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王都の休日・夜
PHASE-03
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「俺はさ、この王都の英雄なわけよ」
――酔うと始まる自慢話。
自分がカグラさんを説得したことで、この王都の被害は最小限で済んだと、頑なに言い張る。
カグラさんが、損害や怪我人が出たことに対し、整備長から注意を受けただけで、その後はカグラさん個人が謝罪行脚なのが事実。
注意だけだからね。説得ではない。
それでも、このおっさんは酔うと、こうやって自分の功績が大きいのだと、残念なことを言ってしまう。
号外を出してしまった瓦版が、勘違いした情報を流してしまったのが一番の問題だっただろう。
あれで、一時とはいえ、整備長は時の人的な立場になったからね。
――まあいいさ。
「流石は整備長ですね。相手が魔王幹部でも説き伏せることが出来るんですから」
今日は、褒めておこう。すっごく抵抗あるけども、褒めておいてやるさ。
無理をしているのか、体がかゆい。蕁麻疹が出てないか確認。
「分かってるじゃないの。なのにだよ、最近は俺に対するリスペクトが局内にないと思わないか?」
そりゃ、仕事さぼったり、条約を笠に着て、威張り散らすからでしょ。
反面、権力者にはめっぽう弱かったり、出張にかこつけて歓楽街に足を運ぼうとするような方を、リスペクトするなんて誰も思わないでしょうよ。
「お待たせしました。ビールと鳥モモの炭火焼きです」
「どうも。さあ、整備長。グッといきましょう。すいません、強めのお酒もお願いします」
「おっ、次の注文まで出来るなんて、優秀だね。ピート君」
貴男より優秀だとは、常に自負していますがね。
お~、いいですね~。グビグビといきますね~。
口からこぼれてますよ~。下品ですね。ロールさんの美しい飲み方を見習ってもらいたいですよ。
正直、それの何がうまいのか全く理解出来ない。苦いだけの飲み物をよくもまあ、そんなに美味そうに飲んでますね。
「ピート君だけだね。こうやって付き合ってくれるのは」
――……、なんか可哀想な人に見えてきた。本当に誰にも相手にされてないんじゃないだろうか。
同情心を抱いてしまう僕がいる。
でも、一瞬だ。すぐに立ち返る。
そりゃ、こんな人を相手にするのは面倒くさいもんね。
明日になれば、態度はいつものように横暴で、面倒くさがるだけのおっさんになるんだから。
少しは、率先して頑張ってくれれば、それだけで評価は上がると思うんですがね。
四十過ぎてこれだから、人間性を変えようとしても無理かな……。不祥事起こさずに、定年まで適当にやるって感じだ。
「モヒートです」
グラスにミントが入ってるお酒か。飲まないから、種類とかよく分からない。
すでに、ビールは一気飲みで空になってる。
そして、このモヒートなる酒も、整備長は一気飲みだ。味を堪能するんじゃなくて、ただ、がぶ飲みしたいって感じだ。
一気に飲み干すタイプなんだよな。
この店に来る前から、かなり飲んでたみたいだし、これなら、水飲んでも酔っ払いそうな気がする。
ずっとテーブルに体重預けて、頭がぐらぐらと動いてるし、二杯でダウンか?
念入れだ。
「すいませ~ん。ジンをストレートで」
「ストレートですか?」
そこそこ強い度数だから、この酔いっぷりで更にストレートは大丈夫なのか? と、店員さんが心配そうだ。
「問題ないですから」
とはいえ、酔いつぶれて、そのままぽっくりってのも困る。
どうする。人道か、メモ帳か、はたまた両方か。
店員さんに一応保留の形で待ってもらう。
「これからも、頑張って仕事をこなすんだぞピート君。安定よ安定」
うむ、人道を選んで、酔い潰すのでなく、寝たところで拝借しよう――――。
「ピート君が頑張ってくれれば、今、世話をしてやってる俺のカブも爆上がりよ!」
「小ジョッキでジンのストレートをお願いします。問題ないんで」
なんで執拗に、仕事の相棒に僕を選んでたのかよく分かったよ。自分の立身出世のためとはね。グッバイ、人道。ウエルカム、メモ帳。の、精神でこの場はいかせてもらおう。
小ジョッキがせめてもの慈悲よ。
大丈夫だろ。この人なら。死なないよ。
鳥のモモ肉を一つまみ。ジューシーでおいしいけど、胃がもう限界に近いから、ゆっくり咀嚼しつつ、整備長のかまってな内容の自慢話に首肯の動作で返しつつ、
「へ~、え~、お~」
適当な相づちを入れておけば、なんの問題もなく喜んでいる。
泥酔だもの、僕がアクションを行うより、ただ自分が喋りたいだけだからね。これがしんどいから、この人との夜の付き合いは嫌なんだ。
「どうぞ、ジンです」
「ありがとうございます。ささ、整備長の格好いいところ見せてくださいよ」
「俺はいつも格好いいだろ?」
「ですね~」
へっ…………。
まったくさ……、使いたくないおべっかを使うようになる。
これが、大人として――――、社会人になっていくってことなのかな~。
想像通り、小ジョッキに入ったジンを一気に飲み始めた。
「か~」
喉が熱いのか、諸手で掻いている。
「これきついな~」
「お水どうぞ」
チェイサーに酒じゃなくて、水を与えるところが僕が非道に走れないところだろう。美味そうに水を飲みほしている。
――――――。
「あ、あ~う~あ~おぅぅ……」
うん、まるで、ゾンビのようなうめき声だ。
「さあさあ」
右ポケットだったな。
左を横にして、畳に寝かせてあげる。
「大丈夫ですか?」
店員さんが心配して、覗き込んでくる。いい、店員さんである。
「とりあえず水のお代わりを」
軽い調子と笑顔で言ってあげて、少しでも心配を取り払ってあげた。
「ゆっくりしましょうね~」
――これより状況を開始。
優しく背中をさすりつつ、臀部へと手を回していく。
ちっ、中々にパッツリしたズボンを履いてくれてるな。さっきは、尻餅ついただけで落ちたから、簡単に指が入ると思ったんだけど――。
中々にポケットに指が入らない。諦めることは出来ないから、攻めなければ。
――――よし! 紙の感触が指に触れたぞ。後はこれを引っ張り出すだけだ。
気付かれないように、ゆっくりと、慎重に。
歴史に名を残す伝説のシーフよ。我の右腕に宿りたまえ。必ずや、この盗みを完遂させるために!
――落ち着くんだ。息を整えろ。大丈夫だ、相手は泥酔している。目を開けることはない。
だが、念には念を――、
背中を強くさすりつつ、そちらに意識を持って行かせているところで、臀部のポケットに発生する、触れる感覚を少しでも誤魔化すのだ。
大丈夫、僕になら出来るさ。信じろ自分自身を!
――――くそ! 自己暗示をかけても、焦りから息が荒くなる。早いところゲットしなければ目を覚ましてしまうかもしれん。
「お客様」
その声の前に、ガシャンと割れる音。目を向ければ、店員さんが水を入れてくれたグラスを床に落としていた。
――――僕の失態は、チェイサーである水が来るまで、待つべきだったこと。そして、焦りから発生した、状況の遅延。
状況は失敗である……。
だが問題はそこじゃない。
この店員さん、間違いなく大きな勘違いをしている。
メモ帳、奪取をもくろむ事に力が入り、僕の目は血走っており、
背中をさすり、臀部に回された手。
特に、臀部に回された手を凝視しているのが視線で分かる。
「違いますから!」
「いえ、自分は何も見てませんから!」
「いや! 本当に貴男は勘違いをしています!」
落ち着かせようと、店員さんの両肩をがっしりと掴むと、
「やめてください! 僕は普通なんです。彼女もいるんで」
僕も普通ですから! 彼女はいませんけども! 普通なんで。
別段、貴男を襲うなんて微塵も考えてないんで、落ち着いてください。お願い! あめ玉あげるから!
