1,859 / 1,861
視線は南へ
PHASE-1859【朝霧】
しおりを挟む
「明日は早朝から動くことになるだろう。少しでも休める時に休むんだな」
「おうよ!」
「あと、もう少し静かにな」
「おう」
早朝に備えて寝ているメンツも多いからな。嬉しさからテンション上がってデカい声になってしまった。
ベルの背中を見送りつつ、
「ミルモン。俺たちが圧倒的強者に頼られる時が来るなんてな」
「けっこう前から頼られていたとも思うけどね。ま、兄ちゃんのことだから気合い入ったんじゃないの」
「入りますとも! ミルモンも最高の力で俺と一緒に大立ち回りだな」
「もちろんだよ♪」
敵をちぎっては投げちぎっては投げでの八面六臂の大活躍をベルだけでなく皆に見せて大いに士気を高めてみせませう!
嬉しさから気分が昂ぶって眠れなくなっちまうよ!
たまらねえぜ!
「おおトール殿、随分と遅かったですな」
「あ、うん。うん?」
「ささ、寝床の準備は整えていますよ」
「あ、うん」
「ロイルでの宿泊を思い出しますね」
「あ、うん……」
――……なんでジージーが俺の軍幕にいるの? 俺とジージーはペアなのかな?
トールハンマーではこの三人で特訓していたからそういった流れで班が決まっているのだろうか?
――……ううん……。
昂ぶっていたのにな……。
すんっ――と冷静になっちまったよ……。
うん……。まさか狭い軍幕にて至近でジージーの素顔を見ながら寝ることになるなんてね……。
たまらねえぜ……。
――……。
朝霧が支配する平原。
風光明媚って言うだけあって景色は最高。
右側には大きな湖が見える。
朝日に照らされた湖を目にすることが出来ればもっと感動するんだろうけども、日が昇る時間はまだ先。
というより曇天模様なので本日は絶景を目にすることは出来ないだろうね。
初見だと海だと勘違いしそうな湖はエーリィ湖という大湖だとナブル将軍が眠そうな顔で教えてくれた。
侵略が始まる以前は、暑くなるとこの地は避暑地としても利用され、貴族、平民が分け隔てなく涼を楽しむことでも有名な地であったという。
そんな時期には多くの商人が露天を開いて様々な物を売っていたそうな。
朝から夜遅くまで賑わいのある楽しい時間を過ごしたものでした。と、心の友ダンブル子爵が寝ぼけ眼で教えてくれる。
やはりバリタン伯と同じ馬車で寝たこともあってか寝不足のようで、疲れをとるためにノーマルポーションを一飲みする両人。
「飲んだところで張り切って行きましょう!」
かく言う俺もきっちりと飲んでいるけどね。トラウマを克服しても就寝中ずっとセミの頭が至近にあればろくに寝られないっての……。
程なくしてポーションの効果が出てきたのか、
「我が弓で愚かなる侵略者共を射貫いてやりましょう!」
領地がエルフの国――エリシュタルトと隣接していることから弓術と弓の製造技術を学んでいるダンブル子爵が高らかに発せば、自領の兵達もそれに続く。
「戦うのもいいですがほどほどにしておいてくださいね」
と、ヒッポグリフに跨がった先生が後方からやってくる。
「なにせ相手は我々にとって、大いなる脅威となる存在。現蹂躙王をも超える存在なのですからね」
と、先生の後ろに座る甥の筍攸さん。
ほどほどにやりつつ、相手の疑念を更に強める。
「皆さんの準備は整っているようですね」
「もちろんだ荀彧殿」
「本日も王は快活でなにより。大きな背中を見せることで兵達にも活力を分け与えてください」
「任せておけ!」
力強いね。
「本気は出さないように願います。まずは疑心を今以上に強めさせることが重要なのですから」
ここでも念を押す筍攸さん。
「書けていますか公達」
「ここに」
と、王都ではメジャーとなってきた紙ではなく羊皮紙。
「どんな内容が書かれているんですか?」
「どうぞ」
荀攸さんに手渡された羊皮紙の内容にざっと目を通す。
――――ふむん。なんだろうかこの当たり障りのない文面は。
社会人となった時、相手先に送るような内容で戦いを伝えるものだった。
つまりはこの文を送ってガガドムサに宣戦布告するのかな?
