98 / 107
現在
98 報せ ーChapter セラフィム
しおりを挟む
王都の中央で、大規模なチャリティーバザー・マルシェが開かれている同日。
宮廷はその日も、普段と変わらず淡々とした時間が流れていた。
王太子・セラフィムも執務室で、いつもと変わらず様々な書類に目を通しつつ、補佐官や官吏たちに囲まれながら、話を聞き、指示を出し、やるべき仕事を熟していた。
そんな時、突然なんの前触れもなく、扉が勢いよく開いた。
顔を上げると、母・エリザベルナ王后が立っていた。普段は優雅に歩く母が、息を切らしている。顔は青ざめ、目には動揺が浮かんでいた。
そして、誰よりも礼儀・礼節に厳しい人でもある。ノックもなしに入ってくるなどと、ただ事ではない。
「王后陛下」
セラフィムは椅子から立ち上がると、急いでエリザベルナの傍へ大股で足早に歩み寄る。
「人払いを。今すぐ」
エリザベルナは喉の奥から、絞り出すように声を出す。
二人の様子を茫然と見ていた、執務室に居た者たちに、セラフィムが告げた。
「下がってくれ。続きはあとにしよう」
そう言われた補佐官と文官たちは、深く首を垂れると、書類を片手に退出し、チャリオットが外から扉を閉めた。
二人きりになった瞬間、崩れ落ちそうになるエリザベルナを咄嗟に支える。
その姿勢のまま、エリザベルナの口から出た言葉は、信じたくない現実だった。
「セレイナさんが、襲撃されたわ」
セラフィムの体が、思考が、一瞬固まった。
「……何と」
「先ほど、護衛につけていた騎士が報告に来たの。大聖堂のバザーで、何者かに顔に薬品をかけられたと」
「顔に……」
「重傷だそうよ。今は伯爵邸に運ばれて、治療を受けているわ。宮廷医に必要な薬を持たせて向かわせるけれど……」
エリザベルナの声が途切れた。
セラフィムは、拳を握り締めた。激しい怒りの衝動が、腹の底から込み上げてくる。だが、今は抑えなければならない。
「詳しくその騎士から、話を聞けませんか」
「ええ。ええ……そうね」
母后を備えてあるソファーに座らせると、扉を開け、回廊で待機していたチャリオットに声をかけた。
「先ほど、王后陛下に報告に来た騎士を、ここへ連れてきてほしい。今すぐに」
「畏まりました」
チャリオットが、即、回廊を駆けて行った。
セラフィムは執務室に戻ると、母の傍らに腰を下ろす。
「犯人は、捕縛されたのですか?」
「いいえ。人混みの中で、襲撃されて、犯人は特定されていないみたい」
「計画的な犯行か」
「わからない。判断がつかない。まだ冷静に……思考が回らないの」
二人の間に、重く深い沈黙が落ちた。
やがて、扉が叩かれた。
「入れ」
チャリオットと共に、女性騎士が入ってきた。王后付きの騎士だ。赤い騎士服には砂埃で汚れ、所々濡れているように見える。急いで駆けてきたのだろう。その目は赤くなっており、口元はきつく一文字に結ばれていた。
騎士は深く首を垂れる。
「報告を聞かせてもらいたい。最初から、詳しく」
セラフィムの声は、普段の柔らかなものではない。硬く、低く、怒りを抑えているのが伝わってくるような、そんな声。
女性騎士は緊張した面持ちで頷き、話し始めた。
大聖堂のバザー。天使の靴下が売り切れ、セレイナが少し見て回りたいと言った。ガレーニャが左隣につき、自分ともう一人が後ろに続いた。人混みが酷く、戻ろうとした時だった。
何人もの人がぶつかりあっていたが、夏場にも関わらずフードを被った人物が見えた。中から長い金髪が見えたという。それを見て、警戒はしたが、肩がぶつかりすれ違っただけだと思った。
直後、セレイナの叫び声があがり、一瞬何が起きたのかわからなかった。慌てて駆け寄り、手を貸そうとしたが、ガレーニャ医師に止められ、続けて自分の頬を抑えるセレイナの手を引き離したとき、爛れた皮膚が見え、初めて事態を把握したという。
その後、ガレーニャが咄嗟にセレイナに水を浴びせかけ、周りの者たちに助けを求めた。自分たちは野次馬を押しのけるのが精一杯だった。
セレイナを伯爵邸へ運び、ガレーニャの指示で王后陛下へのご報告と、宮廷の薬草と薬品を取りに来た。
「……以上です」
