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トーム攻略編
第79話 窮地
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「くそが!」
急に背後に現れ斬りかかってきたアーヴに対して、大地は咄嗟に腕のみにセキュリティをかけてアーヴの腕を受け止めた。
「おや。おかしいな。何故吸収魔法が発動しない?」
大地に触れているはずなのに、大地から魔力や能力値を吸収出来ないことを不思議がるアーヴ。
大地はアーヴが不思議がっている隙にアーヴから距離をとる。
どうやらさすがの吸収魔法もセキュリティの完全防御は崩せなかったようだ。
ひとまずセキュリティがアーヴの吸収魔法に通用することに安堵する大地。
しかし状況はかなり悪い。
こちらの魔法は全て吸収され、相手の能力を高めてしまう上に単純な能力値でもアーヴは自身を遥かに超えている。
自身にプログラミングを行った時のように能力値の底上げを行おうとも考えたが、何故か自身のプログラミングが出来なかった。
大地はアーヴがコピー体を吸収した後の能力値を見た時、このままでは敵わない可能性があると感じ、自身にプログラミングを開始していた。
しかし何故か能力値の改変を行うことが出来ず、何度プログラミングを試みても結果は同じだった。
大地は何故自身へのプログラミングが出来ないのか疑問に感じながらも、まずはアーヴをどうにかするべきだと頭を切り替える。
さっきのアーヴの動きは何一つ見えなかった。
セキュリティで防げるといっても全身にかける程の余裕はねぇ。
さてどうしたもんかね。
いくら考えてもアーヴを倒す良い案が思い浮かばない大地。
アーヴは大地がセキュリティによって自身の吸収魔法を防いだことに一時警戒を強めるが、大地がその後こちらを攻めてこないのを見て、大地に有効な攻撃手段がない事を見抜くと、再び大地に攻撃を仕掛けてきた。
再び姿を消したアーヴに周囲を見渡しその姿を探す大地。
すると大地の上空から姿を表したアーヴが両腕を突き出して大地に切りかかってきた。
「くそっ!」
「どうした大地? 防ぐだけで精一杯か?」
アーヴが笑みを浮かべながら攻撃を繰り返し、大地が苦しい表情を見せながらそれを防ぐ。
そんな状況が長く続いていく。
アーヴからしたらもっと早く決着を付けることも可能だったのだろうが、アーヴは大地を弄ぶように少しずつ大地の体力を削っていた。
アーヴの攻撃を辛うじてセキュリティをかけた両腕で防いでいく大地だったが、アーヴは攻撃を仕掛けながら、自身の後方に魔獣の召喚を始める。
「どうする? また分身体でも出すか?」
「意地の悪いことをしやがって。」
召喚された魔獣は次々と大地に襲いかかってくる。
アーヴの攻撃を防ぐことに精一杯の大地には魔獣の攻撃を防ぐ余裕はなく、鳥型魔獣の鉤爪が大地の身体へと突き刺さっていく。
「うがっ!」
大地の身体に鉤爪が食い込んでいき鮮血をまき散らしていく。
アーヴは魔獣の攻撃によりひるんだ大地に向けて、至近距離にて漆黒の光線を放つ。
大地は痛みに耐えながら両腕を交差させて光線を受け止めるが、光線の勢いに押されるように地面へと落下していく。
大地もなんとか空中で踏ん張ろうとするが、アーヴの放つ漆黒の光線の前には為すすべなくそのまま地面に背中から激突した。
「がはっ!」
地面に激突した衝撃でうめき声をあげる大地。
激突の衝撃で全身の骨にヒビが入り、口からは多量の血を吐きだしていた。
地上には大きな地鳴りが響き、大地が落ちた周辺の地面は隆起していく。
「もう終わりなのか? 他愛もない。」
大地が地面に落下したさまを見たアーヴはゆっくりと大地の落下地点まで降りて来る。
このままじゃ勝てねぇ・・・
なんで能力値を書き換えれねぇんだ。
大地は残った魔力を使って自身の状態異常を治しながら、必死に自身にプログラミングをかけるも、やはり能力値の改変を行うことが出来ない。
地面に仰向けで突っ伏したまま焦りを見せる大地の前に上空から降り立ってきたアーヴが近寄っていく。
「どうだ大地。お前の全てをかけても敵わない相手というのは。」
「まぁ気持ちの良いものではないな。」
「そうだろ? ボレアス領地に居た時の私は正に今のお前だった。どれだけお前の力を解析してもその力の底を知ることが叶わなかった。」
アーヴは大地を見下ろしながら、ボレアス領地にいた頃の話を始めた。
