211 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その232 虎穴
しおりを挟むエリックの機転で何とか先に拠点に到着することに成功し、周囲を警戒していた騎士やサンドクラッドの冒険者を拠点内に撤収させることに成功した。
「こんな板じゃ流石に持たないねー。外で迎撃する必要があるんじゃないー?」
「いや、俺の妹の事だ。ビューリックの方たちはここに居てくれ。国同士のいざこざに発展する可能性があるからな」
エリックは迎撃について提案するけど、レイドさんはそれを断った。私達は冒険者で、国に属している訳でも無いし、ましてここは国外なので負けなければ一国を相手にしたところで御咎めは無い。まあ、その国には今後行けないけどね。そこにカルエラートさんが装備を整えながら口を開く。
「レイドの言うとおりだ。だが、念のため交戦の準備をしておいてくれ、王とホイットはここぞとばかりにビューリックを潰しに来るかもしれない。事が終わった後、国へ攻め入る口実にすることも十分ある。それくらいのクズだからだ」
「カルエラートさんはヴィオーラにいたんですね」
「ああ。私は聖騎士団の団員だったんだが、ホイットは終始あの調子でな。性格は悪いし、婚約者がいても複数の女性と関係を持つというだらしのない男だ。向こうの両親が私を気に入って婚約者へ仕立てたけど、まっぴらごめんだったから、ヴィオーラに立ち寄ったディクラインを追って国から逃げたんだ。両親には悪い事をしたと思うけど、兄が居たし、浮気性は知れ渡っていたから御咎めは無いだろう」
「苦労したんですね……女の敵は許せませんね!」
フレーレがモーニングスターを握りしめて地団太を踏む。アントンの件はまだ忘れてはいないらしい。準備を進めているとレイドさんとママが走ってくるのが見えた。
「レイド、アイディール。セイラは?」
「まだ寝ているわ。念のためを考えるなら転移陣で塔へ預けた方がいいかもしれないけど……」
「間に合わないだろうな……何、ただの騎士団程度なら俺達で充分だろ。行くぞ、レイド」
「ええ。すいませんこんな時に……」
心底すまなさそうな顔をするレイドさんに私は肩を叩きながら声をかける。
「気にしないでレイドさん。セイラは大事な仲間だし! 塔は気になるけど、拠点を壊されるのを黙って見ているわけにもいかないわ。それに、お母さんの仇みたいだし、ね」
「ルーナ……ああ、問い詰めて真相を聞かないとな」
レイドさんとフレーレと一緒に入り口まで行く。そこには守護獣達も待っていた。
<水臭いのう、わらわ達も暴れさせてくれ>
<ふっふっふ……今宵のレイピアは血に飢えてるにゃ……>
<加勢するぞ>
<話は聞いたよ、久しぶりに頭のくる相手みたいだね。オイラも行く!>
ジャンナとリリーは待機するらしい。女神二人は人間同士の争いには関わらないと、傍観を決め込んだ。後はカイムさんもアネモネさんの刀を装備して参戦だ。
「病み上がりですが、私も」
その時だ!
ドゴォン!
ヒュ……! カカカカ!
ヴィオーラの騎士達が攻めてきた! 弓が壁に刺さる音がし、爆発はどうやら魔法のみたい。騎士でも魔法を使える者が居るみたいね。
カルエラートさんが盾を構え、入り口を飛び出し私達は後に続く。
◆ ◇ ◆
「……そろそろだろうか?」
「予知の結果は確かそうだ。戻らなくて良いのか?」
ヴァイゼと黄金の騎士アルトリウスが相変わらずテーブルを囲み話をしていた。ヴァイゼの両脇には忍びとアステリオス。アルトリウスの横には緑と紫の騎士が立っていた。
「俺が戻らなくても勝つ。訓練の事はさておき、あそこでルーナ達を追いかえしていなかったら拠点は聖騎士団に占拠されていたからな……感謝している」
「まあ、利害は一致していたから気にしないでいい。あそこが潰されると、カンザキを倒す事が難しくなるだろう。そうなるとカンザキを倒して欲しい私からすれば面白くない訳だ」
「拙者達は加勢しなくてもいいでござるか?」
「お前達は元々別世界の者だ。そこまでしなくてもよかろう。それに、いい訓練になる」
ククっと笑うヴァイゼに、一同は背筋が寒くなる。
「我々が追い返す予定だったんですけどね」
「ま、予知も完璧じゃない。あそこで私達が倒されなかった、というのが最善だったんだよ。さて、勝つには勝つだろうけど、その後が気になる……」
くい、っとお茶を飲みカップを置くアルトリウスだった。
◆ ◇ ◆
「出て来たぞ! 囲め囲めぇ!」
先程聖騎士団と会った場所と違い、拠点周りは開けている。騎馬が動くには絶好の場所、だけど怯んでいては囲まれて終わりだ。私は残りの補助魔法を全員にかけると、弓を取り出した。
「向かってくる敵は撃ち落すわ! 近くの敵はお願い!」
「了解した、馬上の騎士を狙ってくれると助かる!」
黄金の騎士が言った言葉を思い出し、剣ではなく弓で戦う事にした。よく考えれば前衛は多いのだ、パワフル・オブ・ベヒモスで力は上がるし、お父さんとの訓練で剣の練習もしたけど、周囲をよく見ておけば分断されたり後ろからやられるなんてことは無いと思ったのだ。
「馬も狙うか……可哀相だけど!」
ヒヒィン!?
魔力を込めた矢を放ち、馬や騎士にヒットさせていく。普通の鎧であれば魔力矢で貫通させること可能だった。そこに一人の騎士が弓を厄介と感じたのか、突っ込んでくる!
「弓兵がそんなに目立つところに!」
勿論それは分かっているわよ! ピューイ! 口笛を吹いた瞬間、深い草むらからレジナが飛び出してくる!
「ガウゥァアアア!」
「う、うわ!? 狼!?」
「わん! わぉーん!」
ヒヒーン!
ドス!
「ぐあ……」
「ナイスよレジナ、シルバ!」
草むらからバッと出てきた二匹に馬が驚き、バランスを崩したところに私の矢が肩に刺さって落馬した。頭から落ちたからあれは痛いだろうなあ……。
そのまま私は奥に居た魔法を使う騎士と、同じく弓兵を牽制しながらみんなの援護に回る。さっきのホイットとかいう隊長と王様の姿はない……。
騎士達は回り込もうと必死だけど、カルエラートさんとバステトの猛攻に押し返されていた。逆方向ではパパとチェイシャ、ファウダーが猛威を振るう。
<にゃはははは! 馬上から剣だと私に当てにくいだろうにゃ! ノイジィショットだにゃ>
「ぐあ、耳がぁぁ!?」
「いいぞバス! シールドバッシュ!」
「な、何でこんなところにドラゴンが!?」
<オイラのブレスで氷漬けになれ!>
ブォォォォォ……
「さ、寒い……」
<では暖かくしてやろう、爆炎の魔法弾じゃ!>
「や、やられ……!」
ドゴン!
「あらら、派手にやるわね皆……あ、フレーレのモーニングスターが後頭部に入った……あれは死んだかも……ってそういえばレイドさんは!?」
よく見ればレイドさんとカームさんが居ない! ……まさか!?
<居たぞ!>
「すまない! このまま突っ込んでくれ!」
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。