報告をする女性騎士の声は終始震えていた。だが、起きたことは大体把握できた。
「お守りできず、申し訳ございません」
女性騎士が、両手を真っ直ぐに腰の横で伸ばし、深く腰を曲げて頭を下げる。
セラフィムは黙って聞いていた。腕を組み、考え込む。
小柄な人物。フードを被り、長い金髪が見えた。
計画的だ。セレイナがバザーに参加することを知っていた人物。そして、酸を用意できる人物。
頭の中に、ひとつの可能性が浮かんだ。
まさか。
だが、その『まさか』が、何度も頭をよぎる。
「母上」
セラフィムが顔を上げると、エリザベルナと視線が合う。
彼女は憔悴したような表情をしていた。いつも、凛としている王后である、母が。
母は母なりに、思うところがあるのだろう。
だが、事態をより正確に把握するために、今必要なのは怒りではなく冷静さ。
セラフィムは、エリザベルナを見たまま、ゆっくりと確認するように話す。
「伯爵邸へ行き、直接話を聞く必要があります」
「そうね……本来なら、わたくしが行くべきなのだけれど」
エリザベルナは眉を寄せると、視線を逸らし宙を仰いだ。
「この状況でわたくしが動くと、警備の手配だけで時間がかかるわ。エリオスがいれば良いのだけれど……」
「弟はまだ戻っていません」
「ええ。いつ戻るかも、わからない」
「……私が行きます。宮廷医と共に」
セラフィムの言葉に、エリザベルナが顔を向けた。
「セラフィム、あなた」
「聞き取りだけであれば、私でも務まるでしょう。それに、私は彼女のご両親にまだ、謝罪も済ませていないのです。今回のことを含め、これは私が蒔いた種だ」
少し考え込んだ後、エリザベルナは頷いた。
「……そうね、お願いするわ。国王陛下には、わたくしのほうから、報告します」
☆
伯爵邸へ向かう前に、セラフィムは一度、足を止めた。そして踵を返すと、そのままリージェリアの執務室へと向かう。
まさか、リージェリアが……
頭の中で、その言葉が繰り返される。
妻も、関係しているのでは。
いや、そんなはずはない。だが、確かめなければ。
部屋の前に立ち、深呼吸をした。表情を整える。悟られてはいけない。
そう自身を奮い立たせたセラフィムは、逸る気持ちを抑えながら、扉を叩いた。
「どうぞ」
リージェリアの声が聞こえた。
扉を開けると、リージェリアは執務机に座り、何かの書類にサインをしていた。横には既に処理済の物と、そうでないものが、綺麗に分けられてある。
急に訪れたセラフィムの姿を見てリージェリアは、驚いたように目を丸くする。
「セラフィム? どうしたの?」
その表情には、何の翳りもなかった。驚きだけがある。
セラフィムは、彼女の顔を見つめた。
本当に、何も、知らないのだろうか?
一度湧いた疑念を、消すことができない。
「いや、なんでもないよ。今から少し公務があってね。外に出てくるよ」
「公務? 外へ?」
「大聖堂の方へ、母上から頼まれた書類を持っていくんだ」
リージェリアが首を傾げた。
「セラフィムが直接?」
「ああ、今日はバザーがあるからね。正門からは入れない。裏口を通らなければならないし、裏口を通れるのは限られた者だけだから」
「でも、使いの者に任せれば」
「母上直々に頼まれたものだからね。使いじゃ駄目なのだろう」
セラフィムはいつもそうするように、優しく微笑み、リージェリアに近づいた。
そして、その薄紅色の艶のある髪をそっと撫でる。
「じゃあ、行ってくるよ」
「気をつけてね。早く帰って来てね?」
「もちろん」
部屋を出て、回廊を歩きながらセラフィムは、自分の手を見つめた。
今、妻の髪を撫でた手。
真っ先に妻を疑いに行った自分。
本当に何も知らない様子だった。驚きは本物に見えた。
だが、それすらも演技ではないかと疑っている自分がいる。
目を閉じ、息を大きく吸って吐き捨てる。姿勢を正して、足早に回廊を歩いてゆく。
そして伯爵邸へと向かう為、御車馬へ向かった。
宮廷はその日も、普段と変わらず淡々とした時間が流れていた。
王太子・セラフィムも執務室で、いつもと変わらず様々な書類に目を通しつつ、補佐官や官吏たちに囲まれながら、話を聞き、指示を出し、やるべき仕事を熟していた。
