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2巻
2-1
しおりを挟む第一章
「ありがとうございましたー!」
「やっぱりルーナちゃんがいると活気があっていいね、また来るよ」
ランチタイム最後のお客さんが町の宿屋兼食堂の〝山の宴〟を出ていくのを見送る。テーブルの片づけをしているとおかみさんが話しかけてきた。
「お疲れ、ルーナちゃん。夜はサリーが来てくれるから今日はもう終わりでいいよ」
「はい、わかりました! それじゃあ次は明日の夜でいいですか? 明日は朝からフレーレと依頼を受ける予定なんで」
するとおかみさんはにっこり笑い、私の背中をポンと叩いてから言う。
「もちろんだよ! あんたの本業は冒険者なんだし、気にすることはないよ。あ、でもフレーレちゃんとルーナちゃんのふたりがウェイトレスをしてくれたら、売上があがるかもしれないねえ……」
「あ、あはは……それじゃレジナ達のお散歩に行ってきますー!」
ふう……あれは本気の目だった……
そんなおかみさんから逃げて私は裏庭へ回ると、狼の親子が出迎えてくれた。
「きゅん!」
「きゅんきゅんー♪」
「がう」
「お待たせ、お散歩に行くわよ!」
デッドリーベアの事件から、一緒に暮らしている狼親子と商店街へ歩き出し、ゆっくりとアテのない散歩をする。
「なんだか久しぶりにひとりでいるかも」
――思えばここ最近の私は忙しすぎた。
少し前、私は勇者であるアントンとパーティを組んでいた。だけど、彼がやらかしたせいでデッドリーベアとの死闘をする羽目になったのを皮切りに、補助魔法がすごいと他パーティからちやほやされて引っ張りだこになった。そうかと思えば、貴族に狙われ誘拐騒ぎに発展し、そそくさと隣街のガンマに現れたダンジョンへ赴けば、うっかりダンジョンを攻略。そこにあった女神の封印を解いてしまい、お宝である腕輪を押しつけられたりと、めまぐるしくいろいろなことがあった……
さて、ダンジョンからアルファの町へ戻って一週間。私達は平穏な生活を取り戻していた。
一緒にダンジョンへ行ってくれた、勇者の《恩恵》を持つレイドさんは、いつも通りひとりで調査や依頼を受けている。
アントンのパーティに加入していた時から一緒で、やはりダンジョンへ同行してくれた侍者のフレーレは、稼いだお金を教会へ寄付して立派な聖堂を立て直すことができた。
私はというと、例の伯爵様に狙われた件があったので戦々恐々としていたんだけど、私達が街へ戻ったことがギルドに伝わった次の日、侯爵のフォルティスさんが事件の顛末を教えてくれた。
◆ ◇ ◆
ダンジョンから戻った次の日、ファロスさんに呼び出しを受けた私は、ダンジョンの守護獣である、チェイシャを連れてギルドへ来ていた。
「いらっしゃーい……」
ドアベルが鳴っても、受付で相変わらず、新聞を読んだまま生返事をするイルズさん。その様子を見て戻ってきたって感じがするなと苦笑する。
こっちを見ず、返事だけ返してきたので、カウンターまで行って声をかける。
「イルズさん、こんにちは! 何か御用があると聞きましたけど?」
「お、ルーナちゃんだったのか、ごめんよ呼びつけたりして。早速で悪いんだが、こっちへ来てくれ」
イルズさんは新聞を畳むと、ギルドマスターであるファロスさんの執務室へ私を案内してくれた。中に入るとすでにレイドさんとフレーレが来客用のソファに座っており、ファロスさんとフォルティスさんがふたりの前に座っていた。私が困惑しながらフレーレの隣に腰かけるとファロスさんが頷いてから口を開く。
「揃ったね。まずはダンジョンの調査、お疲れ様だったね。今日はその報酬を渡そうと思って呼んだんだよ」
そう言って手渡された革袋になんと金貨が十枚入っていた。おおお……!
