拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

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王都の休日

PHASE-03

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 そこは勇者御一行。
 危険があると感じるや、すぐさまロールさんの前に立って商人さんの進路を塞ぐ。

「私は毎年、この王都で商いをやらせてもらっています。不正は行っておりません!」
 倒壊した場所からケースを掘り起こし、中から着替えや必需品をかなぐり捨てて、底の方に大事に仕舞っていた営業許可証を見てくれと、頼む。

 それを、フィットさんが受け取り、ロールさんに手渡す。
 
 ――人物が今ままでに問題がないかを確認。
 王都での営業となれば信頼を第一におかなければ、次回からは商売がなりたたなくなる。だからこそ、粗悪な物などを販売することは考えにくい。

「信頼に値する方です。カタゴさん。申し訳ありません」
 商人の名前を口にしてロールさん頭を下げる。
 売り場が壊されて落ち込んでいたことも考えれば、悪さをしてお金を稼ごうとは思っていないだろう。
 僕も許可証に目を通せば、このカタゴさんなる商人さん、王都で街商を始めて六年になる。
 信頼を維持して商いをしなければいけない旅商人で、六年も続けているなら大したものである。
 だからこそ、こんなことになってしまって、相当に落ち込んでいた。
 
 ――じゃあ、犯人はやはりエルンさんなのか?

「ミリ―さん。このタリスマンを手にして、軽く魔力を入れてもらえます」
 ロールさんが手渡す。
 
 魔道学は専攻していなかったので、よくは分かっていないけども――――、
 
 タリスマンの魔力増幅能力は、タリスマンに魔力を入れることで、中で魔力が分裂し、分裂した魔力粒子が結合する。
 これを魔力融合反応と言って、結合した魔力が、膨大な魔力になり、術者は少ない魔道力で強力な魔法を使用することが出来る仕組みなのだそうだ。



「ん!?」
 ミリ―さん、直ぐさま魔力を注ぐことを中断。

「リム、このタリスマンに結界をはって」
 放り投げたタリスマンを閉じ込めるように正方形の結界を展開。
 
 ――ボン! っと、音を立ててタリスマンが小爆発を起こして、結界内で粉々に砕けた。

「こりゃ粗悪品じゃないか!」
 誰よりも早くその言葉を口にしたのがカタゴさんであった。
 
 粗悪品を掴まされ、商人の矜持を汚された想いからくる怒りを、荒ぶる語調と、頭にかぶったハンチング帽を地面に叩き付けて表現。

 王都で六年間、街商を開くことが出来る人物だ。
 このような粗悪品を掴まされる事などあるのだろうか?

「仕入れ先は?」
 常に僕が頭に思い浮かべてから、質問をしようかと思う前に、ロールさんが先に行動に移してくる。
 ここが、僕とロールさんの思考回路の差なのだろう。
 
 ――――カタゴさん、毎年、王都で商いをする時は、細心の注意を心がけていて、信頼の置ける問屋から仕入れているそうで、今年もそこからの品物を仕入れたそうだ。

「いつもと違いは?」
 常日頃からメモ帳を携帯してんですね……。小さなショルダーバッグから取り出すロールさんに、見習おうと強く思った。
 
 ――――違いといえる違いはなかったそうで、いつも通りの値段で、卸問屋ラゴットというところから仕入れたそうだ。
 
 違いといえば、契約をした時に、今までと違う人物であったという事だが、気にもとめなかったらしい。
 この時期は繁忙期であるので、対応する人間が変わるのは珍しくない。気にとめないのは当然とも言える。
 
 ラゴットはよく聞く名前でもある。信頼ある大きな問屋だ。この王都でカタゴさん以外も使用しているはずだ。
 
 今のところ問題はないようだし、これだと、カタゴさんに疑いが向けられてしまうかもしれない。

「う~ん。一応ですが、カタゴさんには更に詳しく事情を聞かなければなりません。警務局の方にご同行してください」
 自分にやましいところはない! と、豪語して、是非に協力したいと、警務局の方についていく。

「どうなんですかね?」

「違う人物だったのが怪しいよね」

「でも、繁忙期ですし」

「多分だけど、カタゴさんって信頼されてると思うの。真面目そのものだし。だからこの時期になると繁忙期でも、いつもと同じ人がカタゴさんにつくと思うんだよね。商売は信頼だから」
 たまたまその人が、別のことで手が離せなかった。ってだけなら、それで終わる話なんだけどね。
 もしくは、その問屋も粗悪品を掴まされたとも考えられる。
 
