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第百三十六話 報酬をもらって再び出発というもの

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「というわけで報酬ですが、お金は必要ないとウルカから聞いています。なので別のものをいただきたい」
「それは……構いませんが、ここも辺境に近い町ですぞ。人員以外でなにか差し上げられるものがあるか……」

 ひとまずカトブレパス騒動は幕を閉じたので、続けてラースさんが交渉を進めてくれる。彼の言う通り、僕はお金を持っているのでそれ以外の報酬が欲しい。
 町長のモダンさんが首を傾げていると、ラースさんが口を開く。

「ひとまず人員は向こうが落ち着いてから借りに来ます。それまでに有志を募ってもらえれば。それと、作物の種や苗などを都合していただけると」
「おお! 確かに農産物は種類があると良いですな。もし向こうで豊作なら取引もできる。それで良いのでしたら早速手配しますぞ」
「お願いします!」

 よしよし、やってくる騎士さん達も色々と持ってくると思うけど、それはそれとしてこの地域の野菜なんかがあると嬉しい。
 話が成立したので僕とラースさんも外の馬車へと向かう。

「楽しみだねー」
「ああ。まずは村からだけど、発展したら領地になるし、頑張っていこうな」
「僕はどっちでもいいけどね。のんびり暮らせれば」
「はは、欲がないな」

 そんな会話をしていると、町長さんの屋敷前に止めていた馬車まで戻ってくる。そこで御者のトーリアさんが手を振っていた。

「終わったか。ったく、俺はずっと留守番で退屈だぜ?」
「信頼して護衛を任せているんだって。ありがとう」
「ま、いいけどな。というかアニーが見たらまた喜びそうなのが増えたなあ」

 トーリアさんが首をぐるりと首を回した先にはカトブレパスのフォルテが居た。
 相変わらずペット達と仲良くなにか話している様子だ。

「クルル、クルル!」
「うふふ~、結構かわいいですねぇ」
「単眼は怖いイメージがありましたけど、これならシルヴァやボルカノさんと同じく違和感がありませんね」
「それはボルカノに慣れたせいだと思いますよぅ? あ、ラースとウルカさん、終わりましたかぁ?」
「お疲れ様ですウルカ様」

 じゃれているフォルテを撫でていたベルナさんがこちらに気付いて手を振っていた。バスレさんは僕に気付くと小走りに来て抱っこをする。

「もう出発するのですか?」
「ちょっとだけ待つよ。町長さんに野菜の種や苗をもらうようにしているんだ」
「辺境に植えるのですね」
「そうそう。なにが育ってなにがダメなのか知れそうだし」

 バスレさんに説明をしていると、フードを被ったオオグレさんが言う。

【なるほど、それはいいでござるな。米の苗があればいいでござるなあ。拙者の故郷は稲穂がキレイでござったよ】
「というかオオグレさんはいつ亡くなったんでしょうねぇ」
【まったく覚えておらんでござる】

 この通り脳みそがないでござるからと笑いながら、ブラックジョークをかましていた。そこで寝そべっているボルカノが話しかけてきた。

【ラースよ。我を外に出してくれ。子供が群がって来て困る】
「えー、いっちゃうの?」
「お話ししようよー」
「あそぼうー」

 ボルカノは喋るドラゴンなので大人気だ。やはり子供は大きくて強そうなのが好きなのかもしれない。さすがに身動きが取れなさそうなのでバスレさんから降ろしてもらい、彼等のところへ。

「ごめんよ、僕達はそろそろ出発するからボルカノには先に外に出てもらうよ」
「えー!」
「ここから先にある辺境で暮らしているから、村ができたらおいでよ」
「あーあ、かっこよかったのにー」

 僕よりも小さい子達なので諭すように言うと、ちゃんと聞き分けてくれた。ここからあまり遠くないところにいるというのも効果があったかな。

「それじゃちょっと行ってくるよ」
「お願い、ラースさん!」

 その瞬間、ボルカノの大きな体は姿を消した。子供たちはがっかりしながらも各自別の遊びをするため去っていく。
 すると男の子が一人、僕のところへ戻って来た。

「兄ちゃん兄ちゃん!」
「どうしたの?」
「ボルカノって兄ちゃんの友達なんだよな?」
「まあ、一応そうなるね」
「すげぇー! 俺達とあんまり変わらないのにあんなすげえの持っているんだな! 俺もいつか持てるかな?」
「うーん、僕はちょっと特殊だから難しいかも?」
「そっかぁ……」
「でも、強くなって相手に認められるくらいになればあそこにいるシルヴァみたいに一緒に居てくれるようになるかもね」
「わぉん?」

 僕が男の子の頭に手を置いてからシルヴァを指差すと、彼は目を輝かせていた。

「あれもそうなのか! すげえ、俺強くなる! 兄ちゃんみたいにいっぱいモフモフとかドラゴンと友達になるんだ!」
「無理はしないようにね」
「うん! またなー!」

 男の子はそう言って駆け出して行った。なんだか昔のフォルドみたいで微笑ましいや。

「ウルカ様、お持ちしましたよ」
「あ、どうもありがとうございます」

 そんなやり取りをしている間に町長さんが報酬を持ってきてくれたようだ。大きな荷台に載っているかごや袋一杯に種と苗が入っているのを見て感動する。

「これは重たいから外に出たらボルカノに引いてもらおうかな」
「クルル!」
「こけー」

 するとフォルテが僕のところへ来て鼻を鳴らす。ジェニファーを見る限りどうやら任せてくれと言っている様子。

「え? フォルテが持つって? 重いよこれ」
「クル!」
「持つみたいですねぇ」
「大丈夫かな……」

 僕が伏せているフォルテに袋を載せてあげると勢いよく立ちあが――

「クルルル!?」

 ――れなかった。やはりこれ全部は無理だった。馬車で引くなら多分いけると思うけど。

「大丈夫かい? 役に立ちたいのはわかるけど、無理はしないでね。こっちの荷台をハリヤーと引いてもらおうかな」
「クル」

 仕方ないとフォルテは一声鳴いて伏せた。ハリヤーと一緒に手綱をつけてあげると、ハリヤーが『ゆっくり行きましょう』といった感じでフォルテに声をかけていた。

「それじゃ、また来ると思いますのでその時はよろしくお願いします!」
「ええ、お待ちしています! 人員は募集しておきますので」
「わかりました。一度、1か月後に来ますねー。みんな行こうか」
「はい」
「わかりましたぁ」
「では、馬車に乗ってくれ」

 町長であるモダンさんにそう告げて僕達は馬車を進ませる。外に出てボルカノとラースさんと合流するとそのまま再び辺境へと向かう。
 後三日ほどで新天地、か。新しい仲間も加わったし、なんとかなりそうかな?
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