拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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熱砂地帯の二王

PHASE-05

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「色香で惑わせようとしても無駄だぞパゼット! 整備局の女性を見よ! お前より美しく、しとやかよ。すぐ色香を使うふしだらさなど微塵もないわ!」
 手招きしただけで、えらい言われようだ。それに、女性に対して、女性で比べるのはよくないよ。
 対象にされたロールさんにも、いらん火の粉がかかっちゃうでしょ。
 
 ほら、なんかパゼットさんがロールさんと自分を見比べているよ。それに対して、なんか申し訳なさそうなロールさん。
 
 見られて気恥ずかしいようで、体をモジモジさせている。やだ、かわいい――――。
 
 パゼットさん、なめるように見て、一カ所で目がとまる。
 そして、往復。
 その部分を捕捉する度に、ピタリと止まるんだよね。
 目を細めて、自分のと見比べている。困った感じで、ロールさんが手で隠す仕草。
 その所作に、辛抱たまらん十代の僕。
 悔しそうなパゼットさん。
 いやいや、別段、小さくないじゃないですか。普通ですよ。
 
 ロールさんは、つなぎの上でも分かる隆起したものをお持ちですが、大きいけども大き過ぎるというものではない。
 そう、美乳なんですよ。形も良く、見ただけでハリがあると理解出来るお胸様です。でも、パゼットさん。気にするまでじゃないでしょうに。
 白いタンクトップからでも分かるハリですよ。
 
 もうちょっと大きい方が良かったと、コンプレックスを抱いているのだろうか?

「現実を見るのだな普通よ」
 やはり、コンプレックスだった。
 普通サイズじゃ満足いかなかったようだ……。ジュラルミンさんのその言葉に、体から風をほとばしらせた。
 
 ――――コンプレックスに触れたその発言がゴングであった。

「シャァァァァ! このウドが!」
 女性って、なにがきっかけで怒り狂うのか。というのを、ちゃんと認識してから、関係を築き上げないといけないというのが分かる見本が目の前に……。
 
 両掌に小さい竜巻を発生させると、
纏風セスタススパウト!」
 両拳に、グローブサイズの竜巻みたいに荒ぶっている風の塊を纏わせて、飛行移動でジュラルミンさんに拳を振り上げる。

「やらいでか!」
 向かってくるパゼットさんに好戦的な構え。
 お二方、沸点が低いな~。どんだけ仲が悪いのかね。

「りゃあ!」
 女性の気合いのこもったかけ声ってなんか聞きたくないよね。とくに美人だと……。思っているイメージを壊されるというか……。まあ、これは男のエゴなんだろうけどさ。

「ぬるいわ!!」
 束ねられた、ぶっとい木の腕が、竜巻の拳を防ぐ。
 と、いっても木屑が凄い勢いで辺りに飛び散っております。
 
 次は自分のターンと言わんばかりに、力のこもったジュラルミンさんの蹴撃。
 
 図体に似合わず早く、ブオンって音ではなく。バッフォンみたいな、なんだろうか、音の壁を突き破ったような衝撃音だった。
 離れていても吹き飛ばされそうになって、近くの木にしがみつく。
 新たな住処を得た小鳥たちが、慌てて飛び立っていく。

「やめてもらえませんか」
 僕の声なんて聞こえちゃいない。
 かけ声を発しながら、激しいどつきあいの応酬だ。
 バチンバチンと、でっかいなめし革で叩き付けてるみたいな音が響いて、そのつど衝撃波が生まれている。

「埒が明かんな」
 大地を両拳で叩くジュラルミンさん。

「豊饒の地、芽吹きの紋章、生命賛頌。それ統べるは我が力。支配者にして愛憎たゆたえし存在。それが我――――――、大地転生クリエイション
 でたー! エルンさんのヤツ! 僕たち整備局員が大嫌いな大地系大魔法。始めて詠唱聞いた。
 
 てゆうか、この合金の名を持つ木人は、何を当たり前に大魔法を使用してるかな。
 バカじゃないの。僕たちいるんですけど。
 
 大地が大いに揺れてます!

「やばいやばい」
 整備長、顔面蒼白っすね。きっと僕もでしょうね。
 倒木していく根っこが、隣接する木々に絡まって、さらに倒木を誘っていく。
 地割れが走り、そこから広がり、落ちたら一発昇天の、底が見えない暗闇が僕たちに迫る。

「くそ!」
 交戦いまだ終わる気配なしで、倒れる木に、飛行ルートを阻害されて苛立っているパゼットさんが舌打ちをしつつ、自分に向かって倒れる木を風の拳で叩き割っている。

「いいから、この魔法を止めろー!」
 お願い! あめ玉あげるから。このままじゃ、死んじゃう。怪我ならまだいいよ、労災おりるから。
 でも、死んだら僕には、お金が入らないから!
 
 普段出さない大声で伝えるけども、聞いちゃいない。こいつらマジでどうしてくれようか!

「これは流石にまずいね」
 胆力よ。その胆力がほしいです。ロールさん。
 とても、危機的状況に陥っているとは思えないくらいに冷静ですね。
 このままでは倒木の下敷きか、根に絡まれながら奈落に落ちそうだ……。レッドスライムA、C両氏の追体験が目の前に!
 
 ――――あ……。
 
 ありがとうございました。
 終わった……。僕、いま抉れた地面の切れ目へと落ちて行ってます。天を仰いで落ちております。
 胆力漲っていたロールさんでも、蒼白な表情になって手を僕に伸ばしている。
 このままじゃ、ロールさんも落ちると、必死に体をホールドして、切れ目から離れさせようと必死の整備長がおります。
 ――はっ、普段からそのくらい必死の表情で仕事をこなしてくださいよ。
 そしたら、僕が偉くなった時に、少しは気楽に出来る仕事を回してあげますよ。
 
 ――なんてね。
 すごいや、スローモーションの世界だよ。こんな形で終わりを迎えるなんてね。困ったもんだよ。
 僕の保険で少しでも親が豊かになってもらえれば……。先に逝く僕を許してください。
 
 願わくば、カグラさんみたいな女神様が現れて、別の世界に転生なんかしてくれて、最強の存在で、イケメンで、頭良くて、ロールさんみたいな、僕にデレデレな幼馴染みがいたり、そこに転生してくれた女神様が押しかけてきたりと、ハーレムできる所に転生を……。
 
 僕の仕事たたかいはまだまだこれからだ! 
 
 ピートマック・ウィザースプーンの来世に、ご期待ください。

 ――――。

「この大馬鹿者たちが!」
 鋭い声と共に、僕の内蔵にズンとくる衝撃が生まれて、浮かび上がる感覚。
 さっきまでは落ちていたから、ふわりと体の中が軽くなった感じだったのに、さっきの衝撃は内臓の位置が元に戻った合図かな。
 となると、今僕は落ちているわけではないようだ。
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