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胎動
PHASE-01
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――――パルパーナ。
王都から北東に約百五十里、大河アンティナに沿った歴史が眠る都市。
大河の豊饒な水に支えられ、古代の人々が繁栄させた、大陸で最も長い歴史を持った都市だ。
歴史ある古代遺跡群からなるこの地は、王都近辺以上に条約が厳しい場所でもある。
こんなところで戦闘行為なんかやっちゃって、遺跡にヒビでも入れた日には、損害を出した方には、人生破滅級の違反金を支払わなきゃいけない義務が課せられる事になる。
―――だからか、ここで勇者御一行と魔王軍の戦闘が勃発する事はまずない。
規律のよさは王都以上だから、ここの整備局の方々は比較的に楽そうなイメージだけど、遺跡群を管理しなければならないとなると、僕には想像も出来ない、相当のプレッシャーもあるんだろうな~。
だけど、今回の問題はそんなことじゃない。正直、僕たちなんかが関わるような案件ではないと思うんですがね~。
「とんでもないことになりましたね」
「はい……」
整備長が今まで聞いたことのない男前な声で同情発言。
心底こまっているようで、頭を抱えているパルパーナ整備局、アレイン局長のトーンは暗くて重い。
眼鏡が似合う、美しい顔立ちに、白群の髪を、ギブゾンタックで整えている。
淑女な姿が、おっさんの心をくすぐるようだ。
――――だけどね――、整備長。下心丸出しにしている場合じゃないんですよ。
今、僕たちの置かれている状況は世界を震撼させる事態なんだから。
アレイン局長の火急の報で、苦手なグライフ君に乗って、ここまで来た。足腰が痛くてかなわないのは毎度のこと。
「で、どこまで進んでるんですか?」
「いえ、相手も待っててくれまして……」
節義はあるようだね、相手の方。
代表して口を開く整備長のお供は、ロールさんと僕だけ。お偉方が後から来るのはいつものこと。
待ってもらうなら、お偉方が来るのまで引き延ばせませんかね?
古都の時といい、ちょっと下の者達を使いすぎてる感がある。
しつこくて申し訳ないけど、僕たちなんかが、関わるような案件ではない。
――――パルパーナの古代遺跡の奥の奥。
観光客が足を踏み入れない危険な生物も生息するような、とにかく奥側で問題が発生。
その問題ってのが、大昔に厄災を振りまいていた邪神。
その邪神が封じられている神殿があるんだけども、復活を目論む邪教徒の方々が、各地に封じられていた邪神の一部を奪取し、数日前に、全てを集め終え、いよいよ復活目前――――って、ところで、律儀にも邪教徒の方々が、条約どうなるの? と、ふと思ったらしく。この局に質問に訪れたそうだ。
パルパーナ整備局で重視されているのは、遺跡保護の能力。
故に、ここの局員は、考古学知識に特化した方々で編成されている。
なので、勇者御一行と、魔王軍の戦闘に対しては最低限の対処しか出来ない。
まあ、戦闘が起こることは、ほぼないから問題はないのだろうけど、今回はそうは行かなかったようだ。
邪神復活の兆候は、パルパーナ整備局では荷が重かったようで、魔王の右腕でもある炎竜王のカグラさんとも親交のある整備長なら何とかなるのでは? と、王都の局に助力をと、考えたそうだ。
アレイン局長。整備長、別にスペシャリストとかじゃないですからね。噂だけが一人歩きしてるだけですから、王都では皆さんその事は理解してます。
王都から距離が空くと、未だに整備長、凄い説。が、信じられてるのかな?
カグラさんを筆頭に、炎竜王軍が出来た方々なだけですから。鵜呑みにしてはいけませんよ。
「――――どうぞ」
フォックスタイプのレンズが入った眼鏡。
切れ長の目をもつ美人さんが似合うタイプのヤツをクイッと上げて口を開く姿に、アレイン局長から漂う大人の色気を感じてしまう。
声に応じて、待合室から全身を黒のローブで覆った、如何にもな人が出てきた。
見るだけで邪神関係。狂信者的なにおいがプンプンする。
こわいよ~。
僕と整備長、座っている椅子から少しだけ腰を浮かせている状態。いつでも素早く逃げれるようにする為だ。
かたや、ロールさんは、凛とした綺麗な姿勢で、入室した邪教徒な方に瞳を向けている。
「はい、どうも~!」
「「「!?」」」
すっごいテンションだよ。顔を隠していたフード部分を勢いよく脱いでからの、快活のよい、室内に木霊する、腹からしっかりと出している声ですよ。
「え~自分。ハッタ・ロジマっていまして~ね~」
――……、これ、あれだ。邪教徒じゃないな。コメディアンだ。間違いない。この坊主頭の方は、コメディアンだ。
自己紹介は、剃った頭を手でこすりながらの一礼だった。大音声と共に、シャリシャリとした小気味のいい音が、頭から聞こえてくる。
――彼の前に、メガホンが設置されているような幻覚が見えてくる。
いまにも漫談が始まりそうだ。
初対面が、想像の斜め上を行く存在だったから、面食らってしまった。
アレイン局長。出会った時に、頭抱えてたけど、
これ、邪神復活も悩みの種だろうけど、この人のテンションに当てられて疲れてるってのも考えられる。
とりあえず、緞帳を下ろしてもらっていいですか? そうすれば静かになりそうな気がするんですが。
緞帳ないですか? そうですか……。
幻覚でもいいので、メガホン同様に見えて欲しいです……。