そんな時、突然なんの前触れもなく、扉が勢いよく開いた。
顔を上げると、母・エリザベルナ王后が立っていた。普段は優雅に歩く母が、息を切らしている。顔は青ざめ、目には動揺が浮かんでいた。
そして、誰よりも礼儀・礼節に厳しい人でもある。ノックもなしに入ってくるなどと、ただ事ではない。
「王后陛下」
セラフィムは椅子から立ち上がると、急いでエリザベルナの傍へ大股で足早に歩み寄る。
「人払いを。今すぐ」
エリザベルナは喉の奥から、絞り出すように声を出す。
二人の様子を茫然と見ていた、執務室に居た者たちに、セラフィムが告げた。
「下がってくれ。続きはあとにしよう」
そう言われた補佐官と文官たちは、深く首を垂れると、書類を片手に退出し、チャリオットが外から扉を閉めた。
二人きりになった瞬間、崩れ落ちそうになるエリザベルナを咄嗟に支える。
その姿勢のまま、エリザベルナの口から出た言葉は、信じたくない現実だった。
「セレイナさんが、襲撃されたわ」
セラフィムの体が、思考が、一瞬固まった。
「……何と」
「先ほど、護衛につけていた騎士が報告に来たの。大聖堂のバザーで、何者かに顔に薬品をかけられたと」
「顔に……」
「重傷だそうよ。今は伯爵邸に運ばれて、治療を受けているわ。宮廷医に必要な薬を持たせて向かわせるけれど……」
エリザベルナの声が途切れた。
セラフィムは、拳を握り締めた。激しい怒りの衝動が、腹の底から込み上げてくる。だが、今は抑えなければならない。
「詳しくその騎士から、話を聞けませんか」
「ええ。ええ……そうね」
母后を備えてあるソファーに座らせると、扉を開け、回廊で待機していたチャリオットに声をかけた。
「先ほど、王后陛下に報告に来た騎士を、ここへ連れてきてほしい。今すぐに」
「畏まりました」
チャリオットが、即、回廊を駆けて行った。
セラフィムは執務室に戻ると、母の傍らに腰を下ろす。
「犯人は、捕縛されたのですか?」
「いいえ。人混みの中で、襲撃されて、犯人は特定されていないみたい」
「計画的な犯行か」
「わからない。判断がつかない。まだ冷静に……思考が回らないの」
二人の間に、重く深い沈黙が落ちた。
やがて、扉が叩かれた。
「入れ」
チャリオットと共に、女性騎士が入ってきた。王后付きの騎士だ。赤い騎士服には砂埃で汚れ、所々濡れているように見える。急いで駆けてきたのだろう。その目は赤くなっており、口元はきつく一文字に結ばれていた。
騎士は深く首を垂れる。
「報告を聞かせてもらいたい。最初から、詳しく」
セラフィムの声は、普段の柔らかなものではない。硬く、低く、怒りを抑えているのが伝わってくるような、そんな声。
女性騎士は緊張した面持ちで頷き、話し始めた。
大聖堂のバザー。天使の靴下が売り切れ、セレイナが少し見て回りたいと言った。ガレーニャが左隣につき、自分ともう一人が後ろに続いた。人混みが酷く、戻ろうとした時だった。
何人もの人がぶつかりあっていたが、夏場にも関わらずフードを被った人物が見えた。中から長い金髪が見えたという。それを見て、警戒はしたが、肩がぶつかりすれ違っただけだと思った。
直後、セレイナの叫び声があがり、一瞬何が起きたのかわからなかった。慌てて駆け寄り、手を貸そうとしたが、ガレーニャ医師に止められ、続けて自分の頬を抑えるセレイナの手を引き離したとき、爛れた皮膚が見え、初めて事態を把握したという。
その後、ガレーニャが咄嗟にセレイナに水を浴びせかけ、周りの者たちに助けを求めた。自分たちは野次馬を押しのけるのが精一杯だった。
セレイナを伯爵邸へ運び、ガレーニャの指示で王后陛下へのご報告と、宮廷の薬草と薬品を取りに来た。
「……以上です」
報告をする女性騎士の声は終始震えていた。だが、起きたことは大体把握できた。
「お守りできず、申し訳ございません」
女性騎士が、両手を真っ直ぐに腰の横で伸ばし、深く腰を曲げて頭を下げる。
セラフィムは黙って聞いていた。腕を組み、考え込む。
小柄な人物。フードを被り、長い金髪が見えた。
計画的だ。セレイナがバザーに参加することを知っていた人物。そして、酸を用意できる人物。
