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第二章
第63話 混戦
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「……!」
「ポンコツが……!」
ビッダーの振るう大剣を逸らしながら回り込もうとする敵の魔兵機《ゾルダート》。
その動きに対応するためビッダーが相手と距離を取るように後ろに下がる。
敵のパイロットはその動きを見て舌打ちをし、今度は自分から仕掛けていく。
「片腕しかない魔兵機《ゾルダート》で勝てるものか!」
「さて、どうかな……!」
長剣の振り下ろしを寸前で回避し、前進して体当たりを繰り出すビッダー。
バランスを崩したところに左腕に備えた大剣が頭部を狙い、横薙ぎで攻撃を仕掛けた。
敵はそれを咄嗟に長剣でガードするが、大剣の重量により激しい衝撃を受けていた。
「ぐ……!? 動きに無駄がないっ」
「白い魔兵機《ゾルダート》に比べれば俺達の巨人兵器……いや、リク殿は機体と言っていたか。この機体はそれほど強いとは思えんが――」
ビッダーがそう口にしながら足についている素早くステップを踏んだ。
「馬鹿め、こんな狭い場所でそんな動きをしたら崖にぶつかるぞ! 気が違ったか!」
「そうかな?」
敵の言う通り移動した側に岩壁があり、ぶつかる寸前に見えた。だが、ビッダーは素早く操作を行い今度は足を上げて壁を蹴った。
「なに!?」
「こういうこともできるぞ」
その時、ビッダーの魔兵機《ゾルダート》がぐんと距離を詰め、加速の勢いを加えた斬撃を繰り出した。
「うおおお!?」
派手な金属音が鳴り響き、コクピットの近くがひしゃげて駆動系に使っている油が飛び散った。
ただでさえ重い大剣に加速と振り下ろし、それと少し浮いていたので重量がのったため高威力となった。
「そんな動きが……!」
「白い魔兵機《ゾルダート》の動きを参考にしたのだ。俺達は模擬戦でしかお互いの機体で戦ったことは無い。だからそれ以上の動きを考えることができないのだ」
優位性があったのは間違いないが、それ以上の敵を想定していないので戦略を考えていない。そこが弱点だとビッダーはリクと戦ったあとに考えていた。
「やるじゃないか……! だが、少し遅かったな」
「む……!」
攻撃を受けたものの敵魔兵機《ゾルダート》が行動不能になったわけではない。ビッダーが追撃をしようとしたところ、敵の左腕が大剣を持つ手を掴む。
「くっ……!」
「右腕のない貴様ではこれを外せまい! やれ!」
その瞬間、渓谷の奥からもう一機、魔兵機《ゾルダート》が姿を現した。
足元には騎士が居て、すり抜けていく。
「うおおお!」
「なるほど、後続が追い付いたか……! それはそれで足止めをするだけだ」
「なんと!?」
斧を持っていた魔兵機《ゾルダート》がビッダー機へ襲い掛かったその時、足を上げて蹴り飛ばした。斧持ち魔兵機《ゾルダート》のパイロットが驚愕の声を上げる。
「出力をあげれば……!」
「ぬうううう!?」
さらにビッダーは踏ん張り、腕を掴んでいる魔兵機《ゾルダート》を押し始める。
指揮官機以外、一般の機体は性能に差はない。
となると、あとはパイロットの腕次第なのだ。
「そりゃ!」
「し、しま――」
慌てて長剣の魔兵機《ゾルダート》がも出力を上げようとしたが、先手を取ったビッダーに転ばされた。
「こいつ!」
すかさず斧の魔兵機《ゾルダート》がビッダー機へ迫る。察知したビッダーは身を翻して大剣を振り回した。
「だりゃぁぁ!!」
「反撃するのか……!? ええい、このまま押し切る!」
直後、大剣と斧が交錯しお互いの機体がザザザ……と、下がる。
そのままお互い距離を取ることなく武器を振り回していく。
「なんて激しい戦いだ……! 町へ行きます!」
「任せる!」
静かな渓谷に鳴り響く重い金属音の中を駆け抜けていく騎士達。彼らが二機の間を避けながら声を上げる。
「……」
「どうした、騎士を追わないのか?」
大剣と斧が接触し押し合いになった。そこでグライアードの騎士が笑いながらそう口にする。するとビッダーは斧を逸らして敵のバランスを崩した。
「魔兵機《ゾルダート》が町へ行く方が危険だからな。勝てずともできるだけ動きを止める」
「うお……!? くそ、どうしてここまで操縦が上手い!?」
「人間はアレだったがジョンビエルは操縦が上手かった。それに加えて白い魔兵機《ゾルダート》の動きで学習した。できないことの方が多いが、参考にさせてもらっている」
「なら二体同時はどうか……!!」
そこへ倒れていた長剣の魔兵機《ゾルダート》が起き上がり背後から斬りかかってきた。ビッダーは横に移動してやり過ごす。
「おい、大丈夫か? 同時攻撃でいくぞ」
「ああ。それにしても……しぶとい」
「……」
さてどうするかとビッダー機は半身で大剣を構えて黙り込む。
ヴァイスはどう戦っていたか? ここは狭いので同士討ちはいけるか? そう考えていたところで渓谷から声が聞こえてくる。
「しつこい爺さんだな」
「ふん、貴様もその巨体でよく動くわ!」
「ガエイン殿か!」
「む、ビッダー。ここで戦っておったか! ……よく止めてくれたのう」
「隊長!」
「まだこんなことにに居たのかい? そのポンコツくらいさっさと倒して欲しいもんだけど」
「「も、申し訳ありません……」」
飛び出してきたのはガエインとディッター機だった。二人の真逆な言葉が今の状況を示していた。
「ガエイン殿、騎士達が町へ行きました。あなたも行った方がいいかと」
「……問題ない。騎士だけならもつじゃろうここで固まっているなら魔兵機《ゾルダート》を相手にした方が良かろう」
「三台を相手にするつもりかい? ガラクタとおいぼれが生意気を言う」
ディッターがガエインに剣を向けながら言う。それに対しガエインが笑いながら答えた。
「その老いぼれとガラクタに苦戦しているのに笑わせるわ。さあ、ワシと戦え。さもなくば後ろから刺されると思え」
「老いぼれが。……町は騎士に任せてさっさと片付けるぞ」
ディッターはいつもの笑みを消し、ガエインへと攻撃を開始した。
「ポンコツが……!」
ビッダーの振るう大剣を逸らしながら回り込もうとする敵の魔兵機《ゾルダート》。
その動きに対応するためビッダーが相手と距離を取るように後ろに下がる。
敵のパイロットはその動きを見て舌打ちをし、今度は自分から仕掛けていく。
「片腕しかない魔兵機《ゾルダート》で勝てるものか!」
「さて、どうかな……!」
長剣の振り下ろしを寸前で回避し、前進して体当たりを繰り出すビッダー。
バランスを崩したところに左腕に備えた大剣が頭部を狙い、横薙ぎで攻撃を仕掛けた。
敵はそれを咄嗟に長剣でガードするが、大剣の重量により激しい衝撃を受けていた。
「ぐ……!? 動きに無駄がないっ」
「白い魔兵機《ゾルダート》に比べれば俺達の巨人兵器……いや、リク殿は機体と言っていたか。この機体はそれほど強いとは思えんが――」
ビッダーがそう口にしながら足についている素早くステップを踏んだ。
「馬鹿め、こんな狭い場所でそんな動きをしたら崖にぶつかるぞ! 気が違ったか!」
「そうかな?」
敵の言う通り移動した側に岩壁があり、ぶつかる寸前に見えた。だが、ビッダーは素早く操作を行い今度は足を上げて壁を蹴った。
「なに!?」
「こういうこともできるぞ」
その時、ビッダーの魔兵機《ゾルダート》がぐんと距離を詰め、加速の勢いを加えた斬撃を繰り出した。
「うおおお!?」
派手な金属音が鳴り響き、コクピットの近くがひしゃげて駆動系に使っている油が飛び散った。
ただでさえ重い大剣に加速と振り下ろし、それと少し浮いていたので重量がのったため高威力となった。
「そんな動きが……!」
「白い魔兵機《ゾルダート》の動きを参考にしたのだ。俺達は模擬戦でしかお互いの機体で戦ったことは無い。だからそれ以上の動きを考えることができないのだ」
優位性があったのは間違いないが、それ以上の敵を想定していないので戦略を考えていない。そこが弱点だとビッダーはリクと戦ったあとに考えていた。
