異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪

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十章:夏那

269.ひとまずの休息と今後のことを、ね

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「お久しぶりですカナ様!」
「エピカリス様お久しぶりです!」

 謁見の間……ではなく、私室へ連れてこられたあたし達はエピカリス様と対面した。
 久しぶりだったけど彼女は満面の笑みを浮かべてあたしと握手をしてくれた。

「お元気そうでなによりですわ! そういえば他の皆さまは?」
「エピカリス、どうも良くない事情があるらしい。その話を聞くため謁見の間を外したんだ」
「……そうでした。カナ様、お伺いしてもよろしいかしら?」

 再会の喜びもそこそこに、エピカリス様はプラヴァスさんの言葉を聞いて神妙な顔で頷いた。
 話す前にレスバのことを詳しく説明する必要があるわね。

「もちろん! まずはこの子のことからね」
【初めまして】
「初めまして。旅で出会った方ですか?」
「ええ、そうなんです。レスバ、変身を解いてもらえる?」
【大丈夫ですか……? そこの騎士さんは強そうですけど……】
「いいから」
「変身……?」

 あたしとレスバのやり取りを聞いてプラヴァスさんが訝しんだ顔を向けて来た。レスバが口を尖らせていたけど、今までと今からの話をするためには必要なのだ。

「……!」
「こいつは……!」

 そしてレスバが変身を解いた瞬間、エピカリス様が驚愕した表情を見せ、プラヴァスさんが剣を抜いた。

【ひぃ!?】
「プラヴァスさん大丈夫です。レスバはあたしの味方なので」
「魔族が……仲間? 前のわたくしみたいに憑りつかれている、とか?」
「違いますよ。そしてこれから話す内容にも関係してきます」
「聞かせてください」

 あたしの様子がただごとではないことを察してくれたエピカリス様が神妙な顔で続けてくれと言った。
 そしてあたしはロカリス王国を旅立った後のことを説明していく。
 ボルタニア、グランシア神聖国、ヴァッフェ帝国、エルフの森……辿った軌跡と行った成果を順番に話す。
 将軍を倒し、船を手に入れて魔王の城に突入したところ【渡り歩く者】という黒幕が現れてあたし達全員がバラバラにされた経緯を全て語ると、二人は冷や汗を掻いていた。
 しばらく場が沈黙し、あたしも黙っていると、プラヴァスさんが口を開く。

「……まさかすでに魔王の下へ行っていたとは……しかもアキラスが……魔族が君たちを召喚したのも全て踊らされていた……」
「レスバさん達も別世界の者で、この世界の人間が私欲で呼び寄せた……魔王は帰る手段を得るためリク様を呼ぶ指示を出した。しかし、渡り歩く者という存在が捻じ曲げてカナ様達を巻き込んだ……し、信じがたいことですが……」
「まあ、最初にこの国へ召喚されたころなら、あたしも信じないと思います。それくらい複雑で防ぎようのない事件です」
【わたし達、魔族も謀られていましたからねえ……】

 あたしは事件『です』と、現在進行形でまだなにも解決していないことを強調して告げた。

「恐ろしい、ことだ……しかし、クラオーレ殿が送って来た書状の件がこれでハッキリしたな」
「クラオーレ陛下? なにかあったんですか?」
「ああ、船を用意する準備が出来たから島へ行ける。強者と共に討伐へ。そういった内容の書状が届いたんだ。その文言にはリクの名前もあった。活躍しているなと思った。だけど勇者という一文は無かったな」
「それはリクが言わないようにしていたんです。キナ臭いからって」

 あたし達が出航した後、どうも各国へ書状を出していたらしい。しかもリクの名前を使っていたそうだ。
 勇者だとは明かしていなかったけど、どうして入れたのかしら……? 他の国の人間が知っているとは限らないのに。まあ、なにか考えが合ったのだと思う。

【部隊を差し向けたんですか?】
「我々はまだ準備段階でね。なにせ騎士団長が一人減って再編と防衛が苦しい。リクの名前があったからすぐに行きたかったが、私はエピカリスと結婚をする予定なので陛下が許してくれなかった」
「そりゃそうよね」
「だが、エラトリア王国は騎士団長が減っているわけじゃない。ニムロスとフレーヤの騎士団がヴァッフェ帝国へ向かった」
「えっ」
「リク様の名があれば行くのは当然ですからね。エラトリア王国もリク様が居なければ大変なことになっていましたもの」

 確かにそうだ。
 ということはクラオーレ陛下は各国がリクを知っていると仮定して書状を出したわね……? やっぱり油断できない相手だわ。

【ヴァッフェ帝国は戦争をしていただけあって武力は高そうでしたね。魔王様以外の黒幕だと知ったらどうするか気になるところです】
「そうだな……しかし普通に話せるんだな……」
【まあ、これでも長いことカナ達と旅をしていましたしねえ。よっと】
「また人間に……これでアキラスも潜伏してわたくしに憑りついたのね」
【変身だけなら難しくありません。ああ、カナ、グランさんも紹介しておいたらどうです?】
「そうね」
「?」