「こ、こんなに⁉ いいんですか? わたしはあまりお役に立っていませんけど……」
フレーレが申し訳なさそうにファロスさんへ尋ねるが、彼は笑いながら『気にしないでいいから』と革袋を握らせていた。
「……抱いているその狐のことも聞いている。女神の腕輪のこともね。その話の前にフォルティスからウィル伯爵について話があるそうだ」
「はい」
私にとってはこっちが本命だ。ファロスさんがフォルティスさんへ目を向けると、ソファから立ち上がり話をする。
『伯爵事件』の顛末はフォルティスさんの調査により、私やほかの女性冒険者を襲った伯爵様が偽物だったことが発覚。現在は本物の伯爵様が迷惑をかけた冒険者達にお詫びをしているらしい。
「正体はわからずじまいか?」
レイドさんがフォルティスさんへ尋ねると、フォルティスさんは頷いて肯定する。
「ああ、調査の途中で逃げられたようでな。結局目的はルーナに好意があって、自分のものにしようとしたというところだろうか……」
「いや、それだとほかの女性冒険者が狙われた理由がわからないぞ?」
「手当たり次第襲ってルーナがよかったのかもしれない」
納得がいっていないレイドさんがさらに聞いてくれるけど、フォルティスさんの調査でもこれ以上のことはわからないようだ。
当事者の私としても気になるけど、犯人に今後狙われないなら今はそれでいいかな?
そう思っているとファロスさんがなおも続いているレイドさんとフォルティスさんの言い合いを止めてくれた。
「この話はこれまでにしよう。またルーナちゃんに妙なことが起こったら報告するということでいいな?」
「私はそれで大丈夫です」
私がそう言って頷くと、レイドさんも憮然とした表情をしながら、
「ルーナちゃんがいいなら、俺も」
と呟き、仕方なくといった調子でソファに座り直していた。
「ならこの件は終わりだ。それじゃあ次は――」
伯爵様の件は区切りがつき、ファロスさんが話し始めたところでフォルティスさんがそれを遮った。
「ではルーナよ、今日は私とディナーに付き合ってもらえないかな? 問題は解決したし、帰ってくるのを待っていたのだよ。どうかな?」
あ、この人、私のこと諦めてなかったんだ⁉ もしかしてそれで調査したんじゃ……!
「その……今日はお世話になっている〝山の宴〟でアルバイトがありまして……夜はちょっと……」
「な、なんと、今日もダメだと言うのか⁉ クッ……神は私に試練を与えているとでも……! な、ならウチのメイドをそっちへ派遣しよう! それなら……」
「ええー⁉ ダメですよ、それは!」
「では、どうすれば一緒に来てくれる?」
困った……悪い人じゃないんだけど、私が絡むとどうも冷静じゃなくなるご様子……
なんて答えようか考えていると、レイドさんが助け船を出してくれた。
「……フォルティス様、ルーナちゃんは予定があるみたいなので、また今度にされてはいかがだろうか? ルーナちゃんも困っていますし」
あ、あれ? レイドさん、ちょっと怒ってない? 口は笑ってるんだけど、目が……⁉
それを見ていたフレーレがぼそりと何か呟いていた。
「……いろんな人に狙われルーナ……」
「え?」
「え?」
「フレーレ、今何か言わなかった……?」
「い、いいえ⁉ 何も言っていませんよ⁉」
……怪しい……何かよからぬことを言っていたような気がするんだけど……
それはともかくレイドさんとフォルティスさんが一触即発状態になり、そんな光景を前にしてファロスさんが苦笑いで呟いていた。
「……話を進めたいなー……」
なんというかすみません……私のせいじゃないと思いたい……
〈ふあーあ……騒がしい人間達じゃのう……〉
私達が騒いでいる間、チェイシャはあくびをして自分の話になるのを待っていた。
女神の封印を守っていた『チェイシャ』。強欲の魔神らしい。みんなで協力してなんとか倒すことができたんだけど、その後小さな姿で復活して一緒についてきてしまったのだ。
チェイシャを倒した時に現れた女神のアイテムは予期せず私に装着されてしまった。
そのことが気になって、ついてきちゃったのは仕方がないんだけど、食費がまた増えてしまうのが悩みの種である。さらに狼達と違い意思の疎通が図れるので、話し相手として私の部屋で一緒に住んでいる。
