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王都の休日
PHASE-02
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―――体の芯まで届く爆発音。
ふぁ!? 僕、なんか力に目覚めちゃったのかこれ?
――なんて一瞬思っちゃったけど、爆発音はここから離れている。城門に近いところで、煙が上がっているのが目に見える。
濛々と上空にあがる煙を追えば、いつものように王都の空には歯車が回るかのように空からの脅威に備えての、半透明で巨大な魔方陣が眼界に入ってくる。
煙を目印に現場へと急ぐ。
そこは、整備局員。使命感に動くところは感心だと自分で自分を褒めていくスタイル。
――あ、ロールさんだ。
「どうも」
「ピート君。感心だね」
褒められた。やはり整備局員としての矜持をもって行動すると、良いことがある。
私服のロールさん。普段のつなぎと違って、白のワンピース姿。健康的な白い御御足が最高です。
道中で合流して、一緒に移動。
壁外とをつなぐ城門前の街商でおこったようだ。爆発の痕跡が有り、商品の残骸が飛び散っている。
結構、ひどい状況なんじゃないのか。
現場につくと、警邏の兵隊さんが槍を構えて、一定の距離で包囲している。
「危ないから下がって」
「整備局の者です」
兵隊さんにと一緒に現場にいた警務局の方に身分を伝えるロールさん。
警務局員さんが敬礼を行って、現場まで、案内してくれる。
――――またかよ……。
なにやってんすか、エルンさん……。てか、まだいたの。冒険に出ろよ。打倒魔王のさ!
項垂れている売り手の商人さんに頭を下げ、周囲に怪我人がいないかパーティーの女性陣が心配そうに見て回っている。
「ピートさん」
すでに涙目の勇者様。右往左往する姿に、もう、勇者なんか、辞めてしまえって! 感情が芽生えてくる。
「なにやってんですか」
流石に、今回は優しく語りかけない。折角の休日にこんなことやらかしてくれたんだから呆れちゃって、優しくなんか出来ないしね。
――――――。
「え!?」
おいおい! なんだ国家転覆狙ってんのか。街商だけに被害が出てると思ったら、城壁まで大穴空いてるじゃないか!
そりゃこれだけの兵隊さんが出張ってくるよ。何してんの本当に……。何してんのかなこの勇者様は!
「もうしわけありません」
「ピートマックさん落ち着いてください」
フィットさんに体の自由を奪われる。
無自覚に、謝罪するエルンさんの胸ぐらを掴んで強く体を揺さぶっていたようだ。
「あのね……そんなに暴れたいなら、壌獣王さんのとこ――――ああ、あそこ今は駄目か――氷竜王さんの統治するヴィン海域に出向いたらどうです?」
カグラさんの妹さんである氷竜王さんの勢力地であるヴィン海域は、大魔法の使用制限が免除されている特別域。
――言わば、撃ち放題なわけだ。
必然的にガチ勢の巣窟になっている。
お互いが生死の縁に立っている感覚に興奮し、喜びを感じる、ホットスポットだ。
〝遊びで、勇者やってんじゃないんだよ! 遊びで、勇者やってんじゃないんだよ! 遊びで――――――勇者やってんじゃないんだよ!!〟と、大事なことらしく、三回かならず口にするのが仕来りらしい。
ヘマをしでかしたりすると、〝にわか?〟や〝新米さんかな~〟や〝地図も覚えてないのに、前線に立たないでくれる。後方待機推奨〟などと、歪んだ意識の高い考えをお持ちの方々から手厳しい言葉の洗礼を受けるそうだ。
でも、そこを勧めてあげる。
メンタル鍛えてこい!
「理由、聞きましょうか」
僕が怒っていたので、ロールさんが対応。
優しいロールさんの笑顔に、救世主の姿を見たのか、御一行はロールさんに説明を始めた。
おい! これじゃ僕が、以前の整備長の立ち位置じゃないか!
まったく、小心の御一行だこと。ヴィン海域を本気で勧めたくなる。
――――問題となったのは街商で売られていたタリスマンだった。
同様の物を、現場で膝をついて嘆いていた、立派な髭がしょぼくれてしまった商人の方に見せてもらう。
首飾りタイプの真珠サイズの魔石が、一つ付いている物だ。
先ほど剣士と魔法使いが、いちゃこらしていたクリネアのショーケースの中に入っていた物に比べれば、遙かに小さな物だ。
タリスマンが原因というより、エルンさんが原因なんじゃないの。どれだけの魔法を使用したのやら。
「どのような行為をしたのですか?」
僕が思っていたことを、ロールさんが笑顔で質問。
その笑顔にエルンさんが頬を赤らめる。三人の美人さんに囲まれてるのに、まだ足りませんか。カグラさんの時もでしたね。このムッツリ色魔勇者め!
