パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
283 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル

その304 トラップフロア

しおりを挟む

 「ジャァァァ!」

 「私はそんなに怖い顔じゃないわよ!」

 ザン!

 ボフッ!

 「ふう……」

 今、私は自分の偽物を倒したけど、私達の偽物はそれなりの強さだった。コピーしているのは姿だけで、武器等は持っておらず、掴みかかってくるばかりだったためそれほど苦労せず倒すことが出来た。危惧していた、鏡を攻撃すると自分にくるダメージは、鏡から出てきたものには適用されないのか、ダメージはゼロだったりする。

 「ふう、自分を相手にするのは気味が悪いわね」

 「しかし、肉親や恋人を相手にするよりかはいいと思います。やはり躊躇してしまうでしょうから」

 セイラとニールセンさんもそれぞれ倒し、一息ついていた。確かにレイドさんやお父さんといった人が相手なら偽物と分かっていても困ると思う。

 「ガウ!」

 「わんわん!」

 そうしていると、レジナやシルバがお父さんやパパと一緒に、偽物を倒して辺りは静かになった。


 <私達やレジナ達の偽物はでないっぴょんね>

 <そうだな、さっき遠くにいた魔物が鏡で増えなかったところをみると、我々は魔物と認識されているのかもしれんな。奇襲をかけるには都合がいいが……>

 「だとしても、この狭さじゃカームは戦闘に参加するのも難しいし、リリーは……」

 <なんだっぴょん!? リリーだって戦えるっぴょんよ!>

 レイドさんが言葉を詰まらせると、リリーはシュッシュっとパンチをする。しかし兎の手ではどうやっても魔物に勝てる未来は見えなかった。

 『ちなみにボク達は鏡に映らないから、安心してくれ』

 「あ、本当ですね。どうなってるんですか?」

 エクソリアさんの言うとおり、女神様二人は鏡に映っておらず、危ない目にあったばかりなのにフレーレが鏡を撫でながら疑問を口にしていた。

 「フレーレ、危ないから鏡から離れた方がいいわよ?」

 「あ、ごめんなさい! でも不思議ですよ」

 『私達は本来この世界で存在するはずの者ではないからよ。姿を形どっては取っているけど、あの世からの力で形成しているだけ』

 『だから、性別を変えたりもできるし、鏡には映らないのさ(もっとも、これもそう長くは構成できないから、速やかに神裂を倒す必要があるわけだけどね……)』

 「わかるようなわからないような……」

 私が首を傾げているとパパが戻ってきてから私の頭に手を置いて言う。

 「ま、女神共はこれでも世界を創った存在だからちょっと違うんだろ? 時間を取られたから急ごうぜ」

 『それで済まされると立つ瀬がないけどね。いいけどさ』

 エクソリアさんが面白くなさそうに歩き出し、アルモニアさんと私も後に続いて追いかける。

 「ま、気にしても仕方ないか!」

 「切り替えが早いですねルーナは……」

 フレーレも隣で苦笑しながらついてきていた。

 その後もリリーを先頭にして迷いなく階段を目指していたけど、正解の道だからか鏡から出てくる偽物の量が明らかに増えた。

 「ストップだ! 俺は本物だ!」

 「あ、ごめんなさい!?」

 アイリが銃を向けたレイドさんは本物で、慌てて引っ込めて事無きを得る。お父さんもママの偽物を切り伏せ、剣を収めてから呟いた。

 「……そろそろ階段か? 偽物もうっとおしくなってきたな」

 「知恵がついてきたのかしら? 積極的に別の人を狙いにいってない?」

 ママが眉を顰めながら口にする。確かに、自分自身と戦うよりも、さっきみたいに自分とは違う人間を狙ってくることが多くなった気がする。

 「そろそろ夜になります。階段まで急ぎましょう」

 「そうね……本当に休める所が無いわね、ここ……」

 流石に疲れてきたセイラが肩を落とす。トリスメギストスの狙いが私達の消耗であれば、まんまと乗せられているって感じね。

 「……どうやら、到着したみたいだ」

 「鏡からも出てこないようです。早く登りましょう」

 カイムさんが警戒しつつ前を歩き、ノゾムがワイヤーの先に括りつけた石を使って両脇の鏡にぶつけて安全を確かめていた。この方法なら自分たちが見える前に鏡を破壊できるからだと、ノゾムが編み出した戦法だ。

 カイムさんとノゾムが先行し、安全を確認した後、素早く階段を登り、64階へと至る扉の前で野営を行う。食料は充分だし魔物が出ないここならゆっくりできそうだ。それぞれの方法で体を休めているとあぐらをかいて座っているパパが難しい顔をしていることに気付いた。

 「……」

 「どうしたのパパ?」

 「ん? ルーナか。早く寝ておけ、明日もこの調子なら64階も半日は費やしそうだからな」

 「うん、そうする。……なにか気になるの?」

 「いや、そういうわけじゃないんだけどな。こう、ヴァイゼと対峙した時みたいな胸騒ぎがするんだよ」

 「お父さんと……?」

 「あの時はお前を助けるのに必死だったからなあ。まあ今はお前も強いし、仲間もいる。多分気のせいだろう」

 はっはっは! と、笑いながら私の頭を撫でた後、ママの隣に寝転がった。うーん……こんなパパでも勇者だからなあ……気になる……。でも、パパが気のせいだというのならこれ以上考え込むのは良くないと思い、私もさっさと休むことにした。

 「……おやすみ、パパ」


 ◆ ◇ ◆


 ――64階

 
 <ひゃああぁぁ!? いきなりはダメッぴょん!?>


 扉を開けて程なくすると、天井の鏡からレイドさんの偽物と、壁面からニールセンさんの偽物が飛び出し来た! さらに、フォークを持った魔物が数体、前から前進をしてくる。

 「ニールセン行ったぞ!」

 「はい! でぇぇぇい!」

 「ギャァァァァ!?」

 「この距離の魔物なら……」

 ターン!