 ロールさん腕組みして目を閉じて考え事。真面目な性格だから、とことん追及したいのかもしれないけど、管轄が違います。それ警務局の仕事ですから。


「エルンさん」
 やおら目を開くとエメラルドグリーンの瞳でエルンさんを凝視。それに頬を赤らめるエルンさん。
 ――もう見飽きたよ。
 
 快活の良い返事で答えている。

「今回の件は、余燼よじんがくすぶったままと判断します。大火にならないように火消しが必要と考えます」
 つまり、何がしたいんですか? 

「よって、私、ロール・ジャイロスパイクの個人クエストを受けてもらえますか?」
 一同の頭の上には疑問符が浮かんでいる感じだ。
 
 気になったからって、そこまでしなくても、そりゃ警務局の方よりも勇者御一行が頼りになるだろうけど、この方々の仕事は対魔王やモンスターや賊討伐なんだけども。

「クエスト報酬は――――しこりを取り除く。というのでどうです?」

「「「「いやいやいやいや」」」」
 そんなことを一整備局員が勝手に決めちゃダメだから。
 僕。そして、エルンさんを取り囲んでいた兵士さん達とで、否定の発言。
 
 ないない、いくらロールさんでもそれはない。
 大体、しこりを取り除くって、どんな報酬?

「でも、魔法暴発は事故が考えられるし、今後もこんなことが起きたら困るでしょ。それなら勇者さんに頼むのが早いよ」
 そうだけども、

「あの……」
 小さく挙手するエルンさん。
 発言どうぞとばかりにロールさんが促すと、

「これって、事故で処理されるなら、そもそも自分の罪ではないと考えられるんですが……」
 そうだね。まったくだね。
 これは事故だから、その事故の根幹として疑いがあるラゴットは、地方の警務局の方々が調査するので、エルンさんには、このまま旅だってもらおうじゃないですか。
 
 王都からさっさと旅だってもらったほうが良いと思う。
 
 この方々がいると、問題が起きそうでいやなんですよ。そう考えるならラゴットの調査もいいとも思うけども、勇者がやるような事じゃないでしょう。
 
 勇者なんて目立った行動するのが当然みたいなものだし、コソコソとした調査は不向きでしょ? ロールさん、ここはやめときましょ。

「いいですか――」
 エルンさんへと足を進めてる……。
 これは頼む気満々のようだ。

「エルンさんは優しい方です。きっとこれから先も、このことが払拭出来ずに、もやもやとした物が心にこるでしょう」
 図星。事故とはいえ当事者であるもんだから、罪悪感は残っているようで、表情が一気に曇った。
 だから、クエスト報酬はしこりを取り除くか――――。
 
 無報酬だね。
 
 優しく真面目な者ほど、こういう嫌な思い出はこびりついて、毒にもなるかもしれない。
 いや、エルンさんだ。思い込んでいけばいくほど、大きくなる。それを払拭させるためにもロールさんは自分が出したクエストを受けるように促す。

「わかりました」
 嫌な思い出は小さいうちに消し去ろうと決断したのか、ロールさんのクエストを受諾した。
 それにロールさんは笑顔で答え、パーティーメンバーに対して、〝いいかな〟と、問うと、〝もちろん〟と、快諾。
 
 報酬とか考えないで動くから勇者なのかな……。平地の行き届いた人生を送りたい僕には無理な報酬内容。

 サージャスさんが見たら、羨ましがる和気藹々なパーティーの光景だ。
 
 
 ――――――……、
 
 僕には違うものに見えるけどね!

 美人四人に囲まれている光景。まさに蚊帳の外という言葉が似つかわしいのが今の僕。
 すごく、幸せそうな顔してますな、エルンさん。
 
 先ほどの街商での男剣士と、女魔法使いの記憶も蘇ってくるけども、目の前の事象にくらべれば、些事である。
 
 どうしてくれますエルンさん? 貴男のせいで僕の歯がなくなってしまうかもしれませんよ。
 
 それくらい嫉妬で歯を軋らせてしまっている。
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