照れてるエルンさんに苛立ちを覚えたようで、黒髪を揺らしながら、元侍職で現戦士であるフィットさんに思いっ切り足を踏まれて悶絶。
後ろで魔法使いのミリ―さんと、僧侶のリムさんがフィットさんに拇指を立ててる。
痛がっているエルンさんの前に僕は立つ。
膝を着いたエルンさんが見上げて僕を見る。
いい加減にしてくださいよ! こっちは休日なんですよ。だらだらと話を進めないでいられると、貴重な時間がなくなるんですよ。
念を込めるような眼力をエルンさんに向けると、痛さに堪えながら立ち、姿勢を正して説明をしてくれた。
使用したのは初歩の魔法である火球。
初歩だから、別段、威力は大したことない――とは、言い切れない。
使い手の練度が高ければ、その威力は一発で小さな家屋ぐらいは吹き飛ばせる危険な魔法だ。
現に第三南門の城壁に大穴を作っているのだから、危険なことは言うまでもない。人に当たっていれば、間違いなくその方は故人になっている。
――エルンさんの話では、本当に加減をしたらしく、食指を一本立てて、それこそ真珠サイズのタリスマンと同じくらいの大きさである火球を上空に向けて放とうとしただけだそうだ。
もちろん周囲に人がいないことを確認して、かつ周囲の方に今から試射をすると公言。危険を回避するために、リムさんが周囲の方々の前に結界魔法を展開しての使用だったそうだ。
気配りが出来るのは感心。上に向けて放つのも考えている。低威力なら上空の魔方陣にかき消されるからね。
目撃者である別の街商の商人や、お客の方もそれは間違いないと僕たちに伝えてきた。
――で、使用した途端にエルンさん自体が驚いたそうで、急に真珠サイズの火球が肥大化し、その力に腕を振り回され、上に向かって放つつもりであったけども、余裕がなくなり、出来るだけ被害が出ないようにと、壁上に人のいない事を確認して、城壁に向かって放ったとのこと。
その時に発生した衝撃波で、商人さんの商品が吹き飛んでしまったそうだ。
「じゃあ、簡単な話だね」
ロールさんもう解決とばかりに諸手を腰にあてて、得意げな表情で先ほどのレインちゃんみたいな仁王立ち。
「ずばり、問題だったのは、そこで嘆いている商人さん」
食指をビシリと崩れ落ちている商人さんに向けると、なぜ私がと? 踏んだり蹴ったりな状況にフラフラな足取りでロールさんに歩み寄ってくる。
ふぁ!? 僕、なんか力に目覚めちゃったのかこれ?
――なんて一瞬思っちゃったけど、爆発音はここから離れている。城門に近いところで、煙が上がっているのが目に見える。
濛々と上空にあがる煙を追えば、いつものように王都の空には歯車が回るかのように空からの脅威に備えての、半透明で巨大な魔方陣が眼界に入ってくる。
煙を目印に現場へと急ぐ。
そこは、整備局員。使命感に動くところは感心だと自分で自分を褒めていくスタイル。
――あ、ロールさんだ。
「どうも」
「ピート君。感心だね」
褒められた。やはり整備局員としての矜持をもって行動すると、良いことがある。
私服のロールさん。普段のつなぎと違って、白のワンピース姿。健康的な白い御御足が最高です。
道中で合流して、一緒に移動。
壁外とをつなぐ城門前の街商でおこったようだ。爆発の痕跡が有り、商品の残骸が飛び散っている。
結構、ひどい状況なんじゃないのか。
現場につくと、警邏の兵隊さんが槍を構えて、一定の距離で包囲している。
「危ないから下がって」
「整備局の者です」
兵隊さんにと一緒に現場にいた警務局の方に身分を伝えるロールさん。
警務局員さんが敬礼を行って、現場まで、案内してくれる。
――――またかよ……。
なにやってんすか、エルンさん……。てか、まだいたの。冒険に出ろよ。打倒魔王のさ!
項垂れている売り手の商人さんに頭を下げ、周囲に怪我人がいないかパーティーの女性陣が心配そうに見て回っている。
「ピートさん」
すでに涙目の勇者様。右往左往する姿に、もう、勇者なんか、辞めてしまえって! 感情が芽生えてくる。
「なにやってんですか」
流石に、今回は優しく語りかけない。折角の休日にこんなことやらかしてくれたんだから呆れちゃって、優しくなんか出来ないしね。
――――――。
「え!?」
おいおい! なんだ国家転覆狙ってんのか。街商だけに被害が出てると思ったら、城壁まで大穴空いてるじゃないか!
そりゃこれだけの兵隊さんが出張ってくるよ。何してんの本当に……。何してんのかなこの勇者様は!