 ギェェェェァ……

 「ふう……早速、偽物と遭遇とはな」

 レイドさんがきょろきょろしながら呟くと、ユウリも警戒しながら頷く。

 「まったくだね。というか、魔物と共闘してきたよな、今」

 「それに今度は天井も鏡張りですよ……」

 そう、またしてもフロアの様子が変わっており、気が狂いそうになるくらい上と左右が鏡で、距離感がおかしくなってしまいそうな勢いだ。それに魔物が鏡の偽物の援護をしてくるようにもなり、面倒事が増えたといっても過言ではない状態だった。

 「あ、でも、床は鏡じゃなくて良かったです。もしそうだったら下着が見えちゃいますもん!」

 「下着……」

 「あ、バカイム! 何考えてるんだ、鼻血を拭け!」

 「ば、馬鹿言え鼻血など……!?」

 「はいはい、馬鹿なこと言ってないで行くわよ」

 仲良く喧嘩している二人をママがポカリと頭を叩き、私達は再び歩き出す。

 「カーム、少し後ろから天井の動き、見てもらえるか?」

 <承知した>

 レイドさんがカームさんにお願いをしたその時、それは起こった。

 「あ、フレーレ、背中に何かついてるわよ」

 「え、本当ですか? ルーナ、取ってくれませんか?」

 「いいわよ」

 と、いつもの会話風景のようだけど……

 「フレーレ! 今の声は私じゃないわ!」

 「え? ルーナ? わたしの後ろにいたんじゃ……あ!?」

 声の主は私じゃない! 見れば鏡の中の私が、ニヤリと笑い、手だけ鏡から出し、フレーレの手首を掴んでいた!

 ずるり……

 「え!? か、鏡の中に……!」

 「!? フレーレをどうする気!」

 「わんわん!」

 私が駆け寄ろうとするよりも早く、ユウリとカイムさん、そしてシルバがフレーレの腕や裾を掴んでいた。

 「くっ……何て力だ!?」

 「二人で、も、引っ張れ、ない……!」

 「わうぅぅ……」


 「私も手伝うわ! レイドさんも!」

 「ああ!」

 フレーレを引っ張る二人をレイドさんと私で引っ張ろうと近づくが、衝撃の事態へと発展した!

 「フフフ……手伝ってやろう」

 「お前も、な?」

 「ぼ、僕達の偽物か!?」

 ユウリとカイムさんの偽物も鏡の中でニヤリと笑い、鏡の中へと引きずり込んでしまったのだ。

 「嘘……!?」

 私が鏡の中で争っている三人を見ながら鏡を叩いていると、背後から声が聞こえてきた。

 「きゃあ!? こっちも!?」

 「聖女様!!」

 ずるり……と、セイラとニールセンさんが鏡の中へと消えて行く。お父さんやノゾム、パパ達は不意打ちにならなかったため応戦している。私の偽物も手を伸ばしてきた。

 「さ、みんなを助けに行きましょう……」

 「くっ……」

 「チッ、ルーナを離せ!」

 
 レイドさんが攻撃を仕掛けようとするのを横目でみながら逡巡する。

 どうする? このまま鏡の中へ入った方がいいのかしら? でもフレーレ達を助けられる保証はないし……そんなことを考えていると、私の手首を掴んできた偽物が急に苦しみだした。

 「ぎゃぁぁぁ!? な、ん、だ、そのガントレットは!? 強力な何かが憑いている……!? くそ……」

 私の偽物はスゥっと消えてしまい、鏡には元の私の姿だけが残った。

 「ルーナは無事か」

 「あ、お父さん! あれ、パパとママは?」

 「……ディクラインはアイディールを追って鏡の中だ。やられた、恐らく狙いは女性陣。それを助けさせ、一緒に引きずり込むのが目的だったようだ」

 『じゃあヘタをするとルーナと一緒にレイドもやられた可能性もあったわね』

 アルモニアさんは少し悲しそうな顔で、やられた、と言うけど……

 「……まだ死んだと決まったわけじゃないわ、アルモニアさん。ここから助けるのは無理かもしれないけど、トリスメギストスならきっと知っているはず。先を急ぎましょう」

 『……そうだね。なに、彼等ならきっと無事さ』

 <……こっちだっぴょん。行こうっぴょん>

 「……カイムの代わりは俺が引き受けよう。レイドさん、前衛を頼めるか?」

 「分かった。頼む」

 「きゅきゅーん……」

 「きゅふん……」

 一気にパーティメンバーが減り、狼達が寂しげに鳴く。

 みんな、無事で居てよね……!

 私達は階段を目指し、先を急いだ。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。