――結局、ギルドでの話し合いの核となる、『女神の封印』と『チェイシャ』の件は、世間に出回っている話ではなく、フォルティスさん達も知らないようだった。さらにチェイシャが何も語らなかったので、モヤモヤしながらもその場は解散となる。
そんな中、いいこともあった。私が伯爵様に狙われているという噂が立ち消えになり、フレーレと共に臨時でほかのパーティに加入して冒険者家業を再開することができたのだ。
それでも『どうして何度も私が狙われたのか?』と『その目的』は謎のままなので、引き続き警戒はした方がいいとレイドさんが提案してくれ、ほかの冒険者達もそれにのってくれた。
事態は収束し、いいことばかりだけど厄介なこともひとつ増えた。それはフォルティスさんのお誘いである。
調査を行い、私の風評を正してくれたので、流石に一度はご一緒させてもらった。だけど、その後も何かにつけてフォルティスさんが私を誘ってくるようになってしまったのだ。
あの人、イケメンだしお金持ちで紳士だけど、話していても政治的な話や、難しい話が多くて相性が合わないって感じがするのよね。
熱心な誘いを断るのも申し訳ないけど、流されるわけにはいかないのだ。
「きゅんきゅん」
「きゅん!」
「はいはい。元気ねえ、あなた達は」
そんな私の気持ちなどどこ吹く風で鳴く子狼。じゃれあいながら歩いているシロップとシルバを見てほっこりしていると、目の前に知った顔が通りかかった。私は手を上げて声をかける。
「フレーレ!」
商店街を歩いていたのは、私と一緒にダンジョンを攻略し、教会を立て直した功績でアコライトからプリーストに返り咲いたフレーレだった。
買い物袋を提げているところを見ると、夕飯のお買い物ってところかな?
「こんにちは、ルーナ。お散歩ですか? お店はお休みでしたっけ?」
そう言いながら私と並んで歩き出す。
「今日はお昼の仕事だけだから、もう自由時間なのよ。フレーレはお買い物?」
「はい! 教会は孤児院も兼ねていて大所帯ですから、この時間にお買い物をして仕込まないと間に合わないんですよ」
「大変ねえ、何か手伝おうか?」
「シスターもいますし、大丈夫ですよ! あ、こっちに行きたいんですけど、いいですか?」
珍しく寄り道をしたいというフレーレの視線の先には、見慣れないものがあった。屋台かな? それにしては派手な服を着ている人が立っているけど……
「ああ、またこれぇ?」
「次はうちの番ね!」
よく見ると買い物袋を持った主婦の人達がたくさんいて、何やら一喜一憂していた。
フレーレがお買い物袋から何かを取り出して屋台に近づいていく。
「すみません、わたしもお願いします!」
「? これ何?」
目の前には取っ手がついた八角形の木箱がテーブルに鎮座していた。フレーレは屋台のおじさんに何かを渡し、ウキウキ顔で取っ手を掴む。
「ねえ、フレーレ、これって?」
「え? ああ、これは『ガラガラ』って言うらしいですよ。蒼希の国から仕入れたとかで、クジを引けるんです」
「へえ、これがクジなの? 何がどうなったら当たりになるんだろう……」
私がまじまじと眺めていると、屋台のおじさんが笑いながら答えてくれた。
「この箱を回すと穴から色のついた玉が出てくるんだ。で、玉の色によって決まっている景品がもらえるって寸法よ! 今、商店街で銅貨五枚以上の買い物をするとチケットが一枚もらえるんだが、それ一枚で一回できる。理由はよくわからないけど、ウィル伯爵が『町の人達にも迷惑をかけたから、何かしようと思った』とかで、景品と一緒に商店街へ引き渡されたんだよ」
「へえ、あの伯爵様太っ腹ねー。ちなみにどんな景品があるのかしら?」
「きゅん!」
「がう!」
私が景品を見ようと思った矢先、シルバとレジナが目を輝かせて尻尾を振り、歓喜の声で鳴いた。シルバとレジナの視線の先には――
【三等 ワイルドバッファローの霜降り肉】
「わかりやすいわねー」
食いしん坊なシルバはともかく、お母さんのレジナもお肉に目がいくとは……そんな二匹を見て微笑みながら、フレーレは取っ手を持ってガラガラとやらを回し始めた。
ガラガラガラ……
「きゅん! きゅーん!」
「どうしたの、シロップ? 抱っこ?」
ガラガラの音がした途端、シロップが急に抱っこをせがんできたので抱えてあげると、シロップはキラキラした目でガラガラを見ていた。
「はあ!」
珍しくフレーレが気合を入れた声を出し、一気に取っ手を振り抜いた!
