運命とは強く儚くて

文字の大きさ
131 / 154
Ⅲ- 1

2

しおりを挟む


数日後、ヒースを謁見の為に帝都へ招いた。

皇帝との謁見の前にお茶に招こうと、移動で軽食しか食べて居ないと聞いていたのでお菓子も用意したが気に入ってくれるだろうか。

「エディ様、ヒースを連れて参りました」

「どうぞ、変に気を張らなくてもいいからね」

テオが緊張した面持ちのヒースを連れてきてくれる。確か12歳だったか、歳にしては背が高くてしっかりしている。
口が悪いと聞いていたが1歩近づくと、サッと膝を着いて頭を下げてきた。

「ヒースと申します、皇妃様」

「頭下げないで、座っていいよ。…ほら、好きな物を好きなだけ食べて」

顔を上げさせテーブルに座らせるとテーブルの上の様々なお菓子やフルーツに目を輝かせた。

「い、いただきます」

「どうぞ。…僕も元は奴隷の身分だから、そんなに気を使わないで」

「ありがとうございます。…あの…デ、デニス様が皇子とは知らなくて」

デニス様、と言いにくそうなヒースに思わず笑ってしまう。

「いいんだよ。皇子になっちゃうとみんなよそよそしくなるでしょ、そうやって接してくれる人がいると嬉しいから前と同じように接してあげてほしいな」

「…でも…はい。」

ラマールのことを聞いたり故郷のことを話していると徐々に気を抜いてくれたようで、お菓子を頬張る姿はなんだか年相応で可愛らしい。
寄宿学校の話をすると少し興味を持ってくれたようだ。

「…僕は君を推薦することにしたんだけど。もちろん、衣食住は保証するし勉強もさせてあげるけど、名目上は僕の配下になってしまうし、将来は僕の元やテオの元で働いてもらうかもしれない。」

「それでも大丈夫?」と尋ねると真っ直ぐこちらをみて「はい。…エディ様に忠誠を誓います」と答えてくれた。





その後、お腹いっぱいになったであろうヒースを皇帝の元に送り出した。
書斎で1体1となかなか緊張しそうな様子だったが大丈夫だろうか。

ルカの授乳タイムでその場を離れたが大丈夫だろうか。

一度に飲む量も回数も増えてきたルカだが、その分おしめを濡らして泣いたり、なかなか寝なかったりするらしい。
乳母や侍女には苦労をかける。

時間や体調に余裕がある時は自分もあやしたり傍にいたりするのだがその1部の時間でも大変は大変だ。

それでも徐々に活発に動くようになるのを見ていると可愛く思える。



「おかあさま、ルカいる?」

「いるよ。…手洗った?」

「うん」

おいで、と手招きすると周りをキョロキョロしたり腕の中でモゾモゾするルカをデニスが覗き込む。

「ルカー、おにいさまだよ」

かわいいね、と笑うデニスもかわいい。ぷくぷく頬っぺがふたつも…。

「ヒースがきたってほんと?」

「ほんとう。さっきまで話してたんだよ」

どうして?と首を傾げるとデニスが「ヒースちょっとだけこわい」と呟く。

「そうなの?…デニスはヒースのこと嫌い?」

「…ちょっとやさしいときある…からわかんない」

「そっか」

膝の上に頭をこてん、と乗せたデニスの頭を撫でているとどうやら寝てしまったらしい。
ついでにルカもすやすや寝始めてしまった。



2人とも寝顔がかわいい…けど足も痺れてきたし腰も痛い…。

結局、起こす訳にも行かず1時間後に様子を見に来たテオに助けられた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

メビウスの輪を超えて 【カフェのマスター・アルファ×全てを失った少年・オメガ。 君の心を、私は温めてあげられるんだろうか】

大波小波
BL
 梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、18歳のオメガ少年だ。  愛らしい抜群のルックスに加え、素直で朗らか。  大人に背伸びしたがる、ちょっぴり生意気な一面も持っている。  裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく育った彼は、学園の人気者だった。    ある日、早紀は友人たちと気まぐれに入った『カフェ・メビウス』で、マスターの弓月 衛(ゆづき まもる)と出会う。  32歳と、早紀より一回り以上も年上の衛は、落ち着いた雰囲気を持つ大人のアルファ男性だ。  どこかミステリアスな彼をもっと知りたい早紀は、それから毎日のようにメビウスに通うようになった。    ところが早紀の父・紀明(のりあき)が、重役たちの背信により取締役の座から降ろされてしまう。  高額の借金まで背負わされた父は、借金取りの手から早紀を隠すため、彼を衛に託した。 『私は、早紀を信頼のおける人間に、預けたいのです。隠しておきたいのです』 『再びお会いした時には、早紀くんの淹れたコーヒーが出せるようにしておきます』  あの笑顔を、失くしたくない。  伸びやかなあの心を、壊したくない。  衛は、その一心で覚悟を決めたのだ。  ひとつ屋根の下に住むことになった、アルファの衛とオメガの早紀。  波乱含みの同棲生活が、有無を言わさず始まった……!

処理中です...