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48.広がる噂
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「おはようフィーシアさん」
「おはようミトラ! いやあ、昨日は凄かったわねえ」
「うん! まあ足が震えていたんだけどね……はは」
「そりゃ私もよ? あんなに力が入らないとは思わなかった」
ゴブリン討伐の翌日。
朝、教室に入って来たミトラを見て、すでに来ていたフィーシアが声をかけた。
ミトラは正直にその時の気持ちを吐露し、興奮冷めやらぬといった感じのフィーシア。しかし彼女は授業のようにはいかないとため息を吐いていた。
「よう」
「あ、おはようゴルド君」
「おっはよー! で、次はゴブリンも相手したいわね。二人なら――」
「……!? ちょ、待てフィーシア! ゴブリンを相手だと? どういうことだ!?」
「え?」
挨拶をした後、ミトラにまた話しかけていると、そこでゴルドに止められた。
ゴブリンについて驚愕しているゴルドへフィーシアが唇に指を当てて言う。
「昨日からロイと一緒にギルドへ行って依頼を受けるようにしたの! いわばギルド部って感じね!」
「はあ!?」
「なんかパッとする部活が無くて、それだったらロイ君についていってもいいかなってフィーシアさんが……」
「そんな理由で……ま、魔物と戦ったのか……?」
ゴルドが冷や汗を掻いて尋ねると、二人は同時に頷いた。ゴルドは口をあんぐりと開けてから呆然としていた。
「よーっす!」
「あ、ロイおはよう! 昨日はありがとう!」
「おはようロイ君」
「おはよう二人とも! 昨日はお疲れさんだったな。まさかゴブリンが出てくるとは思わなかったもんな」
そこへロイが教室へ入ってきて、昨日の話をしだした。ゴルドはさっきの話は本当なのかと呟いてから三人に尋ねる。
「だ、だが、フィーシアとミトラは貴族だ。親が許さないんじゃないか?」
「お父様は全然応援してくれたわ。装備ももらったし」
「うん。僕は自分で稼いだお金を持って帰ったら褒められたよ。ロイ君が強いのは知っていたし、リアムさんも居るんだ。それとフィーシアさんのところの執事さんも来ているから全然危なくないし」
「マジか……」
「どうした?」
「お――」
そこで露骨にがっくりした顔になるゴルド。
だが、どうしてその顔なのかは読めず、ロイが尋ねるとゴルドはなにかを言おうとした。
「おはようみんな。昨日はお疲れ様」
「……なんでもない」
「ん? ゴルド?」
そこでリアムが教室に入ってきた。ゴルドはハッとなり口をつぐみ、サッと前を向いた。
「なんだ?」
「気にするな……!」
もう一度ロイが尋ねてみるも、何故か不機嫌な調子で返された。首を傾げていると、フィーシアが話しだす。
「ねえ、ゴブリンってそんなに珍しいの? みんなの口ぶりからすると、そうみたいなんだけどザグレブに聞くと最近多いみたいじゃない?」
「……まあ、そうなんだよな」
「……」
事情はある程度知っているロイが言葉を濁し、リアムはなにも言わずに席についた。くわえて執事のザグレブがどうしてそこまで知っているのかと驚いた。
そこでクラスメイト達も寄ってくる。
「フィーシアさん、相変わらず豪胆ね……まさか冒険者の真似事をするとは思わなかったわ」
「だな。というかロイの剣術授業を見ていたらそれくらいはできそうだけど、ミトラとか素人を連れていて大丈夫なもんなの?」
「今も話題になっていたけどゴブリンが出なければって感じかなあ。俺もギルドに行ってから聞くようになったし
「なんか最近、そういうよね。ウチ、商店をやっているんだけど物資が狙われることが多いってぼやいてた」
「へー、やっぱそうなんだ」
話題が商人の娘に移ってフィーシアもそっちに気を回していた。ロイはひとまず朝の準備をする。
「(というか、ザグレブさんだけじゃなくて商人の子でもそういう認識なのか。不安にさせないように濁したけど、思った以上に蔓延しているな)」
テリアが自分をギルドに入れるため尽力してくれた理由がなんとなく分かったような気がすると胸中で思う。
リアムがギルドに来るようになったこともイレギュラーだが、テリア的には助かるだろうなとも。
「おっと……」
「なんだ村人、寄りかかってくるんじゃない」
「悪い、ちょっとトイレに行ってくる」
「お、おい」
顔色が悪いロイにゴルドが気づいて止めようとしたが、そのまま行ってしまう。
「ロイ……」
リアムは渋い顔でその様子を見ていたが、自分が声をかけたところで意味がないと分かっているため追いかけることはしなかった。
「――なんだけど、ロイ君はどう思う? あれ?」
「村人はトイレに行ったぞ」
「そうなんだ。うーん、依頼のことを聞きたかったんだけど」
「なあ、ミトラ。お前、ギルドに行っていたみたいだが、大丈夫だったのか?」
「え? うん。さっきも言ったけど父さんは許可してくれたし、ロイ君とリアムさんが強いから安心だよ」
「実戦はさすがにやってないよなお前は」
「えっと、ちょっとだけやったよ。はは、怖かったけどいい経験になったよ」
「……っ」
ミトラがはにかんで言うとゴルドは信じられないといった顔で目を見開いた後、席についた。
「(放課後、か……)」
話を終えたゴルドは腕組みをしながら椅子に座り、考え事をしていた。
