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第134話 夏休み初日だもん気分はハッピー! at 1995/7/22
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はりきって朝八時には登校し、部室で頭を突き合わせて考えをまとめていた僕と渋田に遅れること二時間、我らが『ハカセ』こと五十嵐君が登校してきた。今は部室の電話で通話中だ。
「――はい。そうですね――それで結構です。こちらは何を準備しておけばいいでしょうか? ええ。ええ。そうしていただければ助かります。いえいえ――わかっていますよ。それでは」
――ぷっ。
「ということです、古ノ森リーダー」
「……説明PLZ」
スピーカー機能すらない最小限構成のコードレスフォンで通話していたのだ、五十嵐君以外には誰にも聴こえてない。僕はクソがつくほど超真面目な顔付きをしている五十嵐君に頼んだ。
「では。こちらのホワイトボードをお借りして、概要を整理させていただきます」
きゅ――ぽん。
きゅきゅ――きゅっ。
「まず、これははじめにもお伝えしましたが、今回の夏期合宿における宿泊施設の手配の一切は、この不肖、五十嵐弓之助めに一任いただきたく。よろしいですよね、古ノ森リーダー?」
(へー。下の名前、弓之助っていうんだ……知らなかったなー)
(感心しとる場合か)
天然物かそうでないか不明なクセの強い跳ね髪をしている、マッドが付く方の博士役が適任な超真面目メガネ男子にしては、かなりゴツい名前だ。普通なら、戦士か侍を想像するだろう。
「う、うん、任せるよ、ハカセ。というか、僕らには願ったり叶ったりっていう話だから」
「謹んで拝命しました。では、早速ですが、先程の電話での内容をこちらに――」
きゅきゅ――きゅっ。
「ご用意させていただく宿泊施設は、山梨県・山中湖村にあるコテージになります。収容人数的には一〇名まで対応可能ですので問題ないでしょう。食事は基本的に自炊となっています」
「す、凄いね。コテージなんてはじめてだ。……ところで、宿泊費の方はどうなるのかな?」
当然気になるポイントだ。
しかし、五十嵐君は少し迷うような素振りを見せると首を振った。
「不要です」
「………………へ?」
「ですから、不要です。このコテージはあくまで個人所有の物で、民間宿泊施設などでは――」
「い――いやいやいや!」
慌てて手を振る僕とわずかに小首を傾げて不思議そうな表情をしている五十嵐君は対照的だ。
「にしたってさ、人様からお借りするんだから、せめて、光熱費とか管理費とか最低限の額は」
「うーん。そういう……ものなのでしょうか?」
「ハカセんちの持ち物ってわけじゃないんでしょ? だったらお気持ち程度でも御礼しないと」
「なるほど。では、そのようにいたしましょう」
成績優秀で、知識も豊富ではあるものの、ときおりこういった社会常識、慣習のようなものに疎い面を見せる五十嵐君。まだあまり腑に落ちた様子はなかったものの、うなずき返した。
「日程に関しては、部員全員が揃った日に改めて調整する、ということでよろしいですよね?」
「だね。なにしろ急な話だったし、スミちゃんやロコはあっちの部活でも合宿があるから――」
と、そこまで言いかけたところで、部室のドアの向こう側から騒がしいとまではいかないもののなにやら小競り合いをしているような音が聴こえてきた。やがて顔を出したのはロコである。
「おー、いたいた! 誰もいなかったらどうしよっかーって話してたんだよねー! ちょっ!」
誰とだよ、とツッコむスキも与えず、別の誰かの白い手がにょきりと伸びてきてロコの肘のあたりを掴むと引っ張った。しかし、そのチカラは弱っちくて、とてもロコには敵わない。
「ほーらっ、観念して出てくるの。みんなに見てもらって、イメチェンの成果を見せる時よ!」
「――はい。そうですね――それで結構です。こちらは何を準備しておけばいいでしょうか? ええ。ええ。そうしていただければ助かります。いえいえ――わかっていますよ。それでは」
――ぷっ。
「ということです、古ノ森リーダー」
「……説明PLZ」
スピーカー機能すらない最小限構成のコードレスフォンで通話していたのだ、五十嵐君以外には誰にも聴こえてない。僕はクソがつくほど超真面目な顔付きをしている五十嵐君に頼んだ。
「では。こちらのホワイトボードをお借りして、概要を整理させていただきます」
きゅ――ぽん。
きゅきゅ――きゅっ。
「まず、これははじめにもお伝えしましたが、今回の夏期合宿における宿泊施設の手配の一切は、この不肖、五十嵐弓之助めに一任いただきたく。よろしいですよね、古ノ森リーダー?」
(へー。下の名前、弓之助っていうんだ……知らなかったなー)
(感心しとる場合か)
天然物かそうでないか不明なクセの強い跳ね髪をしている、マッドが付く方の博士役が適任な超真面目メガネ男子にしては、かなりゴツい名前だ。普通なら、戦士か侍を想像するだろう。
「う、うん、任せるよ、ハカセ。というか、僕らには願ったり叶ったりっていう話だから」
「謹んで拝命しました。では、早速ですが、先程の電話での内容をこちらに――」
きゅきゅ――きゅっ。
「ご用意させていただく宿泊施設は、山梨県・山中湖村にあるコテージになります。収容人数的には一〇名まで対応可能ですので問題ないでしょう。食事は基本的に自炊となっています」
「す、凄いね。コテージなんてはじめてだ。……ところで、宿泊費の方はどうなるのかな?」
当然気になるポイントだ。
しかし、五十嵐君は少し迷うような素振りを見せると首を振った。
「不要です」
「………………へ?」
「ですから、不要です。このコテージはあくまで個人所有の物で、民間宿泊施設などでは――」
「い――いやいやいや!」
慌てて手を振る僕とわずかに小首を傾げて不思議そうな表情をしている五十嵐君は対照的だ。
「にしたってさ、人様からお借りするんだから、せめて、光熱費とか管理費とか最低限の額は」
「うーん。そういう……ものなのでしょうか?」
「ハカセんちの持ち物ってわけじゃないんでしょ? だったらお気持ち程度でも御礼しないと」
「なるほど。では、そのようにいたしましょう」
成績優秀で、知識も豊富ではあるものの、ときおりこういった社会常識、慣習のようなものに疎い面を見せる五十嵐君。まだあまり腑に落ちた様子はなかったものの、うなずき返した。
「日程に関しては、部員全員が揃った日に改めて調整する、ということでよろしいですよね?」
「だね。なにしろ急な話だったし、スミちゃんやロコはあっちの部活でも合宿があるから――」
と、そこまで言いかけたところで、部室のドアの向こう側から騒がしいとまではいかないもののなにやら小競り合いをしているような音が聴こえてきた。やがて顔を出したのはロコである。
「おー、いたいた! 誰もいなかったらどうしよっかーって話してたんだよねー! ちょっ!」
誰とだよ、とツッコむスキも与えず、別の誰かの白い手がにょきりと伸びてきてロコの肘のあたりを掴むと引っ張った。しかし、そのチカラは弱っちくて、とてもロコには敵わない。
「ほーらっ、観念して出てくるの。みんなに見てもらって、イメチェンの成果を見せる時よ!」
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