「なんだよ――どうしたんだよ?」
ちくしょめぇぇぇぇぇぇぇぇ! 起きやがった。
これ以上の混乱をもたらす事はよろしくない。店員さんには退去を願わなければ。
「もう、問題ないみたいなんで。いや~やっぱり強いの飲ませるといけませんね」
さあ、去れ! もう用はない。
眼光鋭くすると、怯えたように去って行った。
なぜかお盆でお尻を隠していた……。おい、だから違うから。
店員さんとしては、僕が、整備長を狙うのを仕損じたと思っているのかもしれない。余計なことを口にしたら、自分に厄災がふりかかると考えたんだろうね……。
最悪だね…………。この人に会うまでは楽しい一日だったのに。
欲に駆られてしまったのがいけなかった……。こんなおっさんと変な噂を流されたら、王都で平地の行き届いた人生をおくれなくなる。
店員さん、今日のことは、なにとぞ――、忘れていただきたい。
「あれ、お前。あんま食ってないね」
ピート君から、お前に変わった。酔いが少し醒めてきたようだ。
――撤収だ。
はい、さっさと立ってください。帰りましょう。
お勘定を整備長が払っている最中、僕は店員さんを探す。
――――……、
なに柱に隠れて僕を恐怖の目で見てるのかな!
「あの人、なんて名前なんですか?」
「お客様のところでグラスを割ってしまったそうで、申し訳ありません。まだ新人なんで」
年配の男性が謝罪と、紹介をしてくれた。
グラスを割ったことだけを報告か――――。
今ところは変な事は口にしていないようだね――――、ホルテン・ホーク君。
同い年なんだね……。出会いが違えば、良い友人関係を築けたかもしれないのにね……。
沈黙は金、雄弁は銀だよ……。金と銀、どちらを選ぶかなんて、分かりきってるよね?
僕は柱に隠れるホルテン君に、眼力で念を飛ばして、伝えてみる。理解してくれたのか首肯で返してくれた。
頼むよ、ホルテン君――――――。
「そいじゃ、おつかれ」
楽しそうに足をふらつかせて帰ってるよ――――。
大失敗だ。くそっ! 素直に家路につくべきだった。最後の最後で台無しになってしまった休日だ……。メモ帳の魔力に負けてしまったのが失態だ!
――――まあいい。今後もチャンスはある。
それよりもだ……。
バッカスには今までよりも足を運ばなければいけないね……。いらぬ噂が立たないように、監視させてもらうから。ホルテン君――――――。
――酔うと始まる自慢話。
自分がカグラさんを説得したことで、この王都の被害は最小限で済んだと、頑なに言い張る。
カグラさんが、損害や怪我人が出たことに対し、整備長から注意を受けただけで、その後はカグラさん個人が謝罪行脚なのが事実。
注意だけだからね。説得ではない。
それでも、このおっさんは酔うと、こうやって自分の功績が大きいのだと、残念なことを言ってしまう。
号外を出してしまった瓦版が、勘違いした情報を流してしまったのが一番の問題だっただろう。
あれで、一時とはいえ、整備長は時の人的な立場になったからね。
――まあいいさ。
「流石は整備長ですね。相手が魔王幹部でも説き伏せることが出来るんですから」
今日は、褒めておこう。すっごく抵抗あるけども、褒めておいてやるさ。
無理をしているのか、体がかゆい。蕁麻疹が出てないか確認。
「分かってるじゃないの。なのにだよ、最近は俺に対するリスペクトが局内にないと思わないか?」
そりゃ、仕事さぼったり、条約を笠に着て、威張り散らすからでしょ。
反面、権力者にはめっぽう弱かったり、出張にかこつけて歓楽街に足を運ぼうとするような方を、リスペクトするなんて誰も思わないでしょうよ。
「お待たせしました。ビールと鳥モモの炭火焼きです」
「どうも。さあ、整備長。グッといきましょう。すいません、強めのお酒もお願いします」
「おっ、次の注文まで出来るなんて、優秀だね。ピート君」
貴男より優秀だとは、常に自負していますがね。
お~、いいですね~。グビグビといきますね~。
口からこぼれてますよ~。下品ですね。ロールさんの美しい飲み方を見習ってもらいたいですよ。
正直、それの何がうまいのか全く理解出来ない。苦いだけの飲み物をよくもまあ、そんなに美味そうに飲んでますね。
「ピート君だけだね。こうやって付き合ってくれるのは」
――……、なんか可哀想な人に見えてきた。本当に誰にも相手にされてないんじゃないだろうか。
同情心を抱いてしまう僕がいる。
でも、一瞬だ。すぐに立ち返る。
そりゃ、こんな人を相手にするのは面倒くさいもんね。
明日になれば、態度はいつものように横暴で、面倒くさがるだけのおっさんになるんだから。
少しは、率先して頑張ってくれれば、それだけで評価は上がると思うんですがね。
四十過ぎてこれだから、人間性を変えようとしても無理かな……。不祥事起こさずに、定年まで適当にやるって感じだ。
「モヒートです」
グラスにミントが入ってるお酒か。飲まないから、種類とかよく分からない。
すでに、ビールは一気飲みで空になってる。
そして、このモヒートなる酒も、整備長は一気飲みだ。味を堪能するんじゃなくて、ただ、がぶ飲みしたいって感じだ。
一気に飲み干すタイプなんだよな。
この店に来る前から、かなり飲んでたみたいだし、これなら、水飲んでも酔っ払いそうな気がする。
ずっとテーブルに体重預けて、頭がぐらぐらと動いてるし、二杯でダウンか?