一時は――――、この出たてのコメディアンのようなテンションに、付き合わなきゃいけないようだ…………。
王都から北東に約百五十里、大河アンティナに沿った歴史が眠る都市。
大河の豊饒な水に支えられ、古代の人々が繁栄させた、大陸で最も長い歴史を持った都市だ。
歴史ある古代遺跡群からなるこの地は、王都近辺以上に条約が厳しい場所でもある。
こんなところで戦闘行為なんかやっちゃって、遺跡にヒビでも入れた日には、損害を出した方には、人生破滅級の違反金を支払わなきゃいけない義務が課せられる事になる。
―――だからか、ここで勇者御一行と魔王軍の戦闘が勃発する事はまずない。
規律のよさは王都以上だから、ここの整備局の方々は比較的に楽そうなイメージだけど、遺跡群を管理しなければならないとなると、僕には想像も出来ない、相当のプレッシャーもあるんだろうな~。
だけど、今回の問題はそんなことじゃない。正直、僕たちなんかが関わるような案件ではないと思うんですがね~。
「とんでもないことになりましたね」
「はい……」
整備長が今まで聞いたことのない男前な声で同情発言。
心底こまっているようで、頭を抱えているパルパーナ整備局、アレイン局長のトーンは暗くて重い。
眼鏡が似合う、美しい顔立ちに、白群の髪を、ギブゾンタックで整えている。
淑女な姿が、おっさんの心をくすぐるようだ。
――――だけどね――、整備長。下心丸出しにしている場合じゃないんですよ。
今、僕たちの置かれている状況は世界を震撼させる事態なんだから。
アレイン局長の火急の報で、苦手なグライフ君に乗って、ここまで来た。足腰が痛くてかなわないのは毎度のこと。
「で、どこまで進んでるんですか?」
「いえ、相手も待っててくれまして……」
節義はあるようだね、相手の方。
代表して口を開く整備長のお供は、ロールさんと僕だけ。お偉方が後から来るのはいつものこと。
待ってもらうなら、お偉方が来るのまで引き延ばせませんかね?
古都の時といい、ちょっと下の者達を使いすぎてる感がある。
しつこくて申し訳ないけど、僕たちなんかが、関わるような案件ではない。
――――パルパーナの古代遺跡の奥の奥。
観光客が足を踏み入れない危険な生物も生息するような、とにかく奥側で問題が発生。
その問題ってのが、大昔に厄災を振りまいていた邪神。
その邪神が封じられている神殿があるんだけども、復活を目論む邪教徒の方々が、各地に封じられていた邪神の一部を奪取し、数日前に、全てを集め終え、いよいよ復活目前――――って、ところで、律儀にも邪教徒の方々が、条約どうなるの? と、ふと思ったらしく。この局に質問に訪れたそうだ。
パルパーナ整備局で重視されているのは、遺跡保護の能力。
故に、ここの局員は、考古学知識に特化した方々で編成されている。
なので、勇者御一行と、魔王軍の戦闘に対しては最低限の対処しか出来ない。
まあ、戦闘が起こることは、ほぼないから問題はないのだろうけど、今回はそうは行かなかったようだ。
邪神復活の兆候は、パルパーナ整備局では荷が重かったようで、魔王の右腕でもある炎竜王のカグラさんとも親交のある整備長なら何とかなるのでは? と、王都の局に助力をと、考えたそうだ。
アレイン局長。整備長、別にスペシャリストとかじゃないですからね。噂だけが一人歩きしてるだけですから、王都では皆さんその事は理解してます。
王都から距離が空くと、未だに整備長、凄い説。が、信じられてるのかな?
カグラさんを筆頭に、炎竜王軍が出来た方々なだけですから。鵜呑みにしてはいけませんよ。
「――――どうぞ」
フォックスタイプのレンズが入った眼鏡。
切れ長の目をもつ美人さんが似合うタイプのヤツをクイッと上げて口を開く姿に、アレイン局長から漂う大人の色気を感じてしまう。
声に応じて、待合室から全身を黒のローブで覆った、如何にもな人が出てきた。
見るだけで邪神関係。狂信者的なにおいがプンプンする。
こわいよ~。
僕と整備長、座っている椅子から少しだけ腰を浮かせている状態。いつでも素早く逃げれるようにする為だ。
かたや、ロールさんは、凛とした綺麗な姿勢で、入室した邪教徒な方に瞳を向けている。
「はい、どうも~!」
「「「!?」」」
すっごいテンションだよ。顔を隠していたフード部分を勢いよく脱いでからの、快活のよい、室内に木霊する、腹からしっかりと出している声ですよ。
「え~自分。ハッタ・ロジマっていまして~ね~」
――……、これ、あれだ。邪教徒じゃないな。コメディアンだ。間違いない。この坊主頭の方は、コメディアンだ。
自己紹介は、剃った頭を手でこすりながらの一礼だった。大音声と共に、シャリシャリとした小気味のいい音が、頭から聞こえてくる。
――彼の前に、メガホンが設置されているような幻覚が見えてくる。
いまにも漫談が始まりそうだ。
初対面が、想像の斜め上を行く存在だったから、面食らってしまった。
アレイン局長。出会った時に、頭抱えてたけど、
これ、邪神復活も悩みの種だろうけど、この人のテンションに当てられて疲れてるってのも考えられる。
とりあえず、緞帳を下ろしてもらっていいですか? そうすれば静かになりそうな気がするんですが。
緞帳ないですか? そうですか……。
幻覚でもいいので、メガホン同様に見えて欲しいです……。
一時は――――、この出たてのコメディアンのようなテンションに、付き合わなきゃいけないようだ…………。
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