異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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驕った創造主

PHASE-1716【高火力を打ち込めない】

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「打たれ強さに優れているようで」

「自慢の愛刀も、モーモーチャーチャーの前では無意味だ」

「だが他の箇所から補うって事は限度もあるって事! 修復不可まで切り刻んでやる!」

「不可能だな! その前にこちらが押し切ってくれる!」
 毒性があるであろう水圧カッターによる迎撃。
 触手の数だけ撃ち出すことが可能とばかりに、自重を支えている以外を全て使用して全方位に放ってくる。
 五十を優に超える水圧カッター。
 長い触手を利用し、多方向より放つ水圧カッターから皆を守る為、ドーム状にしたイグニースによる防御。
 水が直撃すれば蒸発音と共に水が気体に変わる。
 水圧が弱まったところで解除――する前に、

「ワックさん、皆にアンチドーテを飲ませてください」

「もう実行しているよ」
 流石です。
 障壁を解除。

「よく対処する」
 悔しそうな声が傘の内部から聞こえてくる。
 炎の障壁で水圧カッターを封じても次には気体に変わった毒霧が広間を支配する。
 それでこちらを仕留めようとしたようだが効果は無し。
 と、俺の推測だけども、残念そうな声を漏らす辺り、毒性を有した水であるのは確定でいいだろう。
 
 優秀な防御。広範囲を攻撃可能となれば、拠点兵器としては脅威になるけども、

「大仰に登場した割りには肩すかしもいいところ」
 ジージーが毒水のお返しとばかりに言葉の毒を吐く。
 実際、大したことはない。
 これなら問題ない。
 問題があるとすれば、ゴロ太がバルバダイと一緒にいること。
 こちらが強力な攻撃を打ち込めば、内部のゴロ太にも被害が出る可能性がある。
 ガリオンがアンリッシュ・インパルスに留めていることと、ジージーがご自慢の弓を使用しないのもゴロ太のことを考えてくれているからだろう。
 
 ゴロ太が内部にいないなら容赦なく攻撃するんだけどな。
 打たれ強かろうとも、耐久不可能な攻撃で直ぐにでも仕留めてやるのに。

「下手に攻撃をすればゴロ太に被害が出てしまう」
 と、思うところなんだけども、

「問題ない」
 そう! 問題ない!
 俺たちとは別位置で行動しているベルからの力ある発言に俺も強い頷きで返す。
 体に纏うのは浄化の炎。
 敵味方識別が可能なベルの炎となれば、問題なくゴロ太を救い出せるというもの。
 やはり天空要塞を経験した後だと大抵の相手は苦戦をすることなく攻略も可能となりそうだな。
 特にやる気になっているベルが前線で戦うとなれば余裕。

「ゴロ太を返してもらう」

「現状のジュニアを強制的に救い出す気か?」
 ゼリー状の内部で、バルバダイはこちらへ見えるように不敵な笑みを向けてくる。
 この発言でベルは攻撃を中断。

「なんでやめた? ハッタリだろう」

「いやガリオン。ハッタリとは言いきれない……」
 今のゴロ太は明らかにバルバダイの支配下にある。
 洗脳に近いことをされているとなれば、それを仕掛けた者、魔術を応用した技術の場合なら、術者や巨大クラゲ・モーモーチャーチャーを倒してしまうとゴロ太に何が起こるか分からない。
 それが交渉材料としてあるからバルバダイは余裕を持っている訳だ。

「お前やクラゲを倒した場合、ゴロ太が元に戻らないって事を確認したい」

「正確に言うなら、モーモーチャーチャーを倒してしまえばと言うべきだな。そしてモーモーチャーチャーの指揮権を有している私が死んでしまえば暴走する可能性もある。となれば、ジュニアも無事では済まないだろう」

「なんとも骨の折れることになりそうだな」

「大いに折ってほしいね。そして軟体生物を目指してほしいものだ」

「おもしろくねえ返しだよ」
 ――……だが、ブラフと考えるにはリスクが大きい。
 認めたくはないけどもバルバダイは間違いなく天才。
 天才でありマッドであるとなれば、ゴロ太に何をしているか分かったもんじゃない。
 
 巨大クラゲ自体は苦戦するほどの相手じゃないのはワンコンタクトのやり合いで理解したが、内部にゴロ太がおり、尚且つバルバダイの発言を全てにおいて信じれば、これは難易度が跳ね上がる案件だ……。

「そらそら!」

「やろぉ……」
 こっちが逡巡したからって強気になりやがって……。
 容赦のない水圧カッターによる全包囲攻撃。
 
 回避に専念しつつ、

「死ねぃワック!」
 と、自分より優秀な存在はいらないという嫉妬心を声に乗せて狙ってくる。
 ここは回避よりも防御一辺倒。
 俺が前に立ってのイグニース。
 当然ながら毒の含まれた水圧カッターが炎に触れれば毒霧へと変化する。
 現状はまだ問題ないけども、

「アンチドーテの数は?」

「残り二本だね」
 肩越しに問えば宜しくない数。
 ワックさんの二本と俺の雑嚢に入っている二本の合わせて四本。
 俺を除いたパーティーメンバーの数に足りていない。
 このまま広間での戦いを続ければ、いずれは床も毒まみれになってしまう。
 時間をおけば置くほどこっちが不利な状況だ……。

「ハハハハハッ どうした凡愚共! 勢いが落ちたではないか。偉そうな事を言っておいて、結局は私の最高傑作であるモーモーチャーチャーを前にして防戦となってしまっているな!」

「うるせえ! ゴロ太を質に取られているからこっちは躊躇してんだよ。それがなけりゃ余裕だっての!」

「負け惜しみの戯れ言を絞り出すだけで精一杯のようだな勇者。ジュニアはそもそも質ではなくこちらの味方。そしてこのモーモーチャーチャーに必要なピース」

「ピースとか物あつかいだな」

「そんな訳あるか! 大切な救世主だぞ! ……確かにピースという発言よくない。反省しよう」

「そこは素直に反省するんだな……」
 救世主ってのは本心なんだな。
 反省の弁に続いて水圧カッターによる集中砲火を指示。

「エグい水圧だな」
 回避はするものの、水圧で床が大きく抉れる。
 オーガやトロールの一撃を優に超えていた。
 
 対応できる相手ではあるが、長期戦になればこちらが不利になるタイプの相手でもある。
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