念入れだ。
「すいませ~ん。ジンをストレートで」
「ストレートですか?」
そこそこ強い度数だから、この酔いっぷりで更にストレートは大丈夫なのか? と、店員さんが心配そうだ。
「問題ないですから」
とはいえ、酔いつぶれて、そのままぽっくりってのも困る。
どうする。人道か、メモ帳か、はたまた両方か。
店員さんに一応保留の形で待ってもらう。
「これからも、頑張って仕事をこなすんだぞピート君。安定よ安定」
うむ、人道を選んで、酔い潰すのでなく、寝たところで拝借しよう――――。
「ピート君が頑張ってくれれば、今、世話をしてやってる俺のカブも爆上がりよ!」
「小ジョッキでジンのストレートをお願いします。問題ないんで」
なんで執拗に、仕事の相棒に僕を選んでたのかよく分かったよ。自分の立身出世のためとはね。グッバイ、人道。ウエルカム、メモ帳。の、精神でこの場はいかせてもらおう。
小ジョッキがせめてもの慈悲よ。
大丈夫だろ。この人なら。死なないよ。
鳥のモモ肉を一つまみ。ジューシーでおいしいけど、胃がもう限界に近いから、ゆっくり咀嚼しつつ、整備長のかまってな内容の自慢話に首肯の動作で返しつつ、
「へ~、え~、お~」
適当な相づちを入れておけば、なんの問題もなく喜んでいる。
泥酔だもの、僕がアクションを行うより、ただ自分が喋りたいだけだからね。これがしんどいから、この人との夜の付き合いは嫌なんだ。
「どうぞ、ジンです」
「ありがとうございます。ささ、整備長の格好いいところ見せてくださいよ」
「俺はいつも格好いいだろ?」
「ですね~」
へっ…………。
まったくさ……、使いたくないおべっかを使うようになる。
これが、大人として――――、社会人になっていくってことなのかな~。
想像通り、小ジョッキに入ったジンを一気に飲み始めた。
「か~」
喉が熱いのか、諸手で掻いている。
「これきついな~」
「お水どうぞ」
チェイサーに酒じゃなくて、水を与えるところが僕が非道に走れないところだろう。美味そうに水を飲みほしている。
――――――。
「あ、あ~う~あ~おぅぅ……」
うん、まるで、ゾンビのようなうめき声だ。
「さあさあ」
右ポケットだったな。
左を横にして、畳に寝かせてあげる。
「大丈夫ですか?」
店員さんが心配して、覗き込んでくる。いい、店員さんである。
「とりあえず水のお代わりを」
軽い調子と笑顔で言ってあげて、少しでも心配を取り払ってあげた。
「ゆっくりしましょうね~」
――これより状況を開始。
優しく背中をさすりつつ、臀部へと手を回していく。
ちっ、中々にパッツリしたズボンを履いてくれてるな。さっきは、尻餅ついただけで落ちたから、簡単に指が入ると思ったんだけど――。
中々にポケットに指が入らない。諦めることは出来ないから、攻めなければ。
――――よし! 紙の感触が指に触れたぞ。後はこれを引っ張り出すだけだ。
気付かれないように、ゆっくりと、慎重に。
歴史に名を残す伝説のシーフよ。我の右腕に宿りたまえ。必ずや、この盗みを完遂させるために!
