異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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天空要塞

PHASE-1552【初直撃】

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 ――…………。
 
 ――……!? 
 
 いやちょっとまって! マジで痛い!! 籠手の部分を中心に、ドンドンと痛みが強くなっていくんですけど!?

「誰か回復を求む! すげぇ痛いんですけどぉ!」

「ファーストエイド」
 即、反応してくれたのはシャルナ。
 俺の声の調子から、ヒールまでは必要ないと判断してのファーストエイド。
 正しい見立てにより、痛みが消え去っていく。
 
 それにしても……。
 やばかった……。もしかしたら骨にヒビが入っていたかもしれない。
 火龍装備。しかも分厚い籠手部分で受けたのにな……。

「いやはや、とんでもなく重たい一撃でしたよ……」

「軽量なんだけど」
 不満げに俺へと言ってくる。
 実際、細身だからな。
 その細身からは想像ができない一撃は、衝撃貫通タイプ。
 
 不満げに語るだけで済んでいるのは、ベルとゲッコーさん、ユーリさんのおかげ。
 俺が痛みを発したと同時に、俺とベスティリスの間へと入ってくれた。

 でも……、

「すげえな……」
 嘘みたいだよ……。
 ベルだけでなく、ゲッコーさんとユーリさんによる三人の攻撃にきっちりと対処している。
 
 今まで目にしたことがない光景だ……。
 俺の仲間――圧倒的な強さを有する面子による攻撃を捌いていくベスティリス。

「防戦一方で後手に回ってばかりも御免こうむるから、ここらでわらわも――ガストストライク」
 なんとか三人の攻撃から抜け出せば、その三人を濃密な風のドームへと閉じ込める。
 以前リンも使用した、内部に閉じ込めた者を強力な圧力と風の刃でズタズタに切り裂く風の上位魔法ガストストライク。
 いま目にしているのは、リンが使用した時よりも濃密。
 
「外から!」
 閉じ込められた三人を救い出すために残火で風のドームへと斬りかかろうとすれば、

「問題ない」
 の一言がドーム内から発せられ、同時にドーム内部で炎が顕現。
 内部の炎に気圧されるかのようにドームは消滅。

「妾のガストストライクから脱する者がいるなんてね。お見事。そして炎を纏った美姫の斬撃となれば、今までの対処では難しいというのも、その脱出を目にして理解――」

「――が、早くて助かります」

「助かったのは俺達もだ」
 礼を述べるゲッコーさん。
 本当に危なかったのか、礼と共に重苦しそうな長嘆息を漏らしている。
 そういった姿も初めて目にする。

 やはりと言うべきか……、

「相手にしてるのは魔王軍の大幹部なんだな……」

「感心しない!」

「その通り!」
 俺の両サイドを通り過ぎるのはシャルナとコクリコ。
 強者三人が距離を取っているところで、次は自分たちがとばかりにスイッチ。

「シッ!」
 短く息を吐いての一矢。
 風を鋭く切りながら飛ぶ矢。

「作りの良い弓からの一射であっても――無駄」
 ショットガンを弾き返す障壁を常に展開しているのだから矢は当然とどかない。

「そんな事は分かってるよ! コクリコ!」

「我が一撃こそが本命! ポップフレアッ!」

「へえ~。バーストフレアと見紛うほどね」

「そうでしょうとも!」

「エアリアルスライス」
 宙空に走る格子状の白い線がポップフレアを刻めば、爆発。

「防がれましたが、クロウスよりは荒い芸当ですね」

「アナイアレイションを使用したのは、謁見の間を可能な限り破壊されたくなかったからでしょうね。でもここなら派手に暴れてもらってもかまわないわよ」

「なるほど」

「貴女の魔法を受けながら戦い続けたのだとすれば、カイディルもさぞ大変だったでしょうね。今ごろは謁見の間へと戻って、掃除に勤しんでいるといったところかしら」

「労ってあげてください。ここでの敗北の後に! アドン、サムソン――アークウィップ」
 三方向からの電撃鞭。

「低位、中位でも十分な威力は勇者一行の魔術師なだけはある……のだけども……」
 羽扇を三度振り、電撃鞭を弾いて対処しつつ、ベスティリスが半眼となりコクリコを見やる。
 その表情はやや渋面。 

「貴女の指にはめているのは、ここの宝物庫にあったモノでいいかしら?」

「有り難く頂戴しましたよ。ビルとランスです」

「そんな名前ではないわね……」
 おう、クロウス氏と同様の呆れっぷり。
 大幹部すらも呆れさせるコクリコ。
 
 凄いけども――、

「ええい! 届きませんね!」

「才覚はあるわ」

「簡単に止めてくる相手に褒め言葉をもらっても、心に伝わってくるのは空しさだけです!」
 三方向から伸びる電撃の鞭で何度しかけようとも、羽扇で簡単にはたき落とされるだけ。

「こっち!」
 背後からのシャルナの構えは、弓を手にしていない姿での射法。
 風の槍であるウインドランスを矢のように放つ。

「威力は申し分ないのがハイエルフと言ったところね」
 褒めつつもベスティリスまで届くことはない。
 ここでも宙空に描かれた格子によってかき消される。

「じゃあ、こっち!」

「腕はもういいのかしら?」

「問題なく」
 二人の攻撃に対処しているところを狙って接近。
 残火を右手だけで持ち、左手は拳を握りしめる。

 クロウス氏同様に防御が堅牢なら、

「ボドキン!」

「――は、この私にはね」

「届かないのでしょうね」
 殴りモーションキャンセルからの横ステップ。
 ――からの、

「ミルモン!」

「くろいバリバリ」
 両手を前面に出しての発動。
 小さなお手々から放たれる黒い電撃。

「これは!?」
 直撃。
 この要塞の主に初めての直撃を見舞ったのは――ミルモン。
 威力がどうであれ、初の直撃を成功させたのは勲功爵で小悪魔なミルモンによるもの。
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