「もうしわけありません」
「ピートマックさん落ち着いてください」
フィットさんに体の自由を奪われる。
無自覚に、謝罪するエルンさんの胸ぐらを掴んで強く体を揺さぶっていたようだ。
「あのね……そんなに暴れたいなら、壌獣王さんのとこ――――ああ、あそこ今は駄目か――氷竜王さんの統治するヴィン海域に出向いたらどうです?」
カグラさんの妹さんである氷竜王さんの勢力地であるヴィン海域は、大魔法の使用制限が免除されている特別域。
――言わば、撃ち放題なわけだ。
必然的にガチ勢の巣窟になっている。
お互いが生死の縁に立っている感覚に興奮し、喜びを感じる、ホットスポットだ。
〝遊びで、勇者やってんじゃないんだよ! 遊びで、勇者やってんじゃないんだよ! 遊びで――――――勇者やってんじゃないんだよ!!〟と、大事なことらしく、三回かならず口にするのが仕来りらしい。
ヘマをしでかしたりすると、〝にわか?〟や〝新米さんかな~〟や〝地図も覚えてないのに、前線に立たないでくれる。後方待機推奨〟などと、歪んだ意識の高い考えをお持ちの方々から手厳しい言葉の洗礼を受けるそうだ。
でも、そこを勧めてあげる。
メンタル鍛えてこい!
「理由、聞きましょうか」
僕が怒っていたので、ロールさんが対応。
優しいロールさんの笑顔に、救世主の姿を見たのか、御一行はロールさんに説明を始めた。
おい! これじゃ僕が、以前の整備長の立ち位置じゃないか!
まったく、小心の御一行だこと。ヴィン海域を本気で勧めたくなる。
――――問題となったのは街商で売られていたタリスマンだった。
同様の物を、現場で膝をついて嘆いていた、立派な髭がしょぼくれてしまった商人の方に見せてもらう。
首飾りタイプの真珠サイズの魔石が、一つ付いている物だ。
先ほど剣士と魔法使いが、いちゃこらしていたクリネアのショーケースの中に入っていた物に比べれば、遙かに小さな物だ。
タリスマンが原因というより、エルンさんが原因なんじゃないの。どれだけの魔法を使用したのやら。
「どのような行為をしたのですか?」
僕が思っていたことを、ロールさんが笑顔で質問。
その笑顔にエルンさんが頬を赤らめる。三人の美人さんに囲まれてるのに、まだ足りませんか。カグラさんの時もでしたね。このムッツリ色魔勇者め!
照れてるエルンさんに苛立ちを覚えたようで、黒髪を揺らしながら、元侍職で現戦士であるフィットさんに思いっ切り足を踏まれて悶絶。
後ろで魔法使いのミリ―さんと、僧侶のリムさんがフィットさんに拇指を立ててる。
痛がっているエルンさんの前に僕は立つ。
膝を着いたエルンさんが見上げて僕を見る。
いい加減にしてくださいよ! こっちは休日なんですよ。だらだらと話を進めないでいられると、貴重な時間がなくなるんですよ。
念を込めるような眼力をエルンさんに向けると、痛さに堪えながら立ち、姿勢を正して説明をしてくれた。
使用したのは初歩の魔法である火球。
初歩だから、別段、威力は大したことない――とは、言い切れない。
使い手の練度が高ければ、その威力は一発で小さな家屋ぐらいは吹き飛ばせる危険な魔法だ。
現に第三南門の城壁に大穴を作っているのだから、危険なことは言うまでもない。人に当たっていれば、間違いなくその方は故人になっている。
――エルンさんの話では、本当に加減をしたらしく、食指を一本立てて、それこそ真珠サイズのタリスマンと同じくらいの大きさである火球を上空に向けて放とうとしただけだそうだ。
もちろん周囲に人がいないことを確認して、かつ周囲の方に今から試射をすると公言。危険を回避するために、リムさんが周囲の方々の前に結界魔法を展開しての使用だったそうだ。
気配りが出来るのは感心。上に向けて放つのも考えている。低威力なら上空の魔方陣にかき消されるからね。
目撃者である別の街商の商人や、お客の方もそれは間違いないと僕たちに伝えてきた。
――で、使用した途端にエルンさん自体が驚いたそうで、急に真珠サイズの火球が肥大化し、その力に腕を振り回され、上に向かって放つつもりであったけども、余裕がなくなり、出来るだけ被害が出ないようにと、壁上に人のいない事を確認して、城壁に向かって放ったとのこと。
その時に発生した衝撃波で、商人さんの商品が吹き飛んでしまったそうだ。
「じゃあ、簡単な話だね」
ロールさんもう解決とばかりに諸手を腰にあてて、得意げな表情で先ほどのレインちゃんみたいな仁王立ち。
「ずばり、問題だったのは、そこで嘆いている商人さん」
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