「焦った私はお前をミッテに送り、その間にボレアス領地を占拠しようと考えた。しかしその作戦さえもお前が作った装備により破綻させられた。あの時の私の気持ちがわかるか? 何をしても何を考えてもお前の存在に全て阻まれてしまっていた私の気持ちが。」
話を続けていたアーヴの顔が徐々に歪み、怒りに満ちた顔へと変化していく。
「あの時は悪い意味で夢でも見ている気分だったよ。実は私が見ている世界は現実の世界ではなく、夢や幻の世界なのではないかとね。そうであればどれだけ良かったか。」
確かにこれが夢や幻だったら俺も良かったって思うわな・・・
アーヴの言葉を聞いて敵であるにも関わらず、同じ考えが大地の頭の中を駆け巡る。
そんな時大地の頭の中に一つの考えが浮かぶ。
夢・・・
幻・・・
そうか。それならこの状況をなんとか出来るかもしれない。
アーヴを攻略出来るかもしれない作戦を思いついた大地はその作戦を実行するためにある物をアウトプットにて再現しようとした。
しかし大地にはもう魔力があまり残っておらず、アウトプットを発動することが出来ない。
くそが・・・せっかくこいつに一泡吹かせられる可能性を見つけたのに。
大地が悔しそうな表情を浮かべた時、前方から大地を呼ぶ声が聞こえてきた。
「大地! あんた無事なの!?」
「大地さん! ボロボロじゃないですか!?」
声の主はメリアと犬斗だった。
メリアと犬斗はボロボロになっている大地の姿を視界に捉えると、焦った様子で二人の元に駆けつける。
「犬斗か。これはついている。大地と犬斗の両方をこの手で仕留める機会をもらえるなんて。」
アーヴは犬斗の姿を確認すると、既に虫の息となっている大地を尻目に犬斗へと視線を向けた。
「やぁ犬斗久しぶりだな。」
「え~と・・・もしかしてアーヴって人ですか?」
犬斗は魔族に姿を変えているアーヴを見て驚いた表情を見せる。
「魔族ですって・・・!?」
犬斗の後ろにいたメリアも犬斗と同じように驚愕の表情を見せていた。
『大地さん! 一体どうなってるんですか?』
『大地! どういうことか説明しなさいよ!』
二人は状況をよく呑み込めておらず、大地に念話を飛ばし事情説明を求める。
『どうやらアーヴは魔族の身体に寄生しているらしい。その魔族の魔法のせいでこいつには魔法は効かない。おかげでこのざまだ。』
『大地さんでも敵わないならどうすればいいんですか!?』
犬斗は最強だと思っていた大地の敗北を知り、狼狽した様子を見せ始める。
『大地。こいつを倒す考えはあるの?』
『一応試してみないことにはわからんが、魔力さえ回復出来ればなんとかなるかもしれん。』
『わかったわ。あんたはリリスに念話を飛ばしてポーションを届けてもらいなさい。私と犬斗で時間を稼いであげる。』
『ちょちょっと待って下さいよ! 大地さんを倒した奴の相手なんて出来るわけないじゃないですか!』
『あんたも男なら覚悟を決めなさい! アーヴにペンタゴンを潰されてもいいっていうの!? 大地がアーヴを倒せる可能性があるっていうならそれに賭けるしかないでしょ!』
『・・・わかりましたよ。でも大地さん出来る限り早めにお願いしますよ! リリスさんの魔力ポーションで回復したとはいえ、僕もメリアさんも本調子ではないんですからね!』
『あいつの吸収魔法は触れるだけで魔力や能力値を吸い取られる。出来る限り距離を取って戦え。』
そう告げると大地はリリスに念話で状況を伝え、自身にかけていたセキュリティを犬斗とメリアの両手に移していく。
大地からアーヴのある程度の情報とかけられたセキュリティについて聞いたメリアと犬斗はアーヴを大地から引き剥がすように距離をとっていく。
「大地を助けるための陽動ですかな。」
アーヴはメリア達の目的に気付き、「無駄なことを」と小さく呟くとメリア達を追いかけていった。
これでもう魔力は空っぽか・・・
二人にセキュリティをかけたことで魔力枯渇を起こした大地は飛びそうな意識を必死に繋ぎ止める。
もし意識を飛ばしてしまえば犬斗達にかけているセキュリティが解けてしまう。
命を失うかもしれない時間稼ぎを名乗り出てくれた犬斗達を死なせるわけにはいかない。
その一心で大地は薄れゆく意識を保つために手元にあった銃剣で太ももを刺した。
「ぐううう・・・」
うめき声を発した大地であったが、太ももを刺した痛みで意識を留めることに成功する。
