僕が女子バスケットボール部のマネージャーに!?~親友の身代わりとして何でもするって言ったけど、その彼女まで迫ってくるのはなぜ?

まよな柑

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6本目 女子バスケットボール部員の告白

崩壊 72-11

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「ごめんね、こんな時間に家まで来てもらっちゃって」

 成美さんの部屋に上がるのは、映画の後に寄って以来だった。

 今回は椅子を勧められて、成美さん自身はベッドに腰かけた。

 直に会って話すために僕のアパートまで来ると言っていた彼女を止め、自転車を走らせてきた。入浴も済ませ部屋着姿でいたのを見ると、やはりそれで良かったと思う。

「あのね、香織ちゃんから連絡があって……」
 成美さんは話し始めた。
「香織ちゃんのお母さんが学校へ来たんだって。家庭の事情ができたから、部活を優先させるわけにいかなくなったって。要するに……県大会には出られないって伝えに」

 昨日の今日で、本人と改めて話す間もなく、親が学校へ出向いてしまったというのか。

「最初は校長先生をって言って訪ねていったんだけど、部活のことなんだから本人が顧問に届け出るのが筋じゃない? だから先生と香織ちゃんも呼ばれたってわけ」

 何となく目に浮かぶようだ。あのお母さんが、学校の仕組みなんてこっちは知らないと言って一方的に喋る姿が。

「で、千華子先生も、それは本人が申し出ることです、って対応した」

「だろうね……」

 僕たちの知っている先生なら当然、そう返すだろう。

「そうしたら香織ちゃんのお母さん、すごく怒って……。親が行かせないって言っているのに何なんだって……。それであの後ずっと、校長室で揉めてたんだって」

 なるほど。呼ばれた時点で展開をある程度予想した先生は、汗が冷えないように制服に着替えさせてから香織さんを連れて入ったのだろう。そして、僕たちが帰った後まで話は続いていたわけだ。

「香織ちゃんは結局、今日のところは何も言わなかったんだって。でも県大会は泊まりの遠征になるから、保護者の同意書がないとそもそも行けないでしょ? お母さんは絶対に同意書を書かないって言ってるみたい」

 それをやられると、生徒の意思だけではどうしようもない。この県は広いため今回の会場は遠く、生徒一人が日帰りで試合に合流するなんて不可能だ。

「お母さんに、すごく泣かれたって……。あのお母さん昔からね、香織ちゃんと意見が食い違った時、話し合うんじゃなくて、泣くの。それで香織ちゃんが折れるっていうか、たった一人で自分を育ててくれてるお母さんを泣かせる自分が悪いって反省しちゃう感じなのね……」

 自分の存在が母親を縛ったり振り回したりしてきた――そう言っていた香織さんを思い出す。あれは今回に限ったことではなくて、ずっとそう思い続けてきたということなのか。母親が知らない男を家に連れてきても、その男たちに嫌なことをされても、個性や目標を理解してもらえなくても。

「どうしてそこまで……お母さんだって自分の都合で男の人を家に入れたりして、それで香織さんは嫌な思いもしてるのに」

「……小さい頃に言われたことがあるんだって、お母さんの彼氏だった人に。中絶されててもおかしくなかったんだから、生まれてこられただけでもお母さんに感謝しなきゃいけないよって」

 僕は思わず歯を食いしばり、爪が手の平に食い込む程に手を握った。

「他にもね、親孝行の大切さとか、子供のうちは分からなくても親は全部子供のためを思ってしてるんだとか、そういう意味のことを繰り返し言って聞かせる人が長く家にいたみたい。いや、その通りだし大事なことだとあたしも思うけどさ……香織ちゃんちの状況を考えれば、彼氏の人がお母さんへの点数稼ぎで聞こえのいいこと言ったんじゃないの? って正直……」

「うん。言いたいことは分かるよ。仮に言った本人は善意のつもりでも、それが人を苦しめてしまうことだってあるもの」

 どうして人の言葉というのは、時間を越えて、こんなにも人に影響を与え続けるのだろうか。

「今回の事、お母さんの再婚のためなんだって。部活の大会は今までも何度かあったけど、結婚は人生でそう何度もあることじゃないし、自分の方がワガママを言っているんじゃないかって、香織ちゃんは思ってるみたい」

 それだけ聞くと一理あるようにも思えなくもないけれど……。

「でもケガとかならともかく、実は最初から上の大会には保護者が行かせないつもりでしたなんて、みんなにどんな顔して言ったらいいか分からないって。部長として“一勝を”って言ってみんなを引っ張ってきたのに、その勝った先に自分が行けないなんて……」

 再婚相手の仕事の都合で急に引っ越さなくてはならないとか、そういう言い方であれば体面は保てるように思う。それに、地区大会での奈津姫さんのスタミナ切れの件のように、そもそもその人がいなければここまで来られなかったのだから感謝こそすれ責めたりはしない、そういう部員たちだ。

 ただ香織さん自身にとって、それは部活動の締めくくりとして納得できるものだろうか。

「お母さんはまた出掛けて、一人になったからって、まずあたしに連絡してきてくれたの」

 そこでまず連絡してきてくれて良かったと心から思う。やっぱり香織さんの頼るべきパートナーは成美さんだ。

「県大会に行けないなら、少しでも早く部のみんなにも伝えるべきじゃないかって、そう香織ちゃんは言うんだけど。あたしは、ちょっと待とうって止めた。あんまりにも感情的に追いつめられちゃってるから、大事な決断は待った方がいいと思って。大会に行けない方向で一旦みんなに伝わっちゃったら、今度はそれを取り消すのにも抵抗を感じるようになっちゃうから」

 さすが成美さんだ、と僕は頷いた。

「今日のところは、その話はあたしだけにしておいて、休んだ方がいいよ、明日にでも改めて考えよう――って、そういう話をしたの」

 それなら、僕には何ら連絡がないのも納得だ。

 あれ? でも成美さんから僕にその話をするのはなぜだろう。


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