ロイが戻って来たタイミングでアセーファが入ってきてホームルームが始まり、今日もいつもの一日が始まる――
「おはようミトラ! いやあ、昨日は凄かったわねえ」
「うん! まあ足が震えていたんだけどね……はは」
「そりゃ私もよ? あんなに力が入らないとは思わなかった」
ゴブリン討伐の翌日。
朝、教室に入って来たミトラを見て、すでに来ていたフィーシアが声をかけた。
ミトラは正直にその時の気持ちを吐露し、興奮冷めやらぬといった感じのフィーシア。しかし彼女は授業のようにはいかないとため息を吐いていた。
「よう」
「あ、おはようゴルド君」
「おっはよー! で、次はゴブリンも相手したいわね。二人なら――」
「……!? ちょ、待てフィーシア! ゴブリンを相手だと? どういうことだ!?」
「え?」
挨拶をした後、ミトラにまた話しかけていると、そこでゴルドに止められた。
ゴブリンについて驚愕しているゴルドへフィーシアが唇に指を当てて言う。
「昨日からロイと一緒にギルドへ行って依頼を受けるようにしたの! いわばギルド部って感じね!」
「はあ!?」
「なんかパッとする部活が無くて、それだったらロイ君についていってもいいかなってフィーシアさんが……」
「そんな理由で……ま、魔物と戦ったのか……?」
ゴルドが冷や汗を掻いて尋ねると、二人は同時に頷いた。ゴルドは口をあんぐりと開けてから呆然としていた。
「よーっす!」
「あ、ロイおはよう! 昨日はありがとう!」
「おはようロイ君」
「おはよう二人とも! 昨日はお疲れさんだったな。まさかゴブリンが出てくるとは思わなかったもんな」
そこへロイが教室へ入ってきて、昨日の話をしだした。ゴルドはさっきの話は本当なのかと呟いてから三人に尋ねる。
「だ、だが、フィーシアとミトラは貴族だ。親が許さないんじゃないか?」
「お父様は全然応援してくれたわ。装備ももらったし」
「うん。僕は自分で稼いだお金を持って帰ったら褒められたよ。ロイ君が強いのは知っていたし、リアムさんも居るんだ。それとフィーシアさんのところの執事さんも来ているから全然危なくないし」
「マジか……」
「どうした?」
「お――」
そこで露骨にがっくりした顔になるゴルド。
だが、どうしてその顔なのかは読めず、ロイが尋ねるとゴルドはなにかを言おうとした。
「おはようみんな。昨日はお疲れ様」
「……なんでもない」
「ん? ゴルド?」
そこでリアムが教室に入ってきた。ゴルドはハッとなり口をつぐみ、サッと前を向いた。
「なんだ?」
「気にするな……!」
もう一度ロイが尋ねてみるも、何故か不機嫌な調子で返された。首を傾げていると、フィーシアが話しだす。
「ねえ、ゴブリンってそんなに珍しいの? みんなの口ぶりからすると、そうみたいなんだけどザグレブに聞くと最近多いみたいじゃない?」
「……まあ、そうなんだよな」
「……」
事情はある程度知っているロイが言葉を濁し、リアムはなにも言わずに席についた。くわえて執事のザグレブがどうしてそこまで知っているのかと驚いた。
そこでクラスメイト達も寄ってくる。
「フィーシアさん、相変わらず豪胆ね……まさか冒険者の真似事をするとは思わなかったわ」
「だな。というかロイの剣術授業を見ていたらそれくらいはできそうだけど、ミトラとか素人を連れていて大丈夫なもんなの?」
「今も話題になっていたけどゴブリンが出なければって感じかなあ。俺もギルドに行ってから聞くようになったし
「なんか最近、そういうよね。ウチ、商店をやっているんだけど物資が狙われることが多いってぼやいてた」
「へー、やっぱそうなんだ」
話題が商人の娘に移ってフィーシアもそっちに気を回していた。ロイはひとまず朝の準備をする。
「(というか、ザグレブさんだけじゃなくて商人の子でもそういう認識なのか。不安にさせないように濁したけど、思った以上に蔓延しているな)」
テリアが自分をギルドに入れるため尽力してくれた理由がなんとなく分かったような気がすると胸中で思う。
リアムがギルドに来るようになったこともイレギュラーだが、テリア的には助かるだろうなとも。
「おっと……」
「なんだ村人、寄りかかってくるんじゃない」
「悪い、ちょっとトイレに行ってくる」
「お、おい」
顔色が悪いロイにゴルドが気づいて止めようとしたが、そのまま行ってしまう。
「ロイ……」
リアムは渋い顔でその様子を見ていたが、自分が声をかけたところで意味がないと分かっているため追いかけることはしなかった。
「――なんだけど、ロイ君はどう思う? あれ?」
「村人はトイレに行ったぞ」
「そうなんだ。うーん、依頼のことを聞きたかったんだけど」
「なあ、ミトラ。お前、ギルドに行っていたみたいだが、大丈夫だったのか?」
「え? うん。さっきも言ったけど父さんは許可してくれたし、ロイ君とリアムさんが強いから安心だよ」
「実戦はさすがにやってないよなお前は」
「えっと、ちょっとだけやったよ。はは、怖かったけどいい経験になったよ」
「……っ」
ミトラがはにかんで言うとゴルドは信じられないといった顔で目を見開いた後、席についた。
「(放課後、か……)」
話を終えたゴルドは腕組みをしながら椅子に座り、考え事をしていた。
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