この羊皮紙の送り先を聞こうとしたところで、
「さて、動くか荀彧殿」
王様に遮られる。
「もちろんです。陥陣営殿」
「問題ない」
短い返事。
「先にも公達が口にしましたが――本気を出さないように」
「問題ないと言っている」
「では――」
ここで王様へと目を向ける先生。
「よし! 最前列はこれより我に続け!」
抜剣から切っ先を前へと向け、自身の勢いを馬にも伝播させれば勢いよく竿立ち。
王様の騎乗する馬は、俺のダイフクやベルの黒馬のようなサラブレッド体型ではなく、一回り大きな農耕馬を思わせる恵まれた体躯の軍馬。
馬甲は小札タイプではなく、ギムロンやキュクロプス兄弟たちを中心とした職人たち制作の一枚の鉄からなる繋ぎ目がない馬甲。
重量がある分、装備する馬は限られる。
重々しい馬甲を装備した軍馬が竿立ちから勢いよく前足を地面へとつければ――ズンッ! と大地を揺らす。
振動がダイフクの蹄を伝って俺のケツにまで届いた。
俺のケツに届いたと同時に駆け出す王様。
「いやいや!」
心の友であるダンブル子爵が慌てた声。
誰よりも前に立つとは言ったけども、単騎駆けとは聞いていないと自身の馬の横腹をトンッと蹴って追走。
これに他の家臣団も続く。
王侯貴族の面々が先陣をきっていく姿を目にし、
「負けてられねえぞテメー等!」
ちょっと離れた位置から聞こえてくるのはカイルの声。
見事な健脚を披露してみせるのは冒険者の一団。
一般的な兵士と違ってマナを扱える連中は馬いらずとばかりにこちらの先頭と併走してみせる。
こうやって離れた位置から見るとやはり冒険者って超人だね。
馬に負けない脚力を有しているんだから。
「おうよ!」
「あと、もう少し静かにな」
「おう」
早朝に備えて寝ているメンツも多いからな。嬉しさからテンション上がってデカい声になってしまった。
ベルの背中を見送りつつ、
「ミルモン。俺たちが圧倒的強者に頼られる時が来るなんてな」
「けっこう前から頼られていたとも思うけどね。ま、兄ちゃんのことだから気合い入ったんじゃないの」
「入りますとも! ミルモンも最高の力で俺と一緒に大立ち回りだな」
「もちろんだよ♪」
敵をちぎっては投げちぎっては投げでの八面六臂の大活躍をベルだけでなく皆に見せて大いに士気を高めてみせませう!
嬉しさから気分が昂ぶって眠れなくなっちまうよ!
たまらねえぜ!
「おおトール殿、随分と遅かったですな」
「あ、うん。うん?」
「ささ、寝床の準備は整えていますよ」
「あ、うん」
「ロイルでの宿泊を思い出しますね」
「あ、うん……」
――……なんでジージーが俺の軍幕にいるの? 俺とジージーはペアなのかな?
トールハンマーではこの三人で特訓していたからそういった流れで班が決まっているのだろうか?
