魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

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第二章

第45話 国境の前にある砦

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「まだ遠いのか」
<周辺の調査を続行。町らしき影が一つ>
「一度休憩を挟むか」
「オッケー」
「町長さんにお話をしておきましょう」

 出発して5時間ほどが経過しお昼前に俺達は道中にある町に到着した。
 クレイズの町から砦のような場所が一つあるだけと聞いていたが、どうやらクレイズまでが遠いため町を興したようだ。
 町にはその名残なのか要塞のような大きい施設が遠くからでも見えた。
 そのお膝元に町があるみたいだな。

「外壁はどこの町もあるんだな」
「やはり魔物は怖いですからね。特にこの辺は木も少ないので、町が丸見えだと町中へ入ってきますから」
「なるほどな。ここに来るまでにも結構出くわしたからそういうものか」

 俺はちょっと前に倒した犬っぽい魔物を倒したことを思い出す。
 ゲイズタートルもそうだが、ヴァイスを見ても怯まず、荷台の人間を襲うため近づいてきたのだ。
 俺の足にも噛みついて来たけど、牙が通るわけもなく文字通り蹴散らしておいた。
 冒険者ギルドに持って行くと肉と毛皮にしてくれるので荷台に乗せている。

「さて、さすがにここは元・砦だけあって俺もまたげそうにないな。アウラ様達だけで行ってもらえるかい?」
<丁度お昼ですし、少し食事をなさってきては?>
「リクに悪いわ」
「いいって。どうせこの身体じゃお腹も空かない。町長さんとの話をしながらとかいいんじゃないか? 騎士さんも護衛しつつなにか食べてさ」

 シャルが困ったように言う。けど、今から国に救援を呼ぶんだから体力はつけておいてほしいと思う。やはり人間、食わないと力が出ない。

「少しお時間がかかるかもしれませんが……」
「ああ、ゆっくりってわけにはいかないだろうけどここで待っているから」
「うん」

 片膝をついてコクピットから二人を下ろすと、騎士達も荷台から降りて合流した。

「では、しばしお待ちを。姫様達は守り抜いて見せます」
「まあ、自国の町だしまだ大丈夫だろ」

 俺がそういうと騎士達は小さく頷いて町へと向かう。逆に門からはなにごとかと武器を持った人達がこちらへ来ていた。

<この距離なら音声を拾えますよ>
「そうだな」

 俺は耳で聞くイメージを強くして集音性を高める。ここから門のあたりまでは500メートくらいだが一キロくらいまでなら拾えるはずだ。

「ひ、姫様!? 一体なにが……」
「急を要するお話です。この町の一番偉い方に会いたいのですが」
「しょ、承知しました! ギルドマスターと隊長、それとオンディーヌ伯爵へ伝令!」
「こちらへどうぞ。騎士殿も」

 どうやら揉めることもなく町へ入れたようだ。ま、嘘をつくメリットがあまりないか。騎士がいたのも大きいみたいだから結果的に良かったんだろう。

「伯爵殿がこの町を?」
「ええ、ヘルブスト国から商人などが移動する際、ここに立ち寄る者が多かったので――」
「領主であればお父様に報告がいっているでしょうね――」

<音声ロスト。アウラ様達は範囲外へ>
「オッケー。ま、気長に待つしかないか」
<とりあえず今はそうしましょう>
「今は……?」

 サクヤが妙なことを言ったなと思い、反芻する俺。するとすぐにこんな返答があった。

<シャル様が見つけてくれたタブレットを改造しております。これに電子化されたマスターのデータを移すことで、タブレットから3Dイメージを視覚化できると考えています>
「おお……」

 なんかAIっぽいことを……っぽいか? をやっているらしい。
 飯とか食えなくても、こうやって町に入れない場合は同行できるのでいいかもしれないな。

「あ、でもその間ヴァイスはどうするんだ?」
<今のマスターはデータだけの存在なのでタブレットとこちらに自由に行き来できるようになります>
「それは便利だな。楽しみに待っているよ」
<はい。少なくともヘルブスト国へ到着したら必要だと思います。それと最悪の場合、私が機体を動かすことができるのでご安心ください>

 そういうこともできるらしい。とりあえず期待して待ってみようか

◆ ◇ ◆

 ――リク様と離れた私達はシャルや騎士と共に案内人も後をついていく。やはりここまでは王都陥落の報せは届いてはいない。
 ……あの時、お父様達は残りましたが脱出を試みた者も多数いるはず。他の町や村に到着していると良いのですが。

「砦の町って聞いていたからもうちょっとこざっぱりしていると思ったけど、活気があるわね」
「ヘルブスト国から来ると必ずここに立ち寄りますからね。自然と人が集まるんですよ。ここから姫様達が立ち寄ったクレイブの町か、東か西どちらかを選ぶ感じですよ」
「そっか……となると、あいつらが攻めてくるのもその方向からあり得るのか……」
「なんです?」
「いえ、なんでもありません」

 シャルが顎に指を当てて周囲を見ながらそう口にする。強固な砦ですが、魔兵機《ゾルダート》を目の当たりにした私達には不安が残ります。
 そのまま砦の方へ案内され、中へ入ると古い外観とは違い、しっかりした造りでとても綺麗でした。丁寧にお掃除をしているものと思われますね。

 そして人数が多いということで会議室へと通された私達はメンバーが揃うのを待つ。
 
「お待たせいたしました。私がこの町の指揮を執るオンディーヌ・ドライガと申します」
「エトワール王国、第一王女のアウラです」
「第二王女のシャルル。よろしくお願いするわ」
「それで今回はどのような用件で……?」

 金髪を真ん中分けにした彼は、眼鏡の下にあるややツリ目な眼をこちらに向けて首をかしげる。
 私はすぐにここに来た理由を話すことにしました――
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