――落ち着くんだ。息を整えろ。大丈夫だ、相手は泥酔している。目を開けることはない。
だが、念には念を――、
背中を強くさすりつつ、そちらに意識を持って行かせているところで、臀部のポケットに発生する、触れる感覚を少しでも誤魔化すのだ。
大丈夫、僕になら出来るさ。信じろ自分自身を!
――――くそ! 自己暗示をかけても、焦りから息が荒くなる。早いところゲットしなければ目を覚ましてしまうかもしれん。
「お客様」
その声の前に、ガシャンと割れる音。目を向ければ、店員さんが水を入れてくれたグラスを床に落としていた。
――――僕の失態は、チェイサーである水が来るまで、待つべきだったこと。そして、焦りから発生した、状況の遅延。
状況は失敗である……。
だが問題はそこじゃない。
この店員さん、間違いなく大きな勘違いをしている。
メモ帳、奪取をもくろむ事に力が入り、僕の目は血走っており、
背中をさすり、臀部に回された手。
特に、臀部に回された手を凝視しているのが視線で分かる。
「違いますから!」
「いえ、自分は何も見てませんから!」
「いや! 本当に貴男は勘違いをしています!」
落ち着かせようと、店員さんの両肩をがっしりと掴むと、
「やめてください! 僕は普通なんです。彼女もいるんで」
僕も普通ですから! 彼女はいませんけども! 普通なんで。
別段、貴男を襲うなんて微塵も考えてないんで、落ち着いてください。お願い! あめ玉あげるから!
「なんだよ――どうしたんだよ?」
ちくしょめぇぇぇぇぇぇぇぇ! 起きやがった。
これ以上の混乱をもたらす事はよろしくない。店員さんには退去を願わなければ。
「もう、問題ないみたいなんで。いや~やっぱり強いの飲ませるといけませんね」
さあ、去れ! もう用はない。
眼光鋭くすると、怯えたように去って行った。
なぜかお盆でお尻を隠していた……。おい、だから違うから。
店員さんとしては、僕が、整備長を狙うのを仕損じたと思っているのかもしれない。余計なことを口にしたら、自分に厄災がふりかかると考えたんだろうね……。
最悪だね…………。この人に会うまでは楽しい一日だったのに。
欲に駆られてしまったのがいけなかった……。こんなおっさんと変な噂を流されたら、王都で平地の行き届いた人生をおくれなくなる。
店員さん、今日のことは、なにとぞ――、忘れていただきたい。
「あれ、お前。あんま食ってないね」
ピート君から、お前に変わった。酔いが少し醒めてきたようだ。
――撤収だ。
はい、さっさと立ってください。帰りましょう。
お勘定を整備長が払っている最中、僕は店員さんを探す。
――――……、
なに柱に隠れて僕を恐怖の目で見てるのかな!
「あの人、なんて名前なんですか?」
「お客様のところでグラスを割ってしまったそうで、申し訳ありません。まだ新人なんで」
年配の男性が謝罪と、紹介をしてくれた。
グラスを割ったことだけを報告か――――。
今ところは変な事は口にしていないようだね――――、ホルテン・ホーク君。
同い年なんだね……。出会いが違えば、良い友人関係を築けたかもしれないのにね……。
沈黙は金、雄弁は銀だよ……。金と銀、どちらを選ぶかなんて、分かりきってるよね?
僕は柱に隠れるホルテン君に、眼力で念を飛ばして、伝えてみる。理解してくれたのか首肯で返してくれた。
頼むよ、ホルテン君――――――。
「そいじゃ、おつかれ」
楽しそうに足をふらつかせて帰ってるよ――――。
大失敗だ。くそっ! 素直に家路につくべきだった。最後の最後で台無しになってしまった休日だ……。メモ帳の魔力に負けてしまったのが失態だ!
――――まあいい。今後もチャンスはある。
それよりもだ……。
バッカスには今までよりも足を運ばなければいけないね……。いらぬ噂が立たないように、監視させてもらうから。ホルテン君――――――。
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