【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ

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ドドソルニア編

ドワーフの国

「でっか⋯」

 俺は堂々とそびえ立つ天まで届きそうな石造りの門を見上げている。ここはドワーフの王が治める国「ドドソルニア」の入口だ。ドドソルニアは鉱山に囲まれた山あいに造られた国で、物造りが得意なドワーフを中心に栄えている。国全体を鉱山と高い石壁で囲んでいて、魔獣や不法入国者の侵入を阻んでいる。
 戦時中、兵隊を送り出すときに大門が開かれると、その迫力に兵士たちは大いに士気を高められたらしい。その門は現在建国祭のときにしか開かれることはなくなったが、今でも国の象徴として観光名物となっている。
 現在大門から離れて造られた小さな門が国への出入口になっている。しかし俺たちはその場からさらに離れた門へ向かう。このように特殊な入国をするのは今回俺たちが受けた特殊な依頼が関わってくる。

 先日人族の国カテドアラ獣人の国アランデバルの2ヶ国間で起きた「落ち人誘拐事件」に関わった犯罪者をこのドワーフの国ドドソルニアへ護送することが今回の依頼内容だ。
 カテドアラ王都の騎士団に捕らえられている犯罪者を引き取りに行くために遠回りをすることになるのでそれなりの日数がかかった。
 犯罪者の護送には様々なルールがあり、ジークたちは何度か護送依頼をした経験があるので何も知らない俺に対して丁寧に教えてくれた。
 まず「護送する冒険者と犯罪者の人数は同じにする」これは魔法が一切使えないように作られた馬車から休憩のために犯罪者を外に出した際、逃亡阻止のために犯罪者1人につき冒険者1人が監視するためのものだ。
 次は「冒険者は犯罪者が脱走の意思を見せない限り攻撃してはならない」これは昔、相手が犯罪者だからと冒険者が暴行を加えていざ強制労働になった際、支障をきたすことになった過去があるからとのこと。
 最後に「冒険者は犯罪者の健康管理は最低限する」だ。これは鉱山に着くと即座に強制労働が始まるため、動けない状態にされると困るという受け入れ先からの要望だ。

 護送専用に造られた馬車は2台を連結した形になる。前方に俺たちが乗る通常の箱型、後方は窓が無く魔法が使えないように加工された造りになっている。
 俺たちが護送する犯罪者は獣人と人族が2人ずつの屈強な男たちだった。彼らを馬車に乗せる際、ラーフさんがにっこり笑いながら声をかけた。

「あなた達が全力で逃亡しても私1人で即座に確保することができますので試したい方はお好きにどうぞ。ただし、1回逃亡する度に指の骨を1本ずつ折ります。なに、強制労働に支障がなければお咎めはありませんから気にしないで下さい。」

 こんな事を言われて逃げる人はいるのだろうか。そもそも彼らはジーク達をみて「一閃だ⋯」「鷹の目かよ⋯」「瞬発もいる⋯」と絶句していた。Sランクパーティから逃げられるわけないじゃんと初っ端から心を折られたようだ。もしかして少しは逃げる気があったのかな?
 ラーフさんの先制パンチにより護送自体はドドソルニアについて勉強できるくらいには余裕があった。と言っても犯罪者たちが結託して逃亡する可能性はゼロではないので常に気を張っていた。実際、俺は舐められているようで、彼らに食事を提供する際こっそりと話しかけてくる人族の男がいた。

「なぁ、あんた人族だろ?俺には病気の子供がいて薬代のためにあの仕事を引き受けたんだ。俺が帰らないと病気の子の世話をする奴がいなくなって死んでしまう。俺をここから逃がしてくれ!」
「それはできません。」
「なぜだ!子供が死んだらお前のせいだからな!」
「いいえ、病気の子供がいるにも関わらず捕まるような仕事を引き受けたあなたの自己責任です。」
「ふざけんな!人の心がねぇのかよ!」

 ふざけているのはあんただ。カテドアラではどうしても金が必要になった人向けにギルドから利子付きでお金を貸してもらえる制度がある。そしてこいつは独身で子供もいない。
 この護送依頼を受けるときに連れて行く犯罪者たちのプロフィールを騎士団から見せてもらっていた。得意な武器や魔法、弱点などをあらかじめ知っておいた方が警備しやすいからだ。そこには身長、体重、家族の有無、犯罪歴などが細かく記されていた。プライバシーとは⋯。
 当然、犯罪者たちはこちらが情報を持っていることを知らされることはない。つまり、この男が言うことは嘘であり、さらに誘拐事件以外にも窃盗、強姦などの余罪も明らかになっていた。強制労働だけじゃ足りなくない?

 門からドドソルニアに入国し、そこで引き渡しの手続きを行う。犯罪者たちはここから担当する鉱山へ連れられて即強制労働に入る。任期が終わるまで労働場所から離れることはできない。
 護送してきた犯罪者たちに魔法防止効果が付いている魔導具の手枷が付けられると俺たちの任務は終了だ。この手枷があれば四六時中魔法が封じられるので護送がもっと楽だったのにと思うが、昔この手枷が様々な犯罪で利用されたため今ではドドソルニアでしか使えない法律になっている。使用個数も決まっていて追尾機能も付いているので国から持ち出すこともできない上に、盗難に関わった人は漏れなく生涯強制労働だ。

 門番の「ご協力ありがとうございました。」の挨拶でドッと疲れが出た。数日間ずっと気を張っていたので気疲れと、慣れない野宿の連泊と魔獣や野盗との戦闘もあったので身体的にも限界だった。他の3人はケロッとしている。ラーフさんなんて「毎回最低1人は逃げる者がいるのに今回は逃亡者も協力者もいなくて退屈でしたね」と言っていた。この面子を前にして逃げる人がいるんだ⋯。