――……ううん……。
昂ぶっていたのにな……。
すんっ――と冷静になっちまったよ……。
うん……。まさか狭い軍幕にて至近でジージーの素顔を見ながら寝ることになるなんてね……。
たまらねえぜ……。
――……。
朝霧が支配する平原。
風光明媚って言うだけあって景色は最高。
右側には大きな湖が見える。
朝日に照らされた湖を目にすることが出来ればもっと感動するんだろうけども、日が昇る時間はまだ先。
というより曇天模様なので本日は絶景を目にすることは出来ないだろうね。
初見だと海だと勘違いしそうな湖はエーリィ湖という大湖だとナブル将軍が眠そうな顔で教えてくれた。
侵略が始まる以前は、暑くなるとこの地は避暑地としても利用され、貴族、平民が分け隔てなく涼を楽しむことでも有名な地であったという。
そんな時期には多くの商人が露天を開いて様々な物を売っていたそうな。
朝から夜遅くまで賑わいのある楽しい時間を過ごしたものでした。と、心の友ダンブル子爵が寝ぼけ眼で教えてくれる。
やはりバリタン伯と同じ馬車で寝たこともあってか寝不足のようで、疲れをとるためにノーマルポーションを一飲みする両人。
「飲んだところで張り切って行きましょう!」
かく言う俺もきっちりと飲んでいるけどね。トラウマを克服しても就寝中ずっとセミの頭が至近にあればろくに寝られないっての……。
程なくしてポーションの効果が出てきたのか、
「我が弓で愚かなる侵略者共を射貫いてやりましょう!」
領地がエルフの国――エリシュタルトと隣接していることから弓術と弓の製造技術を学んでいるダンブル子爵が高らかに発せば、自領の兵達もそれに続く。
「戦うのもいいですがほどほどにしておいてくださいね」
と、ヒッポグリフに跨がった先生が後方からやってくる。
「なにせ相手は我々にとって、大いなる脅威となる存在。現蹂躙王をも超える存在なのですからね」
と、先生の後ろに座る甥の筍攸さん。
ほどほどにやりつつ、相手の疑念を更に強める。
「皆さんの準備は整っているようですね」
「もちろんだ荀彧殿」
「本日も王は快活でなにより。大きな背中を見せることで兵達にも活力を分け与えてください」
「任せておけ!」
力強いね。
「本気は出さないように願います。まずは疑心を今以上に強めさせることが重要なのですから」
ここでも念を押す筍攸さん。
「書けていますか公達」
「ここに」
と、王都ではメジャーとなってきた紙ではなく羊皮紙。
「どんな内容が書かれているんですか?」
「どうぞ」
荀攸さんに手渡された羊皮紙の内容にざっと目を通す。
――――ふむん。なんだろうかこの当たり障りのない文面は。
社会人となった時、相手先に送るような内容で戦いを伝えるものだった。
つまりはこの文を送ってガガドムサに宣戦布告するのかな?
この羊皮紙の送り先を聞こうとしたところで、
「さて、動くか荀彧殿」
王様に遮られる。
「もちろんです。陥陣営殿」
「問題ない」
短い返事。
「先にも公達が口にしましたが――本気を出さないように」
「問題ないと言っている」
「では――」
ここで王様へと目を向ける先生。
「よし! 最前列はこれより我に続け!」
抜剣から切っ先を前へと向け、自身の勢いを馬にも伝播させれば勢いよく竿立ち。
王様の騎乗する馬は、俺のダイフクやベルの黒馬のようなサラブレッド体型ではなく、一回り大きな農耕馬を思わせる恵まれた体躯の軍馬。
馬甲は小札タイプではなく、ギムロンやキュクロプス兄弟たちを中心とした職人たち制作の一枚の鉄からなる繋ぎ目がない馬甲。
重量がある分、装備する馬は限られる。
重々しい馬甲を装備した軍馬が竿立ちから勢いよく前足を地面へとつければ――ズンッ! と大地を揺らす。
振動がダイフクの蹄を伝って俺のケツにまで届いた。
俺のケツに届いたと同時に駆け出す王様。
「いやいや!」
心の友であるダンブル子爵が慌てた声。
誰よりも前に立つとは言ったけども、単騎駆けとは聞いていないと自身の馬の横腹をトンッと蹴って追走。
これに他の家臣団も続く。
王侯貴族の面々が先陣をきっていく姿を目にし、
「負けてられねえぞテメー等!」
ちょっと離れた位置から聞こえてくるのはカイルの声。
見事な健脚を披露してみせるのは冒険者の一団。
一般的な兵士と違ってマナを扱える連中は馬いらずとばかりにこちらの先頭と併走してみせる。
こうやって離れた位置から見るとやはり冒険者って超人だね。
馬に負けない脚力を有しているんだから。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる