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出張
PHASE-13
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不死王さんが赤い光に包まれた瞬間、大爆発。
圧縮された爆風が開放され、不死王さんが立ってた後方へと、とてつもない勢いで進んでいくのが目に見えた。
――でも、見えたのはそこまでだ。
「耳がぁぁぁぁっ! 耳がぁぁぁぁぁあ!!」
サージャスさんが口にした巨神狂叫なる技か魔法かの攻撃で生じた爆発音はとても特異なものだった。
小さい子供の集団が、同時に発するような甲高い声。
金切り音のような高い音。
黒板をひっかいている音。
例えを出すだけで、不快になってくるような音が、耳どころか体内にまで響いてきて、三半規管が狂ったような感覚に襲われて、気が動転しそうだった。
体全体に不調をきたすようなその爆発音を、少しでも拒絶したかった僕たちは、目を閉じて、両耳を諸手で塞ぐことに専念した。
――――音の終息。
何とか耐えきった僕の体は脂汗で、じっとりとしていた。
目を開くと、爆風の衝撃から守ってくれるように、ワイトさんが僕たちを包むように結界魔法を展開してくれていた。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
造作もなきこと、と、ばかりに軽い調子で返してきてくれる。
爆心地に目を向ければ、濛々と煙が上がり、爆発の原因を作ったサージャスさんが、巨神狂叫を放った姿勢のまま肩で息をしていた。
チャクラはもう纏っていない状況。
――兵隊さん達も僕同様に塞いでいた耳から手をどかして、現状の把握を急いでいるようだ。
彼等を真似て僕も周囲の確認を始める。
――――夜を徹して建造した壁上のあらゆる物が破壊され、大穴が空いていたタレットも倒壊。
かろうじて残っていた屋根のてっぺんには、掲げられていた不死王軍の旗が傾いていて、弱々しく風に揺れていた。
西と南の角に当たる城壁に作られた張り出し櫓も、爆風で跡形もなく消し去られている。
アンデットの方々による突貫工事が、全て台無しになっていた。
――――で、不死王さんは?
爆風が城壁の角まで届いているのだから、もしかして壁外まで吹き飛ばされたのか? いや、それはないな。
立ち籠める爆煙で確認が取れない。
でも、確信は持てる。
大公様は他のアンデット幹部の方に結界魔法で守られている中で、両膝をついて、爆煙一点をうつろな表情で見ている。
最悪の状況を脳内で描いているのかもしれない。
「勝った。勝ったぁぁぁぁあ! これで、これで――――」
勝利を確信して喜んでいると思いきや、感極まったのか、サージャスさんは大粒の涙を流し出した。
顔を諸手で押さえて泣く姿は、年相応といったような可憐さもある。
よほど、魔王幹部の一人を倒したことに喜びを得ているようだ。
――――でもさ……、サージャスさん。僕のような素人でも気付くことに気付くべきですよ。勝利がそれを見落とさせてるのかな……。
幹部の皆さんに目を向けてください。大公様以外は誰も慌てふためいていません。
僕たちに結界魔法を展開してくれたワイトさんの軽い調子の語り方も、余裕の表れだと思う。
――だから僕は確信を持てるんだ。未だ不死王さんは健在だと言うことに。
「いや~まいった、まいった」
はたして正にで、煙の中から快活な声が壁上に響く。
その声が、不死王さんの無事を皆に伝える。
大公様、さっきまでと違い、立ち上がって両拳を強く握りしめて喜んでる。
歓喜の涙が消え失せて、一転して絶望を纏った表情に変わってしまうサージャスさん。
「ふん!」
気迫の声と同時に、爆煙から突風が吹きすさび、立ち籠めていた煙が消え去った。
――――うん……。
快活な声とは全くもってかけ離れた姿が眼界に!
鬱血色の右半身がないんですけど、なんか臓物的な物がブランブラン垂れ下がってるんですが……。
やばい、素敵な朝食が今にも口からリバースしそうなんだけど……。
大公様も僕と同じ感じになってる。ハンカチで口元押さえてるところが高貴な感じがするよ。
「随分とやられましたな」
「まったくだ! こんなになったのはいつ以来か?」
「邪神様の、当時の配下と戦った時かと」
「おお、相当に昔ではないか! 懐かしいな。しかし、本当に肝を冷やした一撃であった。まあ、もともと肝は冷えているが」
ワイトさんと楽しげに話している姿からして、現状の姿とは裏腹に、いたって元気である。なんかもうこの方を倒すことなんて不可能なんじゃないかと思えてしまう。
「う~ん、どこだ。攻撃を受けきれずに飛んでいったのは見えたんだが」
キョロキョロと、石畳を見回し、
「お! あった」
と、継いで、何かを見つけたようで、そこに軽い足取りで向かうと、瓦礫をどかし、左手で掴んだのは、自身の右腕だった。
「よしよし。再生まで流石に時間がかかるからな。ある物は利用せんとな!」
笑みを浮かべて、肩から欠損していた右腕をくっつける。人では出来ない芸当を見せてくれた。 あっという間に右腕がくっついた。
ちゃんと繋がっているかを確認するかのように、戻った右腕を顔に近づけて、指やら手首を稼働させている。
「さあ、どうする? 今一度、あの技を使ってみるか」
その発言に、サージャスさん一度は拳を作って構えてみせるが、勝つことは不可能と悟ったのか、弱々しく腕をだらりと下げて、うつむく。
勝負ありか。それとも、ここから不死王さんがとどめを刺すつもりなのか。
止めるだけの力を持っていない僕はどうするべきか、口を出していいのは、条約違反を行った方にのみ。それ以外には発言力は持っていない。
「いっそ、殺せばいい。じゃないとボクは好機とみれば何度も挑みに来る」
捨て鉢感が丸出しだ……。
どうするの不死王さん? 命取っちゃうの? そこはやはり魔族の行いを地で行くのかな?
