私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第三章 19)満月までの五日間

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 「アリューシア、君の目標はシュショテじゃない。シュショテは君のはるか上を行っている。追いかけるだけ無駄だ。手ごろな目標はこの男、彼を抜くことさ。さあ、カルファル、ガルディアンを呼び出すんだ。さもなければ、部屋から出て行け」

 プラーヌスは言った。あのいつもの冷淡な口調で。
 その言葉を黙って聞いていたカルファルが口を開いた。

 「い、いいだろう。協力することを約束したんだ。我がガルディアンを見せてやる」

 こうやってみだりにガルディアンを呼び出すということが、魔法使いにとってどういう類の行為なのかわからないけれど、カルファルの反応を見る限り、それはかなりぶしつけな申し出だったよう。
 しかしカルファルはあえて、プラーヌスからの無礼な申し出を承諾することにしたようだ。
 彼は腰に吊るした鞄から石盤を取り出す。そしてそれに何やら書き始める。
 水晶玉が瞬き始め、またもや新たな光が現れた。
 それほど弱い光ではない。しかし隣で強烈に瞬くシュショテの光に比べると、それははるかに見劣りしていることは事実だった。

 「いいよ、消して。見ていられない」

 気を遣ったつもりなのだろうか、プラーヌスが即座にそう言った。いや、カルファルを蔑んでいるということを伝えるため、わざとそのような態度を取ったのかもしれない。

 「別に恥じるものでもない。気が済むまで見るがいいさ」

 逆にカルファルは居直ったようだ。むしろ誇らしげに水晶玉の中を見つめる。

 「そうか、ならばよく見比べるんだ、アリューシア。魔法使いになってまだそれほど年月も経っていないシュショテのガルディアンと、もう既に十年以上経験のある魔法使いのガルディアンとを。二人が戦えば、カルファルは瞬時に殺されるだろう」

 「いや、いや、そうとも限らないのが、魔法の世界だ。戦い方次第では、下位の魔法使いでも上位の魔法使いに勝つことが出来る。こんな世間知らずのガキに負ける俺ではない」

 「そんなのは負け惜しみに過ぎない。これだけの差があれば、君が勝つことは無理。よほど、特殊な魔法を使うことが出来れば別だけど」

 「俺にそれが使えたら?」

 「ならば警戒が必要だね」

 プラーヌスの視線が鋭く尖った。カルファルの本心を仔細に探るように彼をじっと見つめる。
 一方、カルファルは何かを誤魔化すかのように、あの軽薄な笑みを浮かべながら、プラーヌスに背を向ける。

 「嘘だよ、俺に特殊な魔法なんて使えない。俺は魔法を捨てたんだ。これからは現世の快楽のみに生きる。具体的に言えば・・・、いや、女性の前でそのようなことを口にするのはやめておこう。とにかくこれからは楽しい人生を送る、それだけさ」

 「その選択はきっと正しい。才能と覚悟がない者にとって、最も重要なことはいつ諦めるかということ。君はどうだ、アリューシア?」

 「わ、私は、出来るだけ頑張りたいと」

 プラーヌスとカルファルの緊張感のある遣り取りに、さすがのアリューシアも圧倒されていたようだ。

 「ならば全力を尽くすんだ。これくらいのガルディアンならば、君に才能が少しでも備わっているのならば、すぐに契約することが出来る。そうだな、期限は次の満月までにしよう。次の満月までにカルファルを越えるガルディアンとの契約を果たすことが出来なければ破門、この塔から出て行ってもらう」

 「え?」

 すぐにプラーヌスの言葉が飲み込めなかったのかもしれない。少し間が空いてから、アリューシアが小さな声を上げた。

 「才能も覚悟もないものを相手に、だらだらと時間を費やしていられないからね」

 「だけど、次の満月なんてもうすぐ」

 五日後だ。魔法のことはよくわからないが、だけど普通に考えて、そんな短期間でカルファルを追い抜くことが可能だとは到底思えない。

 「話しは以上」

 しかしプラーヌスはそう言って、この部屋に来た時と同じようにローブの黒い裾を翻し、部屋から出て行った。

 「ちょっと待って下さい、プラーヌス様!」

 アリューシアがプラーヌスを呼び止めようとするが、もちろん彼は足を止めない。その姿を完全に消した。

 「結局、何にも指導してもらってないんだけど・・・」

 アリューシアがつぶやく。「プラーヌス様、だけど私、頑張ります! 絶対にあなたの期待に応えて見せますね」

 これまでのプラーヌスとのやり取りで、いったいどこに希望を見出したのか私にはまるで見当もつかなかったが、アリューシアの瞳にはこれからの期待とワクワク感が溢れている。

 「プラーヌス様! いつか上位の魔族と契約を果たし、私があなたの助手となって助けます!」
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