拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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熱砂地帯の二王

PHASE-04

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「いくぞ」
 町ではジリ貧だったけど、ここに来て横着な態度に変わりましたよ。
 なんか、久しぶりかもしれない。こんな偉そうな整備長。
 大公様もいなければ、邪神もいないからね~。
 でも、今回は態度大きくしちゃ駄目ですからね。
 
 森の中に足を入れれば、驚くくらいにヒヤッとした心地よさだ。
 熱砂からこの森の入り口を境界線にして、気温が変わるって感じ。いやはや気持ちいい。外套を脱いで、つなぎ姿になって、森を歩く。
 
 新緑の匂いだ。深呼吸するだけで、体から毒気が抜けていく。さあ、整備長もその汚れた体内の物を全部だしきって、ここで、清き存在になるのです。
 
 ――まあ、出してるのは、紫煙だけどね……。やめろ森が汚れる。

「嗜好品を楽しむのはいいですが、ポイ捨てだけはやめてくださいね~」
 なんか、すっごいのっぺりした声が聞こえてきた。
 お出迎えのようだ。
 
 木々の中から聞こえてくるけども、どこにいるのかまでは特定できない。そういう行為は怖いので、やめてもらいたいよね。
 出て来るなら、堂々と出てきてから、僕たちの事を出迎えてほしいわけなんですよ。
 
 キョロキョロと忙しなく三人で顔を動かしていたら、
 一本の木がクワッと目を見開いて、こちらを凝視。
 目力が怖くて、ついつい横に立つロールさんに飛びついてしまった。

「怖がらないの」
 ちょっとだけ怒られた。でも、嫌がられてはいなかった。これは頑張れば、親密度が更に上がるんじゃなかろうか。

「どなたです」
 いいとこ見せようと、最前列に立って誰何。
 ゴゴゴゴゴゴッと、地を揺らしつつ、
「これは申し訳ありません」
 見開いた目のまま木が動き出し、枝が人間の腕のように動いて、地面に手を置くようにして、幹を支えると、地面から根を引きずり出してくる。
 
 根が絡まり合って、足のような形に変わり、ゆったりと立ち上がると、根と同様に、枝を束ねていくと、手の形を作り出す。
 勤労君なみの、成人男性の2.5倍くらいのサイズだ。

「王都より、よくぞおいでくださいました。これよりはウッドキーパーである、ジュラルミンが主である壌獣王の元まで、ご案内いたします」
 ねえ、なんなの……。魔王軍の方はツッコミを待ってるのかな。
 ワイトのホーリー・ライムライトさんに続いてさ……。
 木なのにジュラルミンってなんだよ! なんでそんなに名前が存在とかけ離れたものなんだよ! トリッキーもいい加減にしとけよ!
 きっと、僕を除いた二人もそう思ったでしょう。
 だってさ、二人とも名前を聞いてから、口が横一文字に閉じちゃってるもの。
 
 ――まあ、みんな公務員ですから。ちゃんと挨拶は返しましたよ――。
 ちなみに、整備長はちゃんと携帯灰皿に吸い殻は捨てました。この辺の倫理はあるんだよね。
 
 ――――ズンズン。
 足音がとても大きいですね。
 近くを歩くことは出来ない。ただでさえ悪路を歩いてるのに、これに加えて震動がダイレクトに伝わってたまったものじゃない。
 明らかに案内役をチョイスミスしているような……。
 
 ――――夕日の木漏れ日の下を歩く。
 小鳥のさえずりは耳朶に入ってくるけども、それ以外の動物は今のところ見えない。
 森の外周は砂漠だからかな。へんてこな地形が原因かもしれない。砂漠の生物も森にはいないみたいだし。なんか生気がないというか、不気味さもあるな~。
 
 この森が広がっていけば、空からでなく、大地を移動してからいろんな動物が住み着いていく事で、本当の意味での自然が出来上がるかもしれない。

 ――――。

「何を抜け駆けしている!」
 と、この森の今後のことを考えていたら、頭上より快活のよい声と共に、突風が吹きすさむ。
 ジュラルミンさんが僕たちの前に立って、風を塞いでくれる姿は、正に防風林だ。
 
 つむじ風が眼前に留まる。その中心に影が現れ、豪快に周囲に風を放つ、正直迷惑だぞこれ。
 
 ――でも、許せる。
 つむじ風の中から現れたのが美人さんだったからね。
 
 青空のような髪のポニーテールに、健康的な小麦色の肌。タンクトップにショートパンツ、サスペンダーと活発的な服装。
 
 魔王軍の女性陣はまったくもってレベル高いですな。
 眼福です。その太ももは、

「そんな巨体で案内とは、なんて迷惑な!」

「なんだと! この跳ねっ返りめ!」
 突如として現れた美人と、ジュラルミンさんが睨み合い。バチバチとした物がお二方の間でほとばしっているようだ。
 
 ライバル同士なのかな? お願いだから戦闘にはならないようにしてくださいね。巻き添えは嫌ですから。

「何用だ! パゼット!」

「まだ名乗ってもいないのに、先に名前を言わないでくれる。このウド!」
 険悪だな。本当に火蓋切るかこれ。

「まったく」
 嘆息一つ漏らしつつ、ふわりと体を浮かせて近づいてくると、僕たちの前に音も立てずに降り立つ、パゼットさんと呼ばれた美人さん。

わたくし、風雷王に仕える、パゼット・シュラークと申します」
 風雷王さんの配下の方か――。
 壌獣王さん配下のジュラルミンさんとは競い合う立場かな? そう考えると睨み合うのにも得心がいく。
 
 ――――本日の僕たちの出張は、ゲンジ砂漠で切磋琢磨する、壌獣王さんと、風雷王さんへ、王都へと来ていただくための地ならし。

「ささ、整備局ご一行様、こちらに」
 ウインクしながら可愛い笑顔で手招きのパゼットさん。
 男二人は必然的にそちらに足を勧めてしまう。

「後から来ておいて、世迷い言を!」
 すかさず、でっかい図体が割って入ってきた。危うく踏みつぶされそうになる。

「アンタみたいなウドは森の入り口にずっと埋まっときなさいよ。この森の記念樹シンボルツリーにでもなったら? 装飾してあげるわよ。可愛いリボンとか」
 小馬鹿にクスクスと笑いつつ、見上げる存在の巨体を、小柄な女性が見下している態度。
 頭にきたのか、地団駄を踏んでいる。
 大きな存在のそれで、揺れる揺れる、大地が揺れる。
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