老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第233話 竜、迎え入れる

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「長いこと居なかった気がするのう」
「ただいま」
「あー♪」
「わほぉん♪」
「こけー♪」
「ぴよー♪」

 モルゲンロートを送ってからようやく自宅へと帰って来た。
 しかし老ドラゴン達の行先が決まれば嬉しいことなのでこういった労力はいくらでも使いたいと二人は思う。
 ペット達も足を拭いてどたどたと家に入っていく。ダルはすぐに自分のお気に入りクッションで丸くなっていた。

「あい」
「わほぉん……」
「うぉふ」
「わん」
「ぴよー」

 それを見たリヒトがダルのお腹に手を当ててぎゅっと押す。ヤクトやルミナスも前足で顔を抑えるとブサイクな感じになった。
 トコトはそんなダルの頭の上に乗って毛づくろいをする。

「あら、カイザーペンギンちゃんは?」

 そこでカイザーペンギンの姿がないと気づいたトワイトが周囲を確認する。

「アー」
「おや」

 見れば玄関前で待っていた。まだ自分は入っていいと言われていないとみたいな感じで立っていた。

「あらあら、もうウチで暮らすから上がっていいのよ。ほら、ここで足を拭くの」
「アー♪」
「律儀じゃなあ。しかし、こやつどこから来たんじゃ? 北の海といっても広いからのう」
「そうですねえ……心当たりは一つありますけど」

 トワイトがカイザーペンギンの足を拭いてあげていると、ディランが腕組みをして近づいてきた。
 どこから、という話からトワイトは少し目を鋭くして心当たりがあると口にする。

「ふむ、そうなのか?」
「そうですよ、あなた。今は動きがないから大丈夫とは思いますけどね」
「?」

 珍しくむくれているトワイトの心情がわからず、ディランは首を傾げていた。
 そのまま足がキレイになったカイザーペンギンを迎え入れると、一直線にリヒトとペット達へ突っ込んでいった。

「風呂敷を持っていたからどこか人に飼われていた感じがあるんですけどねえ」
「あのイルカも帰ってこなかったし。置いて行ったんじゃろうな」
「やっぱり家出かしら?」
「とりあえず名前を決めてやるか。カイザーペンギンでは呼びにくいだろう」
「そうですね♪」

 ディランとトワイトは遊んでいるペット達に近づいていく。
 そこでカイザーペンギンの頭に手を乗せてからディランが言う。

「アー?」
「名前を決めようと思う。グラソンとかどうじゃ?」
「いいわね」
「ア!」
「あー♪」

 ディランが名付けるとすぐに小躍りをして喜んだ後、お辞儀をしていた。
 その後、寝床へ案内することになる。

「あーい?」
「グラソンのお部屋へ行くのよ。おいで」
「ア!」
「あい!」
「うぉふ」

 トワイトが先に進んで呼ぶと、グラソンはぺたぺたと走って来た。それに続いてリヒトも追いかけてくる。
 そのまま奥の倉庫へと足を運び、扉を開けるとひんやりとした空気が流れて来る。

「アー♪」
「ぴよー……」

 喜ぶグラソンだが、寒いところが苦手なひよこは早々にリヒトのポケットへ逃げ込んだ。

「ぴよ♪」
「あい」

 暖かいポケットにホッとしたひよこ達をリヒトが撫でてやっていた。
 ディランは倉庫を見ながら口を開く。

「トワイトは寝床を作ってやってくれ。ワシはグラソンが出られるように倉庫の扉を加工するわい」
「ええ」
「とはいえ冷気が外に出るのは困るが、どうするか。その内、専用の部屋を作らねばならんか」

 ディランは内装をトワイトへ任せて扉の加工をすることにした。
 ある程度は外に出ても大丈夫なカイザーペンギンだが、やはり弱ってしまうため氷の部屋は必要である。

「どういう感じに暮らすかしら? ダル達はクッションがあれば適当にリビングや遊戯室で寝ているし」
「ア」
「あーう?」

 そこでグラソンが手を上げてとことこと前へ出る。
 すると次の瞬間、グラソンが口をパカッと開けて口から氷の玉を吐き出した。

「おー」
「あら」
「わん……!」

 トワイトの拳くらいの玉を次々と吐き出して行く。リヒトが手を叩いて感心していた。さすがは魔物である

「ア」

 その玉をこねくり回し始めた。
 それを眺めていると、自分が寝るための氷のベッドを作り出した。

「アー♪」
「偉いわねえ。やっぱりどこかで暮らしていたのね」
「あー♪」
「あ、リヒトそれは――」

 満足気にベッドへ寝転がるグラソンにトワイトが微笑みながら言う。そこへリヒトが残っていた氷の玉に寄っていく。

「あー……!?」
「冷たいわよって遅かったわねえ」
「あい……」
「ふんふん……うぉふ……」

 氷の玉を落としてトワイトに抱き着いた。かなりびっくりしたようである。ヤクトがその玉を舐めてヒヤッとしてぶるりと震えていた。

「それじゃあここがしばらくあなたの部屋ね」
「ア♪ ……ア?」

 満足した感じでグラソンが手を上げてお辞儀をする。そこで異様な気配を察した彼が振り返る。
 するとそこにはリヒトが怖がっていた土偶が鎮座していた。
 寝室に置いていたが、やはり怖がるので仕方なく倉庫へと保管していたのだ。

「アー!?」
「グラソンも怖がっちゃったわね」
「あい」

 グラソンはすぐにヤクトの後ろに隠れていた。リヒトも足を掴んで土偶を見ていた。
 そんなことがあったものの、土偶は宝箱に入れられて隠した後に少し過ごしやすく片づけをするのだった。
 
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