒い光線を放ちながら、かざした手を右から左へと薙ぎ払うように動かしていく。
メリアの光線によってあっという間に分断されていくゴーレム達。
メリアが光線を放ち終えると、メリアの前方には二つに分断されたゴーレムの残骸が多量に転がった光景が広がっていた。
「こっこれが魔族の力という訳ですか。」
メリアの力の一端を見て、ゼルターは思わず後ずさりをしていた。
ゼルターが出現させたゴーレムを一瞬で破壊してのけたメリアの実力を見たゼルターは自分の魔法はメリアに通用しないと考え、即座に標的をルルへと変えた。
再度迷彩ゴーレムを出現させたゼルターはゴーレムをルルに放つと同時に土弾をルルの頭上に展開させ雨のようにそれを降らせた。
メリアにとってあの猫人族は大切な存在だということはこれまでのメリアの行動をみてれば誰でもわかることです・・・
猫人族を攻撃し続ければ必ずそれを守ろうと隙をみせるはず・・・
ゼルターは正攻法ではメリアに勝つことが出来ないと悟り、ルルを囮にしてメリアを仕留める作戦立てた。
迷彩ゴーレムと土弾の雨がルルへと迫っていく。
しかしメリアはその場から動くことなくゼルターの行動を静観していた。
迷彩ゴーレムはそのままルルの元へと辿り着くとその拳をルルに突き出していく。
その迷彩ゴーレムの攻撃に合わせたように上空から降って来た土弾もルルに着弾していく。
ゼルターはメリアが動かないのを見て、少し焦った様子を見せる。
私の思い違い? いやそんなはずはない。
あの猫人族を攻撃した時メリアは確かに焦っていた。
それに自分の身体を犠牲にしてまで守ろうとした存在がメリアにとって特別ではないわけがない。
この状況のなか助けることを諦めたのか?
もしそうであるならば、猫人族の娘を殺してしまった以上、新たな作戦を立てねばならないではないか。
自分の思惑が大きく外れてしまい、メリアを殺す算段が崩れてしまったゼルターは必死に思考を巡らせていく。
そんな中、戦場に似つかわしくない感嘆の声がゼルターの耳に入った。
「うわぁ! メリアちゃんの魔法凄いよぉ!」
ゼルターは声の聞こえる方に視線を向けた。
そこにはゼルターが殺したと思っていたはずのルルの姿があった。
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