「ギルド報告は明日にして今日はもう宿を確保して休むか。」
「遅れても大丈夫なの?」
「正式な手続きはここでおしまいだからな。報酬が入るのが遅れるだけでギルド側はいつ報告されようと問題はないんだ。」

 夕食にするにはまだ少し早い時間だがジークたちの行きつけの宿に向かうことになった。石造りの建物が並んでいる町並みは重厚で歴史を感じる。屋台は少なく、物品でも食べ物でも店舗を構えている店が多い。
 すれ違う人々は獣人も人族も見かけるが、やはりドワーフが多い。ドワーフの特徴は男女ともに浅黒い肌と屈強な肉体、髪は程度の差はあるが皆パーマをかけたようにうねっている。そして背はとても低いか、とても高いかのどちらかだ。通称で背の高いドワーフは「だいドワ」背の低いドワーフは「ドワ」と呼ばれているらしい。

 この国でもジークたちは目立つようで、チラチラと視線を向けられる。この先これに慣れていかないといけないんだなと思うと少し憂鬱になる。でもこのパーティに入ると自分で決めたのだから恥にならないように行動しないと。

 着いた先はドワーフの夫婦が営んでいる食堂付きの宿だった。2人とも小ドワでニコニコしていて穏やかそうな人たちだ。
 冒険者は生活リズムが不規則なので前日までに次の日の食事を頼んでいたら朝昼晩いつでも食事を用意してくれるとのこと。「うちの奥さんの料理は美味いぞ~」と自慢した旦那さんが照れた奥さんに背中をバシバシ叩かれていた。仲の良い夫婦だ。
 しばらく滞在するつもりなので宿泊費1ヶ月分をパーティ用財布を管理しているラーフさんがまとめて支払う。財布は個人用とパーティ用で分けられていて、宿泊費など皆で利用するものはパーティ用の財布から出すことになっている。まだ正式に入って間もないので貢献していないから自分で出すと言っても聞き入れてもらえなかった。

 1人1部屋という贅沢な部屋割りなのがこのパーティの収入の多さを表している。そして幼馴染の彼らは「四六時中つねに一緒にはいたくない」と個人の時間も尊重していた。仲が悪いわけではなく、お互いを理解しているからこその別部屋なんだろうな。

「おい、なぜ俺とイオの部屋が別なんだ?」
「それは借りた部屋が1人部屋だからですよ狼さん?」

 3階建ての宿屋の1階は受付と食堂、2階は複数人用の大部屋エリア、3階は1人部屋エリアと分けられていた。

「今日は食堂は使えないので少し休憩したら何か食べに行きましょう。」

 そう言ってラーフさんに導かれて各々部屋に入った。部屋はこじんまりとしているが、以前住んでいた宿の部屋よりは広く清潔だった。部屋にはベッドと1人用ソファ、テーブルと椅子がありトイレと浴室が完備されている。浴室はやっぱりシャワーだけか。残念。
 部屋を探索しているとドアをノックする音が聞こえた。誰だろ?と思い返事をするとジークが入ってきた。

「やっぱり鍵をしていなかったな。イオ、部屋に入ったら必ず鍵をすることを癖付けておけな?」

 部屋の鍵は内側からだけ掛けられるようになっている。滞在人が留守のときに部屋の掃除やシーツ替えが行われる仕組みだ。なので部屋には貴重品を置かないようにする。鍵をすることは在室していることを宿側に知らせる目的もあるわけだ。

「ここの親父さんは腕っぷしが強いし、女将さんも宿泊客以外の怪しい奴は追い出すから防犯面での心配はないんだがな。普段から意識しておいたほうが良いだろう?」

 そう言いながらジークは後ろ手で部屋の鍵を掛けてさっと俺を抱きしめた。

「あぁぁぁ~やっと2人きりになれた。」

 えっ、ちょっと、頭の匂いは嗅がないで欲しい。浄化魔法をかけているとはいえ数日間シャワーもできなかったのだから気分的に嫌だ。
 でも、その逞しい腕に包まれるととても安心する。俺もジークの背中に手を回してホッと一息ついた。しばらくするとジークは俺をひょいと持ち上げてそのままソファに座った。膝抱っこはさすがに恥ずかしいので抗議しようと顔を上げた瞬間にキスをされた。
 キスはジークと想いを伝え合ってから何度かしていたが、護送依頼中はずっと仕事モードだったので自粛していた。久しぶりの触れ合いは少し緊張する。

「イオ、口開けて?」

 言われるがままに少し口を開けるとぬるりと分厚い舌が入ってきた。こ⋯これは本で読んだことがあるディープキス!?息が上手くできない。どうしたら良いかわからず縋るようにジークの服を掴む。すると部屋の扉が激しく叩かれた。

「こら!ジーク!そこにいますよね!開けて下さい!」
「チッ。邪魔すんなよな。」

 ジークは俺を膝からストンと下ろし、ソファに座らせてから扉の鍵を開けた。

「全く一瞬の間にこれですか。自重して下さい自・重。」
「したから部屋に入るまで我慢したんだろーが。」
「夕食を食べに行きますよ。ロロを呼んでくるのでその間に準備して下さいね。」

 ジークはため息をつきながらドアを閉め、すぐに出るからなのか今度は鍵をかけなかった。そして俺の顔を見てふはっと笑い、頬を撫で「真っ赤だ。」と愛おしそうに目を細めた。

**********************************

ドドソルニア編スタートです。
更新は不定期になります。

エロが書けないので全年齢のつもりでいましたが、色々調べてみると「ベロチューはR-15」という意見もあり、保険のためにR-15指定を付けることにしました。
感想 11

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