お隣どうしの桜と海

八月灯香

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桜と海番外編

桜のヒーロー

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水泳大会で毎回俺に勝てない選手がいた。
飯室大輔、眼付きの悪いいけすかないソイツは、大会で俺に負ける度に舌打ちをしてくるような奴だ。

中学生の頃なんて試合が終わって更衣室に戻るとタオルや着替えを違う場所のロッカーに入れ替えられたりしてきた。
なので大会の時は海から貰ったペンダントは家に置いて来ている。

俺は小学生の頃から既に水泳の才能を開花させて出場大会のほとんどの金メダルを取る大会荒らしだった。

実際、運動神経も悪くなかったし、水泳が肌にあっていた。

そして何より、水泳でいい記録を出したり優勝すると海が「桜ちゃん超カッケェ!」と興奮しながら褒めちぎってくれるのだ。
年が4つ違うお隣さんの海は、小さい頃俺の事をずっと女の子だと思っていて、

「さくらちゃん俺と結婚しよぉ」

とよく求婚してきて、「いいよ」と返すとニヤニヤしながらくねくねと腰を左右に振っていたのがめちゃくちゃ可愛かった。 

海が小学生に上がった頃にはピタリと求婚は止んでしまったけど。

俺にはそんな将来を約束した旦那様が居るのだ、
こんな人に嫌がらせ丸出しの雑魚に負けるわけない。

負けるわけが行かなすぎて練習がはかどる。
筋トレメニューも食事コントロールもぜんぜん苦じゃ無かった。

中学の夏の大きな大会で、海が応援に来てくれた時がある。
その時もクロール、背泳ぎと混合200メートルに出場したのだが、どの競技も圧勝した。

その大会終わり、会場の出口付近で飯室がこれみよがしに毒を吐いている。

「アイツマジで、親が外人なんてチート持ってんの狡いだろ」

と、いつもの負け惜しみかと思っていた。
シカトするにかぎる。
弱い犬ほど良く吠える。

「あの、すみません飯室選手。」と良く知った声が飯室に声をかけた。
え?と思って耳をすませてしまう。
「飯室選手の泳ぎ、今日もかっこよかったです。でも、飯室選手がソールバルグ選手に勝てないのは親が外国人だからじゃ無いです。ソールバルグ選手、誰より練習も筋トレも頑張ってるみたいですよ。でもいつか、飯室選手がソールバルグ選手に勝てる日が来るの、俺超楽しみにしてます。」
と凜とした声で言い切るだけ言い切って頭を下げて立ち去った。

本当に驚いた。

小学生が中学生にあんな事を言うなんて勇気が居るだろうに。

小さくなる海の背中を追いかける。

「海」
と声をかけると、聞かれてたか、と言う顔をして

「あんなクソに桜が負けるわけないだろ。どんだけ桜が頑張ってると思ってんだ。ひっくり返ってもアイツが勝てる日なんてこないね!」
俺ああいうやつ苦手。と憤慨していた。
最後の超楽しみにしています、は完全に嫌味だった。
飯室のあの図星を突かれた顔、最高だったな。

この一件から嫌がらせはパタリとやんだ。
飯室のタイムも自己ベストを大幅に更新できたが、俺が飯室に負ける事はなかった。

海、海は俺の未来の旦那様だけど、ヒーローでもあるんだよ。


この頃になると俺の方から海に「結婚しようね」と言うようになった。
海はその度に顔を真っ赤にして「からかうのやめろ!もう忘れろ。俺は可愛い奥さん貰う予定だから」と返してきた。

からかってないし、絶対俺を奥さんに貰うんだよ、と思った。

海は海のお母さんに良くお調子者と言われていたけど、時々驚くほど男前な一面を見せてくる事がある。


小さい頃、一緒に風呂に入った事もあるのに何故か俺の事を女の子だと思っていた海、しかし海だって小さい頃から可愛い顔立ちをしていて女の子に間違えられては「ちやう!おれは男!」と憤慨して地団駄を踏んでいた。
少しずつ成長した今でも間違われる事がある。
今では「わかる、俺めっちゃ可愛いもんな。」と開き直っているけど。

海は最高なんだ。

いつか海が俺に恋心を抱けばいいのにな。
そんで大人になったら俺と結婚しよ。




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