「きゅんきゅん!」
そしてシロップは大興奮。このガラガラの何がシロップをそうさせるのだろう?
カラン……
出てきた色は――
「あー残念! 白だね、はい、ティッシュ」
残念賞、というやつらしい。シンプルな箱のティッシュを受け取りながら、フレーレはもう一枚チケットを渡す。
「この一枚でどうにか……!」
「気合入っているわね、フレーレ。何が欲しいの?」
「あれです!」
フレーレが指した先には、豪華な調理器具セットが並んでいた。
「フライパンにお鍋と包丁のセット? いいね、これ!」
「でしょう? 教会のフライパンがそろそろ限界で、ここはぜひ当てたいと思っているんです」
そう語るフレーレの目は真剣そのもの……ぜひ獲得してほしい……
「きゅんきゅん!」
「なあに? シロップもやりたいの?」
「きゅ、きゅーん!」
私の手をかぷかぷして尻尾を振るシロップ。
「ごめんね、私はチケットを持っていないからできないわ」
「きゅきゅん⁉」
「あ! どこ行くの!」
シロップが私の手から離れてどこかへ走り去る。追いかけようか迷ったけど、シロップはレジナ達と勝手に町に散歩へ行くこともあるし、飼い主が私だと知っている人が多いから、追いかけなくても大丈夫かな?
とりあえず今はフレーレを見守ることに決めると、ちょうど玉が出てくる瞬間だった。
「えいっ!」
ガラガラガラ……カラン……
「白! ティッシュ箱ね!」
「あー、残念……。でも楽しかったです!」
「まだ景品はあるから、いつでも挑戦してくれ!」
「チケットを手に入れたらまた来ますね!」
フレーレがおじさんにそう言ってその場を離れようとした時、
「きゅきゅーん♪」
シロップが帰ってきて、私の足をぺしぺしと叩いていた。
口に何か咥えているわね? 屈んで咥えているものを受け取ると――
「あ、これチケット! どこかで拾ってきたの?」
「きゅんきゅん」
コクコクと頷く。
「拾ったものはダメよ、きちんとお買い物をしないと」
「きゅーん……」
私が抱っこして言い聞かせると、がっかりした様子で耳と尻尾が下がった。
しかし、おじさんがそんな様子を見て声をかけてくれる。
「なんだい、ガラガラをやりたい狼だなんて変わっているなあ。なら、ウチの肉を買ってくれよ、それで一回ってことで」
ぬぬ……商売上手なおじさんだ……よく見れば肉屋さんが近くにあり、シルバとレジナが揃ってそっちを見ていた。さらに言うと隣のおじさんは向かいの魚屋さんだ。商店街の人が持ち回りでこのガラガラをしているみたいね。
「……じゃあ、後でお肉を買いに行きますね。はい、シロップ」
拾ったチケットをおじさんに渡し、私は抱っこしたままシロップをガラガラの取っ手の前に差し出す。
「きゅきゅ~ん」
興奮してなんとも言えない声を出しながらパクッと取っ手を咥える。
「きゅん!」
「がうがう!」
その様子を見て、尻尾をぶんぶん振りながらチラリと霜降り肉に目を移すシルバとレジナ。
そして今、シロップの首がぐるんぐるんと回り始めた!
ガラガラ……
そして――
カラン……
出てきた色は!
「お、おおお⁉ 金……金色だ‼」
ガランガランガラン!
