決着は来世でつけると約束した勇者と魔王はお隣さんで幼馴染になる

八神 凪

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34.部長参上

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 リアム達は示唆されたテントへ向かうと、そこには眼鏡をかけた女生徒が座っていた。
 茶色い髪を三つ編みにしていて、清楚な雰囲気があるなとリアムはそう考えながら話しかける。

「すみません、少しいいですか?」
「はい?」
「ここは歴史研究部で合っていますか?」
「ええ、そうです! まさか入部希望!? 一気に三人も!? ささ、こちらへ……わたしは部長のバスレーと申します。気軽にバスレーさんと呼んでください」
「えっと、それは普通では……」

 慌ただしくリアム達を歓迎したバスレーはまったく清楚でもなんでもなく、むしろお調子者のイメージだった。
 
「(私も見る目が無いわね……)」

 読めるわけもないが、記憶から当時の魔王アルケインも部下から裏切りにあったことを知っているのでそ感じていた。
 そんなリアムの胸中はよそに、バスレーは三人にお茶を出しながら口を開く。

「それで志望の動機は?」
「面接みたいなことになっている!? いえ、僕達は付き添いでリアムさんが話を聞きたいということで来たんです」
「なんだ……」
「落胆がすごいわ」

 ミトラが弁明をするとフィーシアがお茶を口にしてから崩れ落ちるバスレーに驚愕していた。しかしツッコミを入れることなくリアムが尋ねる。

「歴史研究部は本を取り扱うと思うのですが、古い本があるかどうかが聞きたいです。どれくらいの蔵書があるか? 図書館でしょうか?」
「圧が……凄い……!? えっと、まず蔵書ですが、図書館とは別に古書だけを集めた部室があります。古書館、とでも言いましょうか。そこに古い本を集めているのです」

 バスレーはスラスラとリアムの質問の答えを返す。そこは部長という貫禄が出ていた。その話を聞いてフィーシアが感心したように言う。

「へえ、そういうのがあるのね。この学院、外で見ても広いと思ったけど、生徒数のわりに施設が豪華だからありそうな気はするけど」
「そうですね。学業をやる教室の建物から奥に行くと部活の施設がありますが、圧巻ですよ。で、古書館ですが、代々歴史研究部が管理を務めるようになっています。えへん」
「ということはバスレー先輩が今の管理者なんですね。他に部員は何名くらいいるんですか?」

 ミトラが周囲を確認しながら聞くと、バスレーは視線を逸らして暗くなる。

「わ、わたししか……居ません……」
「え!? 部員が一人なんですか?!」

 リアムが驚愕してさらに追及する。バスレーは小さく頷いて肯定した。
 その様子を見て、リアムがニヤリと笑ってから口を開く。

「いいじゃないですか! 私、入部します!」
「え!? 誰も居ないのに、いいの?」

 いつもクールに話すリアムが目を輝かせてバスレーの肩に手を置くと、フィーシアがどこに魅力があったのか気になっていた。

「静かでいいじゃない。なんか珍しい本とかありそうだし」
「まあ、そうだけどね」
「いい心がけですね! もちろん入部を許可します! 今年の大会は優勝を目指しますよ!」
「歴史研究に大会があるんですね……!」
「いえ、ありません! ちょっと見栄を張りました!」
「驚いて損しちゃったよ……」
「ちなみにわたしは本でこういうのを学びました。<ベヒモスプロテクト>
「……!」
「おー」

 満面の笑みで嘘をついたバスレーにミトラがずっこけていた。
 しかし、防御魔法で光の幕に覆われたバスレーを見て、フィーシアは拍手をしていた。
 リアムも驚いていたがひとまず入部届を書いて二人に声をかけた。

「私はここで時間まで部長と他に来ないか待つわ。その後、部室まで行くけど、二人はどうするの?」
「僕は魔法か剣術の部活も見てこようかなって思ってるよ。フィーシアさんは?」
「私はミトラに着いていくわ。もし面白そうなのが無かったら歴史研究部に行くかも? 場所だけ教えてください♪」
「ええっと、あの建物の――」

 ここでミトラとフィーシアが別の場所へ行くことになり、リアムは手を振りながら着席する。

「とほー……三人いっぺんに入ると思ったのに……魔法も奮発したんですが」
「さっきの魔法、あれって古の魔法ですよね」
「おお、知っていましたか! そうです。ウチの学院長、テリアさんも使っていたことがあると言っていました!」

 それを聞いてなるほどとリアムが納得する。テリアなら色々と魔法書を収集しているかもしれないと。

「(静かなのは幸いね。それにしてもロイは部活をやらない気かしら?)」
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