頭の中に、ひとつの可能性が浮かんだ。
まさか。
だが、その『まさか』が、何度も頭をよぎる。
「母上」
セラフィムが顔を上げると、エリザベルナと視線が合う。
彼女は憔悴したような表情をしていた。いつも、凛としている王后である、母が。
母は母なりに、思うところがあるのだろう。
だが、事態をより正確に把握するために、今必要なのは怒りではなく冷静さ。
セラフィムは、エリザベルナを見たまま、ゆっくりと確認するように話す。
「伯爵邸へ行き、直接話を聞く必要があります」
「そうね……本来なら、わたくしが行くべきなのだけれど」
エリザベルナは眉を寄せると、視線を逸らし宙を仰いだ。
「この状況でわたくしが動くと、警備の手配だけで時間がかかるわ。エリオスがいれば良いのだけれど……」
「弟はまだ戻っていません」
「ええ。いつ戻るかも、わからない」
「……私が行きます。宮廷医と共に」
セラフィムの言葉に、エリザベルナが顔を向けた。
「セラフィム、あなた」
「聞き取りだけであれば、私でも務まるでしょう。それに、私は彼女のご両親にまだ、謝罪も済ませていないのです。今回のことを含め、これは私が蒔いた種だ」
少し考え込んだ後、エリザベルナは頷いた。
「……そうね、お願いするわ。国王陛下には、わたくしのほうから、報告します」
☆
伯爵邸へ向かう前に、セラフィムは一度、足を止めた。そして踵を返すと、そのままリージェリアの執務室へと向かう。
まさか、リージェリアが……
頭の中で、その言葉が繰り返される。
妻も、関係しているのでは。
いや、そんなはずはない。だが、確かめなければ。
部屋の前に立ち、深呼吸をした。表情を整える。悟られてはいけない。
そう自身を奮い立たせたセラフィムは、逸る気持ちを抑えながら、扉を叩いた。
「どうぞ」
リージェリアの声が聞こえた。
扉を開けると、リージェリアは執務机に座り、何かの書類にサインをしていた。横には既に処理済の物と、そうでないものが、綺麗に分けられてある。
急に訪れたセラフィムの姿を見てリージェリアは、驚いたように目を丸くする。
「セラフィム? どうしたの?」
その表情には、何の翳りもなかった。驚きだけがある。
セラフィムは、彼女の顔を見つめた。
本当に、何も、知らないのだろうか?
一度湧いた疑念を、消すことができない。
「いや、なんでもないよ。今から少し公務があってね。外に出てくるよ」
「公務? 外へ?」
「大聖堂の方へ、母上から頼まれた書類を持っていくんだ」
リージェリアが首を傾げた。
「セラフィムが直接?」
「ああ、今日はバザーがあるからね。正門からは入れない。裏口を通らなければならないし、裏口を通れるのは限られた者だけだから」
「でも、使いの者に任せれば」
「母上直々に頼まれたものだからね。使いじゃ駄目なのだろう」
セラフィムはいつもそうするように、優しく微笑み、リージェリアに近づいた。
そして、その薄紅色の艶のある髪をそっと撫でる。
「じゃあ、行ってくるよ」
「気をつけてね。早く帰って来てね?」
「もちろん」
部屋を出て、回廊を歩きながらセラフィムは、自分の手を見つめた。
今、妻の髪を撫でた手。
真っ先に妻を疑いに行った自分。
本当に何も知らない様子だった。驚きは本物に見えた。
だが、それすらも演技ではないかと疑っている自分がいる。
目を閉じ、息を大きく吸って吐き捨てる。姿勢を正して、足早に回廊を歩いてゆく。
そして伯爵邸へと向かう為、御車馬へ向かった。
13
あなたにおすすめの小説
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】さよならのかわりに
たろ
恋愛
大好きな婚約者に最後のプレゼントを用意した。それは婚約解消すること。
だからわたしは悪女になります。
彼を自由にさせてあげたかった。
彼には愛する人と幸せになって欲しかった。
わたくしのことなど忘れて欲しかった。
だってわたくしはもうすぐ死ぬのだから。
さよならのかわりに……
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる