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ドドソルニア編
弟子入りと元カノ(後半sideジーク)
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「弟子入り?」
ランクアップ試験のための護衛依頼は、同じ人からの依頼でも1件につき1回で換算されるので俺はシエロさんだけの依頼を受けていた。
色んな人の護衛をした方が経験の幅を広げられるのではないかと思ったが、それはジークたちと一緒に受けるようにと説得された。いまいち納得できないが、その代わり採掘の他に納品などの護衛でも指名してもらうようにとラーフさんがシエロさんに頼んでくれた。
今日はその納品の護衛を終えた帰りにシエロさんのお店でロランのお茶を飲んでいたところだ。
「そう、イオはBランク試験の"職人の弟子入り"はまだでしょ?だから師匠のところでやろうよ!」
「それは助かるけどシエロさんはいいの?」
「⋯別にいいけど。」
「やったー!決まりね!師匠ってば面倒くさがって今までやった事なかったんだよねー。」
「ええ?その状況で本当にいいんですか?」
後から聞くと職人側は冒険者の短期弟子入りを受け入れると、冒険者ギルドでの依頼料が割引になるメリットがあるらしい。
「俺もイオと仕事したいし一緒に頑張ろうぜ!」
**************************
弟子入り先も決まったのでジークたちに報告する。弟子入り期間中は他の依頼を受けることは物理的にできないので報告は必須だ。
「イオを気に入ったと聞いていたが弟子入りまで⋯」
「食事を用意してくれる、気の済むまで採掘をさせてくれる、余計な口出しをしないという所でしょうね⋯。」
「イオくん搾取されてない?長時間付き合う必要はないんだよ?」
渋顔のジーク、呆れ顔のラーフさん、心配顔のロロさんに一斉に言われる。搾取されてるつもりはありません。
「最近は慣れてきて周りを警戒しながら作業をすることもできるようになってきたので、時間を無駄にはしていませんよ。それにシエロさんは質問には答えてくれるので困ったことはありません。」
「良い子だ。」
「良い子ですね。」
「良い子すぎるー。」
「"子"はやめて下さい。」
************************
弟子入りと言っても職人によって弟子にやらせることは違っている。シエロさんは細かい雑用と店番だ。雑用と言っても扱うのは鉱石なので全てが重い。荷物の持ち運びだけで筋トレになる。
そして店側の立場になることによって客としてでは見えなかったことが見えてくる。シエロさんが造る物は武器が中心だ。お店に展示している誰でも使える武器と、その人に1番合うように造るオーダーメイドがある。シエロさんは武器を造るときは1本1本真摯に向き合う。
「武器は冒険者の命だからね。俺も命を賭けて造るのが作品への礼儀だ。」
と弟子になってしばらくしてからシエロさんが話してくれた。最初の方に比べたらかなり話してくれるようになったものだ。他人に興味がないこともあるが、人見知りも激しいことがコミュニケーションが取りにくい一因のようだ。
工房の炉の前で金属を叩く作業になると俺の手伝えることは無くなるので店番の方へ回る。俺が店頭にいる間にロランが食事の準備をする。俺の分も用意してくれるのでとても助かる。
弟子入りのときにシエロさんは30歳、ロランは14歳だと聞いたが、ロランは本当に働き者だ。子供に見えるなと思ったら本当に子供だった。シエロさんのお店の近所に住んでいたロランは鍛冶屋に憧れていて、小さいころからこの店に入り浸っていたらしい。
家事ができないシエロさんの手伝いをし始めてから押しかけ弟子となり今に至ると聞いた。
*************************
護衛任務を終わらせ、冒険者ギルドを出ると真っ赤な夕日が沈むところだった。夕方に依頼を終えた沢山の冒険者がギルドから出入りをしている。依頼を終わらせて疲れた冒険者たちはそこから食堂や飲み屋に向かう。
依頼終わりはどの冒険者も興奮状態だ。ソラレにいたときはこのタイミングで絡まれることが多かったので、できるだけ騒いでいる冒険者たちを避けて歩く。
同じ方向を歩くパーティがこの後の話をしている声が聞こえてくる。
「飯どこ行く?」
「いつものとこでいいぞ。」
「俺そのあと娼館に行きたい。」
街には大なり小なり必ず娼館がある。依頼終わりの冒険者が戦闘の興奮のまま行くことが多いので、ギルドから遠くない場所にあることが多い。
「お前彼女いただろ?」
「別れた。」
「めっちゃラブラブだったのに?なんで?」
「セックスがつまらなかったんだよ。いつまでも慣れずに恥ずかしがってばかりで飽きた。」
「あーなんかわかる。イヤイヤばっかり言われたら萎えるよなー。」
思わず聞き耳を立ててしまった。つい自分に当てはめて考えてしまう。イヤと言ったことはないが恥ずかしがってばかりなのは心当たりがある。
こと性に関して俺はジークに任せっぱなしだ。これは恋人として偏りが出るのではないか?と思っても経験の差は昨日今日で埋められるものではない。人に相談する?でもラーフさんやロロさんには聞き辛い。大体パーティメンバーに性事情を知られるなんて気まず過ぎる。それにいきなりこんな相談をされても困るだろう。
程よく仲が良くて程よく距離感のある人なんて⋯ダメだ。交友関係が狭すぎて思い付かない。考えながら歩いていると周囲がにわかに騒ぎ始めた。
「おい、あれSランクの"一閃"だ。」
「カッケェー!強そ~!」
いつもの感じだなと思いながら騒ぎの先に目をやると誰かと並んで立っているジークが見えた。女性の冒険者だろうか?ジークと同じくらい背が高く頭の上にはシュッとした細い耳と、毛量の多いしなやかな尻尾が付いているので獣人だな。何の動物だろう?
