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熱砂地帯の二王
PHASE-13
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朝食は、やはり、アイアンプレートという名の堅パンだ。
「感謝してくれよ。今日はホットミルク付きだ」
と、昨晩と同じテント内の席で、風雷王が生意気な口調。
確かにありがたいけどね。
塩のスープなんかよりは、こちらの方が良い。
――――ホットミルクうま! ホットミルクでここまで感動するとは思いもしなかった。
堅パンを浸して食べる。満足ではないけども、腹は空腹からは解き放たれた。
今朝は昨晩と違って、周囲に人の目もなかったから、ゆったりと食せたしね。
――――。
「では、参りますか」
食事を終えたのを見計らって、キドさんがテントに入ってきた。
「そうだね」
と、ホットミルクを〝ぷはぁ〟と、飲みきり、鼻の下にミルクをつけた子供丸出しな風雷王がそれに同調して、マグカップを机において、つと立ち上がる。
その音を合図に整備長が立ったから、僕もそれに続いた。
――――。
テントが並ぶ隣には更地が有り、そこには大人数の両王配下の方々が、綺麗に並んでいる。
テントの列もそうだったけど、この整った隊列たるや。
人型に、ジュラルミンさんと同族の方、四脚のガゼルみたいな魔獣の方、天使のように背中に羽根のある鳥人の美人さん。
とにかく、綺麗な隊列で、やはり皆さん統一されたまだらのズボンにモスグリーンの上着だ。
王都の兵隊みたいに、統一された鎧みたいなものなのだろうか?
更地に並ぶ方々の目が向く方向には、一段ほど高く盛られた場所がある。
推測するに、あそこに立って、配下の方々に下知を飛ばすと言ったところだろう。
――やはりというように、一段高い場所に、両王が立つ。
「注目」
と、キドさんの一言に、ザァッって音がなる。一カ所からではなく、方々が全体で、足下から奏でたザァッって音が一つになって耳朶に届く感じは圧巻だ。
すっごい統制。
どれだけ訓練してるんだろう。
魔の方々って、もっとこう、個の武に特化した感じだと思うんだけども、ここは明らかに組織だった武を感じる。
「諸君。はるばる王都より整備局の方々がまいってくだされた」
視線が僕らに向けられる。圧巻の視線の数に後退りしてしまいそうだ。
皆さん、眼光が凄い。強いと例えるよりも、研ぎ澄まされた刃物のような鋭さだ。
キドさんの招きで、僕たちが一段高い場所に足を運ぶ。
――僕たちが赴いたのは、王都より壌獣王のキドさんと、風雷王のちびっ子であるテト君たちを表彰するためである。
もちろん、本人たちが了承してくれるなら、正式な叙勲が王都で行われ、王様が勲章を授けるとのこと、
魔王軍に勲章をやるというのもおかしな話だけども、両王の行動は、大陸に大きな貢献をしたから当然といえば当然。
まあ、本人たちはまったくもって、そんなつもりはなかったそうなのだが、結果的に人々に恩恵をもたらした。
その恩恵――。
見渡す限りのこの森である。
壌獣王さんと風雷王の両軍からなる軍事演習。
配下の方々は大地系、風系、雷系に秀でた方々である。上位に行けば、大魔法も容易く唱える方々も多い。
そして、ここはヴィン海域に並んで魔法制限が解除されている場でもあった。
なので、大魔法が派手にしようされ、砂漠地帯は耕され、木々が生い茂っていき、大雨はさらなる芽吹きを加速させ、さらに廃れていたシュタールの町にまで、降りしきる雨により、砂漠地帯は潤った。
それによって、人々が集まり、シュタールの町は息を吹き返し、住民は、この両王に大恩を抱くのだった。
幻獣使いさんが無償で砂漠オオトカゲを貸してくれたのも、この両王のおかげで、人々の、砂漠の移動が活発になり、商いが成功したからだ。
反面、森林の保全から、大魔法の使用制限が義務化され、数少ない使用制限解除域を失った事は、ガチ勢の方々には不評であったが、ヴィン海域と違い、熱砂の地帯は過ごしにくく、わざわざここを使用しての戦闘もそこまでなかった事から、軋轢が生まれなかった事は、僕たちにとって幸いであった。
素直にヴィン海域で腕を試すガチ勢が多く、そちらで力試しをしたいと思って、この地より素直に立ち去ったのも、軋轢が生じなかった理由の一つでもある。
とはいえ、ここをホームグラウンドにしている両王の配下の方々は、未だに染みついた大魔法を簡単に唱えてしまう悪癖があり、後先考えずの使用癖は中々に直る事はなく、前日の僕が危機にさらされたのが、良い例である。――良い例ではないけども! 最悪の例だけども。
これからのゲンジ砂漠における大魔法は、緑化推進の為にだけ使用してほしい。――という、こちらサイドにはそんな思惑もある。だからこその叙勲。
「キド殿、テト殿、叙勲式には参加なされますか?」
整備長、視線を一身に浴びてるからか、緊張気味に声を裏返して問う。フルネームで言うところだよ……。どんだけ浮き足立ってんの。
「無論、出席しましょう」
「当然さ、僕たちが出席する事で、魔王様の貢献になるんなら、喜んで王都に赴くよ」
と、出席の言質をとると、
「では――――」
更に声を上擦られせつつ、咳を一つ打つと、
「貴方方は長年にわたり、この地にて練度発展のために尽力し、副産物として、この大地に多大な貢献をしてまいりました。その功績は誠に顕著であり、よってここに、王都名誉環境保全賢人の称号を贈り、表彰いたします」
手にして読み上げるパピルスの表彰状を両王に差し出し、それを受け取ると、今まで、静まっていた配下の方々がどっと沸き、拍手、万歳。音と声で一体が支配された。
「叙勲と賞賜は王都でとなります」
賑やかな中で、整備長が再確認の言を発し、聞き取りにくそうにしながらも、長い耳を動かしてキドさんが理解したと首肯し、テト君が後に続く。
「また――」
続ける整備長が騒がしさで困惑の表情をした途端に、両王が手を配下の方々に向けると、水を打ったように静まりかえる。
「日頃、整備局において使用される。大地系の魔石生産の委託先である、壌獣王様には、良質の魔石を生産していただいているという事から、大陸の整備局の思いを、我々が代表して、感謝状を贈らせてもらいます」
「ありがとうございます。これからも、協力を惜しみません」
笑顔が美人なダークエルフ様。
実際、この壌獣王さんの軍のおかげで、僕たち整備局員の作業である、大地の修繕はスムーズなので大助かりだ。
「感謝してくれよ。今日はホットミルク付きだ」
と、昨晩と同じテント内の席で、風雷王が生意気な口調。
確かにありがたいけどね。
塩のスープなんかよりは、こちらの方が良い。
――――ホットミルクうま! ホットミルクでここまで感動するとは思いもしなかった。
堅パンを浸して食べる。満足ではないけども、腹は空腹からは解き放たれた。
今朝は昨晩と違って、周囲に人の目もなかったから、ゆったりと食せたしね。
――――。
「では、参りますか」
食事を終えたのを見計らって、キドさんがテントに入ってきた。
「そうだね」
と、ホットミルクを〝ぷはぁ〟と、飲みきり、鼻の下にミルクをつけた子供丸出しな風雷王がそれに同調して、マグカップを机において、つと立ち上がる。
その音を合図に整備長が立ったから、僕もそれに続いた。
――――。
テントが並ぶ隣には更地が有り、そこには大人数の両王配下の方々が、綺麗に並んでいる。
テントの列もそうだったけど、この整った隊列たるや。
人型に、ジュラルミンさんと同族の方、四脚のガゼルみたいな魔獣の方、天使のように背中に羽根のある鳥人の美人さん。
とにかく、綺麗な隊列で、やはり皆さん統一されたまだらのズボンにモスグリーンの上着だ。
王都の兵隊みたいに、統一された鎧みたいなものなのだろうか?
更地に並ぶ方々の目が向く方向には、一段ほど高く盛られた場所がある。
推測するに、あそこに立って、配下の方々に下知を飛ばすと言ったところだろう。
――やはりというように、一段高い場所に、両王が立つ。
「注目」
と、キドさんの一言に、ザァッって音がなる。一カ所からではなく、方々が全体で、足下から奏でたザァッって音が一つになって耳朶に届く感じは圧巻だ。
すっごい統制。
どれだけ訓練してるんだろう。
魔の方々って、もっとこう、個の武に特化した感じだと思うんだけども、ここは明らかに組織だった武を感じる。
「諸君。はるばる王都より整備局の方々がまいってくだされた」
視線が僕らに向けられる。圧巻の視線の数に後退りしてしまいそうだ。
皆さん、眼光が凄い。強いと例えるよりも、研ぎ澄まされた刃物のような鋭さだ。
キドさんの招きで、僕たちが一段高い場所に足を運ぶ。
――僕たちが赴いたのは、王都より壌獣王のキドさんと、風雷王のちびっ子であるテト君たちを表彰するためである。
もちろん、本人たちが了承してくれるなら、正式な叙勲が王都で行われ、王様が勲章を授けるとのこと、
魔王軍に勲章をやるというのもおかしな話だけども、両王の行動は、大陸に大きな貢献をしたから当然といえば当然。
まあ、本人たちはまったくもって、そんなつもりはなかったそうなのだが、結果的に人々に恩恵をもたらした。
その恩恵――。
見渡す限りのこの森である。
壌獣王さんと風雷王の両軍からなる軍事演習。
配下の方々は大地系、風系、雷系に秀でた方々である。上位に行けば、大魔法も容易く唱える方々も多い。
そして、ここはヴィン海域に並んで魔法制限が解除されている場でもあった。
なので、大魔法が派手にしようされ、砂漠地帯は耕され、木々が生い茂っていき、大雨はさらなる芽吹きを加速させ、さらに廃れていたシュタールの町にまで、降りしきる雨により、砂漠地帯は潤った。
それによって、人々が集まり、シュタールの町は息を吹き返し、住民は、この両王に大恩を抱くのだった。
幻獣使いさんが無償で砂漠オオトカゲを貸してくれたのも、この両王のおかげで、人々の、砂漠の移動が活発になり、商いが成功したからだ。
反面、森林の保全から、大魔法の使用制限が義務化され、数少ない使用制限解除域を失った事は、ガチ勢の方々には不評であったが、ヴィン海域と違い、熱砂の地帯は過ごしにくく、わざわざここを使用しての戦闘もそこまでなかった事から、軋轢が生まれなかった事は、僕たちにとって幸いであった。
素直にヴィン海域で腕を試すガチ勢が多く、そちらで力試しをしたいと思って、この地より素直に立ち去ったのも、軋轢が生じなかった理由の一つでもある。
とはいえ、ここをホームグラウンドにしている両王の配下の方々は、未だに染みついた大魔法を簡単に唱えてしまう悪癖があり、後先考えずの使用癖は中々に直る事はなく、前日の僕が危機にさらされたのが、良い例である。――良い例ではないけども! 最悪の例だけども。
これからのゲンジ砂漠における大魔法は、緑化推進の為にだけ使用してほしい。――という、こちらサイドにはそんな思惑もある。だからこその叙勲。
「キド殿、テト殿、叙勲式には参加なされますか?」
整備長、視線を一身に浴びてるからか、緊張気味に声を裏返して問う。フルネームで言うところだよ……。どんだけ浮き足立ってんの。
「無論、出席しましょう」
「当然さ、僕たちが出席する事で、魔王様の貢献になるんなら、喜んで王都に赴くよ」
と、出席の言質をとると、
「では――――」
更に声を上擦られせつつ、咳を一つ打つと、
「貴方方は長年にわたり、この地にて練度発展のために尽力し、副産物として、この大地に多大な貢献をしてまいりました。その功績は誠に顕著であり、よってここに、王都名誉環境保全賢人の称号を贈り、表彰いたします」
手にして読み上げるパピルスの表彰状を両王に差し出し、それを受け取ると、今まで、静まっていた配下の方々がどっと沸き、拍手、万歳。音と声で一体が支配された。
「叙勲と賞賜は王都でとなります」
賑やかな中で、整備長が再確認の言を発し、聞き取りにくそうにしながらも、長い耳を動かしてキドさんが理解したと首肯し、テト君が後に続く。
「また――」
続ける整備長が騒がしさで困惑の表情をした途端に、両王が手を配下の方々に向けると、水を打ったように静まりかえる。
「日頃、整備局において使用される。大地系の魔石生産の委託先である、壌獣王様には、良質の魔石を生産していただいているという事から、大陸の整備局の思いを、我々が代表して、感謝状を贈らせてもらいます」
「ありがとうございます。これからも、協力を惜しみません」
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