大地はメリア達が向かった方向を眺めながら、二人の無事を祈ることしか出来ない自分の情けなさに拳を地面に叩きつけた。
急に背後に現れ斬りかかってきたアーヴに対して、大地は咄嗟に腕のみにセキュリティをかけてアーヴの腕を受け止めた。
「おや。おかしいな。何故吸収魔法が発動しない?」
大地に触れているはずなのに、大地から魔力や能力値を吸収出来ないことを不思議がるアーヴ。
大地はアーヴが不思議がっている隙にアーヴから距離をとる。
どうやらさすがの吸収魔法もセキュリティの完全防御は崩せなかったようだ。
ひとまずセキュリティがアーヴの吸収魔法に通用することに安堵する大地。
しかし状況はかなり悪い。
こちらの魔法は全て吸収され、相手の能力を高めてしまう上に単純な能力値でもアーヴは自身を遥かに超えている。
自身にプログラミングを行った時のように能力値の底上げを行おうとも考えたが、何故か自身のプログラミングが出来なかった。
大地はアーヴがコピー体を吸収した後の能力値を見た時、このままでは敵わない可能性があると感じ、自身にプログラミングを開始していた。
しかし何故か能力値の改変を行うことが出来ず、何度プログラミングを試みても結果は同じだった。
大地は何故自身へのプログラミングが出来ないのか疑問に感じながらも、まずはアーヴをどうにかするべきだと頭を切り替える。
さっきのアーヴの動きは何一つ見えなかった。
セキュリティで防げるといっても全身にかける程の余裕はねぇ。
さてどうしたもんかね。
いくら考えてもアーヴを倒す良い案が思い浮かばない大地。
アーヴは大地がセキュリティによって自身の吸収魔法を防いだことに一時警戒を強めるが、大地がその後こちらを攻めてこないのを見て、大地に有効な攻撃手段がない事を見抜くと、再び大地に攻撃を仕掛けてきた。
再び姿を消したアーヴに周囲を見渡しその姿を探す大地。
すると大地の上空から姿を表したアーヴが両腕を突き出して大地に切りかかってきた。
「くそっ!」
「どうした大地? 防ぐだけで精一杯か?」
アーヴが笑みを浮かべながら攻撃を繰り返し、大地が苦しい表情を見せながらそれを防ぐ。
そんな状況が長く続いていく。
アーヴからしたらもっと早く決着を付けることも可能だったのだろうが、アーヴは大地を弄ぶように少しずつ大地の体力を削っていた。
アーヴの攻撃を辛うじてセキュリティをかけた両腕で防いでいく大地だったが、アーヴは攻撃を仕掛けながら、自身の後方に魔獣の召喚を始める。
「どうする? また分身体でも出すか?」
「意地の悪いことをしやがって。」
召喚された魔獣は次々と大地に襲いかかってくる。
アーヴの攻撃を防ぐことに精一杯の大地には魔獣の攻撃を防ぐ余裕はなく、鳥型魔獣の鉤爪が大地の身体へと突き刺さっていく。
「うがっ!」
大地の身体に鉤爪が食い込んでいき鮮血をまき散らしていく。
アーヴは魔獣の攻撃によりひるんだ大地に向けて、至近距離にて漆黒の光線を放つ。
大地は痛みに耐えながら両腕を交差させて光線を受け止めるが、光線の勢いに押されるように地面へと落下していく。
大地もなんとか空中で踏ん張ろうとするが、アーヴの放つ漆黒の光線の前には為すすべなくそのまま地面に背中から激突した。
「がはっ!」
地面に激突した衝撃でうめき声をあげる大地。
激突の衝撃で全身の骨にヒビが入り、口からは多量の血を吐きだしていた。
地上には大きな地鳴りが響き、大地が落ちた周辺の地面は隆起していく。
「もう終わりなのか? 他愛もない。」
大地が地面に落下したさまを見たアーヴはゆっくりと大地の落下地点まで降りて来る。
このままじゃ勝てねぇ・・・
なんで能力値を書き換えれねぇんだ。
大地は残った魔力を使って自身の状態異常を治しながら、必死に自身にプログラミングをかけるも、やはり能力値の改変を行うことが出来ない。
地面に仰向けで突っ伏したまま焦りを見せる大地の前に上空から降り立ってきたアーヴが近寄っていく。
「どうだ大地。お前の全てをかけても敵わない相手というのは。」
「まぁ気持ちの良いものではないな。」
「そうだろ? ボレアス領地に居た時の私は正に今のお前だった。どれだけお前の力を解析してもその力の底を知ることが叶わなかった。」
アーヴは大地を見下ろしながら、ボレアス領地にいた頃の話を始めた。
「焦った私はお前をミッテに送り、その間にボレアス領地を占拠しようと考えた。しかしその作戦さえもお前が作った装備により破綻させられた。あの時の私の気持ちがわかるか? 何をしても何を考えてもお前の存在に全て阻まれてしまっていた私の気持ちが。」