「あれ誰だ?めっちゃ美人!」
「お前知らねえの?Aランクのウマ獣人の"踏破"嬢だぜ。んで一閃の元カノだ。」
「"踏破"ってどんな固有スキルだ?」
「一撃で大地をも割る足技を持っているらしい。」
「強い上にエロそうだなんて最高だな羨まし!」
元彼女⋯確かにジークのような格好良い人に過去恋人がいたとしてもおかしくないよな。いつもまっすぐに好意を伝えてくれるので過去のことなんて思い付きもしなかった。
「顔面強すぎる2人だな!元ってことは別れてんの?勿体ねぇ!」
「だって一閃には番がいるじゃん?ほらあの人族の。」
俺のことですねー。気配を消してその場をこっそり離れる。元彼女だとわかっている状態でジークに声をかける勇気はないのでそのまま宿に戻った。
************************
宿での夕食終わり、向かいには嫌そうな顔をしたジーク、左右にはニヤついているラーフさんとロロさん。一体どんな状況?
「イオ⋯黙っててもその内耳に入るだろうから先に言っておくんだが⋯その⋯夕方なんだが⋯」
「元カノに会っちゃったんだよー。」
「3日しか付き合ってないけどな!」
3日!?3日で別れるって一体何が!?
恋愛経験が無い俺には付き合うことも別れることも想像ができないので逆に興味が湧くな⋯。
「あのー。もしよければお付き合いして別れた流れをお聞きしても?」
「ジークの1番下の妹に番ができたと聞いて、兄弟姉妹の中で自分だけが番に出会えていないことにやさぐれてたまたま誘われた女性と付き合うことになったものの、3日目に浮気されて別れたんですよ。」
「ジェットコースター並みのスピード感。」
ジークが浮気されるなんて。しかも3日で?
そんなことするのに何で付き合ったんだろう?
「俺はイオだけだからな。」
「うん、そこは信用してるよ。」
「ただ、イオに気を付けてもらいたいことが⋯」
何だろう。元カノからの嫌がらせとかあるのかな?ラノベで見た。
「彼女は気に入った男はすぐに誘うとんでもない女なのでイオは決して近付かないようにして下さい。」
「ジークと付き合った翌日に俺とラーフが誘われたんだよねー。ジークと◯兄弟になりたくないって断ったら誘ってこなくなったけどー。」
「俺それ知らないけど!?何で言ってくれなかったんだ!?」
◯兄弟って何だろう?それにしても本当になぜ付き合うことになったんだ?
***********************
(sideジーク)
最悪だ。またあのクソ女に会うことになるなんて。相手も冒険者なのでどこかの国でエンカウントする可能性は当然あったのだが、実際そうなるとげんなりする。
当時の俺はどうかしていた。数年前、ドドソルニアで活動をしていたときに家族との定期連絡で一番下の妹に番が見つかったと報告が入った。これで11人の兄弟姉妹の中で俺だけが番を見つけていない状態になった。
別に番にそこまで拘ってはいなかったが、何だかむしゃくしゃしてその日の依頼は暴れに暴れた。ちょうど討伐レベル高の「曲角牛」の群れの討伐だったので久しぶりにギリギリの戦いだった。複数のパーティとの合同依頼で、怪我人はいても死者は出なかったので依頼としては満足な結果だった。
体が興奮していたので娼館にでも行こうかと思っていたら、その日初めて会うウマ獣人の冒険者に声をかけられた。
「私ニギ。娼館行くなら私とはどう?」
「いや、娼館で充分だ。」
「でも今日のメンバーほとんど行っちゃったわよ?多分お店はいっぱいじゃない?」
そう言えば合同依頼で一緒だった複数のパーティはいつの間にかいなくなっていた。一度にこの人数の冒険者が娼館に行っていたら確かに店の許容人数はオーバーしているだろう。
「俺は娼館以外で人と寝るだけの関係を持つつもりはない。」
「じゃあお付き合いしましょうよ。私とあなた、けっこうお似合いだと思うけど?」
俺はこの誘いに乗った。言い訳させてもらうと俺は付き合う相手は大事にするし、浮気など言語道断だ。それなのにあの女、俺と付き合った3日目にAランク冒険者の男と連れ込み宿から出てきた所に鉢合わせた。そのときのアイツの言い分は「だってジークは依頼でいなかったじゃないの。」だ。クソがっ!!そして数年越しに知ったが俺と付き合っておきながらロロとラーフも誘っただと?とんでもねぇ女だ。
別れてから速攻でドドソルニアを出たのでそれから顔を思い出すこともなかった。
このクソ女は久しぶりに会うと何食わぬ顔で「久しぶり~。元気にしてた?」と声をかけてきやがった。
「お前よく俺に話しかけられたな。」
「やだ~数年前の話なのにまだ引きずってるの?そんなに私のこと好きだった?」
「んなわけねーだろこのクソ◯ッチ。」
「怖い怖い、またねー。」
ヒラヒラと手と尻尾を振って人をおちょくったような顔で去っていく。
あいつと関係を持ったことは黒歴史だが変えられない事実なので仕方がない。だが、イオに手を出そうとしたらタダでは済まさない。
後でイオに強めのマーキングをすることを決意した。
***********************
伏せ字だらけの話になってしまいました。
冒険者同士の会話なんてこんなもんです。
イオは育ちが良いからあまり言葉が荒れないです。
ランクアップ試験のための護衛依頼は、同じ人からの依頼でも1件につき1回で換算されるので俺はシエロさんだけの依頼を受けていた。
色んな人の護衛をした方が経験の幅を広げられるのではないかと思ったが、それはジークたちと一緒に受けるようにと説得された。いまいち納得できないが、その代わり採掘の他に納品などの護衛でも指名してもらうようにとラーフさんがシエロさんに頼んでくれた。
今日はその納品の護衛を終えた帰りにシエロさんのお店でロランのお茶を飲んでいたところだ。
「そう、イオはBランク試験の"職人の弟子入り"はまだでしょ?だから師匠のところでやろうよ!」
「それは助かるけどシエロさんはいいの?」
「⋯別にいいけど。」
「やったー!決まりね!師匠ってば面倒くさがって今までやった事なかったんだよねー。」
「ええ?その状況で本当にいいんですか?」
後から聞くと職人側は冒険者の短期弟子入りを受け入れると、冒険者ギルドでの依頼料が割引になるメリットがあるらしい。
「俺もイオと仕事したいし一緒に頑張ろうぜ!」
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弟子入り先も決まったのでジークたちに報告する。弟子入り期間中は他の依頼を受けることは物理的にできないので報告は必須だ。
「イオを気に入ったと聞いていたが弟子入りまで⋯」
「食事を用意してくれる、気の済むまで採掘をさせてくれる、余計な口出しをしないという所でしょうね⋯。」
「イオくん搾取されてない?長時間付き合う必要はないんだよ?」
渋顔のジーク、呆れ顔のラーフさん、心配顔のロロさんに一斉に言われる。搾取されてるつもりはありません。
「最近は慣れてきて周りを警戒しながら作業をすることもできるようになってきたので、時間を無駄にはしていませんよ。それにシエロさんは質問には答えてくれるので困ったことはありません。」
「良い子だ。」