「やるじゃないか……! だが、少し遅かったな」
「む……!」
攻撃を受けたものの敵魔兵機《ゾルダート》が行動不能になったわけではない。ビッダーが追撃をしようとしたところ、敵の左腕が大剣を持つ手を掴む。
「くっ……!」
「右腕のない貴様ではこれを外せまい! やれ!」
その瞬間、渓谷の奥からもう一機、魔兵機《ゾルダート》が姿を現した。
足元には騎士が居て、すり抜けていく。
「うおおお!」
「なるほど、後続が追い付いたか……! それはそれで足止めをするだけだ」
「なんと!?」
斧を持っていた魔兵機《ゾルダート》がビッダー機へ襲い掛かったその時、足を上げて蹴り飛ばした。斧持ち魔兵機《ゾルダート》のパイロットが驚愕の声を上げる。
「出力をあげれば……!」
「ぬうううう!?」
さらにビッダーは踏ん張り、腕を掴んでいる魔兵機《ゾルダート》を押し始める。
指揮官機以外、一般の機体は性能に差はない。
となると、あとはパイロットの腕次第なのだ。
「そりゃ!」
「し、しま――」
慌てて長剣の魔兵機《ゾルダート》がも出力を上げようとしたが、先手を取ったビッダーに転ばされた。
「こいつ!」
すかさず斧の魔兵機《ゾルダート》がビッダー機へ迫る。察知したビッダーは身を翻して大剣を振り回した。
「だりゃぁぁ!!」
「反撃するのか……!? ええい、このまま押し切る!」
直後、大剣と斧が交錯しお互いの機体がザザザ……と、下がる。
そのままお互い距離を取ることなく武器を振り回していく。
「なんて激しい戦いだ……! 町へ行きます!」
「任せる!」
静かな渓谷に鳴り響く重い金属音の中を駆け抜けていく騎士達。彼らが二機の間を避けながら声を上げる。
「……」
「どうした、騎士を追わないのか?」
大剣と斧が接触し押し合いになった。そこでグライアードの騎士が笑いながらそう口にする。するとビッダーは斧を逸らして敵のバランスを崩した。
「魔兵機《ゾルダート》が町へ行く方が危険だからな。勝てずともできるだけ動きを止める」
「うお……!? くそ、どうしてここまで操縦が上手い!?」
「人間はアレだったがジョンビエルは操縦が上手かった。それに加えて白い魔兵機《ゾルダート》の動きで学習した。できないことの方が多いが、参考にさせてもらっている」
「なら二体同時はどうか……!!」
そこへ倒れていた長剣の魔兵機《ゾルダート》が起き上がり背後から斬りかかってきた。ビッダーは横に移動してやり過ごす。
「おい、大丈夫か? 同時攻撃でいくぞ」
「ああ。それにしても……しぶとい」
「……」
さてどうするかとビッダー機は半身で大剣を構えて黙り込む。
ヴァイスはどう戦っていたか? ここは狭いので同士討ちはいけるか? そう考えていたところで渓谷から声が聞こえてくる。
「しつこい爺さんだな」
「ふん、貴様もその巨体でよく動くわ!」
「ガエイン殿か!」
「む、ビッダー。ここで戦っておったか! ……よく止めてくれたのう」
「隊長!」
「まだこんなことにに居たのかい? そのポンコツくらいさっさと倒して欲しいもんだけど」
「「も、申し訳ありません……」」
飛び出してきたのはガエインとディッター機だった。二人の真逆な言葉が今の状況を示していた。
「ガエイン殿、騎士達が町へ行きました。あなたも行った方がいいかと」
「……問題ない。騎士だけならもつじゃろうここで固まっているなら魔兵機《ゾルダート》を相手にした方が良かろう」
「三台を相手にするつもりかい? ガラクタとおいぼれが生意気を言う」
ディッターがガエインに剣を向けながら言う。それに対しガエインが笑いながら答えた。
「その老いぼれとガラクタに苦戦しているのに笑わせるわ。さあ、ワシと戦え。さもなくば後ろから刺されると思え」
「老いぼれが。……町は騎士に任せてさっさと片付けるぞ」
ディッターはいつもの笑みを消し、ガエインへと攻撃を開始した。
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