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お久しぶりの王都

PHASE-157【ブリーチング】

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「どうしますか勇者殿。あきらめますか? 鍵を見つけるようにこちらも努力しますので」

「「いえいえ、問題ないです」」
 先生とシンクロして返す。

「なにか妙案でも?」

「将軍。この世界は未だに魔王軍が優勢。この塔の一部がちょっとばかり破損しても、目をつぶってくれますよね」

「六花のマントを与えられた存在。つまりは王の発言に同じ。その方がそう言うのですから、それが正しいと私は判断します」
 うむ、やはり出来た御仁である。

 物理的な破壊は難しく、対魔法にも秀でた鉄扉。

 だが、俺たちはマスターキーなら持っている。

「ゲッコーさん、マスターキーをお願いします」
 ここまで静かに俺たちの行動を見守っていた、伝説の兵士にお願いだ。

「この状況だと、ショットガンの事じゃないよな」

「もちろんですよ」
 RPGの原則だと、絶対に鍵を使用して開けるマンだけども、そんなもんはゲームだけのルールだ。

 鉄扉が駄目らならそれを取り囲んでいる壁を破壊すればいいだけの事だ。
 ゲッコーさんのマスターキーで。

 マッチポンプでもお馴染みになったC-4の出番である。
 壁に設置して、後は爆発させれば、人が入れるくらいの丁度いい穴が――――、

「ち、ちょっと、ま、待っていただきたい!」
 肩で息をして、いまにも倒れそうなおっさんが現れた。

 頑張ってこの最上階までなんとか走ってきたようだ。

「ダンブル子爵。どうされました」
 と、ナブル将軍。
 爵位持ちが血相変えてなんの用だろうか? 折角、お宝とご対面目前だったのに。
 
 ――確かに家臣団の中にいたような気がするおっさんだ。

 おかっぱ頭のロマンスグレーな中年。

「ゆ、勇者殿。少しまっていただきたい」
 扉の前で立ちふさがる子爵。
 俺の立ち位置に納得のいかない反対派閥の人間か?
 
 まったく、先生の脅しを受けているにもかかわらず、立ちふさがるのは気骨ある証拠だが、ここでは邪魔な存在よな。
 何となく悪役の思考になる。

「どうしたのです子爵? 勇者殿には協力する事に賛同だったではないですか」
 どうやら擁護派の人物のようだ。
 
 それが分かると、素敵なおかっぱヘアーだと思えるから不思議だよね。

「ナブル将軍。無論、協力はしたいと考えております。ですが、とりあえず皆さん落ち着きましょう」

「子爵こそ落ち着くべきです。ここにある物は我々には不要の物。この戦いにおいて、先陣に立つ者たちにこそ必要でしょう」

「分かっています。分かってはいるのですが……」
 なんだこの声の籠もりようは? 怪しい――――。

「ゲッコーさんお願いします」
 時代劇の、【先生お願いします】的な立ち位置の俺。

「勇者殿、お待ちになってください。従者の方も!」
 長身のゲッコーさんが碧眼で見下ろせば、その迫力に負けて、子爵は後退り――――しないのは中々の胆力だな。
 俺だったらすぐに後退する迫力なのに。

 流石は王様と共に、俺を擁護するだけはある。
 
 以前は戦闘が起これば、陣頭に立っていた貴族なんだろうな。

 でも、伝説の兵士はお構いなしに子爵の襟首を掴み、

「ここは危険ですよ、子爵殿」
 炯眼と、低く鋭い声を受ければ、

「いや、あの、その……」
 至近距離で圧を受ければ、流石の胆力でも耐えられなかったのか、怯える人の常套句を発して押し黙った。

 その光景は、恐喝されるサラリーマンのようだった。
 ナブル将軍がその後を引き継ぎ、子爵を安全圏まで下がらせてから――――、

「発破!」
 と、俺が言うと、ゲッコーさんが起爆を実行。
 問題なく壁の破壊に成功だ。

 イエーイ! 開通おめでとうございます。

 爆発が起これば、濛々と粉塵が立ち籠もる。
 反対側の壁にある窓を片っ端から開いてしばらく待機――――。

突入ブリーチング突入ブリーチング
 テンションマックスで、壁穴から宝物庫へと進入――――。

「イィィィィィハァァァァァァ! 宝箱だ!」
 お宝を目の前にした、盗賊の気持ちが分かった。
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