「良い子ですね。」
「良い子すぎるー。」
「"子"はやめて下さい。」
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弟子入りと言っても職人によって弟子にやらせることは違っている。シエロさんは細かい雑用と店番だ。雑用と言っても扱うのは鉱石なので全てが重い。荷物の持ち運びだけで筋トレになる。
そして店側の立場になることによって客としてでは見えなかったことが見えてくる。シエロさんが造る物は武器が中心だ。お店に展示している誰でも使える武器と、その人に1番合うように造るオーダーメイドがある。シエロさんは武器を造るときは1本1本真摯に向き合う。
「武器は冒険者の命だからね。俺も命を賭けて造るのが作品への礼儀だ。」
と弟子になってしばらくしてからシエロさんが話してくれた。最初の方に比べたらかなり話してくれるようになったものだ。他人に興味がないこともあるが、人見知りも激しいことがコミュニケーションが取りにくい一因のようだ。
工房の炉の前で金属を叩く作業になると俺の手伝えることは無くなるので店番の方へ回る。俺が店頭にいる間にロランが食事の準備をする。俺の分も用意してくれるのでとても助かる。
弟子入りのときにシエロさんは30歳、ロランは14歳だと聞いたが、ロランは本当に働き者だ。子供に見えるなと思ったら本当に子供だった。シエロさんのお店の近所に住んでいたロランは鍛冶屋に憧れていて、小さいころからこの店に入り浸っていたらしい。
家事ができないシエロさんの手伝いをし始めてから押しかけ弟子となり今に至ると聞いた。
*************************
護衛任務を終わらせ、冒険者ギルドを出ると真っ赤な夕日が沈むところだった。夕方に依頼を終えた沢山の冒険者がギルドから出入りをしている。依頼を終わらせて疲れた冒険者たちはそこから食堂や飲み屋に向かう。
依頼終わりはどの冒険者も興奮状態だ。ソラレにいたときはこのタイミングで絡まれることが多かったので、できるだけ騒いでいる冒険者たちを避けて歩く。
同じ方向を歩くパーティがこの後の話をしている声が聞こえてくる。
「飯どこ行く?」
「いつものとこでいいぞ。」
「俺そのあと娼館に行きたい。」
街には大なり小なり必ず娼館がある。依頼終わりの冒険者が戦闘の興奮のまま行くことが多いので、ギルドから遠くない場所にあることが多い。
「お前彼女いただろ?」
「別れた。」
「めっちゃラブラブだったのに?なんで?」
「セックスがつまらなかったんだよ。いつまでも慣れずに恥ずかしがってばかりで飽きた。」
「あーなんかわかる。イヤイヤばっかり言われたら萎えるよなー。」
思わず聞き耳を立ててしまった。つい自分に当てはめて考えてしまう。イヤと言ったことはないが恥ずかしがってばかりなのは心当たりがある。
こと性に関して俺はジークに任せっぱなしだ。これは恋人として偏りが出るのではないか?と思っても経験の差は昨日今日で埋められるものではない。人に相談する?でもラーフさんやロロさんには聞き辛い。大体パーティメンバーに性事情を知られるなんて気まず過ぎる。それにいきなりこんな相談をされても困るだろう。
程よく仲が良くて程よく距離感のある人なんて⋯ダメだ。交友関係が狭すぎて思い付かない。考えながら歩いていると周囲がにわかに騒ぎ始めた。
「おい、あれSランクの"一閃"だ。」
「カッケェー!強そ~!」
いつもの感じだなと思いながら騒ぎの先に目をやると誰かと並んで立っているジークが見えた。女性の冒険者だろうか?ジークと同じくらい背が高く頭の上にはシュッとした細い耳と、毛量の多いしなやかな尻尾が付いているので獣人だな。何の動物だろう?
「あれ誰だ?めっちゃ美人!」
「お前知らねえの?Aランクのウマ獣人の"踏破"嬢だぜ。んで一閃の元カノだ。」
「"踏破"ってどんな固有スキルだ?」
「一撃で大地をも割る足技を持っているらしい。」
「強い上にエロそうだなんて最高だな羨まし!」
元彼女⋯確かにジークのような格好良い人に過去恋人がいたとしてもおかしくないよな。いつもまっすぐに好意を伝えてくれるので過去のことなんて思い付きもしなかった。
「顔面強すぎる2人だな!元ってことは別れてんの?勿体ねぇ!」
「だって一閃には番がいるじゃん?ほらあの人族の。」
俺のことですねー。気配を消してその場をこっそり離れる。元彼女だとわかっている状態でジークに声をかける勇気はないのでそのまま宿に戻った。
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宿での夕食終わり、向かいには嫌そうな顔をしたジーク、左右にはニヤついているラーフさんとロロさん。一体どんな状況?
「イオ⋯黙っててもその内耳に入るだろうから先に言っておくんだが⋯その⋯夕方なんだが⋯」
「元カノに会っちゃったんだよー。」
「3日しか付き合ってないけどな!」
3日!?3日で別れるって一体何が!?
恋愛経験が無い俺には付き合うことも別れることも想像ができないので逆に興味が湧くな⋯。
「あのー。もしよければお付き合いして別れた流れをお聞きしても?」
「ジークの1番下の妹に番ができたと聞いて、兄弟姉妹の中で自分だけが番に出会えていないことにやさぐれてたまたま誘われた女性と付き合うことになったものの、3日目に浮気されて別れたんですよ。」
「ジェットコースター並みのスピード感。」
ジークが浮気されるなんて。しかも3日で?
そんなことするのに何で付き合ったんだろう?
「俺はイオだけだからな。」
「うん、そこは信用してるよ。」
「ただ、イオに気を付けてもらいたいことが⋯」
何だろう。元カノからの嫌がらせとかあるのかな?ラノベで見た。
「彼女は気に入った男はすぐに誘うとんでもない女なのでイオは決して近付かないようにして下さい。」
「ジークと付き合った翌日に俺とラーフが誘われたんだよねー。ジークと◯兄弟になりたくないって断ったら誘ってこなくなったけどー。」
「俺それ知らないけど!?何で言ってくれなかったんだ!?」
◯兄弟って何だろう?それにしても本当になぜ付き合うことになったんだ?
***********************
(sideジーク)
最悪だ。またあのクソ女に会うことになるなんて。相手も冒険者なのでどこかの国でエンカウントする可能性は当然あったのだが、実際そうなるとげんなりする。
当時の俺はどうかしていた。数年前、ドドソルニアで活動をしていたときに家族との定期連絡で一番下の妹に番が見つかったと報告が入った。これで11人の兄弟姉妹の中で俺だけが番を見つけていない状態になった。
別に番にそこまで拘ってはいなかったが、何だかむしゃくしゃしてその日の依頼は暴れに暴れた。ちょうど討伐レベル高の「曲角牛」の群れの討伐だったので久しぶりにギリギリの戦いだった。複数のパーティとの合同依頼で、怪我人はいても死者は出なかったので依頼としては満足な結果だった。
体が興奮していたので娼館にでも行こうかと思っていたら、その日初めて会うウマ獣人の冒険者に声をかけられた。
「私ニギ。娼館行くなら私とはどう?」
「いや、娼館で充分だ。」
「でも今日のメンバーほとんど行っちゃったわよ?多分お店はいっぱいじゃない?」
そう言えば合同依頼で一緒だった複数のパーティはいつの間にかいなくなっていた。一度にこの人数の冒険者が娼館に行っていたら確かに店の許容人数はオーバーしているだろう。
「俺は娼館以外で人と寝るだけの関係を持つつもりはない。」
「じゃあお付き合いしましょうよ。私とあなた、けっこうお似合いだと思うけど?」
俺はこの誘いに乗った。言い訳させてもらうと俺は付き合う相手は大事にするし、浮気など言語道断だ。それなのにあの女、俺と付き合った3日目にAランク冒険者の男と連れ込み宿から出てきた所に鉢合わせた。そのときのアイツの言い分は「だってジークは依頼でいなかったじゃないの。」だ。クソがっ!!そして数年越しに知ったが俺と付き合っておきながらロロとラーフも誘っただと?とんでもねぇ女だ。
別れてから速攻でドドソルニアを出たのでそれから顔を思い出すこともなかった。
このクソ女は久しぶりに会うと何食わぬ顔で「久しぶり~。元気にしてた?」と声をかけてきやがった。
「お前よく俺に話しかけられたな。」
「やだ~数年前の話なのにまだ引きずってるの?そんなに私のこと好きだった?」
「んなわけねーだろこのクソ◯ッチ。」
「怖い怖い、またねー。」
ヒラヒラと手と尻尾を振って人をおちょくったような顔で去っていく。
あいつと関係を持ったことは黒歴史だが変えられない事実なので仕方がない。だが、イオに手を出そうとしたらタダでは済まさない。
後でイオに強めのマーキングをすることを決意した。
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伏せ字だらけの話になってしまいました。
冒険者同士の会話なんてこんなもんです。
イオは育ちが良いからあまり言葉が荒れないです。
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