決着は来世でつけると約束した勇者と魔王はお隣さんで幼馴染になる

八神 凪

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47.おかしな出現

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「うわあ……」
「これがロイ君の実力……」

 ゴブリン襲撃から数分。
 都合七体のゴブリンを倒したロイとザグレブ、そしてリアムは一か所に遺体を集めていた。

「装備の程度はあまり良くないな」
「ええ。冒険者や騎士が殺されたという話は聞いていないので、拾ったものを使っているだけの個体ですね」
「そういうのあるんだー?」
「ええ、お嬢様。ゴブリンは独自の言語を使っているほど知能は高いのです。武器も切れ味の良さをきちんと把握して変えます。……試し切りは人間、ということもしばしばありますが」
「……!?」

 ロイがゴブリンの装備を手にして感想を言うと、ザグレブは直近の状況を思い返して話す。
 その問答にフィーシアが首を傾げていると、ザグレブは真面目な顔で怖いことを口にした。

「やっぱり外は危ないですねえ……本を読んでいられたのはほんの少し……」
「大丈夫よ、先輩。次は屋根付きのいいやつにするから!」

 バスレーが荷台に刺さった矢を抜きながら冷や汗を流す。その言葉にフィーシアが剣を掲げながら安全を確保してから来ようと言う。

「おいおい、この状況でまだやるってのか?」
「もちろん?」
「なんで疑問形……」

 ゴブリンが登場し、さらにザグレブが脅かしたにも関わらずまだやる気のあるフィーシアに、ロイが呆れた調子で尋ねる。
 すると怪訝な顔でフィーシアが顎に手を当てて続行の意思を見せる。ミトラはその様子に苦笑していた。

「ま、ロイとザグレブだけでこれだけ倒せるし、リアムも強いんでしょ? これくらいなら続けてもいいかなって」
「確かにロイさんが居ればなんとかなりそうですし、このまま続けてもいいとは思います」
「マジか。まあ、これくらいならなんとかなるしホブゴブリンが出ても四体くらいなら一人でなんとかなるしな」
「なら続行で! 魔物を初めて倒したけど、わくわくしたよ。怖かったけど、ロイ君やザグレブさんが居れば安心だし」

 そこでミトラもフィーシアに呼応するようにこれなら一緒に戦いたいと口にした。
 ロイは頭を掻きながらリアムに視線を向けると、荷台の上から肩を竦めて微笑んでいた。
 怒っているということはなく、巻き込まれたロイに同情をしているようにも見える。勇者と魔王が居ればなんとかなるかとロイは頷いてフィーシアとミトラに向き合う。

「なら続けるか。ゴブリンは本当に危険だから見つけたら荷台にすぐ乗って回避するんだぜ?」
「オッケー! それじゃ今日は帰る?」
「疲れたなら帰ろう。戦利品は結構あるから胸張って帰れるな」

 やる気はあるフィーシアだが、流石に初めての戦いに加えてゴブリンという強敵を前にしたため疲労が見えた。
 ロイはそれを考慮して帰還を提案する。お土産は依頼のヒュージアントと遭遇戦のゴブリンがお金になると付け加えた。

「型とか教えてもらいたいけど、どうかな?」
「そういやミトラは聞きたいって言ってたっけ。うーん……明日にするか。授業で分からないことがあったらメモでもしておいてくれると助かる。なにがわからないか把握しておきたい」
「あ、そっか。うん、わかったよ!」
「では、戻りましょうか。ちょっと荷台が狭くなりますが……」
「あひん!?」

 ミトラは元気よく返事をし、ザグレブが馬車にゴブリンなどの死体を載せようとした。その瞬間、バスレーはリアムの後ろに隠れた。
 体力づくりにもなるからと、バスレー以外のメンバーは町まで徒歩を選び、ひとまず荷台は死体置き場と化していた。

「血、血の匂いが……」
「冒険者は日常茶飯事だけど、バスレー先輩みたいに普通の学生だときついよなあ」
「私達も嫌だから降りたんだもの、当然よ」
「リアムさんは慣れているの?」
「魔物退治はあまりしていないけど、気にはならないわね」

 一行はそんな話をしながら町へと戻っていく。
 血の匂いで魔物が寄ってくるため、ロイは空を飛んで警戒していた。
 しかし、特にそれ以上の接敵は無かったので無事、町へと到着した。

「戻りました。依頼達成です!」
「おお、戻ったか! 無事で何より……って、こりゃあ……」
「まあ、そういうことですね」

 ギルドへ戻るとビョウボが喜んで迎えてくれたが、持って来た遺体を見て表情を変えた。もちろん、イレギュラーであるゴブリンのせいだ。
 周囲に居た冒険者もざわついている。

「ヒュージアントが出てくるような場所に居たのか?」
「ええ。我々を取り囲むようにして距離を詰めてきました。ただ、装備は大したことが無かったので流れて来たゴブリンという感じはしましたが」
「ふむ……」

 ザグレブが見解を言うと、ビョウボが顎に手を当ててポツリと呟いた。
 ロイはゴブリンの遺体を見ながら口を開いた。

「この前、騎士さん達が襲われたホブゴブリンもそうだったのかなあ」
「……可能性はある。が、発生源もどこかにあるのではと俺達は考えている」
「発生源?」

 聞きなれない言葉にミトラが首を傾げると、ビョウボはハッとして頭を振る。

「まあ、こいつらは今、調査団を作って確認させている。そっちは任せてくれていい。簡単な依頼で腕を上げてくれ」
「そうするよ。というわけで換金、頼むねビョウボさん」
「ああ、もちろんだ」

 辛気臭い話はさておきと、ロイは指で丸を作って依頼料の話をする。
 五人はそれぞれ、

「お小遣いって感じねえ。全員で分けると少なくなるわ」
「僕は自分で稼いだってだけでも嬉しいよ」
「あ、それはあるわね!」

 貴族の二人はお金に困っていないので、実績の方に偏っていた。

「部費にするか……本を買うか……」
「本を買いましょうよ……部費は人を集めればいいでしょう」
「そうしまーす!」
「私は家に貯金かしら」

 バスレーは趣味に走り、リアムは貯金すると言う。
 
「俺は土産でも買って帰るかな。ザグレブさんは?」
「私は身の回りのものですかね。折角ですし、服を見てもいいかもしれませんね」

 ロイとザグレブは適当に使うと話し合う。とりあえず、初依頼は大成功を納めるのだった。
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