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第1章
第30話『神様のはなし』
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固まってしまった柚芽に困っていると、中にいた八兼から「ふたりとも、そろそろ中に来なよ」と促されたので、彼女を連れて入室する。
(ベルフェゴール………。お前、ずっと寝てるのか。他の人とも打ち解ける努力くらい、してくれよ)
溜息をつきながら肩を揺らして、起こしてみる。
「起きろ。不審者のお前に、みんな迷惑してるんだよ。なんか面白いこと言え」
「…………う、うう…。寝起きの人相手に、なんて無茶なこと言うのぉ?」
「この状況で堂々と眠ってるから、余計な疑いをかけられるんだろ。自己紹介から始めたらどうだ」
我ながら、なかなか友達っぽくやれていると思う。悪魔は頭をポリポリ搔きながら言った。
「え、えっとぉ……。改めまして、ぼくはベルフェゴール。異世界から来た《魔法使い》、です」
「「「……………………」」」
当然、見張り一同は反応に困っている。ともだち…ともだち…俺はコイツと友達。
(友達って、どうやって紹介するんだっけ──。やっぱり、よく分からなくなってきた)
戸惑いながらも、いちおう助太刀をしてみる。
「このベルフェゴール……長いので、ベルと呼んでやって下さい。
彼はいくつもの異世界を旅してきたそうで、色んな逸話を知ってるんです。それが中々面白くて」
「そ、そうそう~。世界ごとに特徴があってぇ、ここ──《高天原》も、とっても個性的だけど!」
「…………どういう所が?」
いやに冷静な声で突っ込むのは、八兼。ああ~、釣れて欲しくない人が…………。鋭い洞察しそう……。
「んと、地下空間で暮らしてるとかぁ、動物の姿になって地上に行くのも興味深いんだけど。
───やっぱり一番は、《神》って概念が存在しないこと、かなあ」
(オイ。もうちょっと当たり障り無さそうな、小噺にしとけよ!)
隣の男を睨みつけたかったが、「そっちこそ真面目に友達やってよぉ」とマトモな釘を刺されているため、笑顔を崩さずに言う。
「いや~、《神》はイイじゃん? そういう難しい話じゃなくて、もっとこう、ワクワクする冒険的な」
「オレは聞きたい」
(ハチぃ~! 頼むよ………! お前、俺が動揺してるの、分かってるだろ!?)
良い親友を持って、俺は幸せだよ。
◆◆◆◆
この場の誰よりも明晰な頭脳を持つであろう柚芽が、心ここにあらず状態なのが、救いかもしれない。
ベルフェゴールは、どう説明するべきか悩んでいるのか、珍しく言葉を選びながら続ける。
「………うーんとね。世界ごとに、かなりの違いがあるから、一概にコレって決めるのは難しいんだけど。
人類とは異なる、大いなる存在っていうのは共通かな。
豊穣だったり、脅威だったり、色んなものをこの世にもたらすのぉ。
《神》が一人もいない世界だなんて、ぼくが知ってる限りでは《高天原》だけだよ?」
「「「……………………」」」
案の定、全員ピンと来ていない模様。というか、俺も正直よく分かってないし。
「例えばどんな神がいるのか、聞かせてくれない?」
口元だけ微笑んでいる八兼だけど、目は一切笑っていない。こういう顔をしてる時は、大概怒ってる。
「そうだね、じゃあ………。この世界に来る前に居たトコ。数学と香辛料に長けた世界の、神様の話を。
────彼は《破壊》と《再生》を司っていて、全世界でも最強の一角なんじゃないかなぁ。
踊ると世界が壊滅しかけたり、目から炎出したり」
「「「……………………」」」
(ちょっと、突拍子も無さすぎるような……。お前の怪しさ、増してるぞ)
俺は頭を抱えたくなる。なんだその強さは、子供が考えた怪獣か?
「でもねぇ、かわいそうな人には優しくて。お願いされたら、大抵のことは叶えてあげちゃうのよ。
自分の名前を間違えた相手であっても、心が真っすぐだから、それくらいイイヨ~って許すし」
「「「……!」」」
(おお、それは懐が広いというか、頼り甲斐あるな)
「世界を守るために、自分で猛毒を飲んじゃったりするしぃ。……あー、あと愛妻家!
今、彼はとある敵と戦ってるんだけどぉ、奥さんを人質にとられちゃって苦戦してるみたい」
「「「!!!」」」
(──そうなのか。どんなに強くても、それじゃ機械生命体に手こずるだろうな……)
自分の話を真剣に聞く俺たちが相手のせいか、悪魔はどんどん饒舌になる。
「そんでねぇ。この神様の面白い話は……。そうそう、勘違いで自分の子供の首切り落としてるぅ!」
「「「!!!???」」」
「もちろん奥さんに怒られたんだけど、元の首が見つからなくてぇ。代わりに象の生首プレゼントした!
ほんと、魅力的な神様だよねぇ~。ふふっ」
「「「……………………」」」
(《神》ってホント何なの!? この概念が理解できる日が来そうにないんだけど!)
◆◆◆◆
完全にドン引きしているみんなの前で、空気の読めない男は「現地の人類からとても尊敬されている偉大なお方だよぉ~」とご機嫌で。さらに、
「……うーん、神話をホントに知らないんだねぇ。再確認できて、よかったよぉ」
と謎の発言をした。
(いや、コイツに限って無駄なことはしないから……意図はなんだ……?)
