【完結】王太子は、婚約者の愛を得られるか

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本編

我が側近に幸あれ

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「フンフン~~♪時代は~~溺愛~~♪一途に~~♪愛を伝える~~♪♪」

 皆のもの、息災か?
 俺はオウタイーシ……
 フッ、そうだった。先日俺の名を明かしたのだった。
 みんなの王太子、オスカーだ。
 婚約者のヴァレリアとくっ、くくくく口付けをしたのがつい先日。
 不思議だな。全てが薔薇色に色付いているぞ。
 ビバ・ラ・バラ。まさに、至福。僥倖。
 今なら何でもできそうだ。

「殿下、ロックハート嬢から釣書のお届けです」

「ん?ファレゾン定期便だろ?適当に処理しといてくれ。フフフ~ン♪♪」

 カラクリが分かれば釣書の定期便なんてコワクナーイ。
 やはり向き合い話し合い早期解決は基本中の基本であり重要事項なのだ。

「あ、あと隣国の王太子殿下より書状が来ております」

「ん、なんだろう?」

 視察から帰国して随分経った。何か問題でもあるのだろうかと封を開け中身を確認した。

「こっ……これは!」

 それは期待半分、諦め半分で万が一を考えて言付けていたものが現実になりそうだという内容だった。

 例の隣国の侯爵令嬢と婚約者の婚約が危うそうだというもの。
 学園内で彼女の婚約者は御令嬢ではなく、自分の幼馴染みの女性と一緒にいる姿を目撃されているそうだ。
 ……魔境マジックに嵌ってしまったのか。
 いわく、周りの諫言も無視している様子。その為徐々に友人たちから見放されてしまっているようだ。
 何が彼をそうまでに頑なにさせるのだろうか。
 あんなに婚約者に好かれて、自身も態度に出ていたのに。
 人の心は分からないものだな。

「アイザック」

「何でしょうか」

「もし、もしもだぞ。もしも、万が一、の話なんだが」

「……何でしょうか」

「うむ。もしも、……隣国の侯爵令嬢の婚約が解消されたりしたら、どうする」

「まさか」

 アイザックはしばし呆け、一言つぶやいた。

「もしもの話だ」

「そうですね。そんな奇跡があるならば、卑怯だと言われても飛び付きたいですね」

 だが、まるでそんな事が起きるはずが無いと言わんばかりにアイザックは顔を歪める。
 しかしアイザックよ、人生とは何が起こるか分からないものである。

 俺は秘密裏にアイザックの釣書を隣国に送る手配をする。

『万が一の保険として送っておく。
 必要ないならそれで構わない』

 出番が無いならそれでも良い。
 だが侯爵令嬢が他に目を向けられるなら、一番オススメの男なのだ。


 そして。

 再び隣国から届いた手紙の内容は、婚約解消の申請が王宮宛に届いたというものだった。

「お前が気になっていた隣国の侯爵令嬢の婚約が解消されるらしいぞ」

「え……………」

「打診するなら、今だろう。どうする」

「……いや、しかし、何故」

「迷うのか?まあ、侯爵家の跡取り娘で引く手はあまただろうから」
「打診します。今すぐ。殿下、速達でお願いします。婚約解消と同時に行くように」

 アイザックが俺に頭を下げた。
 いつもは不遜な態度の奴が頭を下げた事はもう少し優越感に浸れるかと思ったが、こいつが幸せになれるかもしれないという喜びの方が勝った。

「ではそのように伝えておこう。まぁ、もう行ってるかもしれんがな」

 あらかじめ婚約解消された時点で釣書が行くように待機してもらっていた。

 まあ、一筋縄ではいかないだろうが、アイザックなら良い様に丸め込……ゲフンゲフン。

 慰め、包み込み、御令嬢を愛する事だろう。



 その後、暫くして婚約を受ける旨の通知が届いた。
 その手紙を読み、アイザックは見た事も無いような笑みを浮かべ身震いし、彼女が来るのを今か今かと待っていた。
 ちなみに婚約と同時に奴は爵位を譲られ、めでたく公爵となった。
 ご両親は領地でのんびりするそうだ。……そこはかとなく裏を感じるのはなぜだろう。だがあまり深く考えるのは止めておこう。

 だが、その日が近付くとやつはかなり張りきりすぎ、逆に書類が増えて行く。何でだよ。
 その為アイザックは自分の首を絞める事になってしまっていた。

「このままでは彼女が来る日に休めないではないですか!」

「お前が次々書類を持って来るからだろぉ!?」

「仕方ないではありませんか。陛下がようやく腰の痛みから回復されたと思ったらまた痛めてしまって養生なさってるんですから」

「今度は何で盛り上がったんだ」

「側妃を娶った国王の話でした」

 うちの国は一夫一妻制だが、国王に限り二年子が出来なければ側妃を迎えられるのだ。だが母上は二人男児を産んでいる。何を不安になる必要があるのか。

「その話によりますと、側妃を娶る為無理矢理法改正されたそうですよ」

 クズ王だな!

「ところがそのタイミングで王妃が懐妊。
 しかも男児出産。
 側妃は放置され、護衛騎士と親密になったそうです」

 側妃かわいそう派と側妃ざまぁ派に分かれそうだな!?

「そんな話でしたので、陛下が王妃に迫り、あとはお察しの通りです」

 まさかの父上が嫉妬したパターンか!!
 ここにきて色狂い化した親に呆れつつ、俺は次いつアカデミーに行けるのだろうか、と空を仰いだ。

「なあ、アイザック」

「賛成は致しかねます」

「そこは嘘でも『いいよ』と言えよぉ!!」

「安易に賛成できない事案もあるのですよ。
 とにかくこれも未来の為に頑張って下さい」

「主にお前の休みの為だろう」

「分かってらっしゃるなら大丈夫ですね」

 ああ言えばこう言う、相変わらずな男だが。


 その後、婚約者を迎えて一喜一憂する姿は普段は中々見れないものなので改めてこいつも人間なんだなぁ、と思ったものだった。
 婚約者の前では101匹くらいの猫被ってんだろうなぁ。

 こいつが甘やかす姿は今は想像できないが、婚約者に対してだけはでろでろに甘い顔になるのだというのは、後に知る人ぞ知る話になるのだった。


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