「うわ、びっくりした!」
おじさんが興奮して手元のベルをめちゃくちゃ鳴らし、私はびっくりして耳をふさぐと、フレーレが肩を叩きながらぴょんぴょん跳ねていた。
「すごい! すごいですよ、シロップ! 金色は一等です!」
「きゅきゅん♪」
フレーレがシロップの顔をぐりぐりすると、満足そうに目を細めて鳴いた。
「一等⁉ え、本当に⁉」
「あ、ああ、間違いないぜ」
金色の玉を私に見せて冷や汗をかくおじさん。となると気になるのはもちろん景品だ。
「で、一等ってなんですか! お肉よりいいものですよね、きっと!」
「おう、もう引き当てられたのは悔しいけど、当たりは当たりだ。一等の景品はこれだ!」
バン! と、後ろにあるパネルを叩きながら叫ぶおじさん。
そこにはきれいな海と島の絵が描かれていた。
「えっと……その絵、ですか? 確かにきれいですけど、食べ物とかの方が……」
「なんだ、飼い主も食い意地が張ってんな……。違う違う、景品は『南の島 三泊四日の旅』だ!」
おじさんの興奮っぷりに呼応するように、フレーレが口に手を当てて驚く。
「え⁉ 南の島ってもしかして、奇跡の島と言われている『ヘブンリーアイランド』ですか?」
「そう、何百年前から変わらない地形や生態系を持つあの島だ。最近アクアステップの国がリゾート開発を進めてバカンスにいいって評判なんだ」
「ですよね! ディーザがそのうち行こうって言っていたのを覚えています」
全然知らない……しかしフレーレがこうも食いつくとは、恐るべしリゾート地。
私があっけにとられていると、おじさんが封筒を差し出してきた。
「はい。これが景品だよ。ふたりまで行けるから、彼氏か友達でも誘ってゆっくりしなよ!」
「あ、はい! 行くわよ、みんな」
封筒を受け取り、次の人が待っているのでその場を離れようと狼達に声をかけると――
「きゅーん……」
「がう……」
シルバとレジナが霜降り肉を見ながら切ない声を上げていた。
「ほら、どかないとダメよ。お肉屋さんのお肉でいいでしょ?」
「きゅん!」
お肉、と聞いてシルバがお座りからシャキッと立ち上がり、私の足元にぴったりくっついた。
「うふふ、結局お肉が食べられればなんでもいいんですね」
フレーレが笑いながらシルバを撫で、レジナも後ろ髪をひかれながら渋々後を追ってきた。
少し離れたところで封筒を開けてみると、中にはチケットが二枚入っていた。一枚取り出して概要を見てみる。
「すごい、船代と宿代がタダだって! あ、ご飯も三食全部出るみたい。至れり尽くせりね!」
「いいですね!」
「ふたりなら私とフレーレで行けばいいかな? ダンジョン攻略をしたパーティとして、レイドさんも行けたらよかったんだけど」
「え? わたしが行っていいんですか⁉」
「そりゃあ、現状では正式にパーティを組んでいるのはフレーレだけなわけだし、いいに決まってるじゃない」
「うう……一生ルーナについていきます……」
「大げさすぎない⁉」
泣いて喜ぶフレーレをとりあえず放置し、注意事項を確認するとペットも問題ないみたい。レジナ達も一緒に行けそうだ。
「持っていくものは着替えとかだけでよさそうね。フレーレはいつが都合いいか、確認しておいて」
「わかりました! もう今からでもいいですけど!」
「流石にそれはちょっと……明日は依頼があるでしょ?」
私が苦笑しながらそう言うと、フレーレは、
「明後日から行きましょう!」
と、張り切って去っていった。
その足でお肉屋さんへ寄った後、バカンスに行くため、不在になることを告げにレイドさんを探してギルドへと赴く。
カラン……
ギルドの扉を開けると、ドアに設置されたベルが軽く鳴る。
「リゾートかあ、服はどうしようかな?」
「お、いらっしゃい、ルーナちゃん。なんか楽しそうだね?」
誰ともなく呟いた私の言葉をイルズさんが聞きつけ尋ねてくる。
「えっとですね、商店街でやっている『ガラガラ』って知ってますか?」
「ああ、俺達も設営を手伝ったからな。あれがどうかしたのかい?」
「実は私……というかシロップが回したんですけど、一等が当たっちゃって」
私が困惑気味に言うと、イルズさんがぎょっと目を見開き、声を小さくしてから私に言う。
応援ありがとうございます!
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