そして当然、俺の親友の目つきは──刃物のように研ぎ澄まされたままだった。
(ベルフェゴール………。お前、ずっと寝てるのか。他の人とも打ち解ける努力くらい、してくれよ)
溜息をつきながら肩を揺らして、起こしてみる。
「起きろ。不審者のお前に、みんな迷惑してるんだよ。なんか面白いこと言え」
「…………う、うう…。寝起きの人相手に、なんて無茶なこと言うのぉ?」
「この状況で堂々と眠ってるから、余計な疑いをかけられるんだろ。自己紹介から始めたらどうだ」
我ながら、なかなか友達っぽくやれていると思う。悪魔は頭をポリポリ搔きながら言った。
「え、えっとぉ……。改めまして、ぼくはベルフェゴール。異世界から来た《魔法使い》、です」
「「「……………………」」」
当然、見張り一同は反応に困っている。ともだち…ともだち…俺はコイツと友達。
(友達って、どうやって紹介するんだっけ──。やっぱり、よく分からなくなってきた)
戸惑いながらも、いちおう助太刀をしてみる。
「このベルフェゴール……長いので、ベルと呼んでやって下さい。
彼はいくつもの異世界を旅してきたそうで、色んな逸話を知ってるんです。それが中々面白くて」
「そ、そうそう~。世界ごとに特徴があってぇ、ここ──《高天原》も、とっても個性的だけど!」
「…………どういう所が?」
いやに冷静な声で突っ込むのは、八兼。ああ~、釣れて欲しくない人が…………。鋭い洞察しそう……。
「んと、地下空間で暮らしてるとかぁ、動物の姿になって地上に行くのも興味深いんだけど。
───やっぱり一番は、《神》って概念が存在しないこと、かなあ」
(オイ。もうちょっと当たり障り無さそうな、小噺にしとけよ!)
隣の男を睨みつけたかったが、「そっちこそ真面目に友達やってよぉ」とマトモな釘を刺されているため、笑顔を崩さずに言う。
「いや~、《神》はイイじゃん? そういう難しい話じゃなくて、もっとこう、ワクワクする冒険的な」
「オレは聞きたい」
(ハチぃ~! 頼むよ………! お前、俺が動揺してるの、分かってるだろ!?)
良い親友を持って、俺は幸せだよ。
◆◆◆◆
この場の誰よりも明晰な頭脳を持つであろう柚芽が、心ここにあらず状態なのが、救いかもしれない。
ベルフェゴールは、どう説明するべきか悩んでいるのか、珍しく言葉を選びながら続ける。
「………うーんとね。世界ごとに、かなりの違いがあるから、一概にコレって決めるのは難しいんだけど。
人類とは異なる、大いなる存在っていうのは共通かな。
豊穣だったり、脅威だったり、色んなものをこの世にもたらすのぉ。
《神》が一人もいない世界だなんて、ぼくが知ってる限りでは《高天原》だけだよ?」
「「「……………………」」」
案の定、全員ピンと来ていない模様。というか、俺も正直よく分かってないし。
「例えばどんな神がいるのか、聞かせてくれない?」
口元だけ微笑んでいる八兼だけど、目は一切笑っていない。こういう顔をしてる時は、大概怒ってる。
「そうだね、じゃあ………。この世界に来る前に居たトコ。数学と香辛料に長けた世界の、神様の話を。
────彼は《破壊》と《再生》を司っていて、全世界でも最強の一角なんじゃないかなぁ。
踊ると世界が壊滅しかけたり、目から炎出したり」
「「「……………………」」」
(ちょっと、突拍子も無さすぎるような……。お前の怪しさ、増してるぞ)
俺は頭を抱えたくなる。なんだその強さは、子供が考えた怪獣か?
「でもねぇ、かわいそうな人には優しくて。お願いされたら、大抵のことは叶えてあげちゃうのよ。
自分の名前を間違えた相手であっても、心が真っすぐだから、それくらいイイヨ~って許すし」
「「「……!」」」
(おお、それは懐が広いというか、頼り甲斐あるな)
「世界を守るために、自分で猛毒を飲んじゃったりするしぃ。……あー、あと愛妻家!
今、彼はとある敵と戦ってるんだけどぉ、奥さんを人質にとられちゃって苦戦してるみたい」
「「「!!!」」」
(──そうなのか。どんなに強くても、それじゃ機械生命体に手こずるだろうな……)
自分の話を真剣に聞く俺たちが相手のせいか、悪魔はどんどん饒舌になる。
「そんでねぇ。この神様の面白い話は……。そうそう、勘違いで自分の子供の首切り落としてるぅ!」
「「「!!!???」」」
「もちろん奥さんに怒られたんだけど、元の首が見つからなくてぇ。代わりに象の生首プレゼントした!
ほんと、魅力的な神様だよねぇ~。ふふっ」
「「「……………………」」」
(《神》ってホント何なの!? この概念が理解できる日が来そうにないんだけど!)
◆◆◆◆
完全にドン引きしているみんなの前で、空気の読めない男は「現地の人類からとても尊敬されている偉大なお方だよぉ~」とご機嫌で。さらに、
「……うーん、神話をホントに知らないんだねぇ。再確認できて、よかったよぉ」
と謎の発言をした。
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そして当然、俺の親友の目つきは──刃物のように研ぎ澄まされたままだった。
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