やがて、紅(くれない)は罰になる

藍アキラ

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第1章

第11話『嘘はギリギリつかないわ』

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 手際よく料理を仕上げた柚芽ゆめが、

「まあ、私としては、紅には逃げ足が速い動物になってもらいたいな。
 ……というより、隊員になること自体、今でも心配なんだからね?」

と小言を言いながら、汁物を食卓に運ぶ。いだことがないほどかぐわしい香りで、料理の腕まで非凡だと実感した。

それに対して朔摩さくま義兄にいさんが
「ふふふ。俺も同じ気持ちだけれどね、それは取らぬタヌキの皮算用というか」
なんて笑うものだから、すかさず注意する。

「あー、やめてっ! ただでさえ幼馴染ふたりがタヌキ顔で、思い出しがちな存在なんだから……。
 タヌキはエサ、食われる側! 俺はフクロウがいいんだってば…」 

どういうことかと言うと、「願い続けた動物が狩衣かりぎぬになる」という迷信を白梅しらうめ姉さんから聞いていて。
あの人は清楚な見た目に似合わず、かなり強引な理論を展開しがちだったけど…。

年の離れた従妹いとこだった姉さんが、8歳で母親を亡くした俺を引き取ってくれることになった時。

「お前も母さんと同じで嘘つきだ、親戚っていうのもだます気だろ」

そう、すっかり人間不信になっていた俺を真っすぐに見たあの人が、

「嘘はギリギリつかないわ」「私もあなたと同じ……瞳にフクロウみたいな金の輪っかがあるでしょう」

って言ってくれたから──。

その言葉の思い出にこだわって、俺はフクロウになることを願っていた。
だからこの家には、姉さんが俺に贈ってくれたフクロウ系の小物があちこちにある。

………ちなみに柚芽《ゆめ》も俺のために、色々作ってはくれたんだけど。本当に芸術系の感性だけはイカれていて──。

もらったものはすべて大事にはしてるものの、検査の結果が出るまでは、あまり見ないでおこうと決めていた。

◆◆◆◆

悪魔は尋ねる。

「ねぇ~。そろそろ登場人物の名前、教えてよぉ……。
 お兄さんに、友達に、その妹……三人くらいさぁ」
「……………」

それぞれが顔を合わせる時は、そう遠くないだろうけど。
まだこの不快な男の口から──誰より愛する三人の名前を聞きたくはない。

「いいから黙って聞いてろよ。そのうち、お前が喜びそうな話になるから」

誰かが酷い目に遭うのはどうせ好きだろうと思い、あれを話の種にする……自分の判断に身の毛がよだった。 
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