拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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胎動

PHASE-12

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 ―――埃の中から、人影が現れる。

「まったく、小汚い場所だな。この様なところはさっさと辞めてしまえ、義妹よ」
 はいでた~! 残念なシスコン邪神降臨ですよ。大穴から射す陽が、神々しいとか例えちゃってもの凄く反省だよ。
 
 こんなヤツ、たとえ神だろうが、神々しさなんてありゃしない。残念なだけだ。
 それに、局内を小汚くしたのはアンタや!

「寂しくなかったか」

「ぶふ!」
 きざったらしくウインクで登場の邪神の姿に、ついつい吹き出してしまった。
 
 なんだよ、その全身白のスーツは! 神だからなの? 邪神なのに白かよ。せめて黒にしろよ。
 驚きの白さだ。そんなの着てると、最後はチンピラ辺りに刺されて、鮮血で染めないと物語が終わらない。そんな感じの白さだ。

「なんのご用ですか? パンゲア様」

「だまれ、錆頭。男は口を開くな」
 なんて嫌なヤツ! 錆頭とか、気にしてることをバッサリと言いやがって。

「ウィザースプーン君。こちらは? パンゲア様とか言ってたみたいだけど、邪神なのかな?」
 と、局長。
 凄く面倒くさいけど、僕が説明――――。
 
 ――――説明を受けても、あまり耳には入っていないご様子。白スーツの破天荒な邪神の姿に目を奪われているようだ。
 僕の説明なんかより、ダイナミック登場の方がインパクトが強かったから仕方ないね。
 
 でもって、いったい何をしにここに訪れたのかと、恐怖に染まってもいる。
 伝説では、恐怖の象徴として語られてるからね。怖いんだろうね。

「このような事は謹んでもらわないと困ります」
 常識を逸脱していたので、ロールさんが邪神にご立腹。
 
 あれほど条約を守れと言ったのに、防壁の魔法陣を破壊しての侵入は条約違反だと説教を行う。
 恐怖の象徴である邪神が、ロールさんに頭を下げている姿に、局内の方々は驚きを隠せない。
 
 でさ、本当にご用件はなんですかね。こんな事してくれて。

「どうだ? 本気で我の所に来ないか」

「結構です」
 一刀両断が真っ先に脳漿に浮かんだ。
 手を邪神に向けて、無表情に言い切った。格好いいと思う。
 即答にて簡潔な返しに下唇を突き出して、子供のように落ち込んでみせる邪神の姿がそこにはあった。
 大昔、こんなヤツに世界は支配されそうになり、命をかけて戦ってきた方々は、いまごろ墓の下でコイツの現状を知ったら、さぞ情けないと、涙を流すだろうね。
 
 何が悲しいって、ロールさんを口説くために、気合い入れての真っ白なスーツ姿が、完全に空振りしているところだろう。

「世界の三分の一と言ったが、半分ではどうだ?」

「結構です」

「ならば三分の二!」

「結構です」

「よし分かった! 全部くれてやる。むしろ、義妹のために世界を取るという考え、モチベーションが上がる! 素敵な兄妹愛を見せてやろう」

「結構です」
 事務的な結構です。に、よる返しが、見ているこっちの心にも突き刺さってくるものがある。不憫だ。
 きっと、実の妹さんからもこんな扱いだったのかもしれない。これ、それ、あれ、だったかな? 呼ばれ方……。
 
 邪神の顔から生気が失われているようだ。なにを思って、ロールさんが付いていくと思ったのかな。パルパーナでも思いっ切り断られてたのに。
 本当に馬鹿だね。

「うぬぬぬ……我は諦めんからな義妹よ!」
 すんなり帰るか――。
 でも、結構簡単に王都まで移動出来るみたいだな。流石は邪神。
 あっさりとした撤収が物語るね。これ、毎日訪問するつもりだな。

「待ってください」
 ロールさんの呼び止めに、まあ、明るい笑顔の邪神。銀の瞳をキラキラと輝かせて、軽い足取りで、ロールさんへと接近。

「なんだ。願い事か? 兄は何でも聞き入れるぞ」
 そりゃ、世界全部をくれてやるとか言っちゃうもんね。そこは説得力あるよ。

「では、聞いていただきます」

「うむ♪」

「局の修繕費、局員制服のクリーニング代。領空侵犯、王都上空からの不法侵入および、防壁魔法陣の消失。これらの違反金に、魔法陣の復元に必要な魔力供給をお願いします。記入と捺印をいただけますか? 拇印で結構ですので」
 喋々な事務的発言。
 邪神の瞳が心なしか潤んで見える。泣いてるのかなコレ……。
 
 ――あっ、いま天井見たよ! 涙を流さないようにしてるよアレ。
 
 ――――机で背中丸めて記入している……。なんとも小さく見える体だ。
〝あれ、邪神なんだぜ〟って、言ったところで、誰も信じないくらいの威厳なき姿。
 
 だがしかし、派手に壊してくれたもんだ。
 大穴から見える青空たるや。本日も快晴。

「ん?」
 眺めていた大穴の上を、影が走った。
 鳥かな? にしては大きかったよな。なんだ? またなんか変なの来るのか? 邪教徒の方のお迎えかな? そうなら、さっさと連れ帰って欲しいところだ。

 ――――――。

「失礼します」
 程なくして、礼儀正しい声と共に、木製のドアが開ききる。
 いいですか、パンゲア神。この様に、ドアから入ってくるのが、常識なんですよ。
 
 優しくなってしまう僕の心。表情もほっこりとしているだろう。
 だって、入室してきたのはカグラさんだもの。
 
 魔石鏡で見るよりも更にお美しい。常套句だけども、シンプルにそんな言葉しか頭の中には浮かばない。
 階調色の、毛先に進むにつれて深紅になっていく髪の美しさ。


「げえっ、カグラ」
 素っ頓狂な声だな~。こんなにも美しい方を見て、なんて失礼な感じなんだ邪神よ。
 丁度、拇印のために、拇指に朱肉を付けているところでの発言だった。
 赤く染まった拇指を立てたまま、後退りする邪神の姿は滑稽だ――――。
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