話を続けていたアーヴの顔が徐々に歪み、怒りに満ちた顔へと変化していく。
「あの時は悪い意味で夢でも見ている気分だったよ。実は私が見ている世界は現実の世界ではなく、夢や幻の世界なのではないかとね。そうであればどれだけ良かったか。」
確かにこれが夢や幻だったら俺も良かったって思うわな・・・
アーヴの言葉を聞いて敵であるにも関わらず、同じ考えが大地の頭の中を駆け巡る。
そんな時大地の頭の中に一つの考えが浮かぶ。
夢・・・
幻・・・
そうか。それならこの状況をなんとか出来るかもしれない。
アーヴを攻略出来るかもしれない作戦を思いついた大地はその作戦を実行するためにある物をアウトプットにて再現しようとした。
しかし大地にはもう魔力があまり残っておらず、アウトプットを発動することが出来ない。
くそが・・・せっかくこいつに一泡吹かせられる可能性を見つけたのに。
大地が悔しそうな表情を浮かべた時、前方から大地を呼ぶ声が聞こえてきた。
「大地! あんた無事なの!?」
「大地さん! ボロボロじゃないですか!?」
声の主はメリアと犬斗だった。
メリアと犬斗はボロボロになっている大地の姿を視界に捉えると、焦った様子で二人の元に駆けつける。
「犬斗か。これはついている。大地と犬斗の両方をこの手で仕留める機会をもらえるなんて。」
アーヴは犬斗の姿を確認すると、既に虫の息となっている大地を尻目に犬斗へと視線を向けた。
「やぁ犬斗久しぶりだな。」
「え~と・・・もしかしてアーヴって人ですか?」
犬斗は魔族に姿を変えているアーヴを見て驚いた表情を見せる。
「魔族ですって・・・!?」
犬斗の後ろにいたメリアも犬斗と同じように驚愕の表情を見せていた。
『大地さん! 一体どうなってるんですか?』
『大地! どういうことか説明しなさいよ!』
二人は状況をよく呑み込めておらず、大地に念話を飛ばし事情説明を求める。
『どうやらアーヴは魔族の身体に寄生しているらしい。その魔族の魔法のせいでこいつには魔法は効かない。おかげでこのざまだ。』
『大地さんでも敵わないならどうすればいいんですか!?』
犬斗は最強だと思っていた大地の敗北を知り、狼狽した様子を見せ始める。
『大地。こいつを倒す考えはあるの?』
『一応試してみないことにはわからんが、魔力さえ回復出来ればなんとかなるかもしれん。』
『わかったわ。あんたはリリスに念話を飛ばしてポーションを届けてもらいなさい。私と犬斗で時間を稼いであげる。』
『ちょちょっと待って下さいよ! 大地さんを倒した奴の相手なんて出来るわけないじゃないですか!』
『あんたも男なら覚悟を決めなさい! アーヴにペンタゴンを潰されてもいいっていうの!? 大地がアーヴを倒せる可能性があるっていうならそれに賭けるしかないでしょ!』
『・・・わかりましたよ。でも大地さん出来る限り早めにお願いしますよ! リリスさんの魔力ポーションで回復したとはいえ、僕もメリアさんも本調子ではないんですからね!』
『あいつの吸収魔法は触れるだけで魔力や能力値を吸い取られる。出来る限り距離を取って戦え。』
そう告げると大地はリリスに念話で状況を伝え、自身にかけていたセキュリティを犬斗とメリアの両手に移していく。
大地からアーヴのある程度の情報とかけられたセキュリティについて聞いたメリアと犬斗はアーヴを大地から引き剥がすように距離をとっていく。
「大地を助けるための陽動ですかな。」
アーヴはメリア達の目的に気付き、「無駄なことを」と小さく呟くとメリア達を追いかけていった。
これでもう魔力は空っぽか・・・
二人にセキュリティをかけたことで魔力枯渇を起こした大地は飛びそうな意識を必死に繋ぎ止める。
もし意識を飛ばしてしまえば犬斗達にかけているセキュリティが解けてしまう。
命を失うかもしれない時間稼ぎを名乗り出てくれた犬斗達を死なせるわけにはいかない。
その一心で大地は薄れゆく意識を保つために手元にあった銃剣で太ももを刺した。
「ぐううう・・・」
うめき声を発した大地であったが、太ももを刺した痛みで意識を留めることに成功する。
大地はメリア達が向かった方向を眺めながら、二人の無事を祈ることしか出来ない自分の情けなさに拳を地面に叩きつけた。
応援ありがとうございます!
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