 ついでだとレスバが言い、あたしは集中してグランさんを呼ぶ。すると背後に気配があり、顕現したのだと分かった。

「……!?」
「これは……!」
『よう、初めましてだな。俺はグラン。炎の大精霊ってやつだ』
「炎の!?」
「大精霊様!? フウタ様は風の大精霊様と契約したと言っておりましたね。カナ様は勇者だからおかしくはありませんが……」

 本日何度目か分からない驚きの表情を見せる二人。
 風太のことは話していたけど、まさか炎の大精霊まで契約しているのはびっくりしたらしい。

『ひとまず話は終わったみたいだな。で、カナ。この後はどうするんだ? 仲間探しをするんだろう?』
「そうね。ちょうど近かったから話したけど、あたし達はリクや風太、水樹を探しに行きます。休ませてもらったあと、少しでいいので物資を売ってくれませんか?」
【お金は少しなら……ほら、財宝とかも……】
『あ、お前いつの間に!?』

 あたしがここへ来た理由をエピカリス様へ話す。一番欲しいのはバックアップで、ここから各国への書状なんかも出してもらえればと考えている。もちろんお金は出す……ていうかレスバ、恐ろしい子……

「ふふ、お金は必要ありませんわ。この国を救ってくれた勇者様からいただけませんもの」
「必要なものは用意させてもらうよ」
「まあ、あの時は活躍していたのはリクだけだったけどね。ありがとうございます!」
「次はどこへ?」
「ボルタニアへ行った後、グランシア神聖国へ。魔法盾が壊れたから修理をお願いしようかと思っています。あと聖女のメイディ様は良く知っている仲なので」
「なるほど」

 ひとまずロカリス王国でやることは再度まともに旅をするための準備と別の危機を報せるためだった。エラトリア王国へはエピカリス様達から伝えてもらうことにした。

【うひょー! ご飯が美味しい……! 久しぶりの豪華飯……】
『へえ、いけるじゃん』
「あんた達、失礼のないようにね……?」

 そしてゆっくりと二日ほどお世話になり、再度旅に出ることになった。

「もう少しゆっくりしても……」
「みんながどうなっているか分からないから行きます。水樹とは連絡が取れたんで生きているのは分かっているんです」
「え?」
【まあ、それはともかくソアラだけで引かせるのもちょっと可哀想ですねえ】
「馬を借りるわけにもいかないし……ん? あれって――」

 出発当日、テントや食料、ランタンなど野営に必要なものを全て揃えてもらい快適な旅ができるようになった。
 エピカリス様はもう少しいていいと言ってくれたけど、水樹を探したいので急ぐことにした。
 メイディ様なら予知とかで見えるかもしれないし。
 それはそれとしてソアラだけで引かせるのはとレスバが口にした。それはあたしも思うけど、馬は高価だしそこまでお世話になるわけにはいかない。するとお城の庭に見知った顔がやって来た。

「お姉さん!」
「あ、テッド君? どうしたの?」
「えっと、ハリヤーが前みたいに興奮していて離したらここまで来たんだよ。もしかしたら一緒に行きたいのかも……ソアラは孫だもんね」
「ええー……? ハリヤーさんもう歳だしゆっくりしないと」
【確かにあまり肌のとか毛にハリがありませんね】

 しかしハリヤーさんは『まだまだ若い者には負けん』といった感じで鼻を鳴らしていた。
 
「リクさんのお手伝いがしたいのでしょう。寂しいですがウチにも新しい馬が居ます。ご迷惑でなければ連れて行ってください」
「ご迷惑だなんてことはないわ。ハリヤーさんのおかげで助かったんですし。あんたもリクが心配か。よし、それじゃ行くわよ」
「お姉さん、ハリヤーをお願いします! 元気でね!」

 テッド君が首を撫でるとハリヤーさんは『お元気で』という感じで鳴いた後、馬車に繋げた。

「よし、出発! エピカリス様、プラヴァスさん! また!」
「必ずまた皆さんで戻ってきてくださいね!」
「リク達によろしく頼むよ」

 あたし達は手を振ってロカリス王国を後にする。リク、風太、水樹……必ず見つける――


◆ ◇ ◆


「困ったわ……スマホも繋がらないし。国の名前がブリヒース王国って分かったから誰かに伝えたいのに……」

 私はブリヒース王国という国のお城で軟禁状態になっていた。
 あの転移があった際、この国の神殿でお祈りをしている場に出てしまったのだ。するとそこに居た神官たちが私を神の使いみたいなことを言いだして今の状況というわけ。

「もう壁を壊して無理やり出ようかしら?」
『失礼します』
「……あら、メイドさん? 開いていますよ」

 食事の時間にしては早いわね。そう思いながら入るように促すと――

『お着替えを持ってきました♪』
「……!? あなたは、リクさんの師匠……いえ、渡り歩く者……!?」

 ――目の前にはメイド服を着た渡り歩く者が、居た。
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