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胎動
PHASE-11
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「地震ですよ」
「よし! 落ち着け」
おっ、店内の方々を誘導している。入り口まで移動して、慌てないように。と、外に出るよう指示してらっしゃる。
少しでも良いところを見せて、自分が頼りになるって事を伝えたいんだろうね。僕だけじゃなく、この店にいる方々にも自分の勇敢さを見せてるのは、ここでの活躍を市井に広めてほしいという考えが見て取れる。
「よし、皆、避難完了しているか? 自分の知り合いはちゃんといるか? 店員も確認を」
いや~。それっぽい事してるじゃないですか。
皆さん落ち着き払ってるけどね。
別段、強い揺れってわけでもなかったし。なんでこんに騒いでるんだ? って、感じで整備長が見られていて、なんか哀愁を感じてしまう……。
評価アップのために一生懸命だから、皆さん評価してあげて……。
僕? やだな~。僕が高評価なんてしてあげるわけないじゃないですか。だから、その他の方々に任せたいのに。
ははははは……。は~やれやれだよ。
――――ん……?
――…………。ふぁ?
――……、あれ~!
「ちょっと整備長」
「どうした? 怪我人でもいたか」
何を、いい声を出して言ってんですか? あの揺れで怪我人なんて出ないでしょうよ。リーダーシップ感が空回りですよ。
周囲の方、クスクス笑わない! この人は、この人で、一生懸命なんだ!
――て、そんな事どうでもいい。
「煙上がってますよ」
「火事か!?」
「火事かどうか分からないですけど、あの方向を見てくださいよ」
食指で指してあげる。
白煙の上がる方向は、普段、僕たちが励む場所。つまりは整備局からだと思われる。
他の建物が遮っているから、この位置からはちゃんと把握は出来てはいないけども、あの位置はひょっとして、ひょっとする。
「行くぞ」
流石に焦っているようで、支払いをしないまま走り出す。
「お勘定は~」
ホルテン君の声は整備長の背中に届くも――、あの野郎! 振り返りもしない。そこは〝ツケで〟とか言ってもいいだろうに。
仕方が無いので、僕が出してあげた。奢りだったはずなのに……。
そして、ホルテン君は僕からお金を受け取る時に、内股気味になって目を合わせずに対応。
お尻も狙ってなければ、男にも興味ないから、いい加減にしてくれないかな! 勘違いのお馬鹿は相手にしてやれないので、直ぐさま走り整備長の後を追う。
――――直ぐに合流出来た……。
葉煙草は本当に体に悪いようだ。もう、死にかけてるじゃないですか。
追い越して先に行く。
――――――ありゃりゃ……。
予感的中である。
赤煉瓦造りの局の屋根のあたりから、煙の正体である、瓦礫が原因の埃が濛々と上がっている。
下からじゃ、屋根がどうなっているか分からないけど、間違いなく大穴が空いているだろう。
大穴が空いていると想定するなら、何かが降ってきたと考えられる。しかし、王都の上空には魔法陣がある。
カグラさん達クラスが侵入しない限り、魔法陣は壊れないはず。てことは、王都の中で何かが起こって、その影響で局に被害が出たのだろうか?
――なんて、考えは、空を眺めて直ぐに王都の中で起こった現象ではないということが分かった。
「この魔法陣って、本当に信頼して良いのかな……」
見事に魔法陣が消滅しているのが、眼界に入ってきた。
――てことは、整備局の中にはいま、危険な存在がいるのじゃないのだろうか?
「整備長! これ、危険じゃないですか?」
「よし、俺は今、息が切れてろくに体が動かない。見てくるんだ」
そういう所があるから~、誰も貴男には付いていかないわけですよ。
言われなくても行くけどね! ロールさんになにかあったらどうするんだ。助けに行かなければ!
――でも怖いので、忍び足で入っていく。今の僕はアサシンになれる自信に満ちあふれている。それくらい足音を消している。
――――局内に進入。
僕たちの机がある部屋に繋がるドアノブに手を掛けて、ゆっくりと開けてから頭だけを出して、内部を見渡す。
濛々と上がる埃で視界が悪い。
天井に目をやれば、考えの通り大穴が空いていて、そこから陽が射して、キラキラと埃が反射しているせいで、妙に神々しい。
床に目を移すと、四つん這いになって、埃のせいで咳き込んでいる方々が多数。灰色のつなぎや髪に、埃が派手にかぶってる。
怪我人は見た感じいないようだ。
ハンカチが出せる男になりたいと演劇を見た後に思った事が功を奏して、常日頃からハンカチを常備するようになった僕は、それを口に当てて、ドアを開ききって侵入し、中腰で移動。
「大丈夫ですか?」
肩に手を置くと、首肯で返してくれた。
その後、周囲の同僚たちと、状況の確認を始める。
ロールさんは無事だろか。心配だ。
でも、なにこれ? 何かしらの攻撃か?
あれかな、条約で発生した罰則金が払えないからって、暴力に訴えてきたのかな。怖いな~、もしそうなら、カグラさん達に助けを求めないといけないな。
勇気を振り絞って、更に奥に進む。
「ごほっ、ごほっ」
男性の咳が聞こえてくるので、そちらに足を向けて、合流する。
――――おおっ、初めてじゃないのに、初めてのような気がしないでもない、王都整備局責任者、ヘルム局長じゃないですか。
「ご無事ですか?」
「おお、ウィザースプーン君。君も無事だったか」
灰色七三わけの髪が、埃でまだら模様になっている。
見た感じでは、怪我ないようだ。
何よりだ。
「うわ、なんですかこれ!?」
背後からロールさんの声。どうやら僕たち同様に、外で食事をしていたようで、服にも汚れがなく無事なようだ。胸をなで下ろす。
急いで、局内の窓を開けて喚起をするように指示を出してくれる。
ロールさんのその声に、皆がテキパキと動く。整備長の紫煙の対策に余念が無い方々である。
指示が出されれば、皆さん手早く窓を開けて換気と、手際が凄くいい。
「おお! ようやく来たか」
と、聞きたくもない声が埃の中心から聞こえてきた。この状況を作った存在だな……。
ロールさんが現れるまでずっとその場から動かずに待機していたと考えると、シュールではある。
この屋根を破壊した存在だ。局長を始め、他の方々はその声に、恐怖を抱いているようで身構える。
でも、僕と、ロールさんは、脱力気味に項垂れてしまった。
まだ、一週間も経ってないぞ……。
「よし! 落ち着け」
おっ、店内の方々を誘導している。入り口まで移動して、慌てないように。と、外に出るよう指示してらっしゃる。
少しでも良いところを見せて、自分が頼りになるって事を伝えたいんだろうね。僕だけじゃなく、この店にいる方々にも自分の勇敢さを見せてるのは、ここでの活躍を市井に広めてほしいという考えが見て取れる。
「よし、皆、避難完了しているか? 自分の知り合いはちゃんといるか? 店員も確認を」
いや~。それっぽい事してるじゃないですか。
皆さん落ち着き払ってるけどね。
別段、強い揺れってわけでもなかったし。なんでこんに騒いでるんだ? って、感じで整備長が見られていて、なんか哀愁を感じてしまう……。
評価アップのために一生懸命だから、皆さん評価してあげて……。
僕? やだな~。僕が高評価なんてしてあげるわけないじゃないですか。だから、その他の方々に任せたいのに。
ははははは……。は~やれやれだよ。
――――ん……?
――…………。ふぁ?
――……、あれ~!
「ちょっと整備長」
「どうした? 怪我人でもいたか」
何を、いい声を出して言ってんですか? あの揺れで怪我人なんて出ないでしょうよ。リーダーシップ感が空回りですよ。
周囲の方、クスクス笑わない! この人は、この人で、一生懸命なんだ!
――て、そんな事どうでもいい。
「煙上がってますよ」
「火事か!?」
「火事かどうか分からないですけど、あの方向を見てくださいよ」
食指で指してあげる。
白煙の上がる方向は、普段、僕たちが励む場所。つまりは整備局からだと思われる。
他の建物が遮っているから、この位置からはちゃんと把握は出来てはいないけども、あの位置はひょっとして、ひょっとする。
「行くぞ」
流石に焦っているようで、支払いをしないまま走り出す。
「お勘定は~」
ホルテン君の声は整備長の背中に届くも――、あの野郎! 振り返りもしない。そこは〝ツケで〟とか言ってもいいだろうに。
仕方が無いので、僕が出してあげた。奢りだったはずなのに……。
そして、ホルテン君は僕からお金を受け取る時に、内股気味になって目を合わせずに対応。
お尻も狙ってなければ、男にも興味ないから、いい加減にしてくれないかな! 勘違いのお馬鹿は相手にしてやれないので、直ぐさま走り整備長の後を追う。
――――直ぐに合流出来た……。
葉煙草は本当に体に悪いようだ。もう、死にかけてるじゃないですか。
追い越して先に行く。
――――――ありゃりゃ……。
予感的中である。
赤煉瓦造りの局の屋根のあたりから、煙の正体である、瓦礫が原因の埃が濛々と上がっている。
下からじゃ、屋根がどうなっているか分からないけど、間違いなく大穴が空いているだろう。
大穴が空いていると想定するなら、何かが降ってきたと考えられる。しかし、王都の上空には魔法陣がある。
カグラさん達クラスが侵入しない限り、魔法陣は壊れないはず。てことは、王都の中で何かが起こって、その影響で局に被害が出たのだろうか?
――なんて、考えは、空を眺めて直ぐに王都の中で起こった現象ではないということが分かった。
「この魔法陣って、本当に信頼して良いのかな……」
見事に魔法陣が消滅しているのが、眼界に入ってきた。
――てことは、整備局の中にはいま、危険な存在がいるのじゃないのだろうか?
「整備長! これ、危険じゃないですか?」
「よし、俺は今、息が切れてろくに体が動かない。見てくるんだ」
そういう所があるから~、誰も貴男には付いていかないわけですよ。
言われなくても行くけどね! ロールさんになにかあったらどうするんだ。助けに行かなければ!
――でも怖いので、忍び足で入っていく。今の僕はアサシンになれる自信に満ちあふれている。それくらい足音を消している。
――――局内に進入。
僕たちの机がある部屋に繋がるドアノブに手を掛けて、ゆっくりと開けてから頭だけを出して、内部を見渡す。
濛々と上がる埃で視界が悪い。
天井に目をやれば、考えの通り大穴が空いていて、そこから陽が射して、キラキラと埃が反射しているせいで、妙に神々しい。
床に目を移すと、四つん這いになって、埃のせいで咳き込んでいる方々が多数。灰色のつなぎや髪に、埃が派手にかぶってる。
怪我人は見た感じいないようだ。
ハンカチが出せる男になりたいと演劇を見た後に思った事が功を奏して、常日頃からハンカチを常備するようになった僕は、それを口に当てて、ドアを開ききって侵入し、中腰で移動。
「大丈夫ですか?」
肩に手を置くと、首肯で返してくれた。
その後、周囲の同僚たちと、状況の確認を始める。
ロールさんは無事だろか。心配だ。
でも、なにこれ? 何かしらの攻撃か?
あれかな、条約で発生した罰則金が払えないからって、暴力に訴えてきたのかな。怖いな~、もしそうなら、カグラさん達に助けを求めないといけないな。
勇気を振り絞って、更に奥に進む。
「ごほっ、ごほっ」
男性の咳が聞こえてくるので、そちらに足を向けて、合流する。
――――おおっ、初めてじゃないのに、初めてのような気がしないでもない、王都整備局責任者、ヘルム局長じゃないですか。
「ご無事ですか?」
「おお、ウィザースプーン君。君も無事だったか」
灰色七三わけの髪が、埃でまだら模様になっている。
見た感じでは、怪我ないようだ。
何よりだ。
「うわ、なんですかこれ!?」
背後からロールさんの声。どうやら僕たち同様に、外で食事をしていたようで、服にも汚れがなく無事なようだ。胸をなで下ろす。
急いで、局内の窓を開けて喚起をするように指示を出してくれる。
ロールさんのその声に、皆がテキパキと動く。整備長の紫煙の対策に余念が無い方々である。
指示が出されれば、皆さん手早く窓を開けて換気と、手際が凄くいい。
「おお! ようやく来たか」
と、聞きたくもない声が埃の中心から聞こえてきた。この状況を作った存在だな……。
ロールさんが現れるまでずっとその場から動かずに待機していたと考えると、シュールではある。
この屋根を破壊した存在だ。局長を始め、他の方々はその声に、恐怖を抱いているようで身構える。
でも、僕と、ロールさんは、脱力気味に項垂れてしまった。
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