「素晴らしく洗練された技であった。が、私に挑むのはまだ先よ。ここにいる我が配下となら良い勝負が出来たかもな。無論、最高の状態でならだが」
「現状の装備じゃ幹部にも勝てなかったってこと?」
悔しさを滲ませながら問うサージャスさんに首肯で返す不死王さん。
「勝てないだろうな。しかし、それだけの実力だ。破壊力のある魔法を使われたら、今以上に苦戦しただろう。使用しないのは民に危害出てはいけないという配慮からだね。その時点で、君は戦いが不利になってしまっている。だからこそ、それでも挑んだ君の勇気には高い評価だ」
喋々と語る中で、不死王さん、褒め称えて拍手おくる。
「この戦いを終わらせねばならん。どうするかな……要望通りに命をもらうのもいいかもしれん。今後のことを考えると、君のような優秀な者は脅威だからな。憂いは断つべきか」
口角の上がった今までとは違う、優しさのない笑み。
どうなる。本気でやるつもりですか?
不死王さん、ゆったりとしながらも、力強い歩みだ。ズンッと歩みで生まれた振動が、僕にまで届いてくる。
畏怖を感じさせるように、サージャスさんに歩み寄っていく。
覚悟を決めたのか、サージャスさんは瞳をやおら閉じて死を受け入れようと佇んでいる。
やばいんじゃないかな! おい、整備長! なんとかできんのですか!
喋りもせずに、黙って戦い見ていただけで、正直、一時の間、存在忘れてましたよ。
忘れられないためにも、ちょっとは積極性を見せていただきたい!
「ちょっと、待ってもらえますかね~」
お! 僕の思いが通じたのか、整備長が、二人に向かって歩き始める。
僕の思いは届いたけども、どうする気なんですか? 今のところ、僕たちには、なんにも行使出来る権限はありませんよ。
圧縮された爆風が開放され、不死王さんが立ってた後方へと、とてつもない勢いで進んでいくのが目に見えた。
――でも、見えたのはそこまでだ。
「耳がぁぁぁぁっ! 耳がぁぁぁぁぁあ!!」
サージャスさんが口にした巨神狂叫なる技か魔法かの攻撃で生じた爆発音はとても特異なものだった。
小さい子供の集団が、同時に発するような甲高い声。
金切り音のような高い音。
黒板をひっかいている音。
例えを出すだけで、不快になってくるような音が、耳どころか体内にまで響いてきて、三半規管が狂ったような感覚に襲われて、気が動転しそうだった。
体全体に不調をきたすようなその爆発音を、少しでも拒絶したかった僕たちは、目を閉じて、両耳を諸手で塞ぐことに専念した。
――――音の終息。
何とか耐えきった僕の体は脂汗で、じっとりとしていた。
目を開くと、爆風の衝撃から守ってくれるように、ワイトさんが僕たちを包むように結界魔法を展開してくれていた。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
造作もなきこと、と、ばかりに軽い調子で返してきてくれる。
爆心地に目を向ければ、濛々と煙が上がり、爆発の原因を作ったサージャスさんが、巨神狂叫を放った姿勢のまま肩で息をしていた。
チャクラはもう纏っていない状況。
――兵隊さん達も僕同様に塞いでいた耳から手をどかして、現状の把握を急いでいるようだ。
彼等を真似て僕も周囲の確認を始める。
――――夜を徹して建造した壁上のあらゆる物が破壊され、大穴が空いていたタレットも倒壊。
かろうじて残っていた屋根のてっぺんには、掲げられていた不死王軍の旗が傾いていて、弱々しく風に揺れていた。
西と南の角に当たる城壁に作られた張り出し櫓も、爆風で跡形もなく消し去られている。
アンデットの方々による突貫工事が、全て台無しになっていた。
――――で、不死王さんは?
爆風が城壁の角まで届いているのだから、もしかして壁外まで吹き飛ばされたのか? いや、それはないな。
立ち籠める爆煙で確認が取れない。
でも、確信は持てる。
大公様は他のアンデット幹部の方に結界魔法で守られている中で、両膝をついて、爆煙一点をうつろな表情で見ている。
最悪の状況を脳内で描いているのかもしれない。
「勝った。勝ったぁぁぁぁあ! これで、これで――――」
勝利を確信して喜んでいると思いきや、感極まったのか、サージャスさんは大粒の涙を流し出した。
顔を諸手で押さえて泣く姿は、年相応といったような可憐さもある。
よほど、魔王幹部の一人を倒したことに喜びを得ているようだ。
――――でもさ……、サージャスさん。僕のような素人でも気付くことに気付くべきですよ。勝利がそれを見落とさせてるのかな……。
幹部の皆さんに目を向けてください。大公様以外は誰も慌てふためいていません。
僕たちに結界魔法を展開してくれたワイトさんの軽い調子の語り方も、余裕の表れだと思う。
――だから僕は確信を持てるんだ。未だ不死王さんは健在だと言うことに。
「いや~まいった、まいった」
はたして正にで、煙の中から快活な声が壁上に響く。
その声が、不死王さんの無事を皆に伝える。
大公様、さっきまでと違い、立ち上がって両拳を強く握りしめて喜んでる。
歓喜の涙が消え失せて、一転して絶望を纏った表情に変わってしまうサージャスさん。
「ふん!」
気迫の声と同時に、爆煙から突風が吹きすさび、立ち籠めていた煙が消え去った。
――――うん……。
快活な声とは全くもってかけ離れた姿が眼界に!
鬱血色の右半身がないんですけど、なんか臓物的な物がブランブラン垂れ下がってるんですが……。
やばい、素敵な朝食が今にも口からリバースしそうなんだけど……。
大公様も僕と同じ感じになってる。ハンカチで口元押さえてるところが高貴な感じがするよ。
「随分とやられましたな」
「まったくだ! こんなになったのはいつ以来か?」
「邪神様の、当時の配下と戦った時かと」
「おお、相当に昔ではないか! 懐かしいな。しかし、本当に肝を冷やした一撃であった。まあ、もともと肝は冷えているが」
ワイトさんと楽しげに話している姿からして、現状の姿とは裏腹に、いたって元気である。なんかもうこの方を倒すことなんて不可能なんじゃないかと思えてしまう。
「う~ん、どこだ。攻撃を受けきれずに飛んでいったのは見えたんだが」
キョロキョロと、石畳を見回し、
「お! あった」
と、継いで、何かを見つけたようで、そこに軽い足取りで向かうと、瓦礫をどかし、左手で掴んだのは、自身の右腕だった。
「よしよし。再生まで流石に時間がかかるからな。ある物は利用せんとな!」
笑みを浮かべて、肩から欠損していた右腕をくっつける。人では出来ない芸当を見せてくれた。 あっという間に右腕がくっついた。
ちゃんと繋がっているかを確認するかのように、戻った右腕を顔に近づけて、指やら手首を稼働させている。
「さあ、どうする? 今一度、あの技を使ってみるか」
その発言に、サージャスさん一度は拳を作って構えてみせるが、勝つことは不可能と悟ったのか、弱々しく腕をだらりと下げて、うつむく。
勝負ありか。それとも、ここから不死王さんがとどめを刺すつもりなのか。
止めるだけの力を持っていない僕はどうするべきか、口を出していいのは、条約違反を行った方にのみ。それ以外には発言力は持っていない。
「いっそ、殺せばいい。じゃないとボクは好機とみれば何度も挑みに来る」
捨て鉢感が丸出しだ……。
どうするの不死王さん? 命取っちゃうの? そこはやはり魔族の行いを地で行くのかな?
「素晴らしく洗練された技であった。が、私に挑むのはまだ先よ。ここにいる我が配下となら良い勝負が出来たかもな。無論、最高の状態でならだが」
「現状の装備じゃ幹部にも勝てなかったってこと?」
悔しさを滲ませながら問うサージャスさんに首肯で返す不死王さん。
「勝てないだろうな。しかし、それだけの実力だ。破壊力のある魔法を使われたら、今以上に苦戦しただろう。使用しないのは民に危害出てはいけないという配慮からだね。その時点で、君は戦いが不利になってしまっている。だからこそ、それでも挑んだ君の勇気には高い評価だ」
喋々と語る中で、不死王さん、褒め称えて拍手おくる。
「この戦いを終わらせねばならん。どうするかな……要望通りに命をもらうのもいいかもしれん。今後のことを考えると、君のような優秀な者は脅威だからな。憂いは断つべきか」
口角の上がった今までとは違う、優しさのない笑み。
どうなる。本気でやるつもりですか?
不死王さん、ゆったりとしながらも、力強い歩みだ。ズンッと歩みで生まれた振動が、僕にまで届いてくる。
畏怖を感じさせるように、サージャスさんに歩み寄っていく。
覚悟を決めたのか、サージャスさんは瞳をやおら閉じて死を受け入れようと佇んでいる。
やばいんじゃないかな! おい、整備長! なんとかできんのですか!
喋りもせずに、黙って戦い見ていただけで、正直、一時の間、存在忘れてましたよ。
忘れられないためにも、ちょっとは積極性を見せていただきたい!
「ちょっと、待ってもらえますかね~」
お! 僕の思いが通じたのか